ギャンブル依存症とプロギャンブラーの違い

ディラン・エバンス氏:この数年間、私は世界中の成功するギャンブラーにインタビューをし続けてきました。カジノが好きだからではありません。彼らにはリスクと不確実性についての特別なインテリジェンスがあるに違いないとピンときたからです。これを私は「リスク・インテリジェンス」と呼んでいます。

心理学者がギャンブラーについて研究する時はほとんどの場合、問題あるギャンブラー、ギャンブル依存症にのみフォーカスします。でもそれは肥満を研究しながら、おいしい料理の存在を無視したり、アルコール依存症を研究しながらおいしいワインの存在を無視することと同じではないでしょうか? 

すべてのギャンブラーが愚かな訳ではないのです。ギャンブラーの中には「プロ」のギャンブラーがいて、「プロ」のギャンブラーの思考法を研究することで、いかにより良い意思決定をするかについて彼らから多くを学ぶことができるのです。

「プロ」のギャンブラーだなんて、ギャンブラーにプロも何もないじゃないかと思う方もいらっしゃるでしょう。ギャンブルとは運がすべてだろうと。しかしそうではないのです。もちろんスロットやルーレットは運がすべてで、そこに「プロ」が存在することはありません。

しかしポーカー、ブラックジャック、そしてあらゆる種類のスポーツ賭博においてはプロのスキルと専門知識を発揮するチャンスなのです。プロのギャンブラーはそれらゲームの中で素晴らしい注意力を発揮します。そしてその専門スキルは彼らを非常に裕福にします。

このお金を稼ぐ能力、ギャンブルから「利益」を得る能力が「プロ」のギャンブラーとギャンブル依存症の人やレジャーとしてギャンブルをする人の大きな違いです。ギャンブル依存症の人もレジャーでギャンブルをする人も長期的に総合的に見ると最終的には負けています。

この2つのタイプのギャンブラーの違いは、ギャンブル依存症の人は身の程知らずな金額をギャンブルにつぎ込んで負け、レジャーギャンブラーはそれに比べれば少額負けているという点です。究極のところ彼らがギャンブルをする理由はお金ではないのです。ゲームに勝つことに感じるスリル、アドレナリンが身体を駆け巡るようなスリルを求めているのです。

「プロ」のギャンブラーは違います。彼らは勝つことにスリルを感じている訳ではありません。考えてもみてください。スロットマシーンのハンドルを下げる度に勝っていたらおもしろくもなんともないでしょう? それはお金を得るための仕事になります。「プロ」のギャンブラーはギャンブルに対して冷静沈着、論理的な利益の追求なのです。そしてある程度彼らの知的好奇心を満足させることも含まれています。

「プロ」のギャンブラーを研究していくうちに彼らは3タイプに分かれることを発見しました。

第1に名誉と富を手に入れるギャンブル界の花形ポーカープレイヤーです。

第2に、より目立たない、厳格で軽蔑的で気難しいセレブポーカープレイヤー。

そして第3にゴルフ、競馬、フットボール、大学バスケットボール等あらゆるスポーツの勝敗に賭けるスポーツ賭博ギャンブラーがいます。

そしてこの3タイプにはそれぞれに特徴があります。ポーカープレイヤーとは非常に優れたアマチュア心理学者です。彼らは虚勢を張る他者の心を読みことができる。

ブラックジャックのプレイヤーは献身的で決然としていてとてもフォーカスし、システムを読み取る力を持ち、人の心を読み取る力は関係ありません。

そしてスポーツ賭博者は2つのグループに分けることができます。まずは機械化するスポーツ賭博者、彼らに必要なスキルはプログラミングする能力です。そしてもう1つのグループはいわゆる「古くからあるスタイルの直観的な」スポーツ賭博者です。彼らはすべてのデータ処理を自分の頭の中で行います。私は彼らの能力にもっとも関心を寄せています。

優れたギャンブラーは頭の中で的確に勝敗の可能性を予測する

彼らに非常に関心を持つようになったきっかけは、ある時読んだ素晴らしい論文です。これはある2人のアメリカの心理学者による研究です。1980年、大学院を卒業したばかりの彼らは競馬場に行き、30人のギャンブラーにインタビューをしました。彼らはギャンブルによって生計を立てている訳ではないものの、競馬にものすごく熱狂している人々です。ここで2つのタイプのギャンブラーがいることがわかりました。30人中14人は予測を立てるのがものすごく得意で、16人は平均的でした。

4年に渡り、30人のギャンブラーを研究し続けた結果、ギャンブルの勝敗には馬の実績や平均速度、順位等7つの要因から成る複雑な線型方程式が存在することがわかりました。もちろんこれら「プロ」のギャンブラーは線型方程式などというものに対する知識はまったくありません。統計モデルなどという用語も聞いたことがありません。無意識に頭の中でそれをするのです。彼らはどの情報に注目すべきかもちろん知っていますし、その情報を集めます。彼らにはそれを何と呼ぶのかという知識はないものの、頭の中で線型方程式を説き、数字をはじき出します。そしてその数字は実際その馬が勝つ可能性と非常に近いのです。

私達に必要な「リスク・インテリジェンス」とは

私はこれを「リスク・インテリジェンス」と呼びます。これはさまざまなソースから情報を収集し、頭の中でそれを整理し、勝敗を予測する能力を指します。

ここまでお話したところで、皆さんもご自身のリスク・インテリジェンスがどの程度が気になっているのではないでしょうか? 私はリスク・インテリジェンスを測るための無料オンラインテストをつくりました。www.projectionpoint.comで誰でもテストを受けることができます。

このテストは正しいものと間違ったものが混合した50のステートメント(文)から成ります。皆さんはそのステートメントが正解である可能性をパーセンテージで回答します。これはどの程度の確証を持っているか、または不確実性を感じているかを測ります。

その文が確実に不正解であると思ったら0%と回答します。その場合はその文が間違っていることに100%確証を持っているということを示します。

逆にその文が確実に正解であると思ったら100%と回答します。その文が正解か不正解か全くわからない場合には50%と回答します。もしも少しでもその文を正解かな、と思ったら60% 、70%等自分がどの程度確実かと思うかによって回答します。多分間違っていると思うけど確実ではない、と思う時は40、 30、 20%等自分が確証を持っている程度によって回答します。

これを終えると皆さんのリスク・インテリジェントスコアが0から100ではじき出されます。皆さんのRQです。IQは皆さんの相対的知能を測りますが、RQは皆さんのリスクに関する知能を測ります。

このテストがおもしろいのは、知識がなくとも高スコアを取ることができる点です。このテストは皆さんの知識を測るものではなく、皆さんが自分がどれだけの知識を持っていて、それに対してどの程度の不確実さを持っているかを判断する能力を測ります。

このテストをすると成績優秀な学生が「平均的」な学生よりも四苦八苦するんです。成績優秀な学生は彼らの人生でずっと「知識をたくさん持った優等生」として生きてきた結果、自分が持つ知識について自信過剰になっているからです。このテストは自信過剰を指摘するテストなんです。そして自信のなさも指摘します。重要なのは常に適切な程度の自信を持つことです。

不確実な状況から物事を決定するための3つの方法

ここから私達がより良い意思決定をしていくために何を学ぶことができるでしょうか? カテゴリー的情報に慣れている人にはピンとこないかもしれません。「明日は雨が降るかもよ」と言われたら傘を持っていけばいいじゃないかと考えますよね。しかし「明日は60%の確率で雨が降るかもよ」と言われたらどうでしょうか? 傘を持って出かけますか? 

我々は不確実性を含む情報を元に意思決定をすることに馴れていないのです。このトークの最後になりますが、可能性を元に物事を決定するための3つの方法について触れたいと思います。

第1の方法は自分の中での基準を定めることです。例えば、60%オーケーをもらえる可能性がある時にだけ素敵だと思う人をデートに誘おう、という風に。これが良い方法であるのは誰でも自分の基準でそれを決定することができるところです。皆さんがこの基準を設定する時の鍵はどれだけモテるか、どれだけデートの相手に困っているかによりますね。

(会場笑)

そしてどれだけノーと言われることを嫌っているかにもよります。

可能性を元に物事を決定する第2の方法は賭けの大きさを決める。つまり自分が自信がある分だけを賭けるということです。例えば会社の株を買う時、その会社の今後の成長をどれだけ信じているかによってどれだけ購入するかを決定します。そしてもちろんこれもまた適切な自信を持つことが重要なのです。自信過剰は自殺行為です。つまりこれが上手くいくためにはリスク・インテリジェンスが必要なのです。

可能性を元に物事を決定する第3の、そして最も複雑な方法は「期待値」という概念を使うことです。これは抽象的な概念であり、実際の「勝敗」を指すわけではありません。これは同じ量を賭けた時に平均してどれだけ勝つのか負けるのかを指します。 「プロ」のギャンブラーがポーカーやブラックジャックのテーブルを見て彼らが思うことは、そこで勝てる最高金額や負けた時の最大損額ではありません。彼らは1つの賭けにつき平均してどれだけ勝てるのかを分析します。「期待値」です。これが常に彼らの頭の中にあります。

期待値を常に頭の中に置き、それを元にする思考法を持つ彼らは常に長いスパンで物事を見ています。ゆくゆくは人間が命を終える、資源が有限であると思った時に人は向こう見ずな行動を取ります。

これで最後だ! もう後はない! と思ってしまえば持っているすべてを賭けるでしょう。「プロ」のギャンブラーは長期的視野を持ち、資源は有限ではないという態度を取ることで、意思決定にも冷静なのです。勝つ時は勝つ、負ける時は負けるのだ、と。

ある「プロ」ギャンブラーが、「常に次の勝負が待っているんだ。今この勝負にすべてを賭ける必要はない。また明日勝負すればいいんだ」と言っていました。賭けるべきときと賭けるべきではない時を見極めるのが「プロ」とギャンブル依存症やレジャーギャンブラーを差別化する非常に重要なポイントの1つです。

もちろん運もあります。何にも確証はありません。素晴らしいリスク・インテリジェンスを持っていたとしても、素晴らしい意思決定能力を持っていたとしても必ず勝てるという確証はないですよね。そんな! と思うあなたはまだリスクが削減できないことを受け入れられていないようですね。クリント・イーストウッドが「Rocky」で演じたニック・プラスキーは「確証が欲しいならトースターを買いな」と言っています。

「チャンス」の概念を受け入れるのです。チャンスをコントロールすることはできません。チャンスは皆さんのことなどどうでもよいと思っているし、これからもそれは変わりません。でも大丈夫です。デイモン・ラニアンはこう言っています「レースは一番早いものではなく、戦い方を知っているものに軍配があがる。それが賭けのルールだ」。

ありがとうございました。