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グローバルで活躍するプロフェッショナルの条件(全3記事)

海外に進出して何が一番大変だったか? グリーやリクルート幹部が「苦労自慢」を披露

グリー・青柳直樹氏、Indeed・出木場久征氏、PARTY・川村真司氏と、活躍の場を海外に広げるメンバーが「グローバルで活躍するプロフェッショナルの条件」について意見を交わしたセッション。本パートでは、海外進出時にハードルになったことや、その解決策について語りました。(IVS 2014 Fall より)

日本での成功パターンはことごとく外れた

小林雅氏(以下、小林):早速ディスカッションにいきたいと思ってます。では事前にアンケートしたいと思うんですけども「僕は/我が社は、アメリカの会社を買収したい、買収したいな」と思ってる人ってどのくらいいます? 将来的なビジョンも含めて。(挙手が)結構いらっしゃいますね。少ないですね、意外に。

じゃあアメリカに展開したいっていう人? いますね。アメリカに展開したいと思ってるんだけど、やり方まったくわかりませんていう人、どのくらいいます? 意外に皆わかってる……あ、わかってないと。

(会場笑)

ここらへんは先輩っていうんですかね、いろいろ苦労されてると。ニューヨーク、オースティン、サンフランシスコと拠点もそれぞれ違うんですけども、いろんな日本との違いとか、日本人として行くっていうとこでなかなか苦労されたことがあると思うんですけど、そういったことからお話を聞きたいと思います。

青柳さんから行きたいと思うんですけれども、実際に赴任して思ってたのと違うことは何だったのか? っていうのを順番にいきたいと思います。

青柳直樹氏(以下、青柳):苦労続きだったんで、苦労自慢に(笑)。

小林:じゃあ苦労自慢を3人いってみましょうか。

青柳:日本でこういうふうに上手くいったから、きっとこれワークするだろうなと思っていたんですが、ことごとく外れましたね。

小林:ちなみにどういうことが上手くいくだろうと思ってたんですか?

青柳:たとえば作るゲームにしてもマーケティングにしても、日本でやってきたやり方とか、僕らには成功体験・成功パターンというものがありました。

ちょうどブラウザからスマートフォンみたいな節目でもあったし、国境も越えたし言語も違うし、チームの作り方というのも違って、そういった意味ではそれをひとつひとつ学んで自分のものにしていくみたいな。そういうプロセスが1、2年くらい続きました。

小林:なるほど。

青柳:最初はまずビザの問題に多くの会社が直面して、それが終わったかなと思うと、今度アメリカで人を採用するところで、労働の考え方とか制度が違う。

それをちゃんと整備しないと、特にシリコンバレーだからだと思いますけど、シリコンバレーで優秀な人に集まってもらえないんですね。日本が好きなローカルとか日本からの赴任者とかだけだと、あえて日本を飛び出してやる必要はないわけですよ。

本当にその意味がでてくるのは、会社としてのかたちができて受け入れる器が整ってからで、1年くらいかかったかなという印象ですね。そのあとうちの会社では初めて大きな買収を2011年にしたんですが、日本でも大きな買収はほとんどしたことがなくて。

日本の皆さんも経験されたことがある方も多分いらっしゃると思いますが、大きなポストマージャーインテグレーションみたいなところを、言語・文化・慣習が違うところでやるのは会社としては学びが多かったと思います。

ようやくそこの消化をしてアメリカで最初に出したゲームがうまく行かず、試行錯誤を経て「こうやっていくのかな」という手ごたえが出てきたのが、行ってから1年半くらい経ってからですね。そこからこれはいけるぞっていうところに、舵を切ってやってきたというところです。

買収も2つしているんで、買収に伴う一定の期間が来るとまたチームをトランジションしなきゃいけないみたいなことも経験したりして、この3、4年間でやることがどんどん変わって来てると今思っています。

小林:ありがとうございます。もっと具体的にあとで聞きたいと思います。

英語がしゃべれなくても大丈夫、信頼とルールの経営法

小林:出木場さん、先ほどの「英語も得意じゃないのに単身で買収した会社の経営者になった」っていう話がなかなか素晴らしい武勇伝だなと。

出木場久征氏(以下、出木場):(笑)。今質問されて、何が上手くいくと思ってたかな? と考えたんですけど、あんまり何も考えてなかったなということに今気づきまして。やっぱり勢いというか……って言ったらまずいな、広報に怒られるな。

小林:一応そのへんに広報の方が座ってるんで(笑)。大丈夫ですよね?

出木場:とにかく僕は、最初にファウンダーの2人に会ったときに、もう恋だったんですね。「こいつら最高だな」と思って、リクルートの紹介っていうよりは「俺が何をこれまでやってきて、今後こういうことをやりたくて、お前ら何やりたいんだ」みたいな、そういうところから入ったので、俺が1人で行ってもこいつらと一緒にやれるんじゃないかみたいに思ってたんですよね。

それで確かに今思うと、普通にアメリカの会社を買収したら、皆2年でいなくなるだろうということなんですけど、結果としてうちの会社は誰も辞めなかった。しかもファウンダーもまだ残ってるっていうですね。

よくアメリカのネット企業の奴らに「お前どんなマジック使ったんだ?」って言われるんですが、苦労っていう意味では本当に楽しく2年間やっていて、結果として成長率も伸びてるっていう感じで。

結果が出てるっていうのも、皆がある程度「変な日本人が来た。英語しゃべれないけど、まぁいいか」ってやってもらってるところもあるのかなと思います。ただ大変だったのは僕っていうよりも僕の周りが。

やっぱり英語の問題が今でも解決してないんですけど、本当に「オマエ コレ 食ベルカ?」みたいな、多分そんな英語をしゃべってると思うんですよね。早目に僕が切り替えたのは、英語勉強しようと思って一生懸命したんですけど、最初1ヶ月くらいしてて、もうこれダメだなと。

ちょっともうどうしようもないなと思って、逆に英語が使えない、この英語のレベルのまんまでどう経営すればいいかっていうのを発明しようって切り替えたのが、最初は良かったかもしれないですね。

小林:発明っていうのはどういう発明だったんですか?

出木場:結局「お前とはこの数字でこういうふうに約束したから、この数字はやってね。細かいことはよくわかんないからお前に任せた」っていうふうにしか、やっぱり言えないじゃないですか。ああやれ、こうやれとか言えないんで。「これ任した。でもこれ約束ね」ていう。これが基本コミュニケーションかなっていう。

小林:どうぞどうぞ、青柳さんも。

出木場:しゃべってて俺アホみたいな感じがしてきた(笑)。

青柳:アメリカの会社で、先ほどスライドであった、毎月とか4半期に一遍のオールハンズというか社員総会みたいなのがあって、僕もアメリカに行って言われたんですけど、CEOの仕事はそこを決めることだと。

やっぱり、アメリカにおけるステレオタイプCEOっぽいですけれども、そういうコミュニケーションが確立してるっていうのがすごい求められている感じでしたね。

日本だと阿吽の呼吸みたいでわかり合えるものが、アメリカだと言葉も違うんで通じないから、そこを外すと全然ダメみたいなのと、部下との1on1とかレポートラインでの握りみたいなのが、日本以上に重要だなと思うんですけど。言葉、僕もハンデがあって苦しかったですが、どうやって乗り越えられたのか、すごく聞いてみたいと思いました。

小林:なるほど。川村さんどうですか? 言いたいことがあったら。

川村真司氏(以下、川村):いやすいません。僕ズルして、小学校とかアメリカだったんで(笑)。

出木場:それはズルいですね(笑)。

説明するより「No!」と言え、アメリカ的コミュニケーションのメリット

小林:でも言葉の問題だけじゃないですよね?

川村:そうですね、あとはフィーリングというか、しゃべり方とかで気持ちを乗せる。さっきもサイドで話したんですけど、感情を乗せて伝えようっていう気が伝わってくると、向こうも聞いてくれるっていう。

出木場:さっきもちょうど話したんですけど、僕の得意技があって「これやらないから、こういう理由でこうだ。こういう理由でどうのこうの」っていうって言うよりは「……Noー!」って言うんですよ(笑)。そうするとみんな「あいつ、本当に嫌がってる」って言う。

(会場笑)

「Yes!」とか言うんですよ。そういう、これでやるしかないなって。

小林:(笑)。いいですね何か、英語で台詞聞いてみたいですよね。

出木場:いやでもね、一応伝わるんですよそっちのほうが。これは最近日本人としゃべるときにやってるんですけど「嫌だー!」とか言うとちゃんと聞いてくれるんで、これ意外といいかなと。

まじめな話で言うと、1on1とかでもレポートラインがアメリカはすごい大事なんで「誰にこれを言った、これはこいつにレポートさせて」っていうのが、日本よりすごい明確なんで、向いてる向いてないはあると思います。

僕は日本にいたときから、部下と飲みに行って関係性を作ってやっていくっていうタイプではなかったんで「これ約束ね」「これ数字でやれなかったらダメ」とかっていう風土には、まあまあタイプとしては向いていたと思いますよ。

小林:すごい控室で盛り上がっていて、タイプ似てますねって話を。青柳さんどうですか? 今聞いてて。

青柳:そうですね、僕も結構アメリカにおけるマネジメントっていうものに慣れてからは、すごくやりやすくなったなと思って。

「会社としてはプライオリティがこの3つで、お前の半期の目標はこれで、これ達成しなかったらボーナスゼロ。金額がいったらそれに連動してドン(金額も上がる)」みたいのが、アメリカ的な制度とコミュニケーションで、その匙加減とかがわかってきてからは「むしろこれは日本よりやりやすいんじゃないか?」「お互い気持ちいいんじゃいないか?」というふうには感じました。

日本的な1on1で社内に味方ができた

青柳:ただやっぱり買収した会社の社員とかは2年先とかが見えちゃって。しかもシリコンバレーで、隣の会社が「WhatsApp」っていうんだけど、俺の友達が働いてすごいことになったよ、みたいにザワザワするんですよね。そういうとき僕は苦しくなって。

これ日本的なんですけど、まだ社員が200人いかないくらいのときに、全社員と面談をやりました。そしたら200人と面談するのに半年くらいかかるんですけど、やったことで徐々に味方が増えまして。

「お前はHowとWhatの違いもわかってないし、そういうところから、イケてないからいろいろ教えてやる」っていう人が出てきて、少しずつですね。「あ、味方増えたな」みたいな感じになりました。

ただ最後は、さっき出木場さんおっしゃってたんですけど、これもアメリカらしいなと思うんですけど、成果が出ると皆ついていく。成果が出ないと全然言うこと聞いてくれないところがあって、やっぱり成果が出てからのこの2年くらいは比較的楽でした。

「Yes! こうだ!」って言ったら、ついていこうというふうに結構おさまる。けどそれまで、会社の中でどうやって求心力を作って行こうかみたいなところは相当苦労しました。

小林:なるほど。ちなみにさっき、面談するみたいな超日本的なウェットなコミュニケーションってキモイとかって言われたりはしないですか? アメリカで。

青柳:いや、結構そこは全然受け入れてくれて、最初は「お前がやってることは非効率だ」と言われたんですけど、会っていくと巻き込まれる人というのがいてそれが良かったのと、あと会議室でやらずに、外にコーヒーをたくさん飲みに行きまして「お前は半日コーヒーばっかり飲んでないか」みたいな(笑)。

小林:「ちゃんと仕事せい」っていう話なんですね(笑)。

青柳:ただ、僕は1on1して社員の皆さんのことを知ることと、月1回のミーティングでちゃんとそれらしいことを決めて言うことで、どうにか皆ついてきてくれました。

アジアに比べて契約が厳密な欧米

小林:川村さんはどういうコミュニケーションしてるんですか? クライアントは基本的にアメリカっていうか、現地の会社なんですよね?

川村:そうですね、クライアントは。7割くらいがノースアメリカ、ヨーロッパで、残り3割が日本とかアジア。台湾、韓国みたいな感じですかね。

僕の場合コミュニケーションするのに困るっていうほどのメンバー数ではないので(笑)。ある程度、会社っていうよりはチームみたいな、6人ちょいしかいないので。基本的には本当に面着(直接対面してコミュニケーションをとる)で、皆でテーブル囲んで決めていくっていうか。

うちの、特にニューヨークのほうは始まって1年に満たないので、変な話マネージングパートナーでなくてもなんとなく一緒に会社のハンドルを握って「こういうふうにやってこう」っていうのを、ちゃんとビジョンをシェアして一緒に作ってくみたいな、会社のオーナーシップを感じてもらうことで今ちょうどDNAを育てようとしてる感じの時期ですね。そこはあんまり苦労はしてないですね。

ただ「マネジメントに向いてないな俺」っていうのはすごい思うんで、早く誰かビジネスディレクターとか見つけないと、これは危ういことになる、とかは思ってます(笑)。

ビジネス規模が大きくなると、僕の場合にぶつかった壁としては、やっぱりコントラクトとかリーガル面が、日本とかアジアでクリエイティブビジネスをやるのに比べるとかなりリジットに決めて行くんで慣れるまで厳しかったです。

逆にそれを守れば「That's out of scope」とか言えるんですけど、逆に言うとそこに入っちゃってたらなんでやらないのとか。そういうのが1個1個積み重なって行って、気付くと向こうのリーガルチームと後ろに立った弁護士のおっさんと俺が会ってゴニョゴニョやって、街角で泣くみたいなことが多発してましたね。去年前半は。

小林:先ほど、控室でリーガル的なものが全然考え方が違う、人事とリーガルみたいな話があったんですけど。それは出木場さん、どうなんですかね?

出木場:もう、裁判には慣れました(笑)。

小林:ものすごい裁判受けてるっていう話を。

出木場:アメリカのネット企業だともう普通にパテントトロールがすごくて。いわゆる90年代のハイパーリンクを押したら飛んでくみたいな基本的なやつを持ってる会社を弁護士事務所が買収して訴えるっていう、とんでもないビジネスモデルなんです。

これはもうニュービジネスですよね。そうですね、リーガルは本当きっちりしないといけないんで。

組織作りに欠かせない、優秀なHRの雇用

青柳:そういう意味ではグリーもパテントトロールに訴えられて無事勝ったことがあるんですけど、僕もちゃんと事業にフォーカスできるようになったのは、すごく優秀なHRとリーガルのヘッドを採用できてからでした。

そこのバックオフィス系、あとファイナンスとかあるんですけどその3つのVP、あとゼネラルマネージャーがちゃんと揃ってから、私は組織の他のことと、ちゃんと数字を上げてくっていうことにフォーカス出来るようになりましたね。やっぱりそういう意味では、バックオフィスをちゃんと押さえきるというのが、ビジネスをやる前には重要だなと思いますね。

小林:ぶっちゃけ、いきましょう。

出木場:ぶっちゃけ、Indeedって求人サイトなんですけど、この2014年7月にHRのヘッドを雇えたんですよ、やっと。1日2人とか採用していながらHRのヘッドがいなかったんで。でもそれ今おっしゃってた通りで、僕も50人くらい面接したんですよ。

結局CHOクラスを採用しようと思うとCEOが面接して、しかも向こうからすると「なんだこのベンチャー」って。さっきおっしゃってた通りで、このあと上場するかもしれないとかそういうこともないし、こっちが口説かなきゃいけないっていうのが結構あって、そうするとなかなか最初は。

メチャメチャ不安になるじゃないですか、面接だって言われてきたら、CEOがカタコトの英語しかしゃべれない。「大丈夫かなこの会社」みたいな。やっと少しずつできるようになったっていうのはあるんですけど。

小林:ありがとうございます。

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