英語が通じないのは「話せない」からじゃない--日本人が知っておきたい3つの問題点

In 6 years' time. | Nagamine Takayuki | TEDxNagoyaU

1年間でTOEICのテストを受験する人は260万人。しかし、多くの日本人は英語が話せないと言われています。大学生の長峯貴幸氏は、イギリス留学時にそもそも話す内容がないこと、日本のことを聞かれてもうまく答えられないことに気付きます。長峯氏はテストの点を重要視することよりも、まずは日本のことをよく知ることが必要であると語りました。(TEDxNagoyaU より)

人との会話が盛り上がらない

長峯貴幸氏(以下、長峯):オーディエンスの皆さん、スピーカーの皆さん、そしてお茶の間の皆さん、こんにちは!

会場:こんにちは!

長峯:ありがとうございます。ちょっと疲れてますかね? これまで6人ものスピーカーの素晴らしいスピーチを、僕も控室やこの会場で楽しんでおりました。

「学生スピーカーオーディション」に6月に参加したんですけども、そのとき2番目にスピーチをした吉野くんのスピーチを残念ながら見ることができず、今日を心待ちにしておりました。

吉野くんのスピーチを見ていると、とてもドキッとするものがありました。確かに青春、返してほしいですよね。

高校生Aくん。彼の紹介があったのを覚えていますか? 高校1年生、コミュニケーションが苦手、趣味は鉄道。それを見た瞬間「それは俺だ」というふうに思ってしまいました。

そう、1つ最近悩んでることがあるんです。話が苦手なんです。人と話をしていると、どうしても話が盛り上がらない。会話がストップしてしまうんです。

そんな話を、先日ある友達としておりました。すると、その友達はこう答えてくれました。「だったら、趣味をネタにしてみればいいんじゃないかな」と。

なんで気が付かなかったんでしょうね、そんなこと。趣味をネタにすることができれば、自分が好きな音楽や旅行、鉄道についての話をすることができます。そして、その話を盛り上げて会話を楽しむことができる。

そう思った私は、最後の望みをかけて「趣味」について人に聞いていくことにしました。その結果、どうであったか。「あなたの趣味は何ですか?」……「食べる」「寝る」「人間観察」。

万事休すでした(笑)。今日は、そういった話のネタに関するお話をしていこうと思っています。

年間のTOEIC受験者数は約260万人

この「話のネタ」という問題。実は、僕だけの問題ではありません。私たち日本人が全員抱えている問題でもあり、そして6年後に向けて私たちが直していかなくてはならない問題の1つなんです。

趣味について話していると、こういった人にも出会いました。「資格を取ることが趣味だ」という人です。資格をとるために勉強し、そしてその勉強を楽しみ、最終的に資格という形で認められる、それで満足感を得よう。そういう人たちです。

日本には、さまざまな資格が存在しています。そして、日本人は資格が大好きということで知られています。それを示すある数字をお伝えします。

「2,580,000」……昨年度1年間で、世界共通の英語のテストであるTOEICを日本で受けた人の数です。2,580,000、膨大な数字です。

そんな日本、その一方でこんなことも言われています。「日本では英語が通じない」「日本人は英語が話せない」。どうしてなんでしょう?

こんなにも勉強しているのに、こんなにたくさんの人が試験を受けているのに、なぜ私たちは話せないのか。なぜ私たちは話せないと思われないといけないんでしょうか。

理由は3つあります。1つ目。私たちはTOEICの点数という1つの資格、それとうまく付き合えてないんです。私たちの敵は偏差値なんです。

私たちは、なぜ英語を勉強しますか? なぜ試験を受けますか? TOEICの点数がなければ昇進や昇給、就活が難しくなります。ましてや、大学の授業で単位が出なくなります。そんな状況の中で、どうやって英語を楽しめというんでしょうか。

さらに悪いことに、2020年のオリンピックに向けて英語教育が変わろうとしています。その方向も、今まで以上にテストが重視されてしまうような方向に変わっていってしまうかもしれないんです。

有名なTEDスピーカー、教育学者のケン・ロビンソン(Kenneth Robinson)という人がかつてこういうことを言っておりました。「現代の教育が重きを置いているのは、学ぶことや教えることではありません。そう、Testing(試験)なんです」。

英語を話すときに小声になってしまう日本人

私たちが英語を話せない理由、2つ目。いったい何なんでしょうか。文法? 単語? 発音? 違うんです。「なぜ話せないのか」……話せないんじゃないんです。「聞こえてない」んです!

私たちを含む英語を勉強している人は、どうにも自信が持てません。私たちが英語を話すとき、自信がなくなってしまいます。するとどうしたことか、私たちはだんだんと、(小声で)声が……ちっちゃくなっていくんです……。

声がちっちゃいと、当然相手には聞こえません。すると相手は、こう聞き返すでしょう。(大声で)「Pardon!?」「Sorry!?」「I beg your pardon!?」それにびっくりした私たちは、大きな声にびっくりすると同時に、さまざまなショックを受け始めます。

「私の文法が間違っていた」「私の単語が違う」「私の発音が違う」そして「私の英語が間違っていたから伝わらなかったんだ」と。

そしてその人は黙々と文法書を始め、単語帳をひたすら勉強し始めるでしょう。

落ち着きましょう。声を少し大きくしましょう。そうすれば、伝わるものは伝わります。この問題に対して、1つ特効薬があるのをご存知でしょうか。「お酒」です。英語の本場イギリスで、こういったことが言われています。英語学習とお酒に関しての有名な言い回しです。

「ビールを3杯飲んだあなたは、たちまち英語が堪能になるでしょう。その一方で、あなたからは文法という概念が失われます。ビールを6杯飲んだあなたは、突然英語のNGワードを知ることになるでしょう。

そして、現地の人と楽しく会話をすることができます。その一方で、あなたは羞恥心を失います。ビールを7杯以上飲んだあなたは、おめでとうございます! 英語・日本語に加えて、第3の言語を話し始めます。周りの人が、言葉を失います」。

落ち着きましょう。声を大きくして自信を持ってしゃべれば、大概のことは伝わります。

コミュニケーションしたくても話す内容がない

では、3つ目の問題。これがあることを私たちは忘れてはいけません。これはビールを飲めば解決するものでもなく、なかなか一筋縄ではいかないんです。それは何か。「話す内容がない」んです。

これは、私がイギリスに留学したときの話です。イギリスに到着したまさにその夜、大学のバーに行きました。大学のバーでは、すでに到着している留学生が楽しそうに会話をしていました。

「その中に混じりたい」そう思った私は、勇み足で進んでいきました。私は話が苦手でした。しかし、そこにはお酒があります。万全の態勢で臨みました。最初は、楽しく会話をすることができました。

「どこから来たの?」「大学では何を勉強しているんですか?」「どれくらい滞在するんですか?」といった内容で、楽しく会話をすることができた。

しかし、ある出来事を境に会話の外にポンと放り出されてしまうような、そんな感じがしました。日本について聞かれたときです。

「日本の周りでこういうことが起こってるらしいんだけど、それはなんでなの?」

「ウチの国ではこういうことはこういうふうに言われてるんだけど、日本人はどう思ってるの?」

「日本のここってさ、いったい何の意味があってこういうことをやってるの?」

そういった内容を立て続けに聞かれたとき、私は思わず「日本人に聞いて」と答えるしかありませんでした。話の内容についての知識がありませんでした。日本についての知識がありませんでした。

自分の身の回りで何が起こっているのか、知ったつもりになっていたんです。「英語を話せるようになりたい」と思って文法や単語を必死に勉強していた私にとって、最初で最大のカルチャーショックでした。

<h2フィンランドの小学校では生徒に「なぜ?」と聞き続ける

ところで皆さん、こんな単語を聞いたことがありますか? 「Miksi?」……別におちょくっているわけではありませんよ。某有名なSNSとか、そういったものではありません。

フィンランド語でwhy。「なぜ?」といった意味の単語です。フィンランドの小学校の先生は、児童に対してこの「Miksi?」という言葉を浴びせ続けます。

あまりに浴びせ続けるので、その光景は「Miksi攻撃」とまで呼ばれています。情報にあふれる現代にいる私たち。私たちがいま一番恐れなくてはいけないこと、それは情報を鵜呑みにしてしまうことです。

フィンランドを含む他のさまざまな国では、先生が子どもに対して「Miksi?」「Why?」「なぜ?」ということを、徹底的に浴びせ続けます。

そして子どもたちに分析をさせ、根拠のある意見を持たせ、議論をさせます。その議論にヤジは聞こえません。「批判的思考」critical thinkingと呼ばれる考え方です。

私たちに必要なのは「グローバル」より「どローカル」

それを聞くと、ある人はこう言います。「日本語はそれには向いてないんだ。言語の構造が違う。日本人はもともとそういうのに慣れてないから、私たちには無理なんだ」「英語がそういう構造だから、外国語がそういう構造だから、あの人たちはできるんだ」。そう言う人がいます。

違うんです。私たちにもできるんです。「Miksi?」というこの言葉を頭に置いておくだけで、私たちにもできるんです。日本のある大学で「英語学習」と「批判的思考」この2つに関する研究がなされました。

英語の授業の中で議論やディベートを中心として授業を行い、その後で日本語でレポートを書く、そういった内容のものです。

その結果、議論やディベートを経験した学生たちが書いたレポートは、他とは比べものにならないほど優れたものだったんです。

きちんと論点が示されている、根拠を持って意見が述べられている、客観的に2つのものを比較できている。これが示すものは何なのか。

私たちにもできるんです。批判的思考を用いて分析をして、客観的に比べて意見を持つこと。控えめでおとなしく、明確な意見を持たないといわれている日本人の私たちでも、できるんです。

他の国、例えばインドネシアなんかでも英語学習と批判的思考、この2つの明らかな相関が見られています。そして、そういったタスクを中心とした授業によって学生たちの思考を促すことができる。そう報告されているんです。

昨年の8月に、オーストラリアで教育実習を行いました。そのときに、ある理科の先生が児童に向かってこういうことを言っていました。

「分析をしなさい。1人の政治家や1つの新聞が言っていることだけを鵜呑みにするのではなく、自分たちで科学的な根拠に基づいて分析をして、意見を持ちなさい。それが、私があなたたちに理科を教えている理由です」。

2020年、東京にオリンピックがやってきます。それと同時に、英語の教育も変わります。オリンピックともなると、世界中の目が日本の中に注がれるでしょう。

そんなとき、私たちに必要なものは何なのか。グローバルという外向きの視点ですか? テストのための英語ですか?

違います。私たちに必要なもの、それは「グローバル」より「どローカル」なんです。まず、自分の身の回りで何が起こっているのかをしっかりと把握すること。それが、世界中の人が私たちに求めていることなんです。

今日からこれは実践できると思います。分析をしましょう。意見を持ちましょう。そして、グローバルと呼ばれる現代を生き抜いていきましょう。

グローバル時代に生きる皆さん。常にこの言葉を頭のなかに置いておいてください。

「Miksi」

ありがとうございました。

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