はちみつができるまでの物語を知ってますか?
とある詩人が語るミツバチと養蜂家に出会う旅

蜂のこと: みつばこ at TEDxTokyo (日本語)

ミツバチ愛好家で詩人のみつばこ氏は、日本各地の養蜂園を訪ねてミツバチや養蜂家と出会う旅を続けています。夏の採蜜に携わったみつばこ氏は、その時に見た情景を詩と物語に乗せて伝えました。(TEDxTokyo2013 より)

ミツバチと養蜂家と出会う旅

みつばこ氏:蜂飼いは、花の季節になると、北上する花前線に乗って、毎年ミツバチと花畑を追う旅に出ます。

私は、あるときお話を集めるミツバチを飼う蜂飼いが木箱を背負って旅をしているところに出会いました。

庭の片隅に置かれたミツバチの巣箱のかたわらで、巣の入り口を出たり入ったりするミツバチをいつまでも見ていたい気持ちになります。

私は、各地の養蜂園を訪ねて、ミツバチや養蜂家と出会う旅をしています。

ミツバチが蜜を集めてくる土地や、ミツバチにひたむきな想いを寄せる片思いの養蜂家の姿は、蜜と同じように味わい深く心に残ります。

私は言葉を集めるハチとなって、この豊かな情景と記憶を詩や物語にして伝えています。

秋の終わりに、一人の養蜂家に出会いました。

初対面の挨拶代わりに「あなたはハチミツを買いに来たの? それとも蜂を見たいの?」と質問されて、私は迷いもなく「ミツバチが見たいです」と答えました。

それがミツバチと養蜂の世界のはじめての出会いでした。

雄蜂は女王蜂と天空で命をかけて結ばれる

養蜂家に案内されて、山の頂の一角にある養蜂園に着きました。空色に塗られた巣箱が30箱、整然と置かれています。薄陽の差す中を、ミツバチが飛んでいます。

巣箱の入り口を指しながら、養蜂家は言いました。「足に黄色いものを付けてるのがいるでしょう」

このあたりの草花の花粉を集めてきた「花粉団子」です。ちょうどミツバチ1匹が通れる巣箱の入り口は、蜜を求めて飛び立つ者や、花粉を集めて帰って来る者たちで、慌ただしくしています。

ミツバチは、巣箱内の温度を36度前後に保つので、巣箱の蓋は開けないと言っていた養蜂家ですが、自慢の蜂を披露したかったのでしょう。

素手で、そっと蓋を持ち上げて、中の様子を見せてくれました。

巣の上から燻煙器で煙をかけて、ミツバチをおとなしくさせました。一段の巣箱には、10枚の巣板が一定の間隔で入っています。

1枚をそっと取り出すと、何万匹ものミツバチがうごめいています。

私は、羽音と無数のミツバチに囲まれて、一気に幸福感に満たされました。

冬の養蜂園はひっそりとしています。巣箱の蓋は寒いので開けませんが、耳を当ててみると、ゴォッとミツバチの羽音が聞こえてきます。

ミツバチは群れで暮らします。群れには、1匹の女王蜂と4、5万匹の働き蜂がいます。女王蜂は体が大きく、働き蜂たちに手厚く守られながら、巣の中をあちこち移動します。

その一生は3年ほどで、産卵が仕事です。

雄蜂は、産卵期になると現れて、わずかなものだけが女王蜂と天空で命をかけて結ばれます。雄蜂は、蜜源が少なるにつれて、群れからいなくなります。

忙しい働き蜂の寿命は35日

働き蜂は、雌蜂で卵を産むことはできません。花が多く、忙しい時期の寿命は35日ほどです。

春の養蜂園は、新しい生命の誕生で賑やかになります。働き蜂たちは、巣の内と外の仕事をせっせと分担します。

蜜や花粉を貯蔵する係、敵の侵入から巣を守る門番、巣内の清掃や巣作りもします。

ミツバチは成長すると、蜜や花粉を集めに外へ出かけて行きます。たったスプーン1杯のハチミツを集めて来るのに、1匹の働き蜂は、巣と蜜源の間を何百往復もします。

ミツバチが巣箱から飛び立つ瞬間を「記憶飛行」と言います。ミツバチは記憶する昆虫です。自分の巣箱の位置をしっかり覚えます。

ミツバチには言葉があります。最初に蜜源を見つけた偵察蜂が、巣に戻ってくると、方位や距離を、尾を震わせるダンスで仲間たちに知らせます。

春に新しい女王が誕生すると、古い女王は働き蜂たちを連れて、巣を去る「巣別れ」をします。

養蜂家は、こういった群れの生命力を熟知して、絶やさないようにそっと手助けをしています。

人間もハチも必死になる夏の採蜜

夏にはじめての採蜜を手伝いました。日中の気温が高くなる前に、明け方4時に起きて養蜂園に集まりました。

養蜂家たちは、一大仕事に取り掛かる前に、一服タバコを吸いました。

燻煙器の口から漏れる木クズの匂い、ミツバチが醸し出すミツロウやハチミツの甘い香りが、あたり全体に広がっていました。

夏の草木に覆われた養蜂園は、深い緑に包まれて、蒸し返す空気とギラギラする太陽の中を、ミツバチがゴォゴォと唸っています。

人間たちに蜜を持っていかれることを察知したミツバチは、やや殺気立っているのでしょう。

採蜜の現場は気持ちも高まります。ミツバチを一時的に巣箱から追い出して、蜜で重たくなった巣板を取り出し、作業場まで運びます。

ミツバチは巣に蜜が溜まると、ミツロウで蓋をします。私は、ナイフでその蓋を開ける仕事を任されました。見よう見まねで蓋を切り落とすと、中からハチミツが滴り落ちてきました。

ハチも人も蜜という極上の贈り物のために、疲れても働き続けます。

蜜蓋を開けた巣板は遠心分離機にかけて、蜜を絞り、蜜漉し器で漉して、一斗缶に注ぎます。ハチミツの一斗缶はとても重く、持ち上げるのにも一苦労です。

長年、夏の採蜜に駆り出される養蜂家の奥さんは、小さな体で持ち上げて、注ぐことも運ぶこともできます。

奥さんは「夏の採蜜ほど嫌なものはないし、毎年この時期が来ると離婚したくなる」と笑いながら言いました。

すべてが片付いたのは、太陽が沈みかける頃でした。

「今日は暑い中、はじめてなのによく頑張りました。助かりました」と、養蜂家は、さっき採蜜したばかりのハチミツを瓶に分けて手渡してくれました。この日のハチミツは、ひときわ輝いていました。

私は言葉を集めるハチとなって、この豊かな情景と記憶を詩や物語にして伝え続けます。

ありがとうございました。

Published at

TED(テッド)

TED(テッド)に関する記事をまとめています。コミュニティをフォローすることで、TED(テッド)に関する新着記事が公開された際に、通知を受け取ることができます。

スピーカーをフォロー

関連タグ

人気ログ

人気スピーカー

人気コミュニティ

ピックアップ

編集部のオススメ

ログミーBizをフォローして最新情報をチェックしよう!

人気ログ

人気スピーカー

人気コミュニティ

ピックアップ

編集部のオススメ

そのイベント、ログしないなんて
もったいない!
苦労して企画や集客したイベント「その場限り」になっていませんか?