元スターバックスCEO・岩田氏「ミッションを見つけよう」 企業のリーダーに求められる役割とは?

問い続けるミッション #1/2

アトラス、スターバックス、ザ・ボディショップの3社で経営を経験した岩田松雄氏。ある日、ビジネススクールで当然のことのように学ぶ「企業は株主のために存在する」「経営者の役割は企業価値を高めることである」といった考えに疑問を抱きます。経営を行う中で一番重要なことは「ミッション」であることに気付いた岩田氏は、「好きな事、得意な事、人のためになることを続けなさい」と人々に語りかけました。(TEDxKeioSFCより/この動画は2013年に公開されたものです)

社長を目指すのは当たり前だと思っていた

岩田松雄(以下、岩田):こんにちは。本来、カンペは持つなって言われてたんですけれども、カンペはちゃんと持ってきました。英語でも考えてみたんですけれども、今日は大阪人が標準語をしゃべろうとしたらこういう日本語になるという言葉で話したいと思います。非常に難易度が高いんですけども、よろしくお願いします。

見えますか? これ、私のサインなんですけどね。ひらがなで「いわたまつお」って書いてます。非常にシンプルでわかりやすいサインだと思います。

私は小さい頃、家業がですね、商売をやっていた関係で、おじいちゃんの代、それから親父の代、うちの親父の代で、会社自体は潰れてしまったんですけども、小さい頃から何となく、いずれこの会社を継いで、社長になるのかなって漠然と思ってました。

それが最初に思った夢ですかね。小学校の時にですね、将来、きっとサインをする時がくるんじゃないかって思ってですね、これ、小学校6年の時に考えたサインなんですね。

実は先月ですね、本を生まれて初めて3冊出しました。1つはベストセラーになってるんですけども。よく、読者の方に、本を買っていただいた方にサインをねだられることがあります。40年にして、ようやくこのサインが日の目を見ることになりました。

これが大学の時ですね。皆さんと同じ大学生の時。実際もう、野球少年でした。野球しかやってなかったんですね。

アルバイトはおもに家庭教師をやっていました。結果的に断ろうと思っていた日産自動車に、たまたま会ったリクルーターの人に惚れてしまったんですね。素敵な人だなあって思って。で、日産に入ったんですね。日産に入って、こういう講堂で新入社員って挨拶させられますよね。どこどこ大学のなになにですと。

今回こういう部署に配属されましたと。よろしくお願いしますと。その時にですね、僕は日産自動車の社長目指してがんばりますって、宣言したんですね。そうすると会場のほうから失笑みたいな感じがあって、何言ってんのって。その挨拶が終わったあと、上司に嫌み言われたりしてたんですね。

僕は今から思うと、その時は社長って一体何かって、さっぱりわかってなかったと思うんですね。どういうものか。ただ、これからずっと日産を続けるつもりでいましたから、どうせサラリーマンとしてやっていくなら、その頂点って何か、社長だと。社長を目指すのは当たり前じゃないかと思ったんですね。

部長を目指す仕事のやり方と、社長を目指す仕事のやり方と、全然違うだろうと。そういう感じだったんですね、決して金持ちになりたいとか、偉くなりたいとか、そんな気持ちはなかったと思います。

マネジメントの違いによって生まれる“差”

私は浦安に住んでいるんですけれども、浦安の駅前にハンバーガーショップがあるんですね、2つ。あんまり言うとあれなんで、AハンバーガーショップとBハンバーガーショップがありますと。

Aハンバーガーショップに行くと、何かとてもその、社員というんですか、スタッフの人が生き生きと働いているんです。楽しそうにやってる。値段表見ると、スマイル0円とか書いてます。

(会場笑)

もう一方の、つい50メートル先のBハンバーガーショップに行くと、本当に嫌そうに仕事をしてるんですね。暗くてね、いやいや、ホイって感じですよね。

そのとき、何なんだって思ったんです。だって、扱ってるもの、商品、ハンバーガー同じですよね。ほとんどの方がアルバイトですから、時給も同じですよね。なのに、何でこんなにお店によって働いてる人たちが、かたや生き生きと働いてる、かたや本当に嫌そうに仕事をしてる。これは一体なにか。すごく素朴に疑問に思ったんですね。

その違いっていうのが、結局その経営、マネジメントの違いだって、僕は思ったんですね。だからもっともっと経営の勉強をしたい。そういう風に思ったんです。

そして、とっても苦労したんですけどね、TOEIC300点から勉強始めて2年間で900点まで上げて、苦労に苦労を重ねて、念願のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入りました。UCLA本当にとっても勉強になりました。

ファイナンス、マーケティングだとか、それからいろんな価値観ですね、世界中からいろんな人が集まってくる。そのほとんどの学生さんっていうのが、皆それぞれだいたい自費で来てますし。

いろんな経歴、決して卒業したあと、大企業に行きたいなんて思わないんですね、僕はそこが一番、価値観が何でもありだってのが一番学んだことです。

授業を受けてるときに、ビジネススクールですから、結局最後数字なんですよね。数字に表してどんだけ儲かるかどうかっていう、ヒューマンリソースみたいなそういう科目でさえ、何でもかんでも損得勘定で結論づけるんですね。

もちろん、後々社長としてマーケティングだっていう知識は本当に勉強になりましたけれども、役に立ちましたけれども、本当にそれだけでいいのかなって、経営者になっていくのにって。

だから、学期中は本当に死ぬ思いで勉強させられましたけれども、長い休みの間には、東洋哲学、論語、王陽明かな。陽明学とか、あるいは日本の小説、司馬遼太郎さんの本を読んで、心のバランスを保ってた、そんな記憶があります。

企業は株主の為だけに存在するのか?

アトラスに入って、上場して、プリクラで一世を風靡してですね、上場してました。上場したあと、プリクラのブームが過ぎて、そこのオーナーさんとか創業者に、白紙のキャンバスに君の好きな絵をかいてって言われて、アトラスの社長になりました。

まあ、初めての社長の経験ですから、この会社をなんとか立て直そうって気持ちもあって、社長就任演説ってのをやったんですね。

皆を集めて、みかん箱みたいな台に乗ってですね、これからは企業価値経営だと。いかにキャッシュフローを増やせるか、それが大事だみたいなことを30分くらい、本当延々と力説したんですね。

それこそ、ビジネススクールで学ぶようなことを。だけど、社員の人たち、体はそこにあるけれども、魂はそこに無いって感じで、いくら僕がそういうことを言っても全然心に入ってない。打ってないってのがわかったんですね。ハッと気がついたんです。

もちろん、経営者としてそういう企業価値を高める、キャッシュフローも意識しなきゃいけないけど、でも、そんなことでは社員は動かないんですね。

それから朝礼とかの場で話すのは、たとえばお客さんが来たらちゃんと挨拶しましょう、遠くからお客さん来ていただいたんだから、玄関までお見送りしましょうと。そんな話をしてました。

ビジネススクールでも、皆さんも授業を受けるとですね、企業は何のためにあるかっていうと、要するに企業価値を高めるためにあるんだと。もっとはっきり言えば、株価を上げるためにあるんだと。そういう風に習うんですよね。企業は株主の為にあるんだと。経営者の役割ってのは、いかに企業価値を高めるかってことが役目だと。

なるほどそうだなと思いながら、でも、実際社長として現場を預かってやってると、本当にそうなのかなってすごく疑問に思ったんですね。何か腑に落ちないって感じがあって。日本の経営学者の一部の人、従業員のためにあると、それは間違ってないけどって、何か悶々と感じたんですね。

そのときに、ザ・ボディショップっていう非常に企業理念のしっかりしたイギリスの化粧品会社ですけども、そこの社長をやっているときに、本当に大げさなんですけど、天の啓示ってあるんですね、天から言葉が降って来たみたいな感じなんですね。

別に考えぬいてこういう結論に達したんじゃなくて、普通に、ただ、心のどっかでは企業は何のためにあるのかってことを考えてたからだとおもいますけど、私は、企業は世の中を良くするためにあるんだって、そういう風に思ったんですね。そう思った瞬間に、スーっと考えがお腹の中に落ちたんです。

例えばボディショップは、化粧品を通じて世の中を良くするんですね。さきほどプレゼンにもありましたけど、やっぱり、化粧することによって、皆さん心が高揚するとかですね、明るくなるとか。あるいはスターバックス。スターバックスのミッションってのは、人々の心に活力と栄養を与えると。コーヒーを売ってるんじゃないんだと。

だからそれぞれの企業、当然SFCは学生さんを育てるっていうことで、世の中に貢献しているわけですよね。それぞれの会社に、それぞれの役割があるんだっていう風に私は思いました。

その存在理由があると思うんですね。その存在理由がミッション。経営理念でもいいんですよ、使命でもいいでしょう。僕はミッションって言葉がしっくりくるんで使ってます。

企業にとってミッションがすごく大事ですってのは、経営をしていく中で、ボディショップでもスターバックスでもそうですけど、本当に実感した。なぜなら、皆社員の人、アルバイトの人、パートの人たちが、一生懸命仕事をしている。

その会社に対するロイヤリティも高いですし、会社のことをとっても愛してくれるんですよね。その素晴らしいミッションがあるから、皆がそうやってついて来てくれる。それが僕が3社で8年間社長をした中の、1つの結論なんですね。

人はそれぞれ存在理由がある

あるとき、ふと思ったんですね。会社にとって、その会社の存在理由、それがミッションがすごく大切だ。じゃ、個人にとってどうなのかって思ったんですね。

例えば、岩田カンパニー、中村カンパニー、皆さんもそうですね、一人ひとりが自分カンパニーの社長なんですね。従業員はただ一人ですけども。

でも、じゃ、皆さんここにこうやって生きてるってことは、すごい偶然って思いません? あるいはラッキーって思いません? いろんな震災があったり、そもそも、生まれて来たことも、あるいはお母さんのお腹のなかで命を絶ってしまったこともあるわけですよね。

でも、僕はこうやってもう50年以上も生きちゃってるわけですけれども、すごい偶然というか、ラッキーですよね。今生きてるっていうよりも、生かされてるっていう感覚、それは何でかっていうと、それぞれに存在理由があるからだと思うんですね。

人それぞれ、皆が生きてる存在理由ってあると思うんですね。だけど、じゃ、皆さんのミッションは何ですかっていきなり聞かれても、なかなかわからないですよね。だから僕は自分なりに思った事、ミッションを考えるヒントをちょっと話したいんですけれども、すごく単純なことです。

好きな事、得意な事、人のためになる事、この3つの輪っかの真ん中、それを皆さんのミッションにしたらどうかって僕は思うんですね。

野球の例をとると、野球って僕、大好きなんですね。大学までやってました。一応近畿リーグの一部でピッチャーやってましたからね。そこそこ上手かったと。まあまあ上手いでしょと。でも、僕のプレーを見に来る人ってだれもいない。だからだれの種にもならない。

だから僕にとっての野球は趣味にしかならないと。だけど、例えば、ダルビッシュ。当然彼は野球少年で、ずっと野球をやってきたわけですね、小さい頃から。彼の7色の変化球って、そう簡単には打てないですね。

ダルビッシュのプレーだったら、お金払ってでも球場に足を運びますよね。だから彼のミッションってね、多分大リーガーだと思うんですね。

自分のミッションは「リーダーシップ教育」

じゃ、今僕のミッションは何かって言うと、リーダーシップ教育なんですね。僕は震災の対応を見てたりしたときに、やっぱり日本には政治家なり経営者が少ないんじゃないかって。皆さん夜行バスで乗り継いで、せっかく被災地に行ったけれども、ちゃんとした指示もなく、ただただ帰ってきただけっていう話を、何回か聞きました。

やっぱり、日本にはそういったリーダーが必要なんじゃないか、そういう風に思ったんですね。当然僕は若い頃かな、わりと学級委員だとかキャプテンとか、そういうことが回ってくる役割が多かったです。一応3社で8年間の社長の経験があると。一応実績ものこしましたので、得意なことと言って良いと。

そのリーダーシップ教育をするために、こうした講演であったり、ビジネススクールで教えたりっていうことをすることで、私は今お金をいただいているわけですね。だから、今、私の3つの輪の真ん中にあるのは、リーダーシップ教育なんですね。

ただ、じゃ、はじめからこんなことを考えついたかって、そうではなくて、ついつい最近なんですよね。最初は、日産自動車の社長になるって僕は思ってたんですね。そのあと専門経営者になるって、3社の社長をやりました。で、今はその次の段階になったわけですよね。だから、ミッション自身も進化させていくことがすごく大事だとおもうんですよね。

当然ですよね、皆さんも好きな事、得意な事って変わって来ますよね。あるいは、発展途上国の皆さんに貢献したいと、今英語を話せないから英語を勉強したいと。得意になったと。今得意じゃないかもしれないけども、2年先、3年先得意になるかもしれない。だから、自分のミッションを考え続ける事。それを進化させていくこと、それが一番大事だと、私は思います。

好きな事だったら、当然情熱持てますよね。得意な事って続けられるし、ひょっとして一番になれるかもしれませんよね。人のためになるってこと、やっぱりその、我々も生きていかなきゃいけないわけですから、何らかの報酬をいただかないといけない。

人って何かをすることによって、何らかの報酬。それは、お金じゃないときもあるかもしれませんけども、ありがとうって一言かもしれません。

でも、やっぱりこの3つの輪、真ん中を皆さんのミッションにされたらどうかなって私は思います。最後にいっちゃいましょう。

好きな事、得意な事、人のためになることを考え続ける

私はこちらにお邪魔するのは2回目で、半年くらい前に講演をしたんですね。その時に、そのあといろんな学生さんたちとお話をして、私はもう会社をつくって持ってますとか、何か皆さんすごく頑張ってるなって思いました。自分自身、大学時代ほとんど勉強しなかったし、そんな気持ちもなかった。本当に素晴らしいなって思いました。

でも、一方でそんなに慌てることないよって、何か早く起業する事、早く金持ちになること、それがカッコいい事、僕はそんなことはないと思うんですね。起業は目的じゃないですよね。手段ですよね。

起業することによって、何らかの形で良くするんだって。その形はね、自分にとって何かっていうことを、目先の、たまたまネットが儲かるとか何とかってことで、起業していいのかなって思います。

人生本当長いですよね。だから、今やる事はビジネスプランを作る事なんでしょうかね、本当に。

僕だったらもっともっと、ま、皆さんがもし、僕の子どもだったら、そんなことよりも、ビジネスプラン作るよりも、文学を読んだり、映画を観たり、旅行をしたり、友達と仲よくするとか、あるいは歴史を勉強するとかね、そっちのほうがすごく大事だと思うんですね。

僕はSFC大好きです。でも、慌てる事はないです。そのミッションをどんどん変えていったらいいと思うんです。繰り返しですけど、起業は決して目的じゃないですよね。手段です。

ですから、ぜひ、慌てないで、まずしっかりとした基盤っていうんですかね、大きな木を成長させるために根を深く広く張らないと、大きな木は茂りませんよね。だから、小っちゃな根だけ張って、ピョッと芽だけ出しても、小っちゃい花しか出来ません。

だから、ぜひぜひ、まず、人間としてのね、広がりを作る事、ぜひ今この時間、学生時代は圧倒的に時間がありますから、ぜひそれをお願いしたいと思ってます。

好きな事、得意な事、人のためになること、それを考え続けてください。皆さんの成功をお祈りしてます。どうもありがとうございました。

<続きは近日公開>

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