「愛されたくて」拒食症に陥った思春期の私

加藤ゆみ氏:あなたは「あそなび」に出会っていますか? 私は、「あそなび」に出会いました。

幼い頃私は、誰かに受け入れられたくて認められたくて仕方がなかったのかもしれません。怒られないように、褒められるようにといい子を演じ、思春期になれば、かわいくキレイに、今風に。「かわいければ愛してもらえるの」と思い込み。そして、無理なダイエットから心の病へ。拒食症になって、ついには倒れてしまったんです。

身体は休息すれば元に戻りました。しかし、心の問題はなかなか回復しません。外から見れば、普通の女の子。しかし心の中は壊れそうで壊れない。そんな心の叫び声を抱えたまま、なんとなく大人になっていたのです。

言葉以外のコミュニケーション、自由すぎる子ども達とのかかわり方とは?

ある時アーティストに出会い、お手伝いをしていました。すると、「ハンディキャップを持つ子どもたちと一緒に、アートをしてみない?」と声を掛けられたんです。アートのクラスを担当することになってしまいました。

子どもたちは様々です。大声を出したり叫んだり、教室を飛び出してしまったり。一緒に何かをするという感じではありませんでした。私が子どもたちの注意を引こうと一生懸命呼びかけても、全く言葉は通じません。「一体、どうしたらいいんだろう?」と悩みながら、日々が過ぎていったのです。

ある日偶然だったんですが、私が持っていた1つの木のかけら。これをずっと見ている男の子がいたんです。その瞬間です。

「そうか! 言葉が通じないんだったら、モノで、色で、そして形で、感触で!」と閃いたんです。私は早速試してみました。すると子どもたちは、ちらっと覗いたり、ちょっと触ってみたり、蹴ってみたり。少しずつですが、変化が起こってきたんです。

「よし!」と手応えを感じた私は、調子に乗って巨大な布を持ち込んだり、紙を持ち込みました。そして子どもたちが描きやすいようにと道具を揃えました。そして、音。楽器なども置いてみたんです。すると、自然に何かが始まっていたんです。

「やった!」と。そして笑い声が1人、そして2人。あれ、3人。

子ども達と喜びを共有することで、自分自身も変われた

「すごい! 楽しいという空気に人の意識が向かうんだ!」ということに気が付いたんです。「そうだ! だったら私が楽しんじゃえばいいんだ!」と、思ったんです。

例えば、私が1つの色を置いていきます。すると子どもたちは、大胆に色を置いてくれます。濁って、破れて、潰れて、ぐちゃぐちゃに。私の心の中もぐちゃぐちゃにかき回されて。そして固定概念も溶け出して。「やられた!」「やっちゃった!」「汚さないで!」という気持ちも、いとも簡単に破られ、「やった!」と、そんな感じで子どもたちと一緒にはしゃいでいたんです。

「そうだ! これがいいんだ! この瞬間がいいんだ!」と。

「このままがいいんだ!」と、私が気づいたんです。

子どもたちのそんな姿がきらきら輝いて眩しい。そして自信に溢れていました。子どもたちと一緒に喜びを共有した時は、なんだか心がジーンとあったかくなっていたんです。そんなプロセスを経て、ふと気が付くと、あれ? 私が抱えていた心の病が、ぜーんぶ消えていたんです。

私が変わった! 私を変えた!

「これはすごい!」「人を変える力がある!」と。そうして2010年NPO「こどもアート」が誕生しました。

いつの間にか大人も夢中になる「子どもアート」のプロジェクト

こどもアートの活動は、子どもたちと大人が一緒に遊んで学べる機会を作っています。例えば2012年。都会の親子が田舎を訪れる「こども×まち×田舎 プロジェクト」。

こどもの存在が、過疎高齢化の進む田舎のイメージをがらりと変えます。そこがファンタジーの世界だと大人が気付くんです。そして村の人たちも子どもたちのためにと、一丸となって助け合い、元気が出てきます。初めはしぶしぶ子どものためにと足を運んだワークショップやイベントも、いつのまにか大人が夢中になっているんです。

「ああしたい! こうしたい! もっとしたい!」ときらきら輝き始め、創造のエネルギーが湧き上がっているんです。また自分たちの理想の暮らし、地域のあり方や生き方にも気付きが生まれています。子どもの存在が大人を動かし、変えていく。場の空気を変える。みんなが元気になって、笑顔が溢れています。子どもは勝手に遊び始めます。

大人から見れば、「何してるの?」と、無駄なことも多いかもしれません。しかし子どもは遊びと学びのプロセスが楽しいから、もっと遊びたくなりもっと学べている、そんな生きるエネルギーに溢れています。子どもたちの表現や遊びは、誰かのためや何かのためというわけではなく、ただそこにあるものに反応し、おもしろいから、楽しいから、どんどん進んでいくんです。

あなたにとっての「あそなび」はなんですか?

私はそんな子どもたちが夢中になって、喜んだり、遊んだりそんな姿が美しい、そして神々しいと感じるのです。そんなことで私の美の意識もたくさん変わってきました。遊びと学びのプロセスが繋がり、生きるエネルギーが湧き上がる。それが、「あそなび」の意味なのです。

「あそなび」とは、遊び、学び。両方に共通するは、美、アート、創造すること、生きることです。私のあそなびは、子ども達と一緒に遊んで学んで、自分を取り戻しこどもアートが誕生。そして遊びながらプロジェクトが生まれ、今このステージに立っています。偉業を成し遂げたアインシュタインのあそなびは物理学。さあ、皆さんのあそなびは何ですか?

あそなびに出会ってください。