2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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岡島悦子氏(以下、岡島):川鍋さんにも伺っていきたいんですが、今おっしゃっていた長く続く会社という意味では、まさに86年やっている会社の家業を継がれた。日本交通さんでの修羅場と、ご自身の成長みたいな話をお願いします。
川鍋一朗氏(以下、川鍋):いちおうIVSなんですけどね(笑)。お2人の話を伺っていて、やっぱりすごくベンチャーだなと思ったんですよ。自分はあんまりそこに苦しみを感じてないというか(笑)。
私の場合は三代目なので、生まれて物心がついてから「継ぐぞ!」と決めて、それから逆算してどうしたらいいかって一生懸命考えたんですよね。
アメリカに行ってビジネススクールでMBA取らなきゃいけないし、その後はコンサルティング会社で働くのが一番良さそうだと。で、レジュメ的には絵を描いたので、小学校から慶応に行ったボンボンの中では、一応一生懸命やったつもりなんですね。
1回も落第してないですし(笑)。我々の仲間はたいてい3人に1人落第してますから。それで日本交通に入ったわけですけど、バブル崩壊後でゴルフ場とか自動車教習所とかホテルとか、いわゆる不良債権がたくさんあって。
体質も古いし、私が入って1ヶ月くらいでバーンとはね返されるわけです。「何、この会社。こんなの知らねえよ」と思って、当時はベンチャーがわっと出てきた時代だったので「俺もベンチャーだ」と勝手に思いまして。
岡島:2000年?
川鍋:2000年に立ち上げるんですね。「日交マイクル」という。
岡島:愛宕グリーンヒルズの下とかに結構ありましたよね。
川鍋:でもそこは私の甘いところで、ベンチャーキャピタルを回ったわけでもなく、父親という名前の下で「ちょっとこれ、やるから」「おお」と言ってそれで終わりなんですね。資金調達も何もなく。ところが、当然上手くいかない。
銀色のミニバンを使って、朝から「グッモーニン!」って英語しゃべれる乗務員を雇って。これ、今でもコンセプト自体は悪くないんですよ。ところが前職がコンサルタントだったんで、いいことをすれば3ヶ月でバーンといくと思って、いきなり50台の車を買って50人雇って、売り上げがゼロのときもあった。
1ヶ月目から2000万円ずつの赤字がずっと出て、1年間で2億100万円かな。結局3年半で閉じたんですけど、累計で4億5000万円。
岡島:いきなりですよね。
川鍋:いきなり。ベンチャーキャピタルだったら、シードとかもうちょっと段階的になるじゃないですか。「誰か止めてくれたらよかったのに」なんて後で思ったり(笑)。
そこで何を思ったかというと「MBAとかマッキンゼーとか、関係ねえじゃん!」みたいに、つくづく……。かっこいいこと言ってもダラダラ赤字出して、僕の話を聞いてくれる人の目がどんどん「こいつもか」みたいに。
打ちひしがれる感というか、30年間準備してきたらダーンと落とされて。同時に、自分が抱えた負債4億5000万円と、親父が作った1900億円というのが……。
岡島:ケタが違いますよね(笑)。
川鍋:親父のほうが偉かったんです、そういう意味では(笑)。ちょうど小泉政権ができて「構造改革なくして景気回復なし」と唱えて、いきなり銀行からの締め付けが「返せ返せ!」とガッと来て。
そのダブルパンチの5年間というのは一番厳しくて、何が身に付いたかといえば忍耐という話になると思うんですけど。もう「恥ずかしいことはねえ」と。MBAだの何だのそういうことはあんまり関係なくて、とにかく最後は人と人との勝負なんで。
銀行の「金返せ!」って言ってる人に、当時まだ29歳とかでしたけど、「返せないものは返せないんですよ!」と言い切る。
(会場笑)
川鍋:そう言われると、向こうも結構びびったりしてね。こっちはこっちでずっと「日本交通の川鍋さん」と、母親もそう言われてるから。なくなっちゃったらやばいと。「一朗ちゃん頑張って」なんて。
岡島:銀行からも人が送り込まれてきたりするわけですよね。
川鍋:そうなんですよ。最後のほうの3年間は、銀行から人が3人送られてきましたので。毎日会社に行くと「一朗さん、今バルクで売ったら全部きれいになっちゃいますから、あとは利益を配しましょう。楽になっちゃいましょう」みたいなささやきもあって。
でも、それは直感的に「この人の言うことを信じちゃいけない」っていう。直感だけで戦ってたような気がしますけど、それを通じて銀行の人も……私はエクイティ調達じゃないんでデットなんですけど、銀行の人もちゃんと目を見て話せばわかると。半分以上はわかってくれないんですけど、中にはわかってくれる人もいて、そこから光明が。
ここの銀行が出してくれたから次も出してくれる、と繋がっていく。リースとかも、全部計画を持って回って。10社回れば1社2社は「そこまで言うならちょっと繋ぐよ」とか、それが大事かなと思ったというのがあります。
岡島:時間がかかるところを、ずっとひとつひとつ返していくっていう。
川鍋:まあ、4億5000万円は自分でしたけど1900億円は父親ですから(笑)。「ダメでもしょうがないじゃん」と。
岡島:どこかのファンドに買ってもらおうとか、そういう気持ちになったりしなかったんですか。
川鍋:ないと言えば嘘になるんですけども。実際そういう提案もあって、弱いときにそういうのが来るとちょっとぐらつくんですよね。「いったい自分は何のために戦ってるんだろう?」「もしかしたらファンドになったほうが社員も幸せなんじゃないか」「自分だけのために戦ってるんじゃないか」と。
でも、もしかしたら自分はそれでいいかもしれないけど、母親とか自分の周りは「日本交通の川鍋さん」で生きてきて。エゴイスティックなんですけど、自分の母親がそれがなくなっちゃったら終生復帰できないな、かわいそうじゃんと。人間としての正義はあると勝手に思って、やりましたけど。
岡島:そういう意味では、家業は本当に抜けられないっていうのが大変ですよね。
川鍋:良い面もありますよ。最初から結構大きな会社ですから。でもそのかわり、小さい頃から知ってるような人たちをリストラしたりするわけです。そういう意味では、また別の……。
岡島:マッキンゼーでは絶対に学べないようなことが、リアルで(起きた)。
川鍋:(笑)。最初のうちは「何なんだよ、全然誰も教えてくれなかったな」と思いながらやってましたね。それが少し良くなって成長のステージになったら、マッキンゼーとかMBAで学んだことが大変役に立ってますけど。
岡島:そんなことを思ってるうちに、またUberとかいろいろ……。
川鍋:そこまでいっちゃいます、もう?(笑)
岡島:そういうのが来るんですけど、後ほど戻ってこようと思います(笑)。
岡島:川邊さん、お待たせしました。川邊さんは修羅場はあったんですか?
川邊健太郎氏(以下、川邊):私は何もないです! 楽しく幸せに仕事をしてきましたね。毎日楽しいです。
岡島:「チッ」って熊谷さんは言ってますけど。
川邊:この3人は本当の修羅場がありますよね。特に川鍋さんの話は……僕は2時間じっくり夕飯を食いながら聞いたことがあるんですけど、やばいですよね。私はないです!
川鍋:それがすごい(笑)。
川邊:日本自体はあまり成長しない……。僕も94年にMosaic(インターネット黎明期のWebブラウザ)を自分で触って、20周年なんですよ。日本全体がシュリンクしていく20年でしたけど、インターネットは伸び続けた20年なんで、右肩上がりの高度成長期に仕事ができちゃった金の卵みたいな感じでずっとやってきましたよね。すごく幸せなんですけど、成長してるかもわからないです。
岡島:めちゃめちゃ成長してらっしゃると思いますけど。
川邊:成長してることがあるとすれば、インターネットが伸びていく中で、先ほど熊谷さんがおっしゃっていたような「さらに伸びる挑戦」。困難な課題を達成していく、難しいことに挑戦していくというテーマを持っていたのと、あと周りに働いているのが変態的な人たちが多かったので、それが成長と取れるのかも。
岡島:そのあたりも聞きたいんですよね。周りにいらっしゃる変態的な、変わった方々からすごく触発されていると思うんですけど、どういう方々が……。
川邊:初期の頃は、電脳隊を一緒にやっていたメンバーですよね。田中祐介であるとか。ヤフーと会社を合併するわけですけど、そこはまず井上(雅博)さんです。たぶんヤフーって、最短で会社の価値を一番大きくした会社だと思うんです。
このお二方(鉢嶺氏・熊谷氏)は相当やりあったと思いますけど。まあ、食えないオジサンじゃないですか。あれを社内でやってると、より食えないわけですよ。ああいう人とやりあって。最近だと孫さんですよね。さらに最近だとニケシュ・アローラというのが来たわけですよ。
岡島:インド出身で、グーグルからソフトバンクに来た。
川邊:そう。あれがまた、強烈なわけですよ。
岡島:ちなみに、どんな感じなんですか。
川邊:やばいですね。やばいばっかり言ってると猪子(寿之)みたいですけど。まあ、頭が異常に良いですよね、みんな。井上さんなんかも数字に対する直感的理解がすごくて、パパパッと計算して「こうだろ、間違ってるだろ」ってなるし、孫さんに至っては宇宙人ですよね、考えてることが。
ニケシュは切れ者で、ある種一番インターネットビジネスのことを……まあ、この10年間のグーグルを仕切ってた人間ですから、すごくピンポイントに痛いところを言ってくるんですよ。
「今、ヤフーってこの数字どうなの」って一番聞かれたくない数字を聞かれて、それを答えると「あー、終わってるね。どーすんの」って言われるわけですよ。それに対して「いや、こうでこうで……」って知的な格闘をグループ内ですごく繰り広げてる感じですよね。それが一番成長になってる。
岡島:やっぱりめちゃくちゃ揉まれますよね。
川邊:揉まれますね。あと、2週間前に孫さんと一緒に中国に行ってきたんです。アリババのジャック・マーに会ってきた。ジャック・マー以下幹部がみんないて、こっちもソフトバンク・ヤフーグループの幹部がいて、相対したんですけど。
アリババは時価総額約30兆円で今をときめく会社ですよ。めちゃくちゃ鼻息が荒いわけですよ。「Yahoo!ショッピングって取り扱いがどれくらいあるの」って聞かれて「○千億円です」みたいな話をすると、「うん? per day?(1日で?) per week?(1週間で?) per month?(1ヶ月で?)」みたいな(笑)。
(会場笑)
岡島:感じ悪すぎますよね(笑)。
川邊:で、下を向きながら「per year(1年で)なんですけど……」。
(会場笑)
川邊:そういうのとやりあわなきゃいけない。皆さんの本物の命がけの苦労とは違うんですけど、その環境の中で生き残んなきゃいけないという。それが成長の源泉でしょうね。あとは高いテーマ。「Yahoo! BBやろう」「ボーダフォン買おう」「共同通信が抜けちゃったけどYahoo!ニュースどうすんだ」とか、いろんなテーマに鍛えられてます。
熊谷正寿氏(以下、熊谷):そういう意味では、自分を高めるための課題をどんどん行くといいんだろうね。やっぱり。
川邊:そうそう。環境ですね。
熊谷:満足したら終わりだと。
川邊:満足したら終わりですね。本当に熊谷さんのおっしゃるとおりだと思っていて、常にギャップがあるんですよ。ソフトバンク・ヤフー用語だとギャップを埋めることを「ギャップフィル」っていうんですけど、久々にグループ内の人と会うと「今、何をギャップフィルしてんの?」って必ずそういう話になる。
岡島:ドMな会社ですよね。
川邊:そうそう。何のギャップをお前は埋めてるんだと。そういう話しかしてないわけですよ。そういう環境に身を置けば、皆さんほどの胆力はつかないですけど、少なくとも何かやろうっていう。
岡島:しかも、先ほどの運動でトレッドミルの角度が上がっていくじゃないですけど、どんどん険しい山になっていくってところですよね。
川邊:大変なことになってるわけですよ。だって、営業利益倍って大変ですよ? 一生懸命逆算してやってますけど。そういうのを考えながら、僕の場合は背景が大変なことは正直あんまりないので、高い挑戦を自分から掲げてなんとかやっていく。それをまったくほめてくれない周りのすごい人たちと、またやりあうと。
熊谷:今のお話をお聞きして思うんですけど、「全然苦労がない」って言っちゃうこのポジティブシンキング。これは経営者にとって本当にマストだし、頭の線が1本切れてるみたいな、抜けてるみたいな。
川鍋:やっぱりバカそうじゃないとダメですね。明らかに。
川邊:人生楽しいですよ! 1回しか人生はないですからね。なるべく常にトラックレコード、自己ベストが出るような挑戦をする。健康なうちはね。
岡島:皆さんきっとドMなのかもしれないですけど……。IVSも10年やってきて、卒業していってる人たちもいたり、経営者が変わられるみたいなこともあるじゃないですか。それが、飽くなき挑戦をやり続けられるモチベーションの源泉はどこか? ときどき人間だからつらくなったりとか、逃げたくなったりとか、お休みしたくなったりすると思うんですけど、何ですかね。
川邊:僕は「インターネットが大好き」。インターネットが初期の頃に自分が社会人になれて超ラッキーだと思ってるし、今でも大好き。社会を変えるようなものがインターネットを軸にどんどん発明されて……。
岡島:良い時代に生まれましたよね。
熊谷:同じく。
鉢嶺登氏(以下、鉢嶺):本当は、業界の人はみんな好きなんじゃないですか。将来こうなるとか、革命だとかみんな思ってますよね。それはワクワクしてる。
川邊:産業革命が出た頃に生きてたら、それはそれで楽しかったと思いますけど。それ並みの……。
岡島:産業革命の時代でも実は楽しめるっていう(笑)。
川邊:まあね。とにかく、インターネットが大好きっていうのがありますね。
岡島:それが、やっぱり燃やし続けるエンジンになってるのかな。
川邊:(川鍋氏に)どうですか? ファミリービジネスは。
川鍋:インターネットは楽しいですよ、やっぱり(笑)。
(会場笑)
川邊:日本交通のアプリが150万ダウンロード。
川鍋:明らかにスピードが違うんですよね。しかも中身を直しながらできるというのは、感覚としてものすごく新しくて。アプリを始めて4年になるんですけど、これは楽しい。だって数字って普通そんなに出ないですよ? 出ないというか、如実には色々なデータが揃わないんですよね、普通のビジネスって。
岡島:やっぱり、PDCAがわかりやすいですし回しやすい。
川鍋:そうなんですよ。出した途端に如実に顧客からフィードバックが来る状況って、ものすごくモチベートされて。嬉しいのはそれがアプリの評判に留まるもののではなく「タクシーにも及んだぜ、ラッキー!」みたいな(笑)。私の場合、皆さんみたいに「タクシーが大好き!」って言い切れるかというとちょっと(微妙な顔で)「う、うん……」なんですけども。
(会場笑)
岡島:さっきのインタビューでは「タクシー大好き」って言いましたけど(笑)。
川鍋:タクシー、大好きなんですよ? でも、ほら、私の場合はひとつの日本的な家業というか逃げられない道としてあるから。いずれにせよタクシーって、すごくモバイルなんですよ。車が動いてますし、人も動いてますし。「ラッキー!」と思いましたよ、本当に。これでタクシーは相当変わるぞと。
それで、タクシー配車アプリは世界各国で今ボンボン増えているのですが、日本だけなんだか全然反応が薄くて。ウチがやっていますけど、時価総額とかそういうのから離れたところにいて「やばい」と感じます。先輩方にいろいろ教わらないといけないところなんですけどね。
岡島:「インターネット大好き」ということだと、皆さんずっとやっていかれる感じですよね。飽くなき挑戦という。熊谷さんは?
熊谷:そりゃそうですね。命を捧げようと決めてますんで、この業界に。
岡島:(鉢嶺さん)も?
鉢嶺:ワクワクするのは間違いないと思うので、そうでしょうね。ただ、僕は150%で一生頑張れるとは自分でも思っていません。。どこかで息抜きはしたいですし。
岡島:皆さんどうしてるんですか? インターネット大好きはよくわかったんですけど、人間なのでぶっちゃけ心が折れたりすることもあるんじゃないかなと。まあ熊谷さんはスポーツ(で癒される)……?
熊谷:先ほどおっしゃった「数字がすべてを癒す」ということに加えて、周りに関わるお客さんだったり仲間たちだったり、あと株主さんも含めてなんだけど、「笑顔」と「数字」が心を癒しますよね。みんなハッピーでいてくれる図と、目標をきちんと達成してる図とで、安らぎを覚えますよね。
岡島:鉢嶺さんどうですか? 心が折れることはないんですか。
鉢嶺:いや、あるんじゃないかな。
岡島:どうしてるんですか?
鉢嶺:どうなんでしょう?。40歳までは僕は会社のことが頭の90%以上を占めてたと思います。「会社をどうやって大きくするんだ」ってことばかり考えていたけど、40歳くらいを境に「人生をどう謳歌するか」という視点は入ってきたと思います。
仕事も大きくしたいし、プライベートや家庭を含めて自分の人生をどう充実させるのかって視点は、あると思いますね。
岡島:川邊さんどうですかね。釣りとか、狩りとか、そっちも楽しんでるような気がするんですけど、心が折れたときにどうしてるのかって……折れないんですね?
川邊:心が折れたことはないですけど、まあ息抜きはしてますよ。趣味がいっぱいあるんで、そういうことをしながらボケーッと何も考えないということはありますよね。
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