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これからのメディア業界で求められる人材力とは(全4記事)

新聞社はバイラルメディアを見習うべき--佐々木俊尚氏とスマニュー松浦氏が対談

佐々木俊尚氏がプレゼンターを務める有料会員制コミュニティ「LIFE MAKERS」のプレイベントに佐々木氏とスマートニュース・松浦茂樹氏が登壇。本パートでは、SNSが我々の生活をどのように変化させているかや、これからの時代のメディア・コミュニティについて両者が意見を交わします。(LIFE MAKERSプレイベントより)

盛り上がりつつあるオンラインサロン

高山達哉氏(以下、高山):皆さんこんにちは。本日はありがとうございます。LIFE MAKERSを運営しております、RIDE MEDIA&DESIGNの高山と申します。今からLIFE MAKERSのプレイベント、佐々木俊尚さんがモデレーターという形で、スマートニュースの松浦さんをお招きしてのトークセッションとなります。

LIFE MAKERSのほうは5月からスタートとなっておりまして、毎月こちらの「いいオフィス」さんで、メディアのイノベーションを1つの共通テーマにしたイベントを行っていきます。

5月はLINE株式会社の田端信太郎さん、6月は「北欧、暮らしの道具店」というECサイトを運営されている、株式会社クラシコムの青木耕平さんをお招きして、毎月1回のペースで、こちらの場所で行っていきます。

LIFE MAKERSはそれ以外でも、オンライン、オフライン両方でいろいろなコンテンツを展開して、みなさんといい場を作っていきたいと思っております。ぜひ今回のイベントを通してLIFE MAKERSの雰囲気を感じていただき、ご興味があれば、ぜひご入会していただければと思います。では、佐々木さんよろしくお願いします。

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):5分ほど、LIFE MAKERSって何やっているのっていう話をしたいと思います。オンラインのコミュニティってサロンとかいわれまして、最近盛り上がっているんですけど、僕は違う狙いを考えていて。

すごい勢いで今、メディアが変わり始めているので、その先端の話をきちんと議論したいっていう個人的な要求がすごく強いんです。せっかくなので、そういうものとコミュニティを結びつけて、新しい場にできないかなと思っています。

iPhone修理の仕事をする新しいヒッピー像

佐々木:メディアが変わっているって、一体何が変わっているのかっていうのを、ちょっと話したい。すごいざっくりした話をします。僕が最近仲良くしている、九州の熊本にある「サイハテ」っていうヒッピーコミューンがあります。

みなさんご存知ない人もいるかもしれないけど、最近ヒッピーが盛り上がっているんです。山の中の上のほうにコミューンがあって、1万坪ぐらいの土地の中で20人ぐらいの人たちが暮らして、ヒッピーやっているんです。

アースバッグハウスっていう不思議な家を作って、これはアメリカで流行っているんですけど、チューブ状の泥の中に土を詰めて、それをとぐろを巻かせるように家を建てていくっていう、そういう構造のもの。

こういうことをやっている人たちが、どんどん現れている。昔はヒッピーっていうと、何か田舎に引き籠っている変な人たちみたいなイメージだったんだけど、最近のヒッピーはなんとみんなFacebookをやっているんです。

Facebookをやって東京と交流しながら、東京と福岡、熊本あたりを行ったり来たりして仕事しながら、こういう生活もしているし、都会での仕事もしているっていう、そういう非常に何かプリミティブなものと都会的なものがミックスされた新しい生活をしている人たちが、だんだん現れてきている。

これはまた別のヒッピーで、鹿児島に住んでいるテンダーっていう友達なんですけど、なんでテンダーっていうかって、優しいからじゃなくて元バーテンダーだからなんですけどね。彼なんかも山の中の限界集落みたいなところに住んでいて、ネットはADSLしかない。

ADSLを引いたのもすごいですけど、水はない。水はないので清水を飲んでいるんだけど、ネットだけはあるっていう。こういう生活をしていて、なにをしているかっていうと、例えばロードキルアニマルっていって、道端で車にはねられて死んでいる生き物を食べるっていう、すごい恐ろしいことをやっているんです。

なぜそんなことやるのって言ったら「命の尊さを確かめるためです」みたいなこと言うんだけど、こういうプリミティブなことをしている人が実はちゃんとWebを持っていて、主な仕事はiPhoneの修理っていう。

「ヒッピーなのにiPhoneの修理するのか!」みたいな。そういう世界の人たちが、だんだん今現れてきている。

ソーシャルヒッピーの時代

佐々木:あと皆さんご存知かもしれないですけど、神山町っていう徳島県の有名な過疎の村ですけど、ここも最近東京から、ソーシャル名刺のサービスとして有名なEightをやっているSansanさんがサテライトオフィスを作っている。

ちょっと前まではノマドっていうと、スタバでMacBookAir開いて「どやる」みたいなノリだったけど、最近はこうやって川べりでMacBookAir開いて「どや」みたいな、そういうノリになってきている。

地方のすごい田舎の村と東京がどんどん交流している。それをインターネットみたいなものが基盤となって支援する、そういう新しい構造が生まれてきているよねっていう。これを僕は「ソーシャルヒッピーの時代」っていっているんです。

FacebookとかTwitterみたいなものはSNSと言われてるけど、これらももはやメディアのひとつなのです。そういうメディアを基盤にすることによって、こういう新しい生き方、変わった生活する人たちがどんどん増えていて、これが一体どこに向かっていくのかっていうのが、僕にとってすごい興味の中心なんです。

「今やメディアは単なる媒体ではない」と。メディアっていうのは、今までは新聞・テレビ・雑誌と、ネットメディアもそうなんですけど、概ねコンテンツ。記事とか動画とか番組とかを作って、それを何らかの形でディストリビューションする、配信するっていうのがメディアだと思われていたんだけど、今やメディアはそれだけじゃない。コンテンツを流すのはメディアではありません。我々が生きている空間そのものがメディアである。

だってFacebookって、あれメディアですよね? みなさん記事をどこで読んでいるのか。昔は新聞・テレビで読んでいました。でも最近はFacebookで流れてくる記事で読む人が多いでしょ? 

Twitterで有名人のなにかを読む。これも完全にメディアになっている。つまりSNSも、もはやメディアであると。要するに我々の生活の基盤であるSNS、人間関係の基盤であるSNSと、メディアがもはや一体化しているってことになるんです。これが実はすごい変化なんです。

Facebookは人間関係のインフラであり、人生そのもの

佐々木:もはやメディアは媒体であり、我々が生きているプロセスであって、しかもそれが恐らくそこに集まってくるという共同体機能を持ち始めている。Facebookっていうのは一種の共同体ですから。

閉ざされた共同体ではなくて、無数の人たちが網目のように繋がっている共同体。そういう共同体機能とメディアみたいなものが、どんどん合体するっていう状況が起きてきていて。将来的にはメディアって、我々が今生きているこの空間そのものになってくるんじゃないか。

こういうリアルに皆さんと会って話をするっていうこと自体も、実はもはやメディアなんです。そういうことを考えると、ここで皆さんとやり取りすること、ネット上でやり取りすること、人間関係が繋がって、全てそれがメディア空間に飲み込まれていく状況になっていくんじゃないか。

Facebookってもはやすごいインフラです。単に「この間、ディズニーランドに行った」って自慢する場所ではなくて、人間関係を気軽に維持し、自分の信頼を保証してくれるものっていうような、新しい人間関係のインフラとしての機能がどんどん今や進化してきている。

例えばその自分の信頼を保証してくれる。最近流行っているシェアサービスであるAirbnbとかLyftとか、ああいうシェアサービスってFacebookのアカウントを通さないと使えないんです。

なぜかっていうとFacebookのアカウントで、例えば5年も10年もFacebook使っていると、その人の人生そのものになるんです。そうすると嘘つけないですよね。なので、Facebookのアカウントを見せれば相手も信用しやすい。

だからこれは人間関係の基盤であり、こういうサービスを使うための基盤になってきている。だからこういうAirbnbは、使うことがある意味Facebookとイコールになってきているっていう、そういうような新しい空間が、生まれてきているんです。

ライフスタイルをシェアサービスが飲み込んでいく

佐々木:今や日本でもAirbnbのホストになって部屋を貸している人がいっぱいいて、たとえば福井の敦賀の田舎にあって、普通の一軒家の2階の六畳間を貸しています。一泊2,000円とかで。こういうのが出てきています。

こういう人たちが普通にAirbnbを使って家を貸すみたいなこと、それを我々が使う。我々がそのAirbnbでこういう人と繋がって、この一軒家の人と繋がって、そこで部屋を借りて一緒に泊まって。

泊まってないんですけど、ここに泊まった人の感想とかレビューを読むと「なんと朝御飯まで出してもらいました」とか「2,000円で泊まって朝御飯まで付くってすごくないですか」って、これもメディアになってきているわけです。

メディアによって我々は家を借り、部屋を借り、そこに泊まるみたいなことが起きてきている。ちなみにこのAirbnbの話を前に大学でしたら、学生の1人が「先生、僕の田舎、能登半島の先っちょなんですけど、探したら1軒だけAirbnbありました」って。100畳間5,000円。一体どこに布団を敷くんだろうみたいな。こういう変わった物件もたくさん出てきて、おもしろい時代になったなと。

東京なんかで検索すると、Airbnbは山ほど既に物件が出てきて、みんなに貸している。もちろん旅館業法の問題とか、大家さんとの関係とかいろいろな問題もあるんだけど、こういうものがどんどん世界に普及し、我々の空間を、そのシェアみたいなものが飲み込んでいくっていう、新しいライフスタイル、新しい形態が出てきているよねっていうことだと思うんです。

パブリックとプライベートの境目が溶けつつある

佐々木:これは有名な山岸俊男さんって社会学者が言っているんですけど、狭い世界の中で、同じ会社の同僚とか上司とか、同じ学校の同級生とか、そういう狭いところで繋がっている。狭いところで繋がって「仲いいんだ、俺たちは絆だ」って言っているんだけど、それって要するにやくざの親分候補とあまり変わらないんじゃないかと。

本当に仲がいいんじゃなくて、裏切ると後で指詰めなきゃいけないから、みんな仲のいいフリしているだけだろうみたいなことを、山口さんは指摘していて。そうじゃない、もっと広いオープンな人間関係を作りましょうっていう話になってきている。

これは有名な「弱いつながり理論」なんですけど、グレーの丸が会社とか学校とか近所とか家族とかそういうもので、その中の青い繋がりばかりを我々は作っていきたい。でもそうじゃないオレンジ色の繋がり。

そういう共同体の殻を破った、遠い人との繋がりをもっと大事にしようと。そういうオレンジ色の繋がりこそが、こういう場で出会う人たちの繋がりであると。そこから新しいライフスタイルが生まれ、新しい関係が生まれ、いろいろな仕事にも繋がっていくっていう、そういうことをやっていきましょうってことなんです。

だからもはやこの新しい世界においては、公と私、プライベートとパブリックの境界線なんか、もはや全然ないよねと。今の20代ぐらいの人って、たぶんプライバシー感覚がすごい乏しいって批判されている。実際そうなんですね。

自分の写真・動画は全部オープン。これはもう全然悪いことではなくて、そういうふうに世の中が変わりつつある。プライベート、プライバシーの感覚なんていうのは、実は近代の産物に過ぎないわけで、中世までプライバシーなんてなかったんです。

これからのメディアはプロセスであり、共同体である

佐々木:我々はそういう世界に回帰しつつあるのかもしれないなということを、ちょっと考えます。こういうような共同体、僕はこれをネットワーク共同体って最近呼んでいるんですけど、こういうネットワーク化された新しい共同体感覚みたいなものを誰がどうやって支えていくのか、そのコミュニティみたいなのが一体どういうふうになっているのか。

これこそが僕はメディア空間だと思っていて、かつてのようなテレビ・新聞・ラジオ・雑誌しかないメディア空間ではなくて、様々なメディアが今やこういうジグソーパズルのピースのようにどんどん埋めて、そのピースが埋まる形でメディア空間っていうのが成立し、そういうメディア空間をグローバル企業、AppleだったりGoogleだったりAmazonみたいなものが支えているよっていう、そういう社会全体の構造、メディア空間の構造に変わってきている。

それをまたこういうソーシャルとスマホっていう新しいテクノロジーが推進するっていう、そういう構造に今やなりつつあるでしょ。だから我々の中には様々な場がある。それはFacebookだったりLINEだったり、いろいろなメディアがあるわけです。

その上で個人が自由に流動するっていう、そういう構造に今や変わりつつあるんじゃないかと。だからメディアとコミュニティとコミュニケーション、実はもはや一体であるんです。その一体となった新しい空間の中で、どうやって自分たちが動き、その境界を超える個人と個人が繋がっていくかっていうことを、これから考えなきゃいけないよね。

そういうものをどうやっていくのかっていうことを実践しながら試してみたいわけです。シェアを実践するシェアサービスを使うと、どんなことが起きるのか。Airbnbで部屋を借りるとどんなことが起きるのか、あるいは貸してみるとどんなことが起きるのか。

実際このLIFE MAKERSオンラインでインタビュー記事の連載をするんですけど、一発目の記事は、女性の1人暮らしなんだけど、Airbnbで部屋を貸している人っていうのが馬込のほうにいらっしゃって。この彼女に長いインタビューをして、その記事を配信します。

こういう人たちに話を聞きながら、自分たちもやってみて、どうだったかっていうことを共有して話し合っていくっていう、そういう議論の場を、これからも作ろうと思っていますので。

5月から月に1回やって、もう1回、目黒のほうのこういうスペースでやって、それからそのインタビュー記事も掲載し、あとFacebookグループでも日々議論し、あとは3ヶ月に1回、何かアウトドアでイベントをやろうという、そういう計画も立てていますので、もしご興味あったらぜひ来てください。ちょっと前ふりは終わりで、これから松浦さんとお話をしたいと思います。松浦さん、よろしくお願いします。

テクノロジーと融合した編集という職業

松浦茂樹氏(以下、松浦):よろしくお願いします。

佐々木:お待たせいたしました。

松浦:いえいえ。

佐々木:今日は、「これからのメディア業界に必要な人材力とは」というテーマでお話をしたいと思います。なんでこんな話を松浦さんとしようと思っているかっていうと、松浦さんはハフィントンポストの編集長になられる直前ぐらいからの知り合いで、ハフィントンポスト編集長時代も、だいぶいろいろやり取りさせていただいたんですけど、その松浦さんご本人から聞いたんじゃなくて、いま松浦さんが所属しているスマートニュース。スマートニュースの社長の鈴木健さんって、僕の昔からの友人なんです。

この前、現代ビジネスっていう講談社のサイトで、その鈴木健さんと対談したんです。対談した時に彼はおもしろい話をしていて、「松浦さんはスマートニュースで一体なにをやっているの」って聞いたら、編集のようで編集ではない、新しいテクノロジー化された、編成長みたいな、なにかよくわからないことを彼は言っていたんだけど、すごいおもしろそうな話だったので、その辺の、一体これからのメディア業界における仕事って、どういうふうに変わっていくのか。

しかもそれはテクノロジーと融合することで、どう変化するかっていう話をおうかがいしたいと思います。最初にまず松浦さんから自己紹介と、今までどういう経歴でここに至っているかっていう話をしていただけますでしょうか。

松浦:初めましての方もそれなりに多くいると思います。私はスマートニュースでメディアコミュニケーション担当のディレクターをしております、松浦と申します。皆様よろしくお願いいたします。

今日はこのような機会をいただき、誠に感謝しきりという形ではございますが、まずは私の経歴、ざっくり簡単に紹介させてください。元々はエンジニアです。社会人になった時はシステムエンジニアで、人工衛星の開発をやっておりました。

20代の頃は本当にメディアとか何も関係ないです。流れ流れ、さまざまな職を経験し、ちょうど30歳になった時に、当時、堀江貴文さんがやっていたライブドアに入社しました。

ライブドアデパートっていうのが当時ありまして、入った当初はそこの担当をやらせてもらって、そこからすぐメディアの部隊に移って、あれやこれややっているうちに、2011年ぐらいまで、最終的にはポータル事業、トップページとかニュースとか、そこら辺とかをまとめて事業責任者として担当しました。そのあと4年連続で転職する羽目になりました。

佐々木:すごいですね。

松浦氏がスマニューに移籍した理由

松浦:ライブドアを辞めて次に移ったのが、コンデナストという会社がやってるWIREDという媒体です。WIRED日本版復活がありましたので、そのWebの担当。そのあとグリーに移りまして。何でグリーに移ったかっていうと、2012年ぐらいなんですけど、どんどんウェブの世界がスマートフォンの世界になってきてたんですね。

その時に最前線、ソーシャルゲームの部分をやっぱり体験しないと駄目だなって自分の中ですごく感じまして、グリーという会社に入りました。ただ、ゲームの開発はできないので、非ゲームの部分のところをいろいろと1年弱やらせていただきました。

そこから2013年にハフィントンポスト日本版の編集長をやってみないかと、声が掛かった時は候補のまだ1人だったんですけど、あれよあれよというわけではないですけど、編集長やってくれっていうオファーがありまして。

元々ハフィントンポストがどんなものかというのを知っていたっていうのもあったので、これはいいチャンスだと思って、1年半ほどやらせてもらって、昨年9月にスマートニュースに移籍したというような流れになっております。

佐々木:なんでスマートニュースに行かれたんですか?

松浦:ハフィントンポストのCEOが日本に進出するにあたって、これ日経にインタビューとかが載ったんですけど、まずは日本で月間1,000万人ユーザーをハフィントンポスト日本版としては目指したいという話があって。

私としてもスタッフの人選とかもろもろ考えて、2年間で月間1,000万ユーザーぐらいいかなきゃ駄目だなっていうのがあったんです。ただ、約1年でこれが到達しちゃったと。

佐々木:すごいですね、1年で1,000万いったんですか?

松浦:いきました。月間1,000万ユーザーはいったので、結構満足感も出たところもありますし、やれることもそうなると戦術の積み上げなので、もちろん途中ではあるんですけど、このまま戦術で得られた結果を積み上げていけばある程度ゴールのところまで見えてきたなって思ったので、わりと心の中で達成感もでてきちゃったところもあったので、新しいことをしてみたいと。その時にいくつかお話はいただいていたんですけど、スマートニュースという存在があって。

コンテンツを読者に送り届けるエキスパート

佐々木:スマートニュースからはどうやって誘われたんですか?

松浦:「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」っていうのが、スマートニュースのミッションなんです。で、私の経歴を今ざくっと話しましたけど、ライティングの経験はないんです。ライターの経験はない。

あと編集の経験も大きな意味ではないんです。細かい話で、翻訳のディレクターとか、そういうのはやっていますけど、書籍の編集したことあるのか、雑誌の編集したことあるのか、テレビのディレクターしたことあるのかって言ったら全くない。

でも、最終的にコンテンツを人の手に送り届けるところは、いくつかのネットメディアでやらせてもらっている。ライブドアだと、ポータルのトップページの担当をやっていたので、そこでいろいろなコンテンツ、ライブドアのいろいろなサービスが集まってきたものを、どういうふうにトップページに見せて、最終的にお届けするのかっていうところをやってる。

佐々木:要するにコンテンツを製作するところではなくて、それをどうやって読者に届けるかっていう、そっちの部分のエキスパートであるということですね。

松浦:そうです。そこには自分としても自信があったので、そのミッションと自分のスキルを重ね合せれば、倍々ゲームになるんじゃないか、2乗になるんじゃないかなって思って、スマートニュースでも最終的にコンテンツを送り届けるところにコミットする形で参画しました。

佐々木:確かに。スマートニュースは別に自社でコンテンツを作っているわけじゃなくて、あくまで出来上がった、新聞とか雑誌が作っているコンテンツを、どう的確に読者に送り届けるかっていうことに特化した会社なわけですから、やっぱり松浦さんがやってきたことと非常にマッチングが高かったっていう、そういうことですよね。

松浦:そうです。

新聞社はバズフィードの拡散力に学べ

佐々木:今の話はすごい重要で、去年の3月にニューヨークタイムズが有名な内部報告書っていうのを出して、その中に何が書いてあるかっていうと、バズフィードに学べって書いてあるんです。

今までの新聞・テレビ・雑誌もそうなんだけど、コンテンツを作って、それが例えば新聞記者だったら、新聞の1面トップにバンと載りました。載ったらもうそれで満足。新聞記者は、それを読者が読んでいるかどうかどうでもいい。社内で評価されたほうが嬉しいみたいなところがあったんです。

ニューヨークタイムズもそういうノリでやってきたので、自分たちが作った記事が読まれるかどうか、あまり気にしてなかった。ところがそういう中でああいうバズフィードみたいなバイラルメディアが出てきた。

日本ではバイラルメディアっていうと、クズみたいなコンテンツで騙す、くだらない連中って馬鹿にされているんだけど、アメリカでは全く違う評価なんです。何が違うかって、もちろんくだらない記事も多いんだけど、彼らがどうやって拡散力を手にしたのか、その拡散力を新聞社が学ばなきゃいけないって、みんなまじめに言っているんです。

そこが日本と全く違うところ。だから今の日本のメディア人たちは、全然わかってない。そのニューヨークタイムズの内部報告書には何が書いてあるかっていうと、その出来上がったコンテンツをどう読者に届けるか、その動線をバズフィードに学ばなきゃ駄目だ、そうしないと死んじゃうよっていうことを延々と書いてある。

その手法のことを報告書では、オーディエンス・ディベロップメント、読者開発っていう言い方をしていて、ここにこれから力を入れるんだと。まさに今、松浦さんがおっしゃったのは、そこの部分の仕事ってことですよね。

松浦:そうですね。ハフィントンポストの仕事を受けた時も、そういう仕組みのところとかも聞いてはいたんです。ただ、実感はしていなかった。それでハフィントンポスト日本版がオープンする前に1週間ほどアメリカ研修に行ったんです。

そこで学んだことは、本当に読者開発の話ばかりだったんです。こんなにアメリカ人って真面目なのかっていうぐらい、朝から晩まで仕組みの話を延々と聞かされ続け、私が日本に帰った時に一番実感したのは「あ、この仕組みがあれば、この仕組みを操縦している自分が失敗しない限り、ハフィントンポスト日本版は上手くいく」って思ったんです。

スマートニュースに入社して編集長っていう肩書きが外れたので、いわゆる編集者の皆様方が結構いろいろ来られてアドバイスを求められるんですけど、例えると、パイロットの話ばかりなんです。どんな優秀なF1パイロットも、三輪車に乗せたら早く走れないのに、仕組みの部分って、みんな話もしないなと。繰り返し言いますが、ハフィントンポストをやっていた時に何に一番感動したかっていったら、もう明らかに宇宙戦艦ヤマトなんです。この仕組みが。これに乗って、日本のネットメディアに攻め込んで結果出せなかったら、乗っている艦長の自分が駄目だぐらいに思ってやってました。

佐々木:なるほどね。

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