その決断、実は偏見だらけ!
Googleの社員教育で実施された、“無意識バイアス”に関する講義

Unconscious Bias @ Work #1/3

「たった1%のバイアスが、意思決定に大きな歪みをもたらす」と語る、Google人事部のBrian Welle(ブライアン・ウェル)氏。Googleの社内教育で行われた「無意識バイアス」に関する講義となります。

シリコンバレーには女性起業家が11%しかいない

ブライアン・ウェル氏:今日はご来場ありがとうございます。私はGoogleに8年間勤めていて、People Analyticsという部署に在籍しています。人事部のソフトウェアエンジニアという立ち位置で、全ての人事決定にデータアナリティクスとリサーチを組み込む仕事をしています。

これがなければGoogleは何もできません。1年ほど前、「人々がどのように決断を下し、その決断が最善のものか」という、まだ我々が考えたことのなかった疑問に取り組み始めました。とても優秀で才能のある方々が沢山いらっしゃるこの業界で「間違えた人事決定」を下してしまうことはあるのかという疑問を抱きました。

この疑問はとあるニューヨークタイムズ紙に取り上げられた実験がきっかけになっています。実験とは、ひとつは女性、もうひとつは男性の名前を使い、2通りの履歴書を作り、同僚の教授たちに送るというものです。

アメリカでトップを争う大学の科学研究所のマネージャー職の求人です。彼らは求職者のレジュメを見て、履歴的に適切か、一緒に仕事をしたいか、メンターしたいかなどを自問すると思います。データが戻ってくると、男性の方が「適応だ」「一緒に働きたい」「メンターしたい」という回答が多かった上、報酬の基準が高かったのです。

「まだそういう差別があるのか?」と思いました。世界的にはそういう考え方はまだあるのかもしれないですが、このハイテク産業ではあまりないと思いますよね。でも、外を歩くとHBOの「SiliconValley」という新しい番組の広告が目に入りました。

この広告を見て何か違和感を覚えませんか? 女性がいませんよね。世界的にはシリコンバレーはこのように見られているのかもしれないですね。でも少なからず本当なのです。ベンチャー企業やスタートアップのうち、たった11%しか女性の責任者または創設者がいないのです。

人口全体の11%しか女性がいないのか、結果的にこの11%の女性だけがアイディアをひらめいているのかもしれませんね! そんなことないのはわかってます。そこで我々は、何を原因として、このようなことが起きるのかを調べることにしました。

偏見を持つことは悪いことではない

ちょっと話の時代を戻しましょう。何千年も前の話をします。まだ人間が新しい存在だった時ですね。狩猟採集民だったころ、洞窟で暮らして、綺麗な絵を描いていました。その頃は、日々の決断が生死をわけるようなものでした。

さて、この時代に暮らしているとして、偏見というものがないと想像してみてください。洞窟を出て、食を求め、サバンナを歩き回り、そこで動物を見つけ、「見た目で判断しないぞ」と自分に言い聞かせます。

「フサフサで、足が4本あるから、哺乳類だろう。歯が尖っているから、捕食者だろう。犬っぽくはないから、ネコ科かな? これはもしかするとライオンかな?」と考えます。そこで多分逃げたほうがいいことに気づきます。このような偏見のない思考を持つあなたは、結論としてライオンの餌食になってしまいます。

何が言いたいのかというと、良くないと思われがちな偏見というのは、実は悪いことだけじゃないんです。偏見は機能的ですぐに決断ができるのですが、それがなければ1日が終わらないとも言えるでしょう。

しかし、人に対する判断においてはどうなのでしょうか。現代社会では、生死をわけるような決断は毎日のように訪れるわけではありません。今ニューヨークにいて、何十万人もの人々が周りで生活してますね。

道を渡るだけでもアルゴリズムが必要になりました。正面から人が来てます、右にそれるか、それとも左か。ぶつかるまでどれくらい距離があるか? みたいなものは偏見なく判断できません。

電車に乗る時、空っぽの車両と満員の車両が来たらどちらに乗りますか? 普通に考えたら、広々とした車両に乗るでしょうけど、皆さんは経験上その車両は避けるでしょう。そのような判断を皆さんしています。偏見無しではできない判断であり、必要なことなのです。

自身の行動にバイアスがかかっていることに気づいていない

我々は一瞬で1100万ビットもの情報を受信しています。意識的には、そのうちの40ビットしか処理できていません。ということは、それ以外の情報は、無意識的に処理してしまっているのです。

非常に複雑なヒューリスティックスやアルゴリズムは潜在的に働くのです。素晴らしいですよね、そこでひとつ考えてみてください。このようなバイアスやヒューリスティックスで作られている仕組みに頼って良いのでしょうか? 頼るべき時もありますが、職場でお互いに対する判断をする時は、偏見によって客観的判断が影響されているか考える必要があります。

いつ、どの状況でバイアスに任せるか、どの状況で熟慮すべきか定める必要がありますね。もちろん人間はタクシーや地下鉄より複雑なので、自分のバイアスや文化に行動が反映されていることに気づかないのです。

我々が持つバイアスがわかるように、ちょっとした実験をしたいと思います。左手を上げて「左」と言うか、右手を上げて「右」と言うだけです。画面上にカテゴリーが表示されます。左に男性、右に女性と出されていますね。今からいくつかの言葉が表示されるので、男性に関係すれば左手を挙げて「左」、女性と関係すれば右手を挙げて「右」と言ってください。やってみましょう。

【夫】 いいですね。左です。それでは進めてみましょう。声が聞こえたら進めていきます。

(以下、同様の実験) 【叔父】【おじいちゃん】【息子】【男の子】【女の子】【母】【娘】【おばあちゃん】【妻】

はい、ありがとうございます。カテゴリーを変えましょう。左を文系、右を理系にします。心理学は理系ですからね。

(会場笑)

それでは始めましょう。

【工学】

(以下、同様の実験)

【生物学】【音楽】【化学】【文学】【地理学】【英語】【人文科学】【物理学】【算数】

よくできました。今度はカテゴリーを合体させて、ちょっと難しくします。男性または理系は右、女性または文系は左です。わかりましたか? じゃあやってみましょう。

【音楽】

(以下、同様の実験)

【母】【哲学】【父】【歴史】【妻】【工学】【息子】【化学】【物理学】

ありがとうございます。もう1回やります、何かわかりますか? カテゴリーを混ぜます。男性または文系は左、女性または理系は右です。それでは。

【父】

(以下、同様の実験)

【工学】【音楽】【娘】【叔父】【算数】【女の子】【文学】【夫】【物理学】

「女性だから」ではなく、資格がないから採用しない

1番最後にやったのが、難しかったと思った方? ほとんどの方だと思います。これはImplicit Association Test(以下、IAT)と呼ばれていて、ハーバード大学のMahzarin Banaji教授とワシントン大学のTony Greenwald教授により開発されました。

この研究では、「男性」と「理系」、「女性」と「文系」がペアであるほうが参加者の75%がその逆より早く回答することがわかりました。先に「男性&理系」と「女性&理系」の組み合わせだったからと思っている方もいるかしれません。

順番は関係なくて、結果は同じになるのです。このIATが開発された1980~90年代では、「女性は男性より数学が不得意だ」や「女性は男性より気配りがある」「年配の方はテクノロジーへの対応が遅い」などの、偏見に関する質問を5段階の尺度で回答する仕組みでした。

そのうち回答に対する差が少なくなったことから、社会として偏見は無くなったという結論が出ました。しかし実は、人々は意識的にあるべき人を演じていただけで、その場で回答を変えてしまっていたのです。

この2人の心理学者は、まだ人々は偏見を持っていて、それを認めたくないだけかもしれないと思いました。このような実験では、自分が持つ偏見を見出すことができます。年齢、人種、体重、性別など様々な種類のテストを無料でネット上で受けることができます。

「Implicit Association Test」か「Project Implicit」でググってみてください。ご自身でも驚くでしょう。理系の女性も「そんな答えを出さない」と思うかもしれませんが、社会で生きてきた方であれば、性別も、文系理系も関係なく同じように答えてしまいます。女性だから採用しないとは言いません。他の方と比べて資格が足りないから、と言います。その方が控えめですよね。

たった1%のバイアスが、社会に大きな歪みを生じさせる

ある人は、このIATの様に偏見はあるかもしれないが、職場などではこのような偏見は小さすぎて影響しないだろうと言いました。そこで研究者たちは、性別に対する微量な偏見の累積的な結果を探ることにしました。

コンピューターシミュレーションを用いて、レベルが8段階ある会社を仮想的に作りました。レベル1は一番下級で、レベル8が一番上級です。女性と男性の比率を5:5で始めました。黄色が女性で、青が男性です。

そこで、各レベルに15%の縮小をプログラムします。縮小された位置には下のレベルから、業績をベースに人材を引き上げるという仕組みです。このシミュレーションの中の社員は皆1から100で業績がランダムに与えられました。

その中の1%に対して、女性に対するバイアスを与えました、たった1%です。女性が1から100で評価され、男性が1から101で評価されるというふうに思ってください。このシミュレーションを、最初から会社にいた人がいなくなり、新しい人によって入れ替わるまで実行しました。

20回実行すると、1%のバイアスで上級の女性の割合が35%にまで変化してしまうのです。少しのバイアスです。このようなピラミッド型構造が、ほとんどのアメリカの企業で見られる傾向です。上に行くほど歪みが生じます。バイアスのみの結果ではないですが、因果関係が無いとは言えないでしょう。

これがなぜ重要なのでしょう? 女性の方々はアイディアに満ちていますし、良い指導者にもなります。他の研究を見ると、企業の上層部の方の性別が多様化している企業は、株主が気にする資本利益率などが安定する傾向があります。

さらに、多様性があるほうがない場合より良い結果が出るのです。女性や黒人、年配のほうが資すわけではなく、多様性のあるグループでの行動は、自分と同じような人しかいないグループでの行動と異なるということです。

似ている人といるときは、共通の素質を強調しがちで、違う人といるときは多様な要素を出したくなるのです。このように多様化の動因がありつつ、バイアスや潜在的意識で制限させようとしているのです。Googleではこのようなバイアスを排し、多様性を高めるためのアイディアがいくつかあります。

ヨーロッパ系とアフリカ系アメリカ人、採用されやすいのはどっち?

今日、皆さんのゴールは「1つだけ行動にうつす」です。今からさらに研究を見ていき、バイアスを排除するための4つの方法を説明します。細かい話をいっぱいしていくので、その中で1つだけでも心に残して、その1つに取り組むだけで偏りは少なくなります。全部は無理だと思うので、1つだけでいいです。

さて、この4つの方法を説明していきます。一つひとつの方法に対して、重要性、研究背景、取り組み方を説明します。事前に言っておきたいのは、これらの方法でバイアスを減らそうと研究者や心理学者は様々な取り組みに励んでいます。

バイアスに関する記事を心理学の学術誌に掲載されるためには、たくさんの研究や実験を実行しなければいけません。掲載される事を目標にしているわけではないので、皆さんの中でバイアスをなくすアイディアをひらめいた人がいたら、ぜひ私たちにも聞かせてください。

まず一番大切な、成功の構造の話です。様々な決断を下す中、一番大切なものだと思うので最初にこの話をしたいと思います。ここで、まずあなたの仕事における成功の定義を考えてみてください。もし人事部にいらっしゃるのであれば、サポートするみなさんにとって成功は何でしょう? 

2005にマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)で行われた実験があります。最初にお話しした実験のように、複数の履歴書を用意しました。半分はアフリカ系アメリカ人っぽい名前、もう半分はヨーロッパっぽい名前を付けました。これらの履歴書は実際にシカゴとボストンにある企業の営業や総合職の求人に送りました。

ヨーロッパっぽい名前は、10枚送ると大体1件電話がかかってきます。アフリカっぽい名前は15枚に1件の電話がかかってきます。アフリカっぽい名前の人は、電話1件もらうために50%多く履歴書を送る必要があるのです。書類上は同じ経験を積み、同じ大学を卒業し、実際に求人している企業の判断です。

アフリカ系アメリカ人に対する潜在的なイメージがあるのか、総合的な判断が鈍ってしまっています。そこで大切なのは、仕事に不可欠な要素と、レジュメから何を読み取るべきかを知ることです。

名前とかは関係ないですよね。他には何がありますか? そう、住んでいる地域、住所ですね。他には? 大学ですね。Googleもそこで困りました。小さい大学の人たち数人が立ち上げた企業ですからね。

長い間、学歴は関係すると我々も思っていました。ところが社内調査をしたところ、出身校と仕事のパフォーマンスは比例しないことがわかったので、出身校を見るのは止めました。

もう1つは卒業年です。卒業年を見て、年齢を計算し、自分と歳がいくつ違うか考えます。そうすると「年下なのに上職に応募してる!」と思ってしまいます。これも採用に対する妨げなのです。

「世間を知っている人」と「頭がいい人」のどちらが採用されやすいか

これをうまく再現している研究があります。警察署長職のためのレジュメを、「世間を知っている人」と「頭がいい人」の2種類作り、人々に選んでもらいました。選ばせてみると、「頭がいい人」を選ぶ人が圧倒的に多かったのです。

そこで実験の続きとして今度は男女半々で名前をつけてみて、同じ実験をしました。女性より男性が選ばれる結果が出て被験者に問いただしてみると、「世間的な知識より学術的な知識が望ましい」や、「一般社会の経験がある方が役立てられる」と言い、実は性別に左右されてしまっていたことを気づいていなかったのです。

研究者たちは3回目の実験を行い、レジュメを渡す前に「頭脳」と「知識」のどちらが大切か聞いた後に、履歴書を見てもらいました。そうすると、性別による潜在的な判断はなくなったのです。

何が大事かを口に出して言うと、性別の判断をしなくなるのです。ということは、我々も採用するにあたって、そのポジションに何が必要かを事前に口に出すことが必要なのです。この業界では、どのようなスキルや素質が必要か誰もわからない状態が多いため難しいかもしれないですが、不可能ではありません。例えば問題解決が大事だ、という判断があれば、それを掘り下げればいいのです。資金調達を目標にしているのであれば、説得力が必要だ、という結論も出せるのです。

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