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トランスフォーメーション - 構造改革を実現する(全4記事)

社員の「これやろう!」を引き出すために 創業10年目のグリー・山岸氏が実践する改革遂行の4つのポイント

SNSからWebゲーム、ネイティブアプリへと事業をシフトし、何度も構造改革を行ってきたグリー。副会長を務める山岸氏は、会社に変革を起こすには社員を巻き込んでいくことが必要であると語りました。(IVS 2014 Fall より)

グリーがSNSからゲームにシフトした経緯

朝倉祐介氏(以下、朝倉):それでは次に、グリーの山岸さんにちょっとお話をうかがおうと思います。お願いいたします。

山岸広太郎氏(以下、山岸):こんにちは、グリーの山岸です。よろしくお願いします。ちょうどグリーは2004年12月7日に会社を設立しておりまして、3日後に会社設立10周年ということになります。

(会場拍手)

ありがとうございます。ちょうど去年の今頃はまさしく構造改革の真っ最中で、ここに来て話すというと自分でも気が滅入るみたいな状態だったんです。だいぶ落ち着いて(社内の)雰囲気も良くなってきてるんで、良かったこととか悪かったこととかその辺のお話をしていければなと思います。

(スライドには)「グリーの変革と改革の歴史」と書いてあるんですけど。さっき宇佐美さんが2~3年に1回とおっしゃってたんですが、グリーの場合は結構、毎年毎年なんか変革があるという感じで。ただ、その変革もだいたいいくつかフェーズが分けられるかなと思っています。

1つ目のフェーズが、日本のモバイル市場でSNSによる新しいビジネスシステムを作っていくところです。

創立当初、PCのSNSではミクシィに負けていて、モバイルでSNSを展開することにしたのですが、社内にモバイルのサービスを作ったことがある人がほとんどいない、という状況からモバイルの会社にシフトしていくということをやりました。

その次に、広告ビジネスがなかなか立ち上がらないため、課金ビジネスにいこうということでゲームにシフトするんです。この時も、ゲームを作ったことがある人がほとんどいない中でゲームの会社にシフトしていくということをやりました。

それから、2008年12月に東証マザーズに上場したんですが、業績のほうはだいぶ良かった反面、当時リーマンショックの直後だったため、上場審査が業績予測や内部統制の部分で本当に厳しくなっているタイミングでした。それを契機に、それまでベンチャー体質でやってきたところを本当にちゃんとした会社に変えるということを、すごい大変でしたけど、なんとかやり切りました。

そして、2009年からプラットフォーム事業の準備を始め、2010年に展開していきます。それまでは自分たちのプロダクトを作っていればよかったのですが、他社のゲームも扱ってビジネスを大きくする方向に変えました。

それから、ガラケーからスマートフォン向けブラウザゲームのシフトという部分ではチャレンジがあったんですが、うまくできたのかなと(思っています)。

社員が3年で2,000人上以増えた

山岸:毎年毎年本当に大変だったんですけど、それをなんとか気合いでやりきってきたなと。こうやって日本国内の事業が立ち上がる中で一気にグローバルプラットフォーム展開を目指すと共に、ネイティブアプリケーションへのシフトを並行して進めてました。

そうした状況の中、2010年6月に170人くらいの社員数でしたが2013年6月には2,300人くらいになっています。3年で2,000人以上増える急激な規模の拡大をして、かなり多角展開もしたのですが、結果的にうまくいかず、その他にも、業界全体が社会問題に直面したり、Webゲームの業績悪化などが一気に表面化しました。

そこから、ちょうど去年(2013年)の4月ぐらいから苦渋の決断ではありましたが、海外拠点の閉鎖を進めたり、希望退職者も募集するなど、さまざまな構造改革を進めてきまして、今は少し落ち着いてきました。

そして、ネイティブゲームでヒットを量産できる体制を構築しようということで、今いろいろなリソースをその方向にトランスフォーメーションしていくということを進めています。

成功と失敗を結構してきて、自分なりに4つくらい変革をしていく上で、特に経営者として大事だと思っていることがあります。

1つ目は「自分たちの能力と目標の難易度を見定める」ということです。最初のガラケーにおけるソーシャルゲームのビジネスシステムを作ることに関しては、会社の所帯がまさに100人とか150人でしたので、自分たちがどれぐらいやれるかだいたいわかるんですね。

なので、これは気合いでやれるとか考えて実際にやり切るということができました。

逆に、組織の規模が1,000人、2,000人とかになってくるとどんどん階層構造になってくるので「これぐらい、やれるだろう」と思っていたのにやれないということがどんどん起きていました。

なので、その時に目標を下げる必要はないですが、今の組織で目標を達成するためにはどうプロセスを分解していくか、気合いじゃなくてプロジェクト・マネジメントや段取りとか実際に進捗状況はどうなのかということをきちんと見ていくことが大事だと思っています。

大事なことの優先度をちゃんと決める

2つ目は「重要事項にフォーカスして、ブレずにやり切る」ことです。さっき小澤さんもトップダウンの話しをされてましたけど、だいたい会社は大きくなってくると「これをやったらこういう問題が出てきた」という話が常に出てきたり、リソース配分の面でもいろいろな事業が増えてくると人員の再配置とかそういうことがいろいろ起きるんですね。

でも、敢えて大事なことの優先度をちゃんと決めて「これだけは全部やり切るぞ」「他はとりあえず置いとこう」「諦めよう」とか勢いでやり切らなきゃいけない時があって、そういった意志決定の強さみたいなものが経営には求められるかなと思ってます。

3つ目は「意思決定のヒエラルキーと権限」って書いたんですけど、改革を進めていくと、絶対にいろんなことを意志決定していかなきゃいけないんです。

ただ、一人のトップが全部意志決定するのは無理なので分散化しないといけないんですが、この方法を間違えると問題になるんですね。

なので、特にリソース配分になるんですけど、誰がこれは決めるってことをちゃんと分散して、その下で各権限を持った人が勝手に進めても問題が起きないようなヒエラルキーをうまく作ることがすごく大事かなと思っています。そういう中でどんどん意思決定をしていくと。

4つ目ですが、やっぱり社内の巻き込みってのが本当に大事で、社員の人たちが「あ、これやろう!」って思ってくれないと絶対うまくいかないと思います。

僕なんかがやっぱり大事にしていたのは「なんでこれやるんだ」っていう大義を伝える、そこにフォーカスして何回も(説明を)繰り返すってことと、やることとやらないことを明確にして「これを実現するためにこの4つのことをやるよ」と。

「その代わり、それ以外のことはやらないから、弊害が起きると思う。それを埋めることはできたらいいけど、できないからやらないのでゴメンね」って、そういうことをやりました。

さっき、人事制度の話を小澤さんがしてましたけど、僕らもここ半年くらいでいろいろ変えたりしている中で、やっぱりそういう時に「なんでこれを変えるんだ」ってことを伝えながら「結果的に今までと違う事が起きるけど、そこはやること、大義のほうが大事だからこれをやるんだ」ってことも(ちゃんと)説明を尽くす。

みんなの言うことを聞くってことじゃなくて、ちゃんと「なんでこれやるんだ」ってことの説明を尽くしていくことが大事かなって思ってます。こうやっていくと、結構うまくいくんじゃないかなと自分なりに思っているところですね。ありがとうございます。

ネイティブゲームに力を入れていく

朝倉:グリーさんはそれこそ、出自が同じSNSっていうこともあって、個人的には非常にシンパシー感じるところがあるんですけども。

それこそ、1年おきに非常に大きな変革のタイミングが来て、社内のほうっていうのはもうそういうものなんだって感じなんですかね? それとも、毎回毎回てんやわんやなんですか?

山岸:変わっていくのは結構慣れてて。会社が成長している時に毎年こんなすごいイベントがあって、事業も伸びるみたいなことは慣れているんで。

逆にここ2年くらいは、守り系の施策中心になってきていて、そこに関してやっぱり「おもしろくない」「刺激が足りない」みたいに思う人もいるんじゃないかなって。

今までそういう雰囲気だったのが、ちゃんとここからまた盛り上げようという雰囲気になってきたかなと思うんですけど。慣れますね、8年、10年ぐらいやっていると。

朝倉:ここ1年、2年で、今までの攻めとはまた違ったベクトルの変革というのが多かったとわけですけど、今はだいぶまた攻めの方向に転じているっていうことなんですかね?

山岸:そうですね。ネイティブシフトっていう。Webゲームはまだ非常に大きな事業なのでここは絶対守りつつ、ネイティブゲームを作れる人、開発ラインをどんどん増やす。

そのために、社内でそういうスキルチェンジをするためのプログラムやそういう部署を作ったりしてかなり大規模なネイティブゲーム向けの体制にいくぞって局面で会社の雰囲気も変わってきたかなと思います。

朝倉:ありがとうございます。それでは、今度はBCGから平井さん。トランスフォーメーションというところで、ご自身の経験もふまえつつお願いいたします。

幹部の「賞味期限」は入社から3ヶ月

平井陽一朗氏(以下、平井):BCG、ボストンコンサルティンググループという硬い会社ですが、平井といいます。よろしくお願いいたします。

実は(IVSの前身の)NILS時代からちょいちょい来させていただいていて。今回は3年ぶりですが(在籍が)3社目の平井として来させて頂いています。

最初、オリコンの副社長やってた時にこちらに来させていただいた時に結構いいネットワークができて。その時から比べるとIVSはものすごい盛況な素晴らしい会になって「すごいな、(インフィニティベンチャーズLLPの)小林雅さん」とか思っていつも見ております。

2社目でザッパラスという占いのコンテンツの会社の社長をやってた時にも来させていただきました。そして今はBCGというコンサル会社なんですが、実は私が若い頃に勤めていた会社に出戻っておりまして、今回はBCGという形で出させて頂きました。

そんな感じで(周囲を指して)こんなにすごい登壇者とご一緒してこそばゆいというか非常に恐縮なんですけども、少し私の経験をお話させていただきます。

まずオリコンに入ったのは2006年の暮です。2010年までおりまして、赤字から黒字の会社になる所まで見届けました。

ここに入った時、社長の小池さんって方のマイブームが「Web2.0」だったんですね。懐かしい言葉ですけども。

「会社をもっとデジタル方向に変革させたい」ということで、その変革要員として呼ばれていったというのが2006年の暮れだったんですね。その時に、来年の計画立てようとか予算入れようとか(事業の)着地どうなんだっていうのを見ていると「実は結構大変だぞ」っていうのがわかってきました。

事業ドメインを再定義した

平井:その後、入社して1ヶ月半、2ヶ月の間、ほぼ毎日幹部でひざを突き合わせて対応策を練る日々でした。デジタル変革もさることながら「生き残り変革」へと、変革のテーマが大きく変わっていたのかもしれません。

毎日のように議論したんですけど、すごい良かったのがまずしょっぱなにどういうふうに変革するっていうのかっていうのを決めたことですね。それで1ヶ月、2ヶ月経ってようやく何をするか糸口が見えてきた。

不採算の子会社の清算などを段階的に行いつつ、その間、Webのメディア事業とモバイルの事業、これをとにかく急速に立ち上げて伸ばしていくことを同時並行でやっていこうと決めたんですね。

これをしょっぱなの2ヶ月間で決めて。良かったことはそこでゴールを決めたことと、もう一つ、ここにいる方は会社のファウンダーの方が多いのかも知れませんが、私のように途中からポンと入って来た人間からすると実は「賞味期限」というのがあるんですね。

この賞味期限ってだいたい3ヶ月くらいです。コイツ入れて「何かやってくれるんじゃねえか」って期待があるのだと思いますが、期待されてその期待に応えなきゃいけないという期間が3ヶ月。3ヶ月経つと、昔からいる古参の社員とほぼ変わらなくてそれこそ呼び捨てで呼ばれるみたいな感じになっていくわけですね。

そこであんまり結果出せないと「何だ、アイツ」「お疲れさん」というふうになるんですよ。アメリカの企業なんかもっと顕著だと思いますけど。

3ヶ月以内にそういった事業の再定義をして、ゴールを定めて「よしやるぞ!」ということを決めた。これが結果的にはすごい良かったんだと思います。

その後ひょんなご縁でザッパラスという会社に関わり始めたのが2010年からです。ザッパラスという会社は、iモードをベースに占いで右肩上がりにすごく伸びてきたと。

ただここの変革のテーマはすごく明確で、2008年にiPhoneが出てきて、その後にスマホシフトだといった時に生け簀の中の戦いみたいなところから大海原の戦いをしていかなきゃいけない状況になった。

「それをできる形に会社を立て直していきたいんだ」というのが変革のテーマでした。2010年からそれをやっていこうと。

1番最初にやったのは新しい戦い方をやっていくにあたって自分たちの事業、自分たちは何者なんだってことをもう1回再定義しよう、と。自分たちは「占いの会社」なのか、はたまた「データベースの会社」なのか、はたまた「会員ビジネスの会社」なのか。

そういう自分たちの本当の強みを再定義した上で事業ドメインをもう1回固めてそれに基づいた組織改革、事業開発をやっていくっていう、そんな感じで(議論を)スタートさせていったんですね。

ちょっとどんないきさつがあったとか詳細は語れないことが若干あるんですが、結果的には私自身は完全にダメで落第点。

まず一つは1回か2回成功した経験があって、自分も傲慢だった部分があったかも知れないと。その傲慢があったが故にその他もろもろへの不測事項への心構え不足、へとつながったわけです。

不測事項ってしこたまあるんですね。そういった不測事項の存在を改めて心構えとして持っとかないといけない。

それに対して準備が必要なのですが、責任は結果的に社長にあります。どんな理由があったって、よくいっても悪くいっても責任は最終的に社長に帰属するわけであって、どんな不測事項が起こってもこうやって対処しようって準備が不足だったというのが自分としてはすごく反省しているところです。

社員を巻き込んでいくことが必要

平井:あと、さっき山岸さんがおっしゃいましたが、巻き込み、社員を巻き込んでいく、仲間を巻き込んで本当に腹の底からこういう変革をやり遂げたいんだってことを納得してもらって一丸となってやっていかないといけないにもかかわらず、何も言わずに会社にポンと入っていって引っ張っていこうとしてもなかなか社員はついてきませんというところで、ここがやっぱりすごく自分としては大いに反省しています。

集まっている皆さんは成功者が多いので失敗談ってなかなか聞かないと思うんですが、これは本当に見事なまでに自分の不徳の致すところから失敗した経験です。変革が「言うは易し、行うは難し」ということを身をもって体験したわけです。

朝倉:平井さんの場合は宇佐美さんや山岸さんと違って、もともと創業メンバーではないじゃないですか。後から入って、いうなれば社内の人からすると、悪い言い方すれば「ヨソ者」ですよね。ヨソ者が会社をどうこうするのってキツくないですか?

平井:ぶっちゃけキツいですよ。やっぱり古参の方からしてみると「アイツ、何だよ」って当然なりますし、そいつがビジョンやら何やら掲げたところで(相手にとっては)「知るか」みたいな話も当然あるし。

かといって、権力にモノ言わせて「言うこと聞かなきゃクビだ」ってやりまくってると、本当に会社としては閉塞感が増したり、より社員がついてこなくなったりしますし。

オリコンの時は結構意外とすんなり溶け込めますたが、これは一言でいうと「謙虚さ」と「事業に対する愛」なんだろうなと思うんですね。自分自身にしても音楽がすごい好きでオリコンのような音楽業界に入ることに本当にすごくワクワクしてた。

仕事をやってるメンバー全員に対するリスペクトも半端なかったし、付き合うお客さんとかパートナーの方々とも日々が楽しくてしょうがなくって。

自分も若かったこともあって、自分ができないことだらけだということもわかっていたため、すごく謙虚だったんですね。

いろんな社員と毎日のように話して「こんなことやってるんだ。すごいね」っていうのを繰り返して皆が仲間になっていって、濃い日々が送れていたのがオリコンだったんだと思うんです。

一方でザッパラスの時は、ある程度ものすごい急速に変革をやらなきゃいけないというプレッシャーもあったんですけども、そこがすごく足りなかった。そもそもの本業である占いに対してのリスペクトや愛も含めて。

朝倉:外から入って経営に携わる人にとっては、謙虚さと事業に対する愛が重要なポイントであるということですね。わかりました。

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