どのように構造変革を起こしていくのか

朝倉祐介氏(以下、朝倉):はい、それではどうぞよろしくお願いします。「トランスフォーメーション ― 構造改革を実現する」というセッションですね。モデレーターを務めさせていただきます朝倉です。よろしくお願いいたします。

今日は4名のパネリストをお迎えして、会社の中の大きな構造変革をどうやって起こしていくのか、そういった取り組みなどについてお話をうかがっていこうと思います。

それでは、皆様、冒頭に御一方ずつ自己紹介と会社のこれまでの取り組みなどの紹介資料をご用意いただいておりますので、順番にお話いただこうかと思います。それでは、まず爆速ヤフーの小澤さんからお願いできますでしょうか。

小澤隆生氏(以下、小澤):小澤でございます! 今日もよろしくお願いいたします! 構造改革でございますがね、相変わらず私がなぜここに呼ばれているのかわからないままでの登壇です。

IVSは資料作ったことがありませんけど、今日は1枚作ってまいりましたんで、それにのっとりお話をさせていただきたいと思います。「トランスフォーメーションってなんだ?」って聞いたら「変革だ」って話ですからね。

なんでそういうのが必要かと。皆さん方もなんでそれに興味あるかと。構造改革の意味分かってないまま「このセッションしかない」「これしかない」というので来てる方いらっしゃると思いますけど、私なりに解釈したらだいたい会社ってのは一本調子で儲かるものじゃありません。必ず踊り場、もしくは立ち上がることすらできてない会社がある。

そういう場合にどうやって儲けようか、どうやってビジネスを変革させようかということで、ひょっとすると組織からいじるか、ビジネスモデルからいじるかというお話だと思っております。

ソフトバンクはトップダウン経営

私はウッカリというか、何社か渡り歩いていますから、そういう現場を都度見ております。その中で「こうやってやるのか!」っていうのをいくつか持ってきましたので、ちょっとそれを(見てもらおうかと)。私の自己紹介はヤフーの検索で調べてください。

いい話と悪い話が半々で出てますんで。まずですね、私が今まで見てきた構造改革。成功させるためにはまずトップダウンでございます。強い意志。

私が見てきた例でいうと三木谷浩史さんの楽天とか孫正義さんのソフトバンクグループとかヤフーが新しいビジネスをスタートすると。ソフトバンクにいたっては、今「ケータイ!」ってやってますけど、数年前まで(業種は)全然違いますからね。あれはやっぱりトップダウンじゃないとできません。

ご存じのとおり、元々ソフトウェアの卸、それから出版業の会社ですから。今、皆さん、当たり前のようにソフトバンクを「携帯屋だ」って言ってますけど、足が地についてないですからね。

(会場笑)

言ってしまえばトラベリングです、あれは。ピボットというものじゃありません。これまた、広報に怒られるパターンですね!

(会場笑)

ただ、そういったものはトップダウンで進んでいくと。ここにいる方、会社のトップでしょうから強い意志を持っているし、現場から出てくるような話ではないということは理解しているでしょう。

構造自体をいじるってのはそういうものですからね。建物でいったら内装じゃないです。柱から作り替えるというところですから、トップダウンに決まっていると。こういうことかと思います。

自ら身を引き、後輩に道を譲ることも必要

それから、この構造改革をいかに現場まで浸透させるかといった時に「我々はここで(人を)見るぞ!」っていう人事・評価制度から変更させていくことが必要です。特にヤフー。

まさに新人事体制になってから評価制度を抜本的に改めた。そうじゃないと、現場がなかなか動かないからです。「これからこうだ。頑張ろうぜ!」という気持ちをいくら伝えたとて、そうそう(組織の性格は)入れ替わるものじゃありませんから。

ここの指標で君たちを評価する、この方向に向かって頑張っていくという(延長線上で)人事・評価制度を変更すると。これが一つの秘訣なんじゃないかなと思いました。

それから、3つ目ですが、そもそも経営陣とトップダウンで人を変えるんですからトップ自体を変えると(いうことも当然です)。まさにヤフーで行われたことですけども、社長以下役員総取替えということもあります。

当然「明日からこうしよう」「構造変えるんだ」っていった時に人ごと変えるというのは非常にロジカルな話でございます。当然これは株主と経営陣との関係性による中でできることとできないことがありますが「ホントに自分じゃできないな」と思った場合は経営者が自ら後継を指名して変わるということも必要かと思います。

例えば、私はヤフーショッピングのトップになりました。これは経営陣というかマネジメントを変えるという一例でございますが、翻って楽天イーグルスというプロ野球チームをやってた時に「これ以上私がやってても良くならないな」って思って身を引きました。世の中的には逃げたとかいろいろ言われていますが違います。

このままでは私のキャップを自分自身でかけてしまうと思いまして「どうぞ」と後輩に譲ることで自分が引くということも必要なんじゃないかなと考えたわけです。

繰り返しになりますけど、構造改革はやはり会社の抜本的な変更をうながすものですから、当然それを決める人がしっかりと信念を持つ、もしくはその人自体を入れ替えてでも、自分が身を引いて後輩に譲ってでも変えていく必要がある。

そして変革を現場に深く浸透させるためには人事制度・評価制度自体すらいじる必要があるんじゃないかなということでございます。以上です! ありがとうございました! よろしくお願いいたします。

ヤフーは会社の気質がユルい

朝倉:ちょっと小澤さんに追加でうかがいたいんですけども。小澤さんの場合、楽天とヤフーと複数またいでやってらして。今、特徴を挙げてましたけど、逆にいうと何か違う点、両社でここら辺のやり方違ったなってポイントっておありですか?

小澤:会社の気質ってのが全然違いますから、そこにある程度合わせることが必要ですね。楽天からヤフーに来て一番思ったのが、ヤフーはホントユルい。既に儲かっていましたからね。ユルくて儲かっているならそれは最高ですよ。

ところが、これが儲からなくなってきた。今まさにモバイルがガーッと来た時に、ヤフーが「このままじゃいかんな」っていう一方で、楽天は最初からグッと引き締まってますからね。

変えるべきものは何なのかといった時に、ひょっとしたらヤフーで難易度高いのは文化をいじらないとダメかもねって局面にあるかも知れません。楽天の場合、文化自体はもうかなりいいものができてますから、それに合わせてビジネスモデルをいじっていくということです。

だからWhatとHowでいうと、ビジネスモデルがWhat、企業としての働き方とか実現の仕方がHowっていう部分で考えると、僕が本当所属していた楽天は「Howの部分強いなぁ」と思うわけですよ。

ヤフーは今WhatとHow両方いじろうとしていると。これはなかなかやっぱり難易度が高いですが、それでも経営陣すらいじって頑張っているというところの差は感じますね。優等生でしょ?

(会場笑)

朝倉:ありがとうございます。会社によって働きかけるレバーが違うということですね。それでは次にボヤージュグループから宇佐美さんお願いいたします。

1つ目の変革はサイバーエージェントとの資本提携

宇佐美進典氏(以下、宇佐美):ボヤージュグループの宇佐美でございます。おはようございます。久しぶりにIVSでこちら側(登壇者)の方に来たかなぁと思います。

会社自体は99年に立ち上げて今年でもう丸15年というところでいろんなことがありまして。今日はどんなことがあったのか、特に構造変革といわれているような節目がうちではだいたい2年から3年に1回くらいのペースであったなぁと思いますので、その辺を簡単に振り返りながら、どんなことをやってきたのかっていう話をしたいなと思います。

まず、変革の話をする中で、会社の変革の話と僕個人としての変革の話、この2つの要素がまずあるなと思っております。僕個人としてみると、実はボヤージュグループっていうのは最初から社長ではなく、立ち上げの時は取締役COOという形でやっていました。

2002年の時に、一緒に立ち上げた尾関茂雄くんと代表の交代をし、VOYAGE GROUPの代表を兼務しながら2005年から2010年までの5年間親会社に当たるサイバーエージェントの取締役をやってきました。

自分で立ち上げた会社の経営をやりながら、一方で尊敬する藤田さんという経営者のもと役員をやらせて頂き、二つの異なる会社を同時に経営陣として関わることができたのは非常に良い経験となりました。

特にアメーバが赤字から黒字へと転換するタイミングでもあり、藤田さんの凄味ある意思決定をリアルタイムに経験できたのは非常に勉強になりました。

99年に会社を立ち上げて、(スクリーンでは)5つくらい吹き出しでありますが、1つ目の変革としてはやはり2001年9月にサイバーエージェントと資本提携を行い、連結子会社となったことです。

2つ目が、創業期からやっていた事業「MyID」を「ECナビ」という価格比較サイトにリニューアルしたこと。三つ目の変革が会社の組織風土そのものを変えていくというもので、2005、6年ぐらいの頃ですね。

そして三つ目が、2年半前の2012年に、業績が悪化したということもあったんですけども、MBOを行ってサイバーエージェントグループから出て、新たにプライベート・エクイティ・ファンドの人たちと一緒に、会社をさらに次の成長軌道に乗せていくということを行ってきたことですね。

そして今年(2014年)の7月に東証マザーズに上場して、また新たに変革のタイミングに来ていると感じています。これがざっと変革の歴史というところになります。

組織風土の改革が一番大変だった

朝倉:ありがとうございます。ボヤージュの場合、直近の業績も非常に絶好調というところですごい勢いがあるという印象がありますけども、今5つあった変革を振り返ってみて、一番印象深いというか、ここは結構大変だったなっていうポイントってどこにあったでしょうか?

宇佐美:結論からいうと、この3つ目の組織風土の改革の部分が、1年だけで終わった話ではなくて、4年から5年ぐらいかけて変えてきた部分でもあるので、一番大変だったなあと思います。

いろいろ変えてきて思うのは、人に例えると、資本が変わるってのはまさに親が変わるってことですし、代表が変わるっていうのは頭が変わるって部分で、事業モデルが変わるっていうのは心臓を取替手術するみたいな形なんですけど、組織風土の改革って結果的に血液を入れ替えてA型からAB型に変えるみたいな感じなんですよね。

なので、すぐに変わるわけではなくて、人事制度のところもそうですし、目標設定のところもそうですが時間をかけて(行われるのかなと)。

ちょうどこのタイミングで、機能別から事業部制の組織に変えたり、採用のやり方も変更しました。

創業以来、会社がずっと農耕民族的な集まり、いわゆる草食動物っぽい感じのカルチャーでもあったので、いかに自分の手で狩猟民族型の組織に変えていくかをいろんな手段を使いながら変革を試みてきた訳ですが、そういった部分が一番大変だったなというふうに思います。

朝倉:ありがとうございます。