2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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山川宏氏(以下、山川):僕は人工知能関係なんで、コンピュータ将棋の開発者の知り合いとかその周辺の人が多いんですけども、結構意見が分かれていて、やはりある程度まで追いついてしまうと、開発する動機として人と戦うということが余り動機づかなくなってしまうという人と。
今回ある程度人間に有利な条件になっていますので、そういう意見とやっぱりそうであっても強くしていくことに魅力を感じるということで、コンピュータ将棋をつくる人の立場から見て、現代のコンピュータ将棋というのがどのくらい魅力的であったり、そうでなかったりするか、平岡さんに聞いてみたいなと思っていたんですけれども。
平岡拓也氏(以下、平岡):もう1回最後の部分いいですか?
山川:コンピュータ将棋を今開発していく自分にとっての魅力というか、動機とかそういうことです。
平岡:単純にコンピュータ将棋はもっともっと強くなりますので、多分まだまだ底は見えていないと思いまして、だから強くなった結果、どんな将棋になるか? というのはすごく興味があって。
また、強いほかのソフトがあってそれをどうしても倒したいという気持ちがありますので、だから相手はいるし、まだまだ強くなる余地があるから、全然モチベーションとして下がることはないですね。
山川:その辺はコンピュータ同士ですと、コンピュータのスペックとかはそろえて戦ったりするということになるんですか?
平岡:そこも別にそろえる必要はないと私は思っています。5月のゴールデンウイークにコンピュータ将棋選手権が行われるんですけど、それはハードウエアの制限が全くないんですね。GPS将棋なんていうのは一時期700台近いパソコンを使用して戦っていましたし。
それってずるいって言うことは簡単ですけど、違いますよね。やってみたらわかるんですけど、絶対大変なんですよ。それなりの苦労があってつくっているし、そのたくさんのパソコンを使うのに苦労したために、1台の評価関数とかほかの部分はちょっと手を抜かざるを得なかったりとか、そういうトレードオフがあるはずなんですね。
だから、ハードウエアをうまく使うところに注力した人には、やっぱりその利点を使わせるというのはフェアなことかなと思っていますね。
瀬名秀明氏(以下、瀬名):こういう試合って将棋以外にもたくさんあるわけで、例えばロボカップといって、ロボット同士がサッカーをするというのが1997年からずっとやっているんですね。あれも見ていたんですけれども、ルールが毎年毎年変わるんですよね。
ロボットのスペックがどんどん上がっていくんで、例えば今までのルールだと、来年はもうどんどんゴール決めちゃうからおもしろくないと。だからルールをまた変えましょうといって、ロボカップ委員会がルールを変えるんですね。多分こういうのっていうのは、人間の棋士とコンピュータが実は戦っているようでいて、人間は何と戦っているかというとルールと戦っているんですね。
ルールをどういうふうに毎年毎年おもしろく設定できるか? っていうのが勝負どころで、そこが実は1番おもしろいところで、人工知能はまだそれができないんですね。だから、ルールをつくるっていう人工知能はなくて、そこを人間がやらなくちゃいけなくて、実はそれが1番この電王戦でもおもしろいところなんだと思います。
司会:川上会長、ルールの話です。
川上量生氏(以下、川上):何が1番公平なルールなのかというと、僕が思っているのは、これってやっぱり最終的には知性対知性の勝負なんですよ。つまり、コンピュータのベスト対人間のベストで勝負すべきなんですよね。そうすると、何かそもそも同じ持ち時間で戦うこと自体が本当はおかしいんだと思うんですよね。
だから、例えば人間の棋士だったら正座して戦っていますよね。あれも本当は正座の必要はないんじゃないかと(笑)。いすに座ってネットを検索しながら、もしくはほかの人間と相談しながら、過去の棋譜とかも全部調べながら次の一手を好きなだけ考える。
ずっと考えたとしても、ある一定以上考えると人間が考えられるベストの時間って多分ある程度限界が来ると思うんですよね。そこで本当は戦って、それとコンピュータが考えたというのがどうなのか、というのを調べるというのが僕は本当は1番公平な知性対知性の勝負なんだと思うんですよ。
でも多分そういうことをするのって、人間のプロ棋士の世界ではやっぱり許されない話になっちゃうので、それは本当に公平なルールは何なのか? ということがネットを含めた世論が盛り上がって決まっていくのが僕は正しいんじゃないのかなと思うんですよね。
本当に公平にするんだったら、エネルギーの消費量を同じにする必要があると思うんですよね。だから、人間の脳と同じぐらいのワット数で動くコンピュータで戦うのが本当は筋じゃないかと。
だから、電王手さんも本当は標準装備を義務づけるべきだと思うんですけど、でもさすがにそれはできないからコンピュータはやらなくてもいいとなっているわけですが、そうすると、やっぱり今コンピュータのほうがハンデをもらっている状態なんですよ、実は。
だから、そういうような議論がされるような感じになっていけばいいんじゃないかなと思うんですけどね。いろんな考え方あるので。
司会:回を重ねて米長会長の1対1の対戦から4回電王戦やりましたけれども、最初から川上会長は、人間対コンピュータというのは、そもそも不公平であるとお考えだったんですか? それとも回を重ねるごとにそういうお考えに至ったのか。
川上:最初からですね。実は、第1回の電王戦で提案したことがあるんですよね。「戦うときにちゃんと、どういう条件で戦っているのかというのを表示したい」というのを最初から言っていて。
1つ言うのは、電力消費のことをやっぱり表示したかったんですよね。それは第1回、第2回で電力表示ができなかったのはGPSのせいなんですよ。あれの正確な数値が計算できなくて。それがなかったら、本当はどれだけのワット数をそれぞれリアルタイムでコンピュータが使っているのかをまず表示しよう。
別にそれを制限するというんじゃなくて、まずは表示してこういう状態で戦っているんだということをお客さんに見てもらって、そしてだんだんとみんなに考えてもらえるような環境をつくりたいなということを考えていましたね。
司会:それが第1回が1対1ワンマッチだったわけですけれども、その次の年から5対5になりました。あれもルールといえばルールなんですけども、我々ジャンプ世代なんていうのは非常に興味をそそられる形式に変わったなと思ったんですが、あれは川上会長のアイデアなんですか?
川上:いや、あれは米長会長のアイデアですね。ただ米長会長は5年かけてやろうとしたんですよ。それで僕の提案というのは1年でやりましょうと。それを毎週やりましょうと。そういうのが僕の提案ですね。
司会:そうしたら結果、あれだけのユーザー数を集めて、コメントも集まりましたし、あの一昨年の結果というのは川上会長は正直、予想どおり、予想以上、どうだったんですか?
川上:電王戦で予想どおりになったことはないんですよね。電王戦がおもしろいのって、みんな真剣勝負なんですよね。真剣勝負で、だからドラマが生まれるんですけど、その中で僕もこういうふうにしたいというシナリオは一応書くんですよ。こうなってほしいなという。一度もそのとおりになったことはないんですね。全くならないです。
司会:この回で人間が1勝しかできなかったわけですけれども、森内九段、一昨年の電王戦が終わったときに将棋界の空気的にはどうだったんですか?
森内俊之氏(以下森内):まさか1人しか勝てないとは思わなかったんで、コンピュータがそれだけ強くなっているということを改めて突きつけられたわけですね。特に、当時大将を務めた三浦九段が内容的にも完敗で負けたということで、いよいよここまで来たかということで非常に複雑な心境だったことを覚えていますね。
プロ棋士が負けることに抵抗があったのが多分そのときだと思うんで、そのとき出た棋士というのは今以上に切実な思いというのがあったんじゃないかと思いますね。
司会:初めての現役プロ棋士とのガチンコ勝負で、見る側としても本当に勝敗がどうなるんだろうというのは非常に興味をそそられる第2回の電王戦だったわけですけれども。
それが結果ああいった形になって、平岡さんもコンピュータ将棋開発サイドとしてはあのときどうだったんですか? 団体戦やったらいきなり勝ち越しちゃったみたいな。
平岡:それは本当に予想してなかったですね。だから、この先どうするんだろう? と、それからの2年というのは全然予想できなかったんですけど、こういった形になるかと。それでPCが1台になったりだとか、そういうことになるとはまさか思わなかったというのがありますね。
平岡:ルールのところにまた戻すんですけども、制限カロリーをそろえるとかは何か余り本質的じゃないかなと私は思っていて、能力を制限することは何か合理的な理由がない限り必要ないと思うんですね。人間だってカロリーをもっと使って性能がよくなるなら使ったらいいと思うんですけど、使えないだけなんですよね。
コンピュータは別にたくさんつないで、たくさん強くなれるというのは、それは利点だから、そこは制限するというのはそもそもおかしいかなと思うし、車と人間で競争といっても、カロリーそろえたら多分人間のほうが強いですよね。どこを勝負しているのかわからない。省エネ性を勝負していてもしようがなくて。
司会:制限をかけるんじゃなくて。
平岡:将棋の場合は最高性能で競っていたと思っているので、私はそこです。最高性能同士でいかに戦うか。その上でどうしても折り合いつかない部分だけをルールで制限する。例えば、実際に盤に指せないから電王手さんに指してもらうとか、そういうところは必要だと思うんですけどね。
司会:瀬名さんは第2回から第3回にかけて人間が負け越したわけですけれども、カスパロフ(ガルリ・カスパロフ氏)の頃の記憶から将棋界でもこういうことが起きたかと。どんなご感想だったんでしょう?
瀬名:カスパロフの場合は世界最高レベルの人が戦って負けたというのでショックがでかかったわけですね。その後、コンピュータチェスもずっと進歩していると思いますけれども、それほど話題にはなっていないんじゃないかなと思います。
平岡:そうですね、あれがピークですね、やっぱり。
瀬名:将棋の場合は団体戦でこういうふうにつくって、むしろ若手の方にどんどん出ていただいて、しかも開発者の方も非常に若い方々が多いということだと思いますけれども、そういう意味で非常に活気が出た感じで、うまく場づくりができていたということです。
だから頂上決戦は見えていないんだけれども、何かそこは残しつつうまいぐあいにファイナルというのはやったなというのが僕の印象です。
司会:まだこの先がどうなるのかというのがね、まだちょっといろいろわかんない……。
瀬名:だからコンピュータと人間の頂上決戦はやるべきなのか、やらないほうがいいのかという問題もあるんだけど。
司会:いや、これは難しいテーマですね。
平岡:絶対やってほしいですけどね。
瀬名:やってほしいけど、やり方ですよね、だからね。
平岡:1回やれば大胆なこともっとできると思うんですけどね、何かやっぱりそこで制限がかかってて……。
瀬名:やる場合にはコンピュータも制限無視で、がんがん全部つないでスーパーコンピュータの形でやったほうがいいと僕は思います。そのときはね。
司会:そこはいろんなレギュレーションをつけるんじゃなくてということですね。
瀬名:レギュレーションという意味では試合をおもしろくさせるというか、僕たち観客も含めてその対戦がおもしろくなるにはどうしたらいいかというルールづくりですね。
司会:森内九段、やはり望む声はどうしてもあるわけなんですけども、タイトルホルダーですとか、プロ棋士の頂上クラスの棋士とコンピュータの制限なしの勝負というのは望まれるわけですけども、これの実現はどうなんですかね?
森内:どうなんですかね。私も去年までタイトルを持っていましたので、そういうこと聞かれることはありましたけど、ただ将棋連盟の方針というのもありますので、なかなか自分の意見というのは言いにくい状況というのが続いていて。
私がタイトルを持っていたときは、会長からお話があればやりますというふうにお答えはしていましたけども、ちょっとそれ以上はお答えしにくいですね。
司会:川上会長、ここは一筋縄ではいかないところなんでしょうか?
川上:一筋縄でいかないからおもしろいというふうに、僕はわりとそこは客観的に見ているんですけど、ここがどうなるのかというのもドラマですよね。どうなんでしょう?
コンピュータのベストと人間のベストということになると、例えば人間のベストというのは例えば森下ルールとか、例えば合議制、相談をして決めるとかすると強くなるような気がするんですけど、多分練習すればそのほうが強くなるというふうに思うんですけど、そのあたりはどういうふうに思われますでしょう?
森内:もちろんそういう継ぎ盤を使ったり相談したりすれば強くなるのは当然だと思うんですけど、それが本当に将棋と言えるのか? という気持ちがありますので、すごくやりにくいルールだと思うんですよね。森下九段はよくやったなというふうに思うんですけど、そういう意味で実現したのはすごいことだと思いますよね。
川上:あれは結果も出ましたよね。
森内:そうですね。
司会:あのやり方をやるのはやっぱりプロ棋士としては相当葛藤がある。
森内:そうですね、ちょっと余りやりたくないですし、森下さんも実現してびっくりしたとおっしゃっていました。
司会:言っちゃうと実現にこぎ着けるのは川上会長の得意技ですもんね。
川上:だから、将棋ファンの人にも理解してもらいたいんですけど、実は結構プライドのせいで将棋棋士は電王戦負けているんですよ。プロ棋士としての戦い方のプライドを守るためにコンピュータにはできないことというのがあって、それで負けているのがあるというのをやっぱり将棋ファンの人には認識してもらいたいなと思いますよね。
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