卵が先かニワトリが先か、言葉が先か現象が先か

ヒミ*オカジマ氏(以下、オカジマ):子どもの頃、僕はずっと考えていました。みんなも考えていたのかもしれない。「卵が先か、ニワトリが先か」。

オカジマ:卵派、どれぐらいいます? おっ、卵派ゼロ!? (客席を指さして)おー、いました! じゃ、ニワトリ先。(ぱらぱら客席から手が上がるのを確認して)……おー。ニワトリはどこから生まれたんでしょうね? 多分ね、これを議論したら明日になります。この辺りで終わりましょう。

大人になった僕は、もう一つ、疑問を抱くようになりました。これです、「言葉が先か、現象が先か」。

オカジマ:実は一番身近なんですよ、これ。ちなみに、いやー言葉が先じゃないかなって人、どれぐらいいます? ……あ、半分ぐらいなんですね。いやいや、現象が先だろ、って人は? あーっ、いいですね、トークのしがいがあります、ありがとうございます。じゃ、ここから一緒に言葉の旅をしていこうと思います。

独占から文化はうまれない

オカジマ:これ、中国の格言なんですけど、すごいいいこと書いてあるんですよ。「鳥は空気が見えない。魚は水が見えない。人間は自分が見えない」。ね、よく言いません? 「なんで私のこと分かってくれないの?」って。その私が一番分かってないみたいな。これはいい例だと思います。素晴らしい。

もう一つ、僕はある疑問を抱いていました。博多の名産、明太子。ご存じですか、明太子? 大丈夫ですか、皆さん? ついてきてます? 有名ですよね。今日のスポンサーにもなっていますけど。その明太子、なんで博多の食文化になったんだろうって、僕ずっと疑問だったんですよ。なぜ文化を創ったのか。たどり着いたら見えてきたんです。

オカジマ:何かっていうと、そう、一番最初に明太子を作った彼。特許も何も取らなかったんですよ。たくさんの人がレシピを教えて欲しいって色んなこと言ってきました。彼は惜しみなく教えたらしいんですね。まぁ、それは親戚大反対よね。「あんた、なんば言うとね!」って。これ、英語に翻訳するの難しいかもしれないけど。「特許取らんばい!? 何しとると!」。

彼は言ったそうです。「よかろうも。みんなが幸せになったら、よかろうも」。そう、その言葉が現象を作って、博多の文化となったんだって。そうか、文化というものは独占しないことなんだと。確かにそうだ、独占したもので文化になったものはない。文明はあるかもしれないけど。

10人中10人に批判されるなら、それはいいこと

オカジマ:そして僕は目をつけました。

オカジマ:捨てられている豚足。原価タダ。大きい声じゃ言えませんが、タダなんですよ。これでレストラン作ったんです。日本で初めて、いや、世界で最初でしょうね、"食べてキレイ"のレストラン。食べるエステ。色んな言葉を使いました。今だったら当たり前。でも当時、10人が10人に言われたもんね、「意味が分からない」って。もうね、ゾクゾクしたね、誰も(この新しさに)気付いてないって。

でも考えたら、10人が10人「いいね!」って言うものだったら、もう誰かがやってると思う。10人が10人に批判されるっていうのはいいこと。誰もやってないから。そう、それで僕は一番最初にレストランを作って、それからはもうね、大忙し! 大変! 日本中のマスメディアが来る、日本中のレストランの関係者が来る、企業が来る、色んなオファーが来る。

言うことはみんな同じ。「一緒にやりませんか?」って。「フランチャイズして欲しい」「製品開発を一緒にやりませんか」「同じようにやっていきましょう!」。僕、全部断ったんですよ。その代わり、レシピを全部あげました。どんどん真似してくださいって。

「コラーゲンしゃぶしゃぶ、いい名前じゃありませんか? どんどん使ってください。食べるエステ、どんどん真似してください。どんどん自分たちでやってください」。ものの2ヶ月ですよ。日本で、食べるっていうことの文化に"コラーゲン"っていうものがなったのが。

でもね、僕は、コラーゲンっていうのは若い人が一番気にしてのるかと思ってた。そしたら、お店におばあちゃんが来たんだよ。思わず言ってしまったよね、「ばあちゃん、まだキレイになりたいと?」って。

(会場笑)

オカジマ:ばあちゃんに言われたのが、「あんた、なんば言うとね! 女は死ぬまでキレイでいたいの!」って。もうあの時は鳥肌が立って! 僕は巨大なマーケットを作ったんじゃないかと! 

(会場笑)

世界一の激戦区で現象を作る

オカジマ:それから、僕はもう、すぐに一人でニューヨークに行きました。一番最初に僕が言ったことを思い出してください。「言葉が先か、現象が先か」。

ある仮説を僕は立てたんですよ。もしも言葉が現象を作るならば、人間は今、現在と過去は分かっている。でも未来が見えていない。その未来を自分の言葉で作っていこうじゃないかと。そしたら場所は関係ないのかもしれない。

ニューヨーク。なんでニューヨークかって、世界一の激戦区だから。東京だったら弱い者いじめになると僕は思ってたから。世界で一番キツいとこでやれたら、何かしらの自分の得る物があるんじゃないかって。

そうやって、どんどんどんどん、自分の言葉で現象を作っていきました。ところが、こんなカッコいいことばかりじゃないです。失敗も多い! 悪いこともいっぱい起きた! その度にもう一回振り返ってみる。何の自分の言葉がこの現象を作ったんだろうか、って。言い換えるのならば、何の言葉を発していたら、これは回避できたのか。

……皆さん、記憶にありません? 都合の悪いことは他人のせい、他人は有罪、自分は無罪、みたいな。人間はよく主張しますけど、そこをちょっと止めてみようと。全部自分が作った現象だと。そこで立場を取ったらどうなるんだろうか? その結果、お店をなんとかオープンしました! 

アメリカには食の"文化"がなかった

オカジマ:ニューヨークタイムズが豚足取り上げるっていうんですからね、すごいでしょ!? アメリカ人も何が来たのか、全くよく分かっていません。何だこれはと。お店は初日から大繁盛。人がすごい押し寄せて。アメリカ人にやたらと聞かれました。

オカジマ:"TONSOKU"。英語で言ったら"Pig Feet"っていうんだけど、僕ね、その言葉を一切使わなかった。メニューにも何もかも! 代わりにこのローマ字の"TONSOKU"って言葉を付け加えてた。客は当然聞くよね、「TONSOKUって何だ」って。その時に僕は言ってました。「TONSOKUはフランス人がこよなく愛している料理、Pied de cochenだ」と。

(会場笑)

オカジマ:彼らは聞いてくる。「Pied de cochenとは何だ」と。

(会場笑)

オカジマ:「Pied de cochenは英語で言えばPig Feetだ」と。彼らはなんて言うか。「フランス人が食べるなら食べてみよう」って。

(会場笑)

オカジマ:不思議でしょ!? そうなんですよ、僕、気付いていたことがあったんです。アメリカって食文化が無いなって。"ピザとバーガーの国"なんですよ。だから、フランス人が食べる料理ってのはすごいリスペクトしてる。だからフランス人が食べるものを、自分もそうなりたい、食べてみたいっていうような憧れがあるみたい。そして、食べてみると彼らが言う。「何、おいしいじゃない!」って。僕、心の中で思ったんですよ。絶対嘘だって。

(会場爆笑)

オカジマ:だって、ゲテモノだって言ってたじゃん、お前ら! みたいな。……彼らには言いませんよ、そりゃもちろん。レストランのオーナーですから! 

同じものでも"言葉"を変えただけで反応が180度変わる

オカジマ:ある時に同じ事件が起きたんです。それは何かっていうと、あるメニューを見た後、3組から同時に怒られて。まだ頼んでもないのにだよ? 頼んでもないのに「気持ちが悪い」だって。「何なんだ、これは! こんなの載せないで欲しい」って、そう言われたんです。何が起きたのか、僕には分かんなくって。よーく見てみたら、明太子、その中にある、"Cod roe"っていう、この言葉。

オカジマ:タラの卵という意味なんですけど、アメリカ人には気持ち悪いらしい。でもね、ギンダラの西京焼きは好きなのよ、アメリカ人。だけど、タラの卵はイヤなんだって。1日考えたね。なんでなんだ、なんでなんだって。そして翌日、僕はメニュー名を消したんよ。こう書き換えました。"HAKATA Spicy Cavier"。

(会場爆笑、拍手)

オカジマ:ありがとうございます。もうホントに、親戚でもないのに拍手なんて。それで、この"HAKATA Spicy Cavier"って書いたとたんに爆発的ヒット! アメリカ人たちが「うまいうまい」って食べてる! 「これ、シャンパンに合うじゃないか」だって。何を言ってるんだ、こいつら、と思ったときに、ハッ! と気付いたことがあったよ。

"言葉"が未来をつくる

何かっていうと「この人たちはモノを食べてるんじゃなくて、言葉を食べてるんじゃないか! でもそれは彼らだけの問題なのか」って。

ハッと振り返ってみたときに、どんなに豪華なフルコースがあったとしても、喧嘩して食べたらすごくマズかったりする。逆に、どんなに質素なご飯でも、会話がおいしければ、それがさらにおいしくなる。僕たちに一番身近な話かもしれない。そして気が付かない間に、僕たちはたくさんの言葉に囲まれている。

映画の"Coming Soon……"でもそう。たった一言書かれたキャッチコピー。これで観に行くか、観に行かないかを勝手に決めたりしている。言葉って実はすごいことなんじゃないのかなって、ビックリしたんです。「あれっ、俺、言葉を大事に使ってんのかな」って。

もっというと、言葉を道具にしてしまってるんじゃないのかな、って思ったんです。ひょっとしたら、言葉が人生かもしれない。その瞬間、何を言葉にしたのかが人生なのかもしれない。そう思ったとき、ちょっとね、襟を正そうって。これは日本とか、どこに住んでようが関係ないのかもしれない。今、あなたが発している言葉が未来を作っているのかもしれない。

オカジマ:そう思ったときに、例えば「不景気」ってどうなんでしょうね? それも言葉が作った現象なのかもしれない。そういう立場を取ることが、僕はすごい大事なんじゃないかなって。そうなると、人生なんて自作自演ですよね。

オカジマ:自分が物語を作ってる。もう一回、自分がどんな言葉に今生きているんだろうって振り返ってみてください。そこを見たときに、ひょっとしたら明日、いや、今この瞬間、新しい人生が目覚めるかもしれません。ぜひ、皆さん、自分の言葉を大事に生きてみてください。ありがとうございました!

(会場拍手)