「ブラック企業」といった評判に関する影響は

記者:今回値下げに踏み切った背景には、値上げが受け入れられなかったというのがあるかと思います。世の中の脱デフレ。といわれていて値上げに成功している企業もあるわけですけど、その中で、なぜ御社は受け入れられなかったのか。分析をお願いします。

清水邦晃氏(以下、清水):やはり皆様に値上げが受け入れられなかった背景として、我々和民、わたみん家が「安い」というイメージがついてた。というところで、居酒屋チェーンである和民、わたみん家が値上げをしていくにあたっては、少しお客様との求めるものに差が出てしまったというところがあげられると思います。

もうひとつとしては、付加価値をつけるにあたって、作業工程を付加し、たとえば鮮魚だとか、技術が必要なものを仕入れていったんですが、店舗のオペレーションがそこまで追いつかず、提供時間の遅れやサービスの乱れに繋がってしまい。

この一年間でお客様の声として多くあげられたのが、「商品が遅い」ということと、やはり従業員のサービスレベルが低いということに繋がってしまった。サービスを感じていただけるお店が作れなかったということが問題だと思っております。

記者:率直にお伺いしますけど、御社について、ブラック企業という評判ですとか、それに伴う「人の集めにくさ」みたいなものを指摘されていますが、それに関する関連性はあるのかどうか。もう少しお伺いできればと思っています。

清水:もちろん、そういうイメージがあるということは、私たちも受け止めてますし。そのことによってご来店されないお客様がいらっしゃることも、真摯に受け止めております。

ただ、アンケートを行っている中で、そもそも一年以上も和民に来ないお客様においては、私たちもブラック企業という仮説を立ててアンケートを行ったんですが、一年以上来ていないお客様のアンケート結果は、「そのチェーンには行かなくなった」や「和民を利用するエリア、行動範囲が変わった」みたいなところが多く、僕らが思っていた以上には、そもそも来ない理由……。(ブラック企業)があるにしても、別のところにもあった。というところがあげられます。

ここ一年来てくださっているお客様のアンケート結果を見ますと、「やはり量が多い」だとか、「値段が高い」声が多く、今回のメニュー変更において、私たちができることはまず、顧客の流出を防ぐ。今来ていただいているお客様の下げ止まりをさせることを前提に考えています。

ですから、居酒屋チェーンと呼ばれる平均の伸び率と、私たちの状況が乖離していますから、そこはまず居酒屋チェーンの平均の業績までもっていきたいというのが今回の狙いです。

司会:ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

既存顧客の満足度を上げたい

記者:時事通信社の○○と申します。よろしくお願いします。2点ありますが、まずメニューのことで。今回の変更のことで、原価率はどれぐらいになるのかということと、それと同じく客単価の想定。これまでがどれぐらいで、今後どれぐらいになるのというのを見ているか。それを教えてください。

清水:原価においては1%上昇します。客単価においては2600円を見込んでます。(これまでの客単価)2850円を(これからの客単価)2600円です。

記者:税込みですか? 税抜きですか?

清水:税抜きです。

記者:先ほどの居酒屋チェーンの平均、これはいつぐらいまでにという。それからこれからの目標ですとか目途ですとか、そういったものを教えてください。

清水:まず、来店頻度が3ヶ月に一度。という結果が出ていますので、その3ヶ月でお客様の反応がわかると思います。結果が出てくるのが4ヶ月以降、もしくは半年を見込んでおります。

記者:基本的なセールスは、いつぐらいに水面に持っていくのかという。

清水:居酒屋チェーンの平均の?

記者:居酒屋チェーンの平均というより、御社自身の。セールスをいつぐらいまでに回復させていくのかっていう……。

清水:まず、前年比ということだと思いますが、今回私たちは労働環境の改善というところで、ひとつ定休日というのを設けております。定休日を設けた分、前年比は若干下回る傾向にありますが、まずは前年比100というよりかは、どちらかというと居酒屋チェーンの平均を目指して、というところにターゲットを置いております。

記者:わかりました。最後に1点、4ヶ月以降結果が出てくるということで、基本的にはお客様をつなぎとめるというところですが、新しいお客様を持ってこないといけないと思うんですけど。新規のお客様をつかまえるためのプロモーションとかは、どういったものを考えていますか?

清水:それに関しては、本当に今来ていただいているお客様を大切にしまして、そのお客様の満足度を上げることによる口コミ等々の効果をひとつ狙っています。

それではなかなか周りには伝わらないと思いますので、この4月から営業推進本部というものを立ち上げてます。僕たちを取り巻く主要企業にきちんとご挨拶させていただき、そういう企業同士のパイプをつなぎながら、まず関連している会社等々に営業をかけまして、お客様の囲い込みをしようとしております。大々的なセールスを打つ予定はありません。

司会:よろしいでしょうか? 

改めて低価格帯での勝負を

記者:産経新聞の○○です。今回、国内の消費が二極化しているという中で、高いところはいい。それに対してもっと低いところもいい。その中で真ん中の中間のゾーンがだめだと伺ったんですが、そういった消費の動向から見たときに、ワタミはどこのポジションにあったと認識されていますでしょうか。

清水:常に真ん中を狙い続けてしまったというのが現実だと思います。思いっきり振ることもなく、下げることもなく、若干中間の位置で戦い続けたというのがひとつだと思ってます。

その反省からすると、今回下げるということは低価格帯のところで勝負していくことが明確なわけですね。ただ、いたずらに価格を下げるというよりかは、私たちのやりたいこと。伝えたいことがあるという中で価格を下げていくという戦略をとっています。

記者:居酒屋環境というのは、数年前よりも環境が変わって、大手のラーメンチェーンですとか、牛丼チェーンが夜の時間の「ちょい飲み」という形で展開してきてて。そういったお客さんが増えていることが居酒屋チェーンに打撃を与えていると言われていますけど、実際この価格を見るとそこの領域で戦える状況には無いと思うんですが、それらとの競争についてはどんな風に考えているんですか?

清水:まずは、4000億から5000億のマーケットがありますから。まずはここで勝負させていただきたいというのが今回の狙いです。

記者:それらのチェーンとは関係なく、居酒屋チェーンとして勝負をするということでしょうか。

清水:和民、わたみん家に関してはそういうような形を取らせていただきたいと考えています。

司会:次に、何かございますか?

記者:日経新聞の○○と申します。若者という人口が減っている中で、そこを取り込んでいくっていう需要戦略は厳しい選択なのかなって気がするんですけど。そこに勝算があるっていうのは、どういう……。

清水:今回においては和民、わたみん家においての説明会になりまして。和民、わたみん家に関しては、ここの価格帯を取りにいきたいと考えております。

昨今いわれていますように、アルコール離れや若者の居酒屋さんの利用の少なさとかは出てきますから。そこにおいては、私たちもアルコールや深夜に頼ることがないような、きちんと食事を中心としたような形のもので、お客様に私たちの会社の経営資源が生かせるようなチャレンジを今後していくつもりです。

炭旬、フライデーズは好調

記者:和民、わたみん家に関しては20代、30代のマーケットが大きくあるということで、今回のお話だということですが、炭旬(すみしゅん)などの専門店もございますので、そういう話を少ししていただけますか。

清水:実際に、私どものなかでも業績が良いところが、炭旬という客単価3000円の業態と、あとはアメリカンレストランのTGIフライデーズっていうのがあります。その業態においてはやはり、専門型レストランとしては大変お客様から評価をいただいていますので、たとえばこういった角度で、専門店化させたニーズをちゃんと捉えた、食事を主体とした業態を今後は力を入れていくという方向です。

ですから、和民、わたみん家においては、今まで付加価値の高い個人店のようなところで動きを取ってたのですが、そこはあえて真ん中のことろで勝負させていただきたい、というような今回の狙いです。

司会:よろしいですか?

記者:朝日新聞の○○です。今のお話とからめてなんですけど、出店のペース。和民、わたみん家、専門型レストラン。出店のペースはどんな狙いを含めるのか教えてください。

清水:2015年度においては、黒字化というのを目指しておりますので、出店においてはほぼ、フライデーズ、炭旬っていうのがメインになります。数についてはもちろん決算発表で決めさせていただきますが、和民、わたみん家においては、今回このメニューでお客さんの反応を見ながら、再度どうしていくかっていうのを考えていきたいと思います。

司会:よろしいでしょうか? ほかに何かございますでしょうか。

記者:日経の○○と申します。かつてなじみだった世代、30代、40代っていると思うんですけど。ワタミのブランドのメッセージですとか、強さですとか。更に磨いていける。商売できるとお考えでしょうか?

清水:もちろん今こういう状況ですから、絶対という自信はありません。ただ、ひとつとしてもう一度、少しずつ単価を上げてしまって、それと同じようにして、楽しさみたいなものから、来やすさですとかが、少し離れてしまったというのもありますので、お客様に対してもう一度訴求させていただくというところで、その反応を今回見てみたいというのが正直なところです。その結果をもってのブランド戦略は、考えていかなければいけないという風に思っております。