土いらずで植物が育つ、魔法のフィルム

森有一氏:森です。面白い農業の技術を開発しましたので、ご紹介いたします。実はですね。土の代わりに、

こういうフィルム、これはサランラップじゃないですよ。

(会場笑)

私たちが特別に開発したフィルムなんです。このフィルムの上でですね、いろんなものが育ちます。例えばこんな感じ。

これ、実はこのフィルムの上で……

くっついてるんですね、透明なフィルムの上に。

(会場から感嘆の声)

ちょっとじゃあ、裏を見てみましょう。

こういう風にですね、フィルムの表面に根がはってます。フィルムの中に食い込んでるんじゃないんですね。

(会場から拍手と歓声)

OK? フィルムを活かしたまま、運べます。それからですね。

これはですね、実は例のフィルムでバッグを作りまして、その中に液体肥料が入ってます。その上に、パラパラっとレタスの種をまいて、育てたものです。これは去年(2010年)、宇宙飛行士の野口(聡一)さんが、宇宙船の中でこの実験をやりまして、ハーブを生やすことに成功しました。無重力空間ですから、こんな風に持ってる必要ないんですね。浮いてるんです。

非常に、心が和んだとおっしゃってました。

(会場笑)

今回の3.11で、大津波で被災したそういう土っていうのは、非常に汚れてるんですね。その土の代わりに、こういう技術が使えないだろうかと期待されてます。我々も頑張っております。じゃ、どうやってこのフィルムにレタスを生やすか。ちょっとご説明したいと思います。

まずですね、この机の上を地面としてください。グラウンド。そしてこのグラウンドの上、ようは土の上にですね、なんにも通さない黒いフィルムをひきます。

これはものすごく丈夫で、破れません。さらにここにホースを置きます。

これ、小さな穴が空いてるんですね。で、液体肥料が少しづつこの穴から出ます。それをですね。このフェルトで、ずっと広げるんです。

まんべんなく。で、上に、

このフィルムをのっけて、ここにレタスでもトマトでも種を置きますとですね。

こういう風(画像左)になるという。非常にシンプルな技術です。実はこのテクノロジーの最も大事なポイントは、このフィルムにあります。実はこのフィルムの素材はですね、ハイドロゲルという、おむつに使われているゲルです。ものすごく水と栄養素を吸い込みます。

このフィルム、下は濡れてます。水と栄養素を吸い込んでますからね。ただしですね、こっち側(上面)はからからなんです。反対側には水を出さないんです。そうすると植物はですね、表面はからからですから、生きることができない。そうすると、根をこのフィルムにくっつけて、フィルムの中の水と栄養分を必死になって吸うんです。まあ人間と一緒で、一生懸命勉強すると利口になりますよね。

(会場笑)

そうすると、ものすごくおいしくなるんです。栄養価が非常に高くなります。実はこの上で作ったトマトを初めて食べたらですね、ものすごく甘いんです。これはまったく想定外でした。植物のほうが利口でした。

それからもう一つの特徴はですね、このフィルム、透明で穴が無いように見えますよね。でも実はナノサイズの穴がものすごくたくさん空いてます。このサイズのコントロールが非常に難しいんですね。

ただ、我々はそれに成功しまして、水とか栄養分は吸い込むようにしました。しかし菌とかウィルスはでかいから入れません。ですから、こっち(上面)が病気にならないんですね。つまり、農薬がいらない。

皆さんが今一番、野菜を選ぶさいに気にするのは、栄養価が高いかどうか。あるいは、安全か安心か。ですから、このフィルムがあることによって、皆さんが一番望んでいる性質が満たされます。

担う任務は「土地の再生」

今、日本で20施設ぐらい、このフィルムを使ってトマトを作っています。これは1ヘクタールの非常に大きな農場で、このフィルムの上で、こんだけトマトの木が高くなってます。これ1ヘクタールで8万本のトマトが入ってます。黄色いトマトとか赤いトマトとか、鈴なりになります。

ここはつくば菜園さんですけども、今スーパーマーケットとかオンラインショップで売ると、非常に喜ばれるそうです。

今日はそんなトマトを持ってきました。違う農場のですけどね。

こういう大きいトマトもできますよ、という。本当は食べていただきたいんですけど、非常に甘いです。こういう大きいトマトもできます。

メロン、これは採りたてです。このフィルムの上でできました。そのほかにイチゴとかパプリカ、それからキュウリ、レタス、だいたいの野菜はこのフィルムの上で成長いたします。

この技術のもう一つの特徴はですね、実は物質をなにも通さないんです。フィルムを地面に敷いちゃうわけなんですけど、例えば地面に塩が上がってるとか、油とか農薬で汚れてる、あるいは有機水銀で汚れてても、一切関係ないわけです。なにも来ないですから。

ですから非常に、安心で安全なものを安定的に生産できます。当然、下が砂でもいいわけです。砂漠でもいいわけです。それから、工場跡のコンクリートでも大丈夫です。シベリアのツンドラ、氷の上でもできます。実は我々はですね、この技術でトマトが作れないかということを証明するために、砂漠へ行ってまいりました。

ドバイの砂漠の真ん中で、木も草もありません。これは野生のラクダです。

(会場笑)

これを砂の上にひいちゃいますから、日本から持って行ったトマトを育てました。実はですね。砂漠って太陽光がすごく強いんです。ですから、非常に成長が早いんです。

最後のはオマーンの方々ですけど、近隣諸国からいろいろ視察にいらしまして、口々に面白いなと言ってました。私どもはこの技術を使いますと、不毛の砂漠を肥沃な農地に変えられるんじゃないかと考えております。

また、まさに今関心がありますのは、3.11で、大津波で汚れた土地の再生。ヘドロとか油、それから放射能物質、そういうものもリジェクトできますので、そういった荒れた農地をいかにして再生するか、ということに努力したいと思っております。ご清聴ありがとうございました。