「才能がない」「時間がない」を言い訳にするな--成功者は自分にないものとどう向き合うか

Count what matters #1/2

「多くの起業家はリソースがないことを理由に、一歩踏み出すことをためらう」と起業家のJessica Jackley(ジェシカ・ジャクリー)氏は指摘します。東アフリカの青年起業家の例を挙げ、ゼロからでも小さな一歩を踏み出すことの重要性を説く。(TEDxSemesteratSeaより)

対義語を考える「オポジップスゲーム」

ジェシカ・ジャクリー氏:今夜は、いくつかストーリーをお聞かせいたします。

休暇中に、夫のレザと2歳になる双子の息子たち、サイラスとジャスパーを、お日さまがさんさんとふり注ぐロサンジェルスからアメリカ大陸を横断して、寒い寒いペンシルバニア州ピッツバーグ北部の郊外へと連れ出し、私の実家でクリスマスを過ごしました。家に着くなり、おじいちゃんとおばあちゃんは子どもたちを抱き上げ、ハグとキスと愛で迎えてくれました。

夫と私は息子たちに、新しく学んだことやできるようになったこと、発見したことなどを祖父母に披露したら? と提案しました。

息子たちがお披露目して祖父母を感心させたのは、あまりクリエティブな名前ではありませんが、反対語を当てるゲームでした。

大人たちが「サイラス、ジャスパー、上の反対は何?」と尋ねると、ふたりは競って答えます。

「下!」

「上と下、上と下はオポジップス」

まだ幼くて口がまわらないので、opposites(反対)をオポジップスと言っていたので、クリスマス休暇中はこのゲームを「オポジップスゲーム」と呼びました。

「歩く」の反対は? 息子達の回答は…

初めは上と下、熱いと冷たい、右と左などいつものお題だったのですが、クリスマスイブに教会に向かう長い雪道をドライブ中に母が「歩くの反対は何?」と聞きました。大人たちは前の席に座っていて、息子たちは後ろの席にいました。

私は、母のほうを向いて言いました。

「歩くの反対って、そんな難しいお題。私だってわからないわよ。どうするの?」

(会場笑)

多分、ふたりはそれぞれ違う答えを出して、どちらが正しいかディベート、そして喧嘩になって大変なことになると思い、少しの間パニックになっていました。大げさですけどね。すると子どもの高い声が後ろの席から聞こえてきました。

「キャーウィー」

サイラスとジャスパーのどちらが先に答えたのかは覚えていませんが、ふたりは同意したようでした。

「そうだね。キャーウィーだ。キャーウィー!」

息子たちは、キャリー(抱っこで行く)と言ったつもりです。「(自分で)歩く」と「抱っこで行く」、このふたつの言葉が頭の中で繋がりました。これは私が日に何度か、息子たちに尋ねていることでしたので。

「自分で歩いて行く? それとも、ママの抱っこで行く?」

息子たちの世界では、歩くの反対は抱っこだったのです。これが、最初のストーリーですが、後でまたこの話に触れます。

東アフリカの事業支援プロジェクト

2番目のストーリーは、東アフリカでのお話です。これは現地を初めて訪れてから5年後の2004年の写真です。1999年、TEDのイベントTEDxSemestratSeaで初めて東アフリカに行きましたが、みなさんご存知の通りそれがすべてを変えました。その時私の心に火がつき、もう一度戻って来たいと思いました。

実際に再訪するまでにはしばらく時間がかかりましたが、5年後に実現しました。この写真は、3か月半から4か月のビレッジ・エンタープライズ・ファンドに参加したときのものです。これは非営利目的で、小さな小さな事業を起ち上げたい人たち、または事業を成長させようとしている人たちに100ドルの補助金を提供するプロジェクトでした。

これはまるで魔法のような体験で、訪問中に大勢の素晴らしい人たちと出会いました。中でも、この大勢の人たちすべての精神を体現している人がいました。その人の名前は、パトリックです。

ゼロから利益を生み出し、周囲の生活をも変えたひらめき

パトリックに会ったのは2004年、ウガンダの焼けつくような午後でした。彼は自分のことを話してくれました。パトリックが少年の頃、反乱軍が村を襲いました。彼は幼い弟だけを連れ、すべてを捨てて逃げ出しました。そして、ムバレ付近にたどり着きました。家も食料もなく、着の身着のまま、靴すら履いていませんでした。

パトリックと弟は未だ幼く、両親もなく、空腹で住むところもなく、教育も受けていませんでした。ほとんどの人が絶望する状況ではないでしょうか? ところがある日、すべてが変わりました。正確に言うと、パトリック自身がすべてを変えようと決めました。

ある朝、パトリックは陽が昇るのを眺めていました。背後には、彼が家と呼んでいる、泥で作った寝場所がありました。その日も今日1日、どうやって自分と幼い弟のおなかを満たすかで頭を痛めていました。数年にわたって毎日考え続けて、なんとか生き延びてきました。

ところがその日、地面に手を置いて遠くを眺めていたとき、胸がきゅんと痛むような感覚を覚えました。それは、雷に打たれたような、新しいアイデアのひらめきでした。

自分の手に目をやり、地面を堀り始めました。最初は手で掘っていましたが、その辺に落ちている木の枝や金属片などで、掘り続けました。掘って、掘って、錆色の粘土質の土が出てくるまで堀り続けました。

そして水を少し混ぜたり、これで何が作れるか実験をしました。やがて、粘土から煉瓦を作りました。最初の煉瓦は粗悪で崩れやすいく、形も整っていませんでしたが、次第に上達し、なんとか売り物になるくらいになりました。ひとつ1セントにも満たないほどでしたが、煉瓦を売ることができました。

煉瓦を売り続け、やがて木製の型を買えるお金ができました。型を手に入れると、形の揃った煉瓦をもっと早く作れるようになり、少し高い値段で売ることができました。

最初煉瓦は日干しにしていましたが、窯で焼いた煉瓦はもっと高く売れることを知っていたので、次の目標はマッチを買うことと、窯を造ることでした。

パトリックはこの目標も実現し、マッチを買い窯を造り、煉瓦を少し高く売ることができました。そして薪ではなく石炭を、またシャベルやこてなど、彼のビジネスを成長させるのに必要なものを買い揃えるお金ができました。

まもなく充分な収入を得てまずは弟を、それからご近所さんを、そして従業員を雇うことができるようになりました。

それから数年後、パトリックに出会い、この話をしてくれました。私は、彼からインスピレーションをもらいました。無から始めて、実に土から煉瓦を作り出し、ビジネスを始め、自分の生活を継続可能にし、また自分の周りの人々の生活も支えてきました。

これが、今日お聞かせしたかった、2つのストーリーです。それでは、最初のストーリーに戻りましょう。

思うようにいかず、立ち止まってしまう子ども達

「歩く」と「抱っこ」これが、2人の息子にとっての反対語でした。この2つの言葉を考えれば考えるほど、息子たちの答えが正しいと納得しました。この2つは、私と息子たちの間でのドラマチックでもあり恥ずかしくもある、公の場で私と息子たちのディベートの原因となるものです。

誤解のないように申し上げますが、息子たちを抱っこするのは大好きです。とても小さいときはもちろんですが、もっと大きくなって2人一緒に抱っこして歩くのに工夫がいるようになってからも。

できる限り抱っこしようと思うのですが、ときには無理なこともあります。片腕にスーパーの袋、もう片方の肩にはコンピュータの入ったバッグを引っかけて、郵便物を握りしめ一方の手には家の鍵、ばらばらに放置してある外用のおもちゃをかきわけているときに、息子たちを抱っこするのは無理です。

こんなときはたいてい、やさしく説明すれば問題ないのですが、抵抗されることもあります。かわいいこともあるのですよ。お願いされたり、泣かれたり。

「ママ、抱っこちてよ。泣いちゃうよ。なみだがでてるぅ」

なんて言われると、ノーと言えなくなってしまいます。あまり、可愛らしくないこともあります。場所をわきまえずに大声を出したり、大声で泣いたり、座り込んだり、寝転んでしまったり。大抵は、家の前の階段の下でよく起こることで、立ち止まって動こうとしません。

息子たちは、自分の思うようにならなくて、怒っているからです。自分たちには助けが必要で、助けてもらうのが当然なのに、充分なヘルプが与えられないと思うからです。そして立ち止まって、先に進むことをやめてしまいます。

「何を持っているかではなく、行動を選択すること」

残念なことに、このような反応は、幼児に限ったことではありません。私も同じことをしました。目指している目標に到達するために欲しいものが手に入らずに不満だったり、必要なものが手に入らないときには当然だと思っているものが与えられないと、怒り、そして行動をやめてしまう。

これは、何度も目にしてきました。友達、同僚、野心のある起業家が立ち止まってしまうのです。正確に言うと、立ち止まることを選んでしまうのです。

その反面、立ち止まることを拒否する人たちがいます。パトリックのような人です。私たちが当然持っているもの、与えられているものがなくても、立ち往生しない人です。その違いは何でしょう?

世界中の大勢の起業家と仕事をしてきてわかったことですが、立ち往生しない人は、暮らし方や考え方、働き方、生き方が起業家的なのです。それはどういうことでしょうか?

アントレプレナーシップ(起業家精神)の定義はさまざまですし、気に入っているものもたくさんありますが、もっとも重要なことを強調していると思うので、40年ほど前のハワード・スティーブンソンのものを選びました。

「コントロールが可能なリソースに拘泥せずにチャンスを追求すること」

学術的な響きがありますが、キーワードになるのは「追求すること」。即ち前進することで、リソースではなく、アクション・行動を強調しています。「追求するもの」は自分の周りの潜在的な機会や可能性などです。

繰り返しますが、実現するために必要と考えられるリソースにかかわらずです。起業家精神とは、何を持っているかではなく、何をするかや何を築きあげるかを選択することにあります。

「ないものリスト」を挙げ連ね、立ち止まってしまう起業家たち

注意していただきたいのですが、私は起業家にリソースを提供することがあまり好きではありません。

10年間、Kiva(注:貧困を軽減するための貸付をする非営利団体、最少貸付額は25ドル)やProFounder(注:スタートアップ事業向けの資金調達のコミュニティ、2012年に閉鎖)を共同設立したり、Collaborative Fund(注:起ち上げ直後のビジネス向けの投資ファンド)を通して起業家に投資やアドバイスをしてきました。それが、私の愛する仕事でした。

起業家が成功するためや、より成功するために必要なリソースを提供して力を貸すこと、また彼らを支えるコミュニティを作ったり、障壁になるものを取り払ったりするのが仕事であり、そんな仕事を愛していました。

その前提で申し上げますが、仕事を通して学んだことは、長期間特定のリソースを入手できるかが、起業家の成功や失敗を左右することは稀だということです。ところがみんな、何を持っていて、何を持っていないかということにこだわりがちです。

私は人の話を聴くのが好きですし、得意なことでもあります。野心のある起業家で、素晴らしいことをやり遂げるであろう可能性を秘めた人たちが、立ち往生してしまうことがあります。正確には、立ち止まることを起業家自身が選んでしまうのです。

そのとき、彼らが思わず口に出してしまうのが、

「こんなすごいアイデアがあったけど、資金がね。どこで資金を調達していいかわからなかったんだよ」

「良い人脈がないといけないよね。でも、あまり広いネットワークがなくてね」

「専門外だから、条件を満たしていないかもしれない」

「必要な専門知識や技術がなくて……」

などなど、自分が追求したいことに必要なものがないからできないという理由を挙げ連ねます。「ないもの」のリストは、悲しいことに際限がありません。たとえ資金があっても、学歴が足りない。学歴があるのに、経験不足。住んでる街が問題だとか、自分はカリスマ性がないとか、リストには終わりがありません。

彼らの言うことを注意深く耳を傾けて、とても残念なのは、自分の外側や内部に成功するために必要な要素が不足していると信じ込んでいるように思えてしまうことです。それは間違った考えだと、私は思います。

前進することのみが、成功するための要素

コントロールが可能なリソースは、素晴らしい起業家として成功するための要素ではありません。前進することのみが、成功するための要素です。

私たちが前に進むのに、役に立つものは確かにあります。しかしそれは世間で必要だと言われていて、自分もそうだと信じ込んでいるものではありません。予期していなかったこと、しばしば形もなく目に見えないものでありながら、必要に迫られたとき、私たちみんなが手に入れたり、創り出せるものがあります。

たとえば、自分がなぜしているかを熟知して、その必然性が動機づけになっている目的。長期的には、それは一時的なビジネス上の優位性に勝るのです。

過剰な資金を調達して、いつか必要になるかもしれないものすべてを所有することよりも、今すぐに必要なものにアクセスできることが重要です。Collaborative Fundが共有消費や共有経済のパイオニアとなっていますが、事実所有よりも必要なものに必要な時にアクセスできることに優先順位が移行しています。

特別なリソースがなくても、自分の中に可能性を見出す

自分に正直であることが、他人の承認を得るよりも重要です。

2度、3度と失敗しても立ち直る回復力。

小さなコミュニティであろうと、あなたのしていることを信じて支え、愛してくれる人々の存在は、大勢の人の注目に勝ります。

私が知っている素晴らしい起業家たちは、今お話ししたことを理解しています。彼らは、成功するために必要な要素を念頭において前進します。リソースがあまりないように見えても、先に進むために必要なリソースは充分に持っています。

彼らの目に映る世界は、チャンス、未知の可能性にあふれています。

彼らは、自分の内に可能性を見い出し、自分の価値、能力、強さを信じています。

それが信念と強さの糧となり、毎日前に進むことができます。たとえ、リソースが足りなくても。

小さな1歩を踏み出せば、必要なリソースは集まってくる

この世界では私たちはいつになっても、決して準備万全でないと言われます。大きな1歩を踏み出すには、あとひとつ必要だと。

大きな1歩を踏み出す前に、勉強をしなければならないとか、お金を稼がなければいけないとか、何かを達成しなければならないとか。

でも、その反対も真実です。小さな1歩でも踏み出せば、歩みを進める毎に自分の強さや価値、準備が整っていたことなどを実感できます。それによってベストの自分に、そして素晴らしい起業家になることができます。

ゼロから始めて、小さな1歩で前進することが最も素晴らしいと思います。それは、何を持っていたかではなく、何をするかの選択、何を作り上げるかの選択です。そしてある日、自分の地位を築き上げたとき、必要なリソースがおのずと集まってきます。

世界は可能性とチャンス、冒険に満ちている

ご自分が起業家であると意識されていなくても、起業家のような生き方ができます。何かが不足しているからと壁に突き当たったとき、パトリックのような世界観で、周りを眺めてみることができます。チャンスはあちこちにあります。持っていないもの、不足しているもの、失ったものに捉われすに、自分で作り出せばよいのです。それによって今まで気づかなかった可能性を、自分の周りにあるものに、自分自身に、また周囲の人たちに見出すことができます。

私たちは皆、ときには助けてもらいたいと思います。それはとても良いことです。そういう人たちを手助けするのが、私の仕事でもあります。しかし起き上がり、立ち上がって自分の足で前進しなければならないことがあります。私たちにはそれができますし、それをする能力もあります。

私は起業家的な生き方を選択しました。世界は可能性とチャンスと冒険に満ちていると考えていますので、それを追求していきます。皆さんもチャンスを見出し、楽天的であるよう願っています。

私の息子たちにも、同じことを願っています。困難があったとしても、それに立ち向おう、先に進もう、自分の能力でできることをして、夢を実現するよう前進しようと。

ありがとうございます。

<続きは近日公開>

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