「自分がやりたいことと真剣に向き合おう」ヨーヨーの世界チャンピオンがTEDで情熱のパフォーマンスを披露

The journey to TED Conference | Black | TEDxSapporo

自分のやりたいことって何だろう? 就職活動の時期に誰もが考えたことがある悩みではないでしょうか。学生時代にヨーヨーの世界チャンピオンに輝いたBLACK氏は、就活、就職を経てヨーヨーのパフォーマーとして独立したいきさつとTEDカンファレンスへの登壇を通して学んだことについて語りました。

ヨーヨーの世界チャンピオンという肩書きについて

BLACK氏:ありがとうございます。今日は日本語でしゃべらせていただきたいと思います。今、見ました? 映像。かっこいいですよね(笑)。今年、本家のTEDカンファレンスに出演させていただきましたBLACKといいます。

今の映像が公開されて、僕は大きな問題に直面しています。初対面の方が、僕と会う前に先に映像を見ているというケースが非常に増えています。僕に対する期待値が非常に高まっています。ハードルが高いです(笑)。いつも僕は言うんです。「そんなたいしたものじゃないですよ」と。「僕は普通の人です」といつも言います。

でも、そういうと大体の人はこうおっしゃるんです。「そうはいっても、BLACKさんは世界チャンピオンじゃないですか」。でも、実は世界チャンピオンであるという事実こそが、ある意味では僕を人生の深い迷路に迷い込ませて、一度は自殺すら考えたくらい大きな絶望の中に追い込まれたこともありました。今日は、そんな普通だった僕がなぜTEDというステージに立つことができたのか、それについてお話ししたいと思います。

大学1年生の夏休み、僕はヨーヨーの世界大会で優勝しました。世界チャンピオンになることができました。ですが、僕の日常はまったく変わりませんでした。もしヨーヨーがオリンピック競技の種目なんかに選ばれていたら、少しは状況が違ったのかもしれません。ですが残念ながら、少なくともその時点ではヨーヨーの競技というのは社会からの評価はあまり高いものではなかったんです。

僕は大学生活に戻り、その2年後、大学3年生になりました。就職活動の時期です。正直思いました。「俺、世界チャンピオンなのに普通に就活すんの? それはないんじゃないの?」。でもその時点では、ヨーヨーで生活していく術はありませんでした。そして、時期もちょうど就職氷河期が始まっていました。「嫌だ嫌だ」と言って、いたずらに時間が過ぎていっても、どんどん状況は悪くなるばかりでした。

「とりあえず」という気持ちで就職活動を始めてしまいました。そして、「とりあえず」という気持ちで就職先の企業を決めました。そんな気持ちで選んだ企業だったので、やはり業務内容に対しても好きになることはできませんでした。むしろ、嫌で嫌で仕方がありませんでした。自分が嫌なことのために、毎日長時間拘束されている。そんな思いでした。毎日が憂鬱でした。

そんな気持ちで仕事に取り組んでいるので、当然結果を出すことができませんでした。自分も毎日嫌な時間を過ごしている、そして会社に対しても貢献することができていない。「ああ、自分は本当に生きている価値がない人間なんだな」と、心から思ってしまいました。

「じゃあ、自分が生きている価値って何だろう?」と考えました。そして、どんどん先のことを考えるうちに、「自分はいつか死んでしまうんだな」ということを考えるようになりました。自分が死んでしまったら、努力をして世界チャンピオンになったということも消えてしまうのかなと思いました。それはすごく悲しいなって思いました。でも、残念ながらそれは事実のようでした。

どうせ死んでしまうんだったら、自分が死んだ後に、後世に残せるような何かを成したいと考えるようになりました。じゃあ、自分が残せるものってなんだろう? もちろん悪い影響を残すのではなくて、良い影響を残したいと思いました。自分にできるのは、やはりヨーヨーだろうと思いました。

ヨーヨーの世界大会というのは、毎年行われています。僕が優勝した後も、毎年世界チャンピオンは生まれています。言い換えれば、努力をした結果が報われない人が毎年生まれているんです。この状況を変えたいと思いました。ヨーヨーの社会的評価を向上させて、これからの選手たちがより努力が報われる環境を作りたいと考えるようになりました。

具体的に、それをどうやってやったらいいのか。そんなとき、ある映像を思い出しました。シルク・ドゥ・ソレイユという世界的なサーカス集団がいます。そのショーの映像です。ショーの中ではジャグラーの方、お手玉とか曲芸をされる方が出演されていたんですが、その方の演技が本当に素晴らしくて、僕は感動したんです。

技術が素晴らしいのはもちろんなんですが、それだけではなくて音楽との合わせ方とか、体の動かし方、すべてが芸術としか言いようがない本当に素晴らしいものでした。もし自分がヨーヨーで同じような演技を作ることができて、それで人を感動させることができたら、少しはヨーヨーも社会から見直されるんじゃないかと考えるようになりました。

会社を辞めて、プロのパフォーマーとして独立しました。自分の中に、少しずつ情熱が戻ってくるのを感じました。幸運にも同じ年、憧れだったジャグラーの方が来日されてショーを行う機会がありました。僕は当然足を運びました。そして幸いにも、その方と直接お話ししてアドバイスをいただくことができました。

「君の技術は本当に素晴らしい。ただ、体の動かし方についてはまだ十分だとは言えない。ダンスとかを習うといいんじゃないかな」というアドバイスをいただきました。僕はすぐに、バレエ、ジャズダンス、そしてアクロバットを習いはじめました。これは本当に驚くべきことでした。

僕は子どもの頃運動が大の苦手で、むしろ大嫌いで、小学校のときは体育の授業なんかも「どうやって見学というポジションを勝ち取るか」「どうバレないように仮病を使うか」ということを考えるような子どもでした(笑)。そんな自分がバレエ教室に通って、お金を払ってスポーツジムにまで通うなんて、まったく想像ができませんでした。

でもその結果、先ほどの映像にもあったような柔軟性なんかも手に入れることができました。ヨーヨーだけじゃない、努力すれば他のものも手に入るのかもしれない。新たな自信を少しずつ手に入れていきました。

シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを通して気づいたこと

そしてその2年後、日本でシルク・ドゥ・ソレイユの入団をかけたオーディションが開催されました。正直、自分にはまだ早いかなという思いもありました。でも、これを受験できるだけでも千載一遇の大きなチャンスです。ダメでもともと。でも、受けるからにはベストを尽くそう。そういう気持ちで挑戦しました。

その結果、ダンスなどのトレーニングの甲斐もありオーディションを通過し、登録アーティストになることができました。本当にうれしかったです。合格の通知を受けたのは外出先だったんですけども、人目もはばからず大きな声で「やったー!」と叫んでしまいました(笑)。

本当にうれしかったんですが、実は合格してすぐに出演に直結するというわけではなかったんです。あくまでも登録アーティストの一員になれたという状態で、ショーへの出演はそのショーのテーマとの相性とか、いろいろとまた別の問題があったんです。なので、シルク・ドゥ・ソレイユのショーへの出演に向けて自分がさらにできることというのは、一旦はある意味途切れてしまったのかなと感じました。

じゃあ、どうしたらいいんだろう。再び迷路に迷い込みました。そこで原点に立ち返りました。「自分はなぜパフォーマンスをしているのか?」ヨーヨーの社会的評価を向上させるためです。それならば、必ずしもシルク・ドゥ・ソレイユでなくてもいいんじゃないか。もしそれと同じくらい、あるいはそれ以上に社会から評価をされている場所で、その場所に見合うだけの演技を披露することができたらいいんじゃないか。そう考えるようになりました。

そんなときに、友人からあるメールをもらいました。「BLACKさん。僕は今度TEDxYouthというイベントに出演するんですが、そこでパフォーマーの人が1人足りないそうなんです。もしよかったらお手伝いいただけませんか?」というメールでした。そのときは、実はTEDについてもTEDxについてもまったく知識がなかったんですが、まあ友達が困ってるなら助けてあげようという軽い気持ちで出演しました。

そしてその3ヵ月後、また1通のメールをもらいました。今度は別の方でした。「BLACKさん。私はTEDxTOKYOの代表のパトリック・ニューウェルという者です。TEDxYouthでのパフォーマンス、本当に素晴らしかったです。ですが、私はBLACKさんのパフォーマンス以上に、打ち合わせの際にBLACKさんがおっしゃっていた、今日に至るまでの背景やストーリーが素晴らしいと思ったんです。ぜひあなたのストーリーを情熱という切り口でお話ししてもらえませんか?」という内容でした。

正直、それまでは自分に情熱があるなんて考えたこともなかったんです。自分が生きる意味を考えて、そのためにやりたいことをやってただけなんです。なんか「自分は情熱の人です!」と言うのって、今でも、いまだに正直恥ずかしいんですよね。ちょっと照れくさい感じがします。

でもそういうものが求められていて、本当に自分の中にそんなものがあるならと思ってチャレンジしてみました。TEDxTOKYOで情熱をテーマにしたスピーチ、そしてパフォーマンスを行いました。その結果、スタンディングオベーションをいただきました。そして、今までは知り合うことができなかったような方々から、たくさん温かいメッセージやお声がけをいただくことができました。

「なんかすごいことが起こってるな」と感じました。家に帰って、TEDとかTEDxについて調べてみました。そして驚きました。これこそが、自分が探していた「社会から評価を受けられる場所」だと感じました。そんな場所に、自分は足を踏み入れていたんだと、今さら、出演が終わった後に気づいたんです(笑)。

その翌年、本家のTEDカンファレンスへの出演をかけたオーディションが世界14都市で行われました。東京もその会場のひとつでした。全力をかけて挑戦しました。そしてその結果、日本のオーディションからは僕一人が勝ち進み、本家のTEDカンファレンスに出演することができました。これが、TEDカンファレンスに出演した自分の場合の経緯です。

この話を通じて皆さんにお伝えしたいのは、2つのことです。1つは、僕が出演できたのは世界チャンピオンだからではないということです。もっとも大事だったのは、自分がやりたいことと真剣に向き合って自分は何を成したいのか(考えて)、本当の自分と向き合って、そこに向かって努力をしたということです。

2つ目は、人の力を借りたということです。TEDxのきっかけもそうです。そしてTEDで披露したパフォーマンスについても、オリジナルのヨーヨーの製作、音楽、振り付け、その他にもさまざまな人の助けを借りました。それがなければ、あの演技、プレゼンテーションはありませんでした。

もし皆さんの中に、本家のTEDでスピーチをしたいと思ってる方がいらっしゃったら、ぜひ挑戦してみてください。どなたにも可能性があると思います。

過去のTEDの出演者を見ると、クリントン元大統領とか、マイクロソフトのビル・ゲイツさんとか、映画監督のジェームズ・キャメロンさんとか、そうそうたるメンバーが名を連ねています。「超人的なすごい人だけが出演できる場所で、自分はそこには出られないその他大勢の中の一人だ」。そういう考えも、ひょっとしたらあるのかもしれません。

でも、僕はけっしてそんなことはないと思います。そういう意味では、僕だってその他大勢の中の一人でした。でも、そんなもの、その他大勢なんてものはないと思います。皆さんが生きている人生の主人公は、皆さん自身だと思います。その他大勢ではなく、主人公だと思います。ぜひ、その主人公が幸せになれる、ハッピーエンドにたどり着けるようなストーリーを描いていただけたらと思います。

ご清聴、ありがとうございました。

(会場拍手)

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