5年後に持ち歩いているデバイスはなにか?

ビル・ゲイツ氏(以下、ビル):携帯電話とフルスクリーンデバイスに共通する話ですが、クラウドだけでやるのか、ローカルに落として起動させるのかというのも大事だと思います。デバイスの画面サイズが異なるというのは当たり前で、5インチ画面は20インチと競合しないし、同じように20インチは大画面スクリーンとは競合しません。ただ、ローカルでのユーザーインタラクションが瞬時なのか、それとも時差が生じるのか、そこが注目点になります。

カラ・スウィッシャー氏(以下、カラ):5年後はどういうデバイスの話になるんですか? 1つだけ?

ウォルト・モスバーグ氏(以下、ウォルト):まだ普及しきってないですが、タブレットを持ち歩いて?

ビル:今はWindows 92の状態だと思います。

ウォルト:お二人は何を持ち歩いていますかね? ご存知かわかりませんが、ジェフ・ホーキンスはLinuxベースの、確か「コンパニオン」と呼んでるデバイスを持っていましたよ。今はタブレットコンピュータとかMacBook Proをお持ちだと思いますが。

スティーブ・ジョブズ氏(以下、スティーブ):あとiPhoneかな。

カラ:今持っているの?

スティーブ:持ってるよ。

ウォルト:さっき見せびらかしてたよ。ビル、5年後に持ち歩いているデバイスは?

ビル:多分ひとつじゃないでしょうね。読む用のフルスクリーンデバイス、軽量な何かが1台あるでしょうね。音声やペン入力、ハードウェアキーボードを何かしらの方法で取り入れて。それとポケットに入るデバイスがひとつ、そしてそのデバイスにナビゲーション、メディア、電話機能が取り入れられているかも。

技術発展的には、デバイスに取り入れることができる技術が増え続けているけど、ユーザーにどれだけ提供するのかが論点だと思います。将来的には、どちらも大きな発展をし続けるだろうし、ひとつ持っていれば片方も持っていると思います。

カラ:そして家ではそれをつなげる何かが?

ビル:リビングにはネットに繋がっているテレビでしょうね。そこからゲームやエンターテインメントが全部インターネットに繋がっていると思いますし、コンテンツの提供方法もまだ試案の段階です。壁やデスクがあればプロジェクターで情報を表示している状態になると思います。

ウォルト:プロジェクターや画面がない部屋を作ってもいいですか?

ビル:いいよ、トイレね。

コンピュータが消えてなくなる日は来ない

ウォルト:スティーブ、あなたの5年ビジョンは?

スティーブ:数年ごとにコンピュータが終わると言われてきたのにも関わらず、今でも打たれ強く続いていることはすごい興味深いと思うんです。

ウォルト:ここで言うコンピュータは、Windowsだけじゃなくてパーソナルコンピュータ全般のことですか?

スティーブ:コンピュータ全般のことです。効率向上という名目でスプレッドシートやワードプロセッシングが発展して業界が大きくなって、そのあとしばらく何事も無く平常となりました。そこにインターネットが現れて、みんながインターネットができるように、スペックの高いコンピュータやブラウザが一般化して、インターネット時代が到来しました。

そして数年前、我々はデジタル・ハブと呼んでたんですが、当たり前のものとして存在したコンピュータが、デジカメやビデオレコーダーの影響で、そのメディアをネット共有するレポジトリとしてメディアセンターに生まれ変わったんです。

何かわからないですが、また業界が動き始めていることがわかりますよね。コンピュータがバックエンド側と動き始めたり、モバイル端末と同時活用されているように、タブレットだったりノートだったり曲面のデスクトップだったり形は時代と共に変わるかもしれないですが、今後も一般的なものとしてコンピュータは使用され続けられるとは思います。

その傍ら、ポストコンピュータデバイスと言われているものが発達し始めています。iPodだったり……。

ウォルト:そう呼ぶと怒られちゃいますよ。

スティーブ:なんで?

ウォルト:冗談です。まあ、ポストコンピュータデバイスって使うと編集長にクレームが来るんです。

スティーブ:そう、まあいいけど。とりあえず、一般使用じゃない、ひとつの機能に特化したデバイスのカテゴリーがあると思うんです。携帯電話やiPodやZuneなど、そういうカテゴリーがどんどん発達していくと思うんです。

カラ:その例としては?

スティーブ:例えばiPodはポストコンピュータデバイスだと思います。iPhoneもそうだと思います。

ウォルト:iPhoneやスマートフォンは、形が違うコンピュータじゃないんですか?

スティーブ:そんなこと言い始めたら全部形が違うコンピュータなんですよ。それは関係ないんです。それがどのような用途で、消費者がどのように使うのかが大事なんです。中身がどうなのかはもう関係ないのです。

新しいものが出てきて、人気が出て、一般的になるというサイクル

ウォルト:では、今まで携帯電話として存在した「ポケットデバイス」はどのように使われるべきなのですか? 5年後、その「ポケットデバイス」のメイン機能は?

ビル:ナビゲーションや電子ウォレット、電話、カメラなど、これらの機能の発達のスピードはものすごく速いと思ってます。結果的には、これらの機能がすべてちゃんとできるデバイスは生まれてくると思います。

ただ小さいので、宿題をやったり、動画を編集したりするような用途では使われないでしょうね。だから違うデバイスで読み物を読んだり、編集したりすると思います。例えば掛け軸みたいに引っ張り出せる画面ができたら、全部の機能をきちんと使えるようになると思いますね。

ウォルト:最初の「D」カンファレンスの時、e-inkを開発してる人たちに来てもらったのですが、彼らもその話をしてましたよ。ちょうど5年前です。

ビル:プロジェクション技術の発展はフレキシブルマテリアルの技術より意図的に早い気がするんですけど、どちらにせよまだ5年くらい先の話だと思います。

ウォルト:5年後「ポケットデバイス」には何が使われていますかね?

スティーブ:わからないね。5年前、iPhoneみたいなデバイスに地図が出せるなんて思ってもなかったからね。新しいものが出て、人気が出て、それが普通になるというサイクルの中で、有る機能と無い機能を区別することが大事だと思います。持ち歩くデバイスは通信デバイスで、通信がメインなんです。

カラ:デバイスサイドでは色々発達がありますが、インターネット側で興味があるところはありますか? ソーシャルネットワークやウィキなど?

スティーブ:今言えないことを色々開発しているんだけど……。

ウォルト:どんなこと?

カラ:知りたいわね。

スティーブ:社内で「上から水漏れする船」という訓戒があってね、トップ自ら情報を漏らすわけにはいかないんだ。ネットでは面白いことがたくさんありますよ。サービスとかね。

カラ:エンターテインメント側?

スティーブ:それもそうだけど、生活をもっと効率的にするものとかね。誰かに見せて、必要性を説得しなくても欲しがるものがあるとすごくいいですよね。数年後はそういう時代が訪れるんじゃないでしょうかね。

合理的なサービスがなかったら、作るしかない

ウォルト:ビル、あなた方もHotmailやWindows Messengerなど、多くのユーザーが支持するサービスを持っていますが、スティーブ・バルマーが今日言っていたように、インターネット上で検索の面などで他の会社に届いていないところがあると思います。

コンピュータに特化している会社として、やはり他の会社には及ばないところがあると思いますか? MicrosoftもAppleも大きい会社なので、従業員が10人しかいないような会社に比べて動きが鈍くなっていると思いますか?

ビル:他の会社がすごいものを作ることはずっと続くでしょう。そこで有益な立場にいることが大切だと思うんです。そこでWindowsやパーソナルコンピュータの需要が大きくなればいいと思っています。もちろんその反面、スティーブが言ったように将来的には検索にも力を入れたいと思っています。

ウォルト:そういえばおっしゃっていましたね。

ビル:様々なアプリケーションの専門性が上がってきています。例えば教育系も、動画がメインになってきて、インタラクションが増えてきています。

業界の始めにも、こういうものがあればいいな、などといろいろと考えてきていますが、エコシステムとしてこのような新しい技術が業界全体で開発されて、広まっていけばいいと思っています。

スティーブ:僕はちょっと違っていて、我々は別に全部やろうとしているわけではなくて、専門性がある人たちとタッグを組むことが大切だと思います。例えば、Microsoftはわからないですが、我々は検索には弱いので、検索に強い人たちとタッグを組みます。

地図用のクライアントはできても、地図のバックエンドには弱いから、強い人たちと組みます。我々は、消費者が最終的に手にする経験を、素晴らしいUIと製品をユーザーに届けたいのです。そういうこともあって、他社より手間を掛けなければいけないこともあります。

例えばiTunesでも、合理的な音楽サービスがなかったから、自ら作るしかなかったのです。ただ他の分野で成功している会社とは、ぜひ一緒に仕事をしたいですし、ひとつの会社が全部のことをやるのは不可能だと思います。

iTunesは新しいビジネスモデルに置き換えられる

カラ:2人ともApple TVだったり、Microsoftはハリウッド関係などのエンターテインメント関係に力を入れ始めていますが、YouTubeの時代となりつつある今、コンテンツ提供はどうなるのでしょうか?

ビル:インターネットを使ってコンテンツを配信できるという点で新機軸が生まれたと思います。将来的な方向性としては、Xbox Liveのようなコミュニティ重視のテレビ配信があるのではないでしょうか。

一緒に観たり、話したり、友達を探したりね。それを教育、スポーツ、オリンピック、選挙に応用すると、とても影響が大きくなると思います。Haloゲームはさておき、我々はプラットフォーム会社なので、スピーチやインクやグラフィックス、ちょうど10年掛かってやっとAT&Tが利用し始めているIPTVなど、やっとのことでコンテンツ配信のベースが出来始めているのです

ウォルト:今日、ビルがいなかった時、Apple TVのYouTube視聴機能を見せてくれたんですが、そのようなエンターテインメントの触媒的な立場は増えるのですか?

スティーブ:人々はエンターテイメントをいつ、どこでも、どのような方法でも観たいと思っています。最終的にはエンターテイメント会社のビジネスモデルを変えるでしょう。コンテンツ提供会社としてはいいでしょうね、もっとユーザーが増えるだろうし。

ただ、その方向への移行は難しいと思います。音楽業界でもダウンロード速度が速いのと、合法的な別手段がないことからiTunesが伸びていますが、他社は新しいビジネスモデルを用いた音楽配信へ移行しつつある段階なのです。

ハリウッドも音楽業界で起きたことを教訓に動こうとしていますが、まだ把握しきれていないでしょう。様々なプラットフォームからいつでも視聴できる、顧客に自由がある状態がわからないのです。この段階は、将来的にすごい良い方向に進んでいると僕は思います。