東南アジアの魅力はマーケット規模の大きさ

ポール・スリーボラクル氏(以下、ポール):皆さんこんにちは。

竹村詠美氏(以下、竹中):こんにちは。

ポール:今日はありがとうございます。先に初めちゃってください。

竹中:こんにちは。私はエミです。彼はポールといいます。今日は、最近の東南アジアのローカルビジネスについてお話ししたいと思います。皆さんのなかで、ASEANの地域に行ったことがある方はおられますか?

ASESNは11カ国ありまして、そこに6つの大きなマーケットがあります。ASEANの規模がどのくらいかというと、人口6億人で、日本の約5倍です。個人所得はまだ低めですが、GDPの成長には目をみはるものがあります。なので日本人スタートアップが東南アジアのマーケットに参入しない理由は特にないわけです。

我々Peatixが東南アジアに進出した際は、そこまでマーケット規模は大きくありませんでした。20年でどこまで変わるかということなのですが、我々は目前のことではなく、未来のことを見据えています。なので、10年、20年先を見据えて自社について考えています。

ところでポールは2000年頃に東南アジアeコマースビジネスをしてましたよね。私達にそのことを教えてくれませんか? タイに戻ってビジネスを始めるというのは、あなたにとって現実的だったのですか?

ポール:現在、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポールでビジネスをしており、3つの会社を経営してます。東南アジアでビジネスする理由というのは、マーケット規模とチャンスがあるからです。非常に魅力的な要素です。

「洪水がないか考える」東南アジアのビジネス特有の困難

ポール:東南アジアでの起業や経営には困難がつきものなので、それについて話したいと思います。だいたいの全体像と、直面するであろう困難についてです。

タイに行くと、人は寛容になります。スタートアップとして現地に適応する必要があるからです。想像してみてください。オフィスの窓からふと外を見てみると、道端で手榴弾を投げてる人がいたりする。こういう感覚の場所なんですね。

そういった困難にどう対応するか。我々の場合は「タイだけに滞在しない」ということが挙げられます。インドネシアやフィリピンにも拠点を設け、なにかトラブルのあった際には、タイ以外のオフィスで対応するなりリソースを移すなりします。

あらゆる次元での腐敗なども存在します。自社がうまくいってる場合などに、競合他社である大企業が警察を送り込んできたりします。警察がやってきて「これは違法ソフトウェアだ」とか言うのです。

軌道に乗ってきたら、こういったことのためのちょっとした戦略を持っておくことも必要です。成功しているということは、ある意味ローカルビジネスを潰しているということにもなるので。

そしてインフラも非常に重要です。私は個人的にバイクが好きなのですが、ジャカルタなどの交通事情は非常に悪いため、ミーティングに行くだけで2時間かかったりします。

自然災害もあります。ジャカルタ、バンコク、マニラ、どこも洪水があります。倉庫などについて考える場合に、まず洪水がないかということを考える必要があります。こういったことは他のマーケットではなかなかないことです。

産業を作り出す際に、どう価値を最大化するか?

竹中:じゃあアメリカからタイに帰ってきた時には、独特の価値観とかエコシステムとかがある中で、どうやって地域ごとに優先順位をつけてやってきたのかをちょっと教えていただけませんか?

ポール:組織における1番のビジョンとして考えたのは「最も困難なことは何か?」ということです。困難であればそれに対して努力できますから。インドネシアでの起業は困難を極めますし、無数に島があるフィリピンなんかですと、特にロジスティックの面で大変です。

でもそういった困難は、全てのスタートアップの方にとって、一種の楽しみにもなります。どの市場が投資家を引きつけていて、どこにお金が流れていくのかといったことです。中国、インドはもちろん、そしてつぎにインドネシアです。

現実、中国とインドは費用がかさみ、スタートアップが過剰評価されるきらいがあります。そこで投資家たちが見ているのは、次の市場なんですね。それでASEANや東南アジア、インドネシア、タイ、ベトナムといった地域に目をつけているわけです。

ビジネスを始めるだけなら簡単ですが、市場を独占するとなるとそうはいきません。なのでそこまでやる場合には、インドネシアやタイという、一筋縄ではいかないような市場に進出して価値を掴まなければなりません。

竹中:そうですね。日本のスタートアップにとってもそういった地域は非常に成熟した市場ですね。シンガポールだけで500万の人口がありますし。産業を作り出す際に、どう価値を最大化するか? 日本の外に行くというのは重要な戦略だと思います。

スタートアップに優しいシンガポールの市場

竹中:シンガポールやマレーシアでハードルを乗り越えて、現在は5つのマーケットでビジネスをしている。つまりビジネスのスケールアップは重要ですよね。

ポール:シンガポールの良さって特に、スターターにとって良い市場であるということなんですよね。香港、シンガポールと、eコマースは東南アジアを見ていて、特にシンガポールは地域のブランドとよく連携しているので、スターターには優しい場所といえます。

竹中:私も2年前にシンガポールに進出した時のことをお話ししようと思います。当時の我々には、何のネットワークもありませんでした。しかしスターターにはやはり良い環境で、一度ビジネスし始めればネットワークはすぐにでき、それはシンガポールだけにはとどまりませんでした。

例えば、マレーシアとシンガポールは非常に近い関係があります。そしてその地域の人々は、英語や中国語といった複数の言語を操れます。困難な市場においてこういった情報は重要でした。経験しておいてよかったと思います。

地域ごとに法律やその解釈も違うため、対策が必要

ポール:困難に立ち向かう際について話しておきたいことがあります。現地でビジネスをナビゲートしているのは伊藤忠や住友といった大企業です。彼らは非常にアグレッシブです。特にスタートアップの場合、eコマースですと、ルーティーンスタッフやチームをナビゲートする方法を確立しなければいけません。

シンガポールでの起業自体は簡単ですが、それからは東南アジアへ進出する必要があります。しかし、シンガポール、タイ、インドネシアにしても、何のビジネスをするかということによるんですね。広告ビジネス、メディアビジネス、それぞれいろいろと違います。

法律によって経営ができないようなものもあり、必要な免許も違ってきます。インターネットビジネスはまだ新しく、法律は非常に複雑で解釈もいろいろと変わってきます。こういった部分では複合企業に利があります。

業績1位のeコマースが、クライアントやスタッフを複合企業から盗んでいるということで、その複合企業が、即座に警察に取り締まるように要請したのです。結果、そのeコマース企業は1週間シャットダウンしてしまいました。

我々にも実際そういった経験があります。競合他社による要請で警察が我々のオフィスに乗り込んできたのです。自社のあるデザイナーが、ライセンスなしでPhotoshopをダウンロードしたとのことでした。このように、あらゆる側面での対策を考えなければなりません。

現地の法律には注意深くある必要があります。色々と守るものもあるので。スタッフが「訴訟する」と脅してくることだってあります。これらはほんの一部です。複雑なマーケットに対して全体像を捉えたアプローチをし、ナビゲートしていかないといけません。