「大きくなったら治ると思っていた」自分自身の問題と向き合う時期

メーガン・ワシントン氏:今回のスピーチの参加を決める時、話すのか歌うのかはまだ決めていませんでした。でもトピックが言語だというのを聞いて、何か話さなくてはと思いました。

私はある問題を抱えております。たいそうなことではないので大丈夫なのですが。世界にはこれよりもっと大変な経験をしておられる方がいますし。しかし私にとっては、言語と音楽というものが、この問題を通じて切り離せないものとなっています。

どんな問題か、それは「吃音症」です。そんな私が人生の多くをステージで過ごしたと言うと、とても興味深く聞こえると思います。私が、大衆の面前で自信をもって気持ちよくいられる人なのだと察する方もおられると思います。

でも本当は今の今まで、そして今でも、人前で話すことにどうしようもない恐怖を感じています。歌う時は別ですが。

このあと歌うのですがその前に、この問題についてこんなにハッキリと話したことは今までありませんでした。「大きくなったら治るから」と思っていたかったからかもしれません。「大きくなったらフランス語を勉強してお金のやりくりもできるようになって、いつかは吃音症が治る。そうすれば大統領にも何でもなれる」というような具合でね。

しかし私は今、28歳で「大きくなった」ことにも自覚があります。なのでもうそろそろ、ちゃんとこの問題について向き合わなければいけないと思ったのです。私はパフォーマーとして生き、言語障害を持つ成人女性です。ハッキリしなければいけませんね。

つねに模索してきた、言語障害との付き合い方

吃音症を持つことで、おもしろい経験をすることもあります。私にとって1番やっかいなのは、他の吃音症の人に出会ったときです。

この出来事はハンブルグで起こりました。そこで出会った男性が「こんにちは。わわわ私の名前はジョーです」と言ってきたのです。なので私は「あ、こんにちは。わわわ私はメグといいます」と言いました。からかっていると勘違いされているのかと思うと、あれは恐ろしかった。

(会場笑)

私が言葉を口に出すのをためらってる様子を見て、名前を忘れたと思われることもあります。不思議なことに、固有名詞が本当に苦手なのです。例えば、文章の中で「水曜日」という言葉を使う時は、どもるのが目に見えてるので、「明日」とか「火曜日の次の日」と言うようにしています。語呂が悪いですが回避することはできます。

人生の中で、ギリギリで言葉を変えて、脳を騙すというこの抜け道を開発してきたのです。ただし、人名は変えられないんですね。

ジャズを多く歌ってきましたが、ピアニストには「スティーブ」という名前が多いんです。お分かりの方もおられるかと思いますが、「S」と「T」の連続、または単体の発音が、私は本当にダメなんです。

それでも即興の中でバンド紹介をしなければならず「スティーブ(Steve)」の番でつまずいて場をしらけさせてしまっていました。何回かそれを経験した後には、「スティーブ」は快く受け入れてくれましたが。

上手に話しても、ウソをついてる気がした

多くのセラピーも受けました。よくある療法は「スムース・スピーチ」というもので、歌うように話すというものです。幼稚園の先生のように、歌のように話し、とても穏やかで、まるでバリウムを大量に摂取したかのような落ち着きです。

(会場笑)

でもその話し方は、本当の私ではないんですね。クイズ番組とかラジオインタビューとかで放送時間が限られてる時だけそういう話し方をします。

仕事上はそういうことをします。しかしリアルに基づくアーティストとしては、やはりウソをついてるような気分なのです。だからこそ、あえて歌う前に、私にとって歌とは何なのかを話しておきたかったのです。

それは、いい感じの音を出すとかいうこということではなく、いい歌を生み出すということなんです。認知されてるとか理解してもらってるとかより、私の感じたことを他の人にも感じてもらえるかということなんです。神話的であればいいということではないのです。

歌うことが1番の治療法

人間の脳が持つ摩訶不思議なシナプス機能のおかげで、なんとか、歌うときはどもらないのです。若い頃は、歌うことがいつも最善の治療でした。ですから、ひたすら歌っていました。今日ここにいられるのもそのおかげです。

ありがとうございます。歌っていると本当に落ち着くんです。私が流暢になれるのはこの時だけなんです。この時だけ、思った通りに完璧に言葉が発せられるんです。

なので、TED「トーク」も私にとってはTED「シング」です。去年作曲した曲を歌おうと思います。ありがとうございます。