「建設的な対立」こそが最高の成果をもたらす
とある経営者が語った、考える組織のつくりかた

対立の意義 #1/2

「対立とは考えることだ」と主張する経営思想家のMargaret Heffernan(マーガレット・ヘファーナン)氏。対立を恐れ、会社の問題点を見て見ぬふりする組織の危険性を語り、チームの持つ力を発揮するために「建設的な対立」を勧める。(TEDGlobal2012より)

小児がん患者が富裕層に多いのはなぜか?

マーガレット・ヘファーナン氏:1950年代のオックスフォードには、アリス・スチュワートという大変変わった素晴らしい医者がいました。アリス先生が変わっていたのは、1950年代としてはかなり珍しい、女性医師だったということもあります。あと、彼女は頭が良かったのです。当時、国立医科大学の研究員の1人に選ばれた中でも、最も若かったのは彼女でした。

彼女は結婚して子どもができてからも仕事を続けたから、変わっていました。離婚してシングルマザーになった後でも、彼女は医師として仕事を続けました。また、彼女は新しい科学の新興分野である疫学に、とても興味を持っていたので、変わっていました。疫学とは、病気のパターンの研究のことです。

他の科学者と同じように有名になるためには、難しい問題を見つけて解決をしなければならないという事を、彼女は熟知していました。そしてアリスが選んだ難題は、当時増加していた「小児がん」についてでした。

ほとんどの病気は貧困と関連がありますが、小児がんの場合、末期状態の子どもたちのほとんどが、裕福な家庭の子たちでした。彼女が知りたかったのは、この例外はどう説明できるのか? という事です。

アリスは研究費を集めるのに苦労していました。レディタタメモリアルからもらった、1000ポンドのみでした。それは、彼女がデータを収集できる回数は1回のみであるという事を意味していました。彼女は何をどこから探せばいいのか、全く分かりませんでした。本当に望みのない探し物をする様だったのです。

研究結果が公表されるだけでは、何も変わらない

そこで彼女は、思いつく全ての事を問いただしました。「子どもたちは飴をなめていたか?」「着色料の付いた飲み物を飲んでいたか?」「フィッシュ&チップスを食べていたか?」「トイレは屋外か屋内か?」「学校に通い始めたのは何歳頃か?」などなどです。

カーボン印刷のアンケートが返ってくると、ある1つの事が非常に目立ちました。それはまさに、科学者が夢に見るような統計的明確さでした。

2人に1人の割合で、亡くなった子どもの母親が、妊娠中にX線を浴びていたという事です。その発見は、世間一般の通念に反するものでした。一般的に、X線はある程度の範囲内であれば安全であるという見解でした。レントゲンは当時、素晴らしい最先端の技術であり、多くの期待が寄せられていたので、世間の通念とは相容れないものがありました。

患者を傷つけるのではなく、助けているのだという、医者自身の考えにも反していました。それにもかかわらずアリス・スチュワートは、1956年に予備調査結果を、ランセット誌に急いで載せました。人々はとても興奮して、ノーベル賞を獲るのではないかという話がありました。

アリスはものすごく急いで、それらが消えてしまう前に、小児がんの全てのケースを、見つけられるだけ調べようとしました。ですが、彼女は急ぐ必要などなかったのです。イギリス及びアメリカの医療機関が、妊婦にX線を当てる事を止めるまで、丸25年かかったからです。

アリスの調査データは、公開され、自由に見られる様になっていました。でも、誰も知りたがりませんでした。子どもが1週間で死んでしまうのに、何も変わりませんでした。公開されるだけでは、変化には持っていけないのです。25年間、アリス・スチュワートは、ずっと闘い続けました。

正しいことの証明は、間違いを証明できないこと

彼女はなぜ、自分が正しいと分かっていたのでしょうか? 彼女には、素晴らしい考えの手本がありました。彼女は、ジョージ・ニールという統計学者と一緒に働きました。ジョージは、アリスとは正反対の性格でした。アリスは外交的で社交的でしたが、ジョージは引きこもりでした。

アリスはとても温かく、患者に親身になってくれる人でした。ジョージは率直に、人よりも数字が好きな人でした。でも彼は、仕事の関係について、こんな素晴らしい事を言っています。

「私の仕事は、アリス・スチュワートを間違いだという事を証明する事だ」と。

彼は、非確証を積極的に探しました。彼女が誤っていることを証明するために、彼女のモデルや統計、データ処理をあらゆる方法でしてみました。彼は自分の仕事を、彼女の学説に対して、対立を生むものだと思っていました。

なぜなら彼女が間違っているという証明ができないという事でしか、ジョージはアリスに「自分は正しい」という自信を、与えられなかったからです。共同作業の素晴らしいモデルです。

ただの「エコールーム」ではない、「考える」パートナーです。私たちの中で、そんな協力者を持つ、わざわざそんなパートナーを持つ人が、どれくらいいるでしょう? アリスとジョージは、対立がとても上手でした。彼らはそれを、考える事だと思っていました。

「考える」パートナーを手に入れるために必要なこと

ではそのような建設的な対立には、何が必要なのでしょう? まず初めに、自分とは全く違う人を探す必要があります。つまり、私たちは自分にほぼ近い人をより好むという、神経生物学的な欲望に反抗しなければならないという事です。

私たちは違う背景、規律を持ち、違った考え方、体験をしてきた人達を探し、彼らと関わり合う方法を見つけなければならないという事です。それには、たくさんの忍耐力とエネルギーが必要です。これについて考えるにつれて、それは愛情の1つだと思うようになりました。なぜならあまり気にならない相手には、エネルギーと時間をつぎ込まないからです。

それはまた、頭を切り替える準備をしなければならないという事でもあります。アリスが研究員と正面からぶつかる度に、彼女は彼らにひたすら考えさせられる、とアリスの娘さんが教えてくれました。彼女は、「母はケンカを楽しむという事はありませんでしたが、彼女はとてもケンカ上手でした(笑)」と言いました。

(会場笑)

対立を恐れていては人材を活かせない

これは1対1の人間関係においての一例です。しかし直面する大きな問題、つまり私たちが経験してきた大惨事のほとんどは、個人から来るものではなく、チームから来るものです。そのいくつかは、国よりも大きいです。多くのチームは、何百、何千、何百万人もの人々の生活に影響を与えられます。

ではそういったチームは、どうやって考えるのでしょうか? ほとんどは、考えるという事をしません。

(会場笑)

それは彼らがしたくないからというよりも、本当はできないからです。彼らがそれをできないのは、チームの中にいる人達が対立を怖がり過ぎているからです。アンケートでは、ヨーロッパとアメリカのチームの幹部の85%もが、怖くて話す事が出来ない仕事上の問題や悩み事を抱えている、という事を認めています。

それによって引き起こされる対立を、恐れているのです。どう対処していいか分からない議論に、巻き込まれる事が怖いのです。負けてしまうと感じているからです。

85%というのは、非常に大きな数字です。チームのほとんどが、ジョージとアリスが見事にできた事ができないという事です。彼らは一緒に考える、という事ができません。チームを統制し、最高の人材を探したことのある私たちの多くが、彼らから最大限のものを引き出せないという事です。必要な技術を身につけるには、どうしたらいいのでしょうか?

もし対立が怖いなら、それを「考える」ことだと見なければなりません。なぜなら、技術と訓練も必要だからです。そして、とても上手にならなければなりません。

反対意見をあえて口にすることで、物事は改善されていく

最近、ジョーという重役と一緒に仕事をしました。ジョーは、医療機器の会社で働いていました。ジョーは開発に取り組んでいた医療機器について、その機器の複雑さが人を傷つけてしまうかも知れない誤差を生んでいると思いました。

彼は、助けようとしている患者を傷つけるのが怖かったのです。でも彼が自分のチームを見回してみると、自分の他に心配している人は全然いなかったのです。彼は、何も言いたくありませんでした。結局彼らは、ジョーの知らない事を知っていたのかも知れません。

彼はバカに見えるかも知れないですが、彼は心配し続けました。彼は心配し過ぎて、自分にできるのは大好きなこの仕事を辞めることしかない、という所までいってしまいました。

ですがジョーと私は、悩み事を打ち明ける方法を見つけました。そこで起こった事はこれと似たような状況において、常に起こるような事でした。皆が同じ疑問と疑念を持っていた、という事が分かったのです。ジョーには支持者ができ、一緒に考えるという事ができました。

そうです、そこにはたくさんの対立とディベート、議論がありました。でもそれがあったから、参加していた皆が問題を解決するために創造的になり、その機器を変えるという事ができたのです。

ジョーは、多くの人が思うように、告発者です。彼は他の告発者のような変人では、全くありませんでした。彼はチームやチームの高い目標に対して、情熱的に貢献しました。しかし彼は、対立をとても怖がっていました。沈黙のほうがもっと怖いと思うまで。

あえて口にした時のほうが、自分の中にあるものやシステムに貢献できる事が、想像していたよりもずっと大きい事に気が付いたのです。彼の同僚は彼を変人だとは思いません。彼らは彼を、リーダーだと思っています。これらの会話をもっと簡単に、より頻繁にするにはどうしたらいいのでしょうか? 

対立を恐れていては人材を生かせない

デルフト工科大学は博士号を取ろうとする学生に、自分を弁護する5つの声明を提出するという事を課しています。その声明がどんなものなのかは、あまり重要ではありません。大事なのは、学生が「権力に進んで立ち向かう事が出来るのか?」という事です。

私は、これは素晴らしいシステムだと思います。しかし、博士号を取ろうとする候補生だけに使うのでは人数が少なすぎますし、年齢的にも遅すぎると思います。「考える」組織や「考える」社会を持とうとするならば、この技術を子どもや大人、育つ過程の全ての段階において、教える必要があると思うのです。

事実、私たちが目にしてきた大惨事のほとんどが、秘密や隠された情報から来るということはめったにありません。自由に触れられて、外にある情報から来ています。

ですが私たちが、わざと目をそらしているのです。なぜなら、私たちがそれによって引き起こされる対立に対処できない、向き合いたくないからです。

私たちが沈黙を故意に破り、わざわざそれに見を向け対立を生む事で、自分と周りにいる人達が、1番いい考え方をする事が出来るのです。

オープンな情報は素晴らしいです。オープンなネットワークは、必要不可欠です。しかし対立の技能や習慣、才能や、それを使うマナーを身につけない限り、私たちは問題を解決できません。公開は終わりではありません。始まりなのです。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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