2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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川上:でもなんか聞いていると、世間的なイメージとしては庵野さんって常に全力疾走で最後力尽きるまで作り続けるってイメージですけど、わりと妥協もしてるってことですよね。
庵野:監督の1番のストレスは妥協だと思います。あらゆるところで妥協です。100%満足ってのはまずないです。ありえないです。
とにかく下駄を履かせて及第点にどう持っていくかっていう、そういう作業ですね。もう宮崎さんも高畑さんも、それに尽きていると思います。宮崎さんとかとくにそうですね。
宮崎さんの1番いいところっていつ見ても絵コンテなんですよ。
川上:はい(笑)。
氷川:(笑)。
庵野:コンテが1番面白いんですよ。宮崎さん100%なんで。絵コンテから作品になっていく過程で宮崎駿率が下がっていく。
他の人がどうしても介在していくので。それはしょうがないですよ。後で見たときにコンテの方がおもしろかったなというのがいつもなんですよね。
宮崎さんの作品として1番好きなのは、僕は『風の谷のナウシカ』の漫画で。あれは100%宮崎さんで作品が構成されてるんですよね。漫画だから。
川上:宮崎駿しか描いてないですからね。
庵野:だから、宮さん100%のナウシカの漫画が僕はいいと思うのはそこなんだなと。
川上:ということでは、庵野さんの絵コンテ見せてもらって、あれほんとにおもしろいなと思ったんですけど、庵野さんの場合はあれだけおもしろいものが、おもしろいんだけど違うものになって出てきますよね。完成すると。
庵野:そうですね。絵コンテって読める人は自分のタイミングとか、自分の好みでその映像を頭の中で作ってしまうんで。
だから、宮さんのコンテを読んだときには宮崎駿の最高傑作が僕の中でできちゃうんですよ。こういうタイミングで、ここはこういう絵で、こういう動きでっていうのが。なんとなく見えて。
初号(試写)を見ると、いや、こういう動きじゃなかったんだよな……。って。なるんですけど。
たまにいいアニメーターの人がいるので、自分が思ってたよりもいいカットっていうのはもちろんたくさんありますけど。
トータルで見ると、やっぱりコンテの方がよかったなって。あと、音も入ってくるんで。
川上:じゃあ、庵野さんの場合も絵コンテの方が1番完成度が高いですか?
庵野:僕の場合は絵コンテの完成度を低くしてるんですね。
川上:低くしてるんですか?
庵野:とにかく、おもしろさの要素だけを絵コンテに詰めて。絵コンテ読んだ人はひととおりおもしろいと思うんだけど、どうおもしろくするかはアニメーターによって方向性が変わっていくっていう。
川上:素材なわけですね?
庵野:僕の場合は絵コンテが作品づくりのハブになればいいんですね。設計図じゃないんですよ。宮さんの場合は絵コンテが完成予想図なんですよね。
ではなくて、これとこれがこうつながったらおもしろくなるんじゃないかとか、その先にもっとおもしろくできる余地を残したい。
川上:そうですね。宮崎さんの方は基本的に絵コンテと同じものができますよね。庵野さんの方は生き物のように変わっていきますよね。
庵野:変えていきたいんです。ここは宮崎さんと全然違うところです。最初にイメージ画面を作りたくないんですよね。それをすると到達点が見えちゃうんで。
そうではなくて、どういうふうになるのかわからないけれど、こうした方が、こうした方が……っていうのはギリギリまで探りたいです。まぁ、大変なんですけど。
初号もギリギリに……。IMAGICAが「これ以上は無理です」っていうところまで。
川上:でも、思ったんですけど監督はギリぎりまで作ろうとしてるからギリギリになるんですよね?
庵野:そうですね。ギリギリになるまで作ろうとしているからギリギリになりますね。で、製作が大変になるんですけど。
でも、ギリギリまで粘っただけの甲斐がある画面にはなってくれるんです。最後の最後にここの陰をちょっと足したい。
足元に微妙な陰をちょっと足すだけでもなんか違うんですよ。ほんとに細かいですけど。そういうところまでちょっとこだわりたいです。作る以上は。
氷川:どうですか? 川上さん。改めて『コンテンツの秘密』の宣伝も兼ねて、今お話を伺って、アニメの情報量についてなにか感じたことがあれば。
川上:この本、おもしろいんですよ。
庵野:おもしろいです。
川上:こういう本っていままで無かったと思うんですよね。
氷川:私も常々ね、ストーリーだけを問題にするんだったら、何もこんなめんどくさいアニメなんか作る必要ないじゃないって言っている方なんで、非常にありがたいです。
川上:僕、この本書いてて思ったのって、みんなわかってないんですよね。クリエーターも最終系をわかってないで作ってるし、見てる人も自分が何を見てるのか実はわかってない。
コンテンツのファンとクリエーターの関係って、わかってないもの同士のコミュニケーションなんだなってことをすごい思ったんですよね。
氷川:ああ、なるほどね。みんな一人ひとり違うし。見てるところも違うし。
庵野:それはしょうがないですね。やっぱり見てる人の経験と知識でしか物事は計れないんで。見てる人次第になっちゃうのはしょうがないですね。その人の価値観もありますから。
川上:作品はよく、クリエーターのものじゃなくて読者一人ひとりのものだって言い方もされるじゃないですか。あれは原理的にそうなんだなっていう。
庵野:僕はよく言ってますが、ラーメン屋といっしょなんですよね。どういうラーメンを食べたいかっていうのはお客さんの自由で、それでも醤油なのか、とんこつなのかぐらいは選んできますけど。
その中でこのとんこつの油が濃いかどうかはお客さん次第なんで。ラーメン屋の店主としてはこれぐらいの油が美味いって出すんですけど、それを美味いと感じるか、濃いと感じるか、薄いと感じるかはお客さん次第なんで。それはもう、どうしようもないですね。
美味しいと思ってくれた人には「どうもありがとうございました」それでしかないと思うんです。
一応双方向メディアなんで、そこが映像のいいところだと思うんですけど。お客さんのことそれ以上考えないで済むし。
それ以上のサービスをするとなると大変だと思うんですよね。やっぱりこういうのはサービス業ですから。
川上:でも、いろんな人に向けてサービスするような作品を作っているわけですよね。
庵野:いろんな人に向けてのサービスと、極端にこの人だけ! っていうサービスも、まぁいろいろあります。わけてますね。
川上:自分用のサービスというのもあるんですか?
庵野:自分用のサービスっていうのはあんまりないですね。ないんで辛いですけど。
川上:大変なんですね。
庵野:大変です。つるの恩返しみたいな感じ。自分の身を削ってるんで。自分を削って織物を作ってます。気がついたらなにもない。
川上:ほんと庵野さんが1番魂を削ってモノを作ってますよね。
庵野:僕だけじゃないと思いますけどね。そういう作り方しかできないんで、しょうがないです。
中にはもちろん、楽をしようっていうのはありますけど、結果的に楽ができないんですよ。最初は手を抜こうと思っても、ギリギリまでやってしまうんですよ。
しょうがないです。こういう性(さが)なんです。
川上:いろんなところで聞いているんですけど、次のエヴァ(ヱヴァンゲリヲン新劇場版)がいつ完成するのかっていうね、庵野さんに聞く情報が1番間違っているんですよ(笑)。
いちばん遠くて、それがだんだん庵野さんから離れていくと正確になっていって。だいたいネットに書いてある、ファンの予想が1番正しい(笑)。
氷川:(笑)。そんなお2人でやられている『日本アニメ(ーター)見本市』についてもお話いただきたいです。
川上さん、この見本市の企画のきっかけと、実際できあがった作品見てどうですか?
川上:いやー……なんか、すごいですよね。なんていうか、自由にやってますよね。みんな大抵の商業の作品って、見るとだいたい狙いってわかるじゃないですか。
アニメ(ーター)作品も狙いはわからんことはないんだけど、なるほどそこか! って感じの作品ばっかりですよね。
氷川:どうですか? 庵野さん的には。だいぶ作品もたまりましたけど。
庵野:同じ系列がいっこもないのが。
氷川:それは見事ですよね。
庵野:多様性はまだまだあると。
氷川:ほんと、アニメっていろんなことができるんだなっていう。
庵野:ネットで公開してますんで是非是非見てください。
川上:(尺が)短い分だけ、より純粋になりますよね。やろうとしてることも。
庵野:ほんとにみんな見事にバラバラなんですよ。同じ監督が2度やってもバラバラなんで、やっぱおもしろいと思います。
川上:いかに今、自由に作品を作れている環境が無いかってことですよね。
庵野:まぁ、そうです。絵柄もストーリーも世界観も全て含めてバラバラなので。いいんじゃないですかね。
氷川:そういう意味で今日のお題のね、情報量って観点からするとちょっとカオスっていうか混沌としてる感じはしますよね。全体的に情報過多な。
庵野:そうですね、アニメの場合は色も含めてコントロールできるのがいいと思います。今石(洋之氏)がやっていた、3色か4色しか色使ってないやつ(Sex&VIOLENCE with MACHSPEED)。あれであそこまでの表現ができるっていう。
まぁ、それを言ったら漫画とかもモノクロですから。白と黒の世界だけであれだけの世界観が表現できてる。そういうのも含めてアニメってのはおもしろいもんなんじゃないかなって思います。
川上:表現方法はともかくとして、情報量は“塊(かたまり)”のような作品ですよね。
庵野:まぁ、そうですね。むちゃくちゃです。
川上:(笑)。
氷川:フルCGもあれば、ほんと線画だけって極端な。
庵野:あと、コマ撮りのやつも。
氷川:そうですね。ストップモーションアニメとか。
庵野:ほんと『オチビサン』は湯のみとかうちわとかほんとうに作ってますから。
氷川:800個とか900個とか。
庵野:落ち葉のやつも、ほんとうにひとつひとつ動かしてやってて、ほんとに1年弱上げて、作ってます。あのエネルギーは画面から伝わってくると思います。
氷川:そうすると、そういう落ち葉を1枚1枚頑張ってるみたいな画面の情報量ってどういうところにあるんですかね?
庵野:落ち葉ひとつひとつのディティールもありますけど、やっぱりそれがひとつひとつ動いているっていうのが、手作業がわかるっていうのが。絵の奥にあるものを感じれるかどうかですよね。
氷川:後ろに人がいる感じ?
庵野:手作業の先に何かがあるんだっていうのが、やっぱりいいんじゃないかと思います。その人の魂がその画面にこもってるかどうかだと思うんですよね。
川上:高畑さんの『かぐや姫の物語』っていうのは、実際にアニメを作っている人からするとすごい情報量のとんでもないものに見えるんですよね。でも普通の人は「こんなもんかな」って思っちゃうっていう。
庵野:やっぱり現場にいるとあの大変さが身にしみてわかるので「わー! すげー!」ってふうになりますけど。それを理解していない人は手を抜いていない絵にしか見えないのかなーって。そこはもう、しょうがないですね。人それぞれなんで。
川上:むしろ絵が少ないから、普通の人には簡単なのかな~って思っちゃいますよね。
庵野:あれがよっぽど大変なのに。
川上:背後の手間が見えないんですね。
庵野:あれの大変さが画面からどう伝わるか……とかは思うんですけど、高畑さん、そういうのは伝えたくないと思うんでしょうね。
川上:伝える必要もないと思ってる人ですよね。
庵野:なので情報として切ってると思うんですよね。作り手ががどこまで伝えたいかっていうのをコントロールできるのもアニメのいいところですよね。わざと楽なように見せてる。
川上:ストップモーション、ぱっと見てもなんかおかしいなって思いますもんね。
庵野:オチビサンもぱっと見たらCGかな? って思う人も多いと思うんですけど、あれ、ひとつひとつ湯のみ作ってるとは思わないと思うんで。
ほんとひとつひとつ湯のみもうちわも作ってたし。お弁当の中も1個1個動かしていますから。でも食べれるもので作ってるんですよね。そのこだわりや……。
川上:あれはほんとのお弁当だってことが、ご飯粒だってことが見えるのが重要なんですね。
庵野:そうです。あれが食材でできているというのがわかる。ああいうすごさだと思います。やっぱり画面の奥にあるものをお客さんが感じるんだと思いますから。
やっぱりそこになにかが詰まってると思います。アニメの場合は魂込めやすいっていうのがありますね。
実写の場合も、ほんとに役者がすごい魂込めた芝居やってれば、それだけで伝わりますからね。やっぱりそういうのを定着する技術が映像にあって、それを伝える技術も映像にあるっていうのがいいと思いますね。
作り手の魂を定着できる。それが映像のいいところだと思います。それを分解すると情報をいうものになってしまうんですけど。
量っていうのはトータルのイメージなんですよね。どれだけ作り手の魂を支えられるかっていう。
氷川:重みっぽいものですかね?
庵野:重さも含めてですね。重い、軽いっていうのはやっぱりあると思います。情報っていうのは重い、軽いもあると思います。多い、少ないだけじゃなく。
氷川:あとどれくらい共鳴できるかとかそういうのもあるんじゃないですか?
庵野:そうですね。共鳴できるかっていうのもある。いろいろ複雑でおもしろいんです。だから、映像は面白いんですね。
氷川:だんだんお時間がせまってきたんですが、そんなことをふまえてですね、庵野さんは今後作って行きたいものに一言いただければと。今後に向けて。
庵野:そうですね。昔からやってることなんで、ぜんぜん変わんないと思いますけど(笑)。これからもこれまでも。やってくことは変わらないんじゃないかと。
氷川:川上さんはどうですか?
川上:皆さん『コンテンツの秘密』を買ってください! 僕、これギリギリまで書いてて、1週間前くらいに原稿が書き終わったんですよね。
だからまったく宣伝されてなくて、まったくプロモーションされないまま出荷されて。僕はとりあえず満足したものを作ったんですけど、出版社の人はちょっとかわいそうで。
氷川:では、ご興味のある方買っていただいて。お時間なのでそろそろ終わりたいと思います。今日はありがとうございました。
皆さん今日はおふたりに大きな拍手をお願いします!
(会場拍手)
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