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「独学のライターと差をつける」 vol.1(全3記事)

ライターが活躍できる場所は増えている--ノオト代表・宮脇淳氏が語る編集プロダクションの仕事の裏側

有限会社ノオト代表の宮脇氏淳氏とLIGブログ編集長の朽木誠一郎氏がライター育成講座を開催。宮脇氏がメディア運営に関わるトヨタのオウンドメディア「GAZOO.com」は、なぜAV女優の紗倉まなさんの連載を始めたのか? オウンドメディア運営やコンテンツ制作の裏話について語りました。(ライター育成講座 「独学のライターと差をつける」 vol.1より)

テキストがあるところに、仕事がある

宮脇淳氏(以下、宮脇):当然、今回はネットの話が多くなっているんですけれども、要は記事を書けばネットにも載せられるし、ちょっとしたパンフレットをつくって営業マンがそれを持って配ったりもできるので、そういうライティングも当然あるんです。

もっと言うと、いろいろなジャンル、例えば今だと就職活動戦線は、結構売り手市場なんですね。だから会社からすると、優秀な人材に入ってもらうためには、一生懸命PRしないといけない。

だけど、自分たちの言葉だけじゃ伝わらない。上場企業とかで有名な企業だと、言わなくてもみんな来るじゃないですか。でも、実はすごくいい技術を持っているのになかなかいい人材が来ないというところは、いかにそれをPRしていくか、それを文章で何とかしてほしいということがあったりします。

あとは大学も今、生き残り時代とかいうので、大学のパンフレットもクオリティにこだわっています。

朽木誠一郎氏(以下、朽木):テキストあるところ、そこに仕事があるということですよね。

宮脇:そうです。説明って、こうやってしゃべるか、文章で書くかしかないじゃないですか。もちろん映像で見せるというのもありますが、やっぱりテキストって身近なんですね。印刷物やWebサイトは、大勢の人に一気にアクセスできるメディアですから。

人に伝えるということは、基本的にテキストありきになるじゃないですか。ラジオやテレビでも、台本を書く人がいるわけで。

朽木:確かにそうですね。

宮脇:そういう意味では、ライターの活躍できる場所は増えていると思います。さっき朽木さんともいろいろしゃべったんですけど、今は書き手不足なんです、本当に。誰に聞いても、いいライターいないかとか、こういう原稿をお願いできる人がいませんかとかいうように、すごく言われるんですね。

書き手不足というのは、われわれ編集者に取って深刻な問題です。さっき言ったみたいに、時代はストレートな広告からオウンドメディアやソーシャルメディアでの情報発信にシフトしてきていて、そういう仕事が弊社にも結構来ております。

もともと広告の文章を担当しているのはコピーライターさんですよね。本当にコピー一発で人の心をつかむという時代があった。それが今、ちょっと違ったフェーズになってきている。

お金の使い方の問題ですよね。シフトしているという気がしていて、今はオウンドメディアとか、あるいはソーシャルメディアを使って情報発信しようということに予算がくっついてきています。

どうしても抽象的な話になっちゃうので、具体的にどんな仕事をやっているのかというのを僭越ながら、LIGさんもいろいろやられているんですけれども、ノオトの仕事をちゃちゃっと解説してみたいと思います。

R25の誕生と同時に、ノオトをつくった

朽木:たぶんすごく勉強になると思うので。

宮脇:自分たちでは当たり前の話なんですが、なかなか外からは見えづらいですよね。(スライドを出しながら)このように大きく4つありまして、メディアコンテンツ制作、オウンドメディア制作、ソーシャルメディア運営、自社メディア運営。

まずはメディアコンテンツ、簡単に言えば媒体の記事を作る仕事です。弊社はフリーマガジン「R25」と取り引きさせていただいておりまして、私は2004年3月の創刊準備号から、外部編集者のひとりとして参加しています。

実は、ちょうど有限会社ノオトの登記日とR25の創刊が2004年7月1日で同じ日だったんです。たまたまなんですけど。そんなご縁もあって、いまだにお世話になっています。ただ、私はいま42で、35歳を超えたくらいかな? それ以降は、弊社の若手社員が担当していますが。

R25はもちろん紙がスタートでしたが、2007年くらいから「R25.jp」(現・WEB R25)が本格的にスタートしました。当時は「クロスメディア」みたいな言葉が流行りまして、紙だけじゃなくWebもちゃんとテコ入れしないといけないというので、藤井編集長に「中に入ってやってくれない?」と声をかけてもらい、サイトリニューアルにもチャレンジさせていただきました。

なので、自分の会社があるのにメディアシェイカーズさん(※R25の発行会社)に机を置かれて、2年間拘束されたんです。午前〜昼一はノオトに出社して、13時半以降はメディアシェイカーズ勤務みたいな。半出向していたんですね。

朽木:会社の代表なのに。

宮脇:代表なのに(笑)。だから、当時の社員からは「午後からいつもいない人」扱いされていました。でも、とてもいい機会だと思ったんです。自ら切り込んで、頭を捻ってリニューアルに取り組み、どうやってWebメディアを売っているのかという編集タイアップコンテンツの土台作りもしましたから。いまもその見栄えとか基本的な構成は、その当時のものを踏襲されているようです。

朽木:それは歴史を感じますね(笑)。

バイラルメディアを懲らしめたことも

宮脇:ほかのメディアコンテンツといえば、こちらの「THE PAGE」。ヤフーの子会社が運営するニュース解説メディアですね。例えばこの記事は、バイラルメディアの代表格といわれていた「BUZZ NEWS」閉鎖発表を受けた寄稿です。

<BUZZNEWS閉鎖> 悪質“パクリメディア”の増長に歯止めを ノオト代表・宮脇淳

最近は、バイラルメディアといいながら、よそのサイトの記事をコピーして写真を勝手にパクって、おもしろい記事だけいっぱい並べたような、それはPV上がるよねっていうパクリサイトがすごく増えているんです。

もちろんそれはオリジナルで書いた人がいるわけで、その人たちからすると勝手にパクられて、もともといいコンテンツをつくっているのに、自分のオリジナルサイトよりパクリサイトのほうが人気になっちゃうんですね。検索結果でも、パクリのほうが上になっちゃうこともある。

そういうのが業界の中ですごく問題視されて、ライターのヨッピーさんが昨年の秋、ヤフーが運営する「こちら検索探偵」で、これはノオトが編集していたコーナーなのですが、バイラルメディアをこらしめる記事を書いてくれたんです。

本当に追い込んで、刑事訴訟するかどうかみたいな感じで、最後はしっかり和解金を支払わせるというオチがついたんですけれども。

そのバイラルメディアが閉鎖することになった経緯を目撃者のひとりとして書いてくださいという依頼をいただいたので書きました。一応、社長なのでそれなりに忙しいのですが、社会的な意義があるだろうということで(笑)。

1000Wくらいで書いてと言われたのですが、デリケートな問題なのでその経緯や何が良くないのかも含めて丁寧に書いたら、3500Wくらいになってしまいました。本来なら良くないことなのですが、事情を説明したら削ることなくページ分割で掲載いただきました。下調べして、一気に書き上げて、3時間半くらいかかりましたかね。

そうしたら、「ネットのパクリと著作権」という短いタイトルで、ヤフトピに載ったんですね。それはもう、すごい反響がありました。一般の人からすると、どうでもいい話題ですよね。何の話か、よくわからないと思うんです。

でも、業界関係者がやっぱりみんな気にしていた。ヤフーニュースの中の人も、これはやっぱり業界関係者に見てもらいたいということだったんじゃないかと勝手に推測しています。

この原稿は、ライター・宮脇が書いたのではなく、編集者・宮脇が書いたものだと思っています。事情を知らない人が読んでもわかることを意識しました。

また、伝えたかったことは「パクる行為の愚かさ」です。私はライターである以上に編集者なので、この記事を書くことができたんだと思っています。手前味噌ですが、ライターさんにはやはり編集者としての視点をしっかり持ってもらいたいと、この講座では繰り返しお伝えしていきたいですね。

あの世界のトヨタが紗倉まなと合体

宮脇:オウンドメディアコンテンツでは、トヨタさんが運営する「Gazoo.com」で車コラムを毎日更新しています。若者の車離れと言われているんですけれども、そういうことを考えるとメーカーから積極的に何かおもしろい車の話題とか、車に関するちょっとしたうんちくだとか、車に乗ってみたいよねというマインドを上げるような記事を定期更新したいというご相談をいただきまして。

朽木:トヨタのオウンドメディアってすごいですよね。

宮脇:はい、Gazoo.comはけっこう昔からあるんです。もともとは紙メディアからスタートしたと聞いています。

朽木:僕でも、ノオトさん経由で知ったというか。

宮脇:このオウンドメディアには、編集的な視点でいろいろ提案させて頂いています。たとえば、車好きな女性タレントさんにコラムを書いてもらったらどうかという話になった時は、弊社の担当者がセクシータレントの紗倉まなさんを提案したんですね。これはネットでも評判になって、東スポに「あの世界のトヨタが紗倉まなと合体」なんて記事になったりしまして。

朽木:たぶんそういうのも、攻めてはいるけれどもブランディングというか、消費者に寄せているってことですよね。

宮脇:そうなんです。紗倉まなさんって工専出身で、すごい車が大好きなんです。若い男の子にもすごい人気ですよね。紗倉さんが車好きな女子としてコラムを書くという提案に、トヨタさんがOKしてくれたんですね。ちゃんとメディアとしての目的をもっていて、企画主旨に理解のある人が担当してくれているというのはとても重要だと改めて思いました。

SNSの運営代行も仕事のひとつ

宮脇:オウンドメディアをイチから作るのは大変なのですが、いまならSNSを1つのメディアとして機能させることも可能です。実は、弊社ではtwitterとかFacebookのライティングも、企業の担当者と協力しながら情報発信しています。

企業について書くなら、本来ならその担当者の方がライターになって書くのがベストだと思うのですが、やっぱり時間がないとか、どうやって書いていいのかわからないというご相談を頂きます。こういうところにも、Webライターの需要ってあるんですよ。

朽木:そんなこともあるんですね。

宮脇:例えば、弊社ではアディダスさんの公式twitterやFacebookの情報発信をサポートしています。スポーツのカテゴリーはいろいろあるのですが、例えばベースボール。今年から変わっちゃったんですけれども、アディダスさんはジャイアンツの公式ユニホームを9年間くらいずっとつくっていたんです。

だから、毎年1月から2月はジャイアンツの合同自主トレやキャンプで宮崎に行って現地取材していました。ピッチング練習をやっているところ、目の前で選手が自主練をやっているところを一眼レフやそれこそiPhoneのカメラで撮って、その様子をリアルタイムでFacebookに載せたりしました。

ただ、これは目的があって、メーカーとしては契約選手が着ているTシャツとかスポーツウェアをECサイトで売りたいんです。Facebookに選手の練習シーンを掲載して、リンク先をECショップにして販売の動線をつくっているんですね。

坂本選手がオレンジ色のカモフラTシャツを着てバッティングの練習をしている画像を公開したら、そのTシャツは一晩で売り切れました。それぐらいファンは見ているし、現地の取材チームは情報発信の力を実感できた出来事でした。どんな写真を載せるのかとか、どんなコピーを載せるのかとか、どういうふうに動線をつくるのか。これがすごく重要なんですね。

○○経済新聞をやっているのは、新人研修のため

宮脇:そして最後に、自社メディア運営の運営ですね。さっき自己紹介でも言ったように、弊社は「品川経済新聞」「和歌山経済新聞」を運営しています。それぞれ、品川と和歌山の地域ニュースを平日毎日、これだけコツコツ更新しているんです。ある意味、すごく地味なメディアですけれども。

朽木:ニュースを1日1本更新するって、なんだかんだ結構しんどい作業じゃないかなと思うんですけれども。

宮脇:そうなんです。まず大変なのがネタ探し。ぶっちゃけ、全くお金にならないメディアです。広告もとれないし、PVも品川で30万、和歌山で10万弱ですね。やっぱりこれぐらいの規模ですと地域が限られ過ぎているので、PV至上主義的な稼ぎ方は全然できません。

ただ、何でお金にならないメディアを運営しているかというと、品川経済新聞の場合は社内ライターの養成でやっているんです。

ライティング力をつける近道は、基本的に毎日書くことなんです。これは絶対にそう。毎日こつこつ書いて、書いているうちにうまくなってくるものです。ご覧のとおり、このメディアはネットの新聞なんですけれども、めちゃくちゃ文章がかたい。

文章のやわらかさとかまるでなくて、主語があって目的語があって動詞があってと、かなりかっちりとした「型」があります。こういった堅い文章を繰り返し毎日コツコツと書くことによって、文章の型がわかってくるんですね。

型を徹底的に学べば、まったくの未経験者、新卒の若い子でも、1カ月、3カ月、6カ月と書き続ければ、きちんとした記事を書けるようになりますす。あとは、どういうネタをニュースにするとおもしろくなるのか。このセンスも同時に学んでいく場になっています。

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