苦しい時間が9割、楽しい時間は1割
田中章雄氏(以下、田中):ありがとうございます。ちょっと1回ステージに戻りまして、さっき夢とかチャレンジの話をしてたんですけど、一部さっきの質問の中でもあったかもしれないですけど。
結局、人生100%全てが順調なわけではないので、やっぱり夢に向かって邁進していく中に何らかのチャレンジとか、挫折とか、順調にいかないそういうネガティブな側面もあるかと思うんですが。
そういう時にお三方はどういうふうにそれを乗り切ってきたのか、あるいはその時の体験談みたいなのがあったらぜひ教えていただきたいなと思うんですが。挫折、そしてそれをどう乗り越えるのか?
これは誰からいきますかね。熊谷さん、ふっちゃってもいいですか? まず。その間、千葉さん、あまり挫折がないような感じなんでよく考えてください。
熊谷正寿氏(以下、熊谷):そうですね、こんな話するとみんな事業家になるの嫌んなっちゃうかもしれないけど、ぶっちゃけ事業家経験振り返ってみると、9割ぐらい苦しいんですよ。楽しいのはほんとに1割、時間にしてね。
でも、その1割の楽しさって、多分、だらだらとした目標のない通常の生活をしているより、100倍とか1,000倍なんです、達成感とか、充実感とかね。
だから、本当に振り返ってみると、苦労が多いんだけど、その中でも特に苦しかったのは、2007年度に400億円損失を出したことがあって。
東証一部に上場したのが2005年なんですけど、その翌年度には、会社の「継続疑義」という状況に陥りまして。
有価証券報告書にこの会社危ないかもって監査法人に書かれて、その翌年までの約2年間で400億円の損失を出して、債務超過の危機に。債務超過っていうのは、要は債権者支配になってしまうことですね。
つまり株主資本がゼロになることなんですけど、起業家っていうのは自分で資本を入れて、その資本が増えてって、株主としての立ち位置があるわけですよ。それがマイナスになるってことは自分の会社じゃないってこと。
「弱気にならない、諦めない」と毎日手帳に書き続けた
熊谷:僕は、東証一部に上場して2年で他人の会社になってしまいそうな危機があって、その時に1度、自殺の夢を見ました。練炭自殺をして、全身汗だくになって目が覚めて……。
それこそ、本当に、何て言うのかな……一度夢で自殺した時、もう自分も、これまで助けてくれた仲間の人生もゼロにしちゃったんだって思いましたね。そんな経験をして、本当に苦労したんですけど。
その時の乗り切り方は、やっぱり、具体的には呪文を唱えてました。
これ、本当なんですけどね。呪文っていうのは「諦めない」って言葉。いつもへこたれそうになっちゃうんで「弱気にならない、諦めない」って毎日手帳に書いて。
僕、毎日の行動のスケジュールは、もちろんスマホも使ってますけど、手帳に手書きするんですね。
そこに、朝一番の心構えとして、弱気にならない、諦めない、弱気にならない、諦めない、弱気にならない、諦めないって自分に言い聞かせるように1年間以上書き写してました。
そういう呪文を毎日唱えて、折れそうになる心を自分自身で支えていたのを覚えています。やっぱり大きな夢を持ってそれを仲間とずっと語っていたので、その語っていたことを裏切れなかったんですね。
自分自身でも、一番大切なのはやっぱり仲間ですから、仲間を裏切れないっていう気持ちあり、また、みんな仲間は僕のその将来の大きな夢を信じて誰1人辞めずについてきてくれたんですね。
通常、会社って傾くと、どんどん幹部が抜けてったりしますよね。うちは誰1人辞めないどころか、会社を救うと言って、そんな悪い時期に外から入ってきてくれた方すらいました。
だから、やっぱり大事なのは、大きな夢を持ってそれをみんなと共有して諦めないこと。
あと、心が折れないようにするということが、危機の時っていうか、苦労した時の乗り切り方だと思います。以上です。
田中:ありがとうございます。朝倉さん、この後に多分フォローするの非常に難しいと思う(笑)。
勝てない競走馬は馬刺しになる
朝倉佑介(以下、朝倉):すばらしいと思います。今日、ここに座れて本当によかったです。ありがとうございます。おっしゃるとおりで、しんどい時に書き出すということはやりましたね。
例えばミクシィだと、去年の秋口あたりは相当ひどくて苦しみました。みんなに呼びかけるのと自分に言い聞かせる意味を込めて、社是案みたいなものを作ってましたね。
10個ぐらい作ってたんですけど、例えば「本当の失敗とは挑戦しないこと」とか…。一番のお気に入りは、そもそも失敗したらどうなるのって話なんですけど「人は失敗しても馬刺しにはならない」です(笑)。
競走馬を扱っていましたが、シビアな世界なんですよ。年間7,000頭サラブレッドが生産されるんですね。いないじゃないですか、日本にそんな多くのサラブレッド。
勝てない馬はどうなるかというと、肉になるんです。そういう優勝劣敗の世界を見ていると、本当にシビアだな、経済動物って大変だなと感じます。
人間って仮に失敗したとしても、命まではとられないじゃないですか? だったら、もう思い切ってバット振り抜けよと自分に言い聞かせていたし、みんなにも言ってましたね。表現方法が正しいかどうかはわかんないですけど。
田中:元ジョッキーとしては正しい表現方法を…。
朝倉:そうですね。あと、まるっきり逆のことを言うようですが、逃げるってありだと思うんですよ。
例えば、皆さんが大学で何かものすごい行き詰まりを感じて、この場で自分のやりたいことをなかなか実現することができないということでずっとウジウジ悩んでいるとしたらんだったら、休学してもいいと思うんですよ。
別に退学しなくてもいいけど。全然違う所に行ってみるとか、環境変えるってすごく重要。人間って環境の奴隷だと僕は思っています。環境が変わることによって、自分自身が変わっていくこともある。
「逃げる」という言い方をすると非常にネガティブな響きなんだけども、自分のいる環境をガラッと変えてみるっていうのは、僕は考えてもいいのかなと思います。
レールを外れよう
田中:そういう意味で、朝倉さん、日本からオーストラリアに移って、やっぱり人間変わりましたか?
朝倉:変わりましたね。僕、中学ほとんど行ってないですよ。中学の1年生まではオール5みたいな、結構優等生だったんですね。突然、やってらんないなぁと思って……。
今思うとしょうもない話なんですけど、野球部に一時いたりしたんですけど、ポジションから戻ろうとしたら「誰が歩いてええっちゅうたんや」なんて言われるじゃないですか?
そういうこと言われると「誰が走れ言うたんや」って思う、そういう子供だったんです。一事が万事、上から指示されたりとか命令されたりすんのが我慢できなくて「義務教育だから仕方なく俺は学校行ってやってんだ」と、断固とした強い意思のもと俺は引きこもるということで、義務教育を放棄しました(笑)。
代わりに何をやっていたかというと、図書館行って自分で本読んだりとか、勉強したりとかして、昼休みに学校行ってみんなとサッカーして、昼休み終わったら帰ってくる。で、また図書館行く。
そういう生活をしてました。これはね、俺、小学校、中学校行ってて、このまま高校とか行ったら、人間が駄目になるなと思って、もうレール外れようと。脱藩ですね。脱藩しましょう、みんな(笑)。
田中:ありがとうございました。すごい、いいアドバイスですけど、これを実際にフォローするにはちゃんと心構えがあってからじゃないとできないと思う。よく考えて、皆さん退学してください。
ちょっと今、時間チェックしてるんですけど、あと15分、20分ぐらい時間がありますので、せっかくこれだけいろんな深い経験をしているパネリストの皆さんが集まってますので、またオーディエンスから今度は質問を受け賜りたいと思うんですけど。
まず一番最初に元気よく手を挙げてくれた、5列目の方にお願いします。
出会いこそ人生の宝探し
質問者:ありがとうございます。○○と申します。僕は東大通って辞めて、イギリスの大学通って2ヵ月前に辞めて、今2社目を準備中です。お伺いしたい質問が、そもそもの今日のテーマが「夢と目標を持って人生を生き抜く」っていうことだったんですけど。
例えば、さっき千葉さんおっしゃったように20年後にこういう夢があって、これがやりたいからっていって、今やることを逆算的に考えるのもありだし。
それこそ、その一方で、今目の前にこういう市場があって、この波に乗りたいからこれをやる。そもそも夢を持つことが大事なのか?
もちろん、会社としては短中長期目標出さないといけないと思うんですけど、皆さん方の個人として、夢から逆算するのか、それとも目の前にあることをとりあえずやって臨機応変に対応していくのか、どちらなのかお伺いできれば幸いです。
田中:誰か、これ答えてほしい方いますか?
質問者:お答えいただける方がいれば……。
田中:誰いきますか?
朝倉:じゃあ。
田中:朝倉さんでいいですか?
質問者:はい。
朝倉:今日、全員、本当に熊谷さんの本を買ってくださいね(笑)。本当に。僕、大学の時読んで、ものすごい感銘受けたんです。