あなたが痩せられないのは“思い込み”のせいである--なぜダイエット中にはリンゴが大きく見えるのか?

Why some people find exercise harder than others #1/2

社会心理学者 Emily Balcetis(エミリー・バルセティス) 氏は、全ての人は物事を「心の目」で見ているといいます。私たちの脳は、本来の視覚情報を予備知識で補っているためです。その気持ちと視覚認識との差異を利用することで、目標をより簡単にクリアするための方法論を語りました。 (TEDxNewYork2014より)

視覚による情報は、人によってとらえ方が異なる

エミリー・バルセティス氏:視覚は私たちの持つ感覚の中でも、もっとも大切で優先されるものです。私たちは日常的に周囲の世界を見ており、目に入ったものを一瞬にして認識することが出来ます。その事実を証明する例をあげてみましょう。これから1、2秒間だけある人物の写真をお見せしますので、顔の表情からその人の感情を読み取ってみてください。準備はいいですか? どうぞ。

直感でお答えください。どんなことを読み取りましたか? 私たちはこの実験を、120人以上の方に試していただきました。結果は様々でした。

人によって全く違う感情を読み取っていました。「不快」だと思いましたか? これが1番多い答えでした。しかし、左隣の人に聞いたら「後悔」や「疑惑」などと答えるかもしれません。また右隣の人は「希望」や「共感」など、全く違うことを言うかもしれません。

私たちは同じ顔を見ていたとしても、全く違う感情を読み取るかもしれません。それは、物の捉え方は主観的だからです。私たちが見ていると思っているものはすべて、自らの心の目を通して見ているのです。もちろん、心の目を通して見ているという例は無数に存在します。その中から少しだけ紹介しましょう。

誰もが「心の目」で見ている

例えば、カロリー制限をしていない普通の人と比べて、ダイエット中の人にはリンゴが大きく見えます。

絶好調の野球選手に比べ、スランプに陥っている選手にはボールが小さく見えます。政治的な意見でさえも、政治家やその他の人々の見え方に影響を及ぼします。私の研究チームは、この考えを実験してみることにしました。

2008年にバラク・オバマ氏が大統領選挙へ初めて出馬した時、選挙の1ヶ月前に何百人ものアメリカ人にアンケートを実施しました。このアンケートで何がわかったのでしょうか?

このような写真が1番、実際のオバマに近いと回答した人々がいました。

そのうちの75%が、実際の選挙時にオバマに投票しました。

また、これらの写真のほうが実際のオバマに近いと答えた人々もいました。

そのうちの89%がマケインに投票しました。私たちは様々なオバマの写真をひとつずつ見せ、それぞれがどのように異なっているのか、はっきりとはわからないようにしていましたが、実際にはオバマの肌の色を、合成で明るくしたり暗くしたりしていました。

視覚情報は脳によって補われている

どうしてこのようなことが起こるのでしょう? ある人、あるもの、ある事柄を見た時、なぜ他の人と大きく違って見えてしまうことがあるのでしょうか? その原因はたくさん考えられますが、その1つは私たちの「目の働き」に関係しています。視覚学者たちは、目が一度に収集できる情報量が限られているということをよく知っています。

私たちが鮮明に、明瞭に、正確に見ることが出来るのは、腕を伸ばした先の親指ほどの領域しかありません。それ以外は全てぼやけていて曖昧にしか見えません。しかし私たちの脳が、無理矢理そのものを明瞭にして何であるかを認識させているのです。

その結果として感覚は主観的なものとなり、最終的には物事を「心の目」を通して見てしまうのです。

社会心理学者として、こういった不思議はとても興味深いものです。人々が違った観点で物事を見ている時には好奇心が高まります。なぜ、「コップに水が半分も入っている」と思う人と、「水は半分しか入っていない」と思う人がいるのか?

考え方や感じ方で、その人の見え方まで全く異なってしまうのはなぜなのでしょうか? そしてこれは、重要な問題なのでしょうか?

体型と視覚認識の差異は比例する

この問題に取り組むにあたって、私たちの研究チームは国際的に注目されている「健康とフィットネス」について調べてみることにしました。世界中に体重をコントロールできなくて悩んでいる人がたくさんいます。

一方で世の中にはたくさんの減量法が存在します。例えば、「冬休みが終わったらエクササイズをする」と決意しても、実際には大多数のアメリカ人が、バレンタインデーまでにはその新年の抱負を達成出来ずに終わっています。

何度も自分自身を励まし、「今年こそは痩せる!」と意気込んでも、理想体重へと戻すのは至難の業です。なぜなのでしょうか? もちろん単純に1つの答えがあるわけではありません。しかし原因の1つとして、私たちの目が邪魔をしている可能性があります。

人々の中には、エクササイズを他の人よりもつらく感じてしまう人がいるのです。そして同時に、エクササイズを他の人より簡単に感じる人もいるのです。これを検証するために、まず個人の身体的なフィットネスにおける実際の数値を集計しました。

ウエスト周りと腰周りのサイズを比較して、ウエスト:腰のサイズの割合が高いほど、身体的に不健康と定義しました。これらの数値を集計した後、参加者たちに、「これから重りを着けた状態でゴールまで歩いて、競争していただきます」と伝えました。レースの前に、参加者たちにゴールまでのおおよその距離を予測してもらいました。

身体的健康度が、この予測距離に影響をもたらすと仮定していました。実際にはどうだったのでしょうか? やはりウエスト:腰のサイズの割合は、距離の推測にも影響を及ぼしていました。

理想的な体型の人に比べて、不健康で理想的な体型でない人々は、ゴールまでの距離を長く感じる傾向が高いということがわかりました。人々の身体的な状態が、その人の環境への認識までも変えてしまっていたのです。

しかし逆に、それは私たちの意識で変えることも出来るのです。事実、私たちの体と意識は一体となって私たちの見方を変えているのです。

つまり、エクササイズに強いモチベーションや目標を持っている人は、モチベーションが低い人に比べて、ゴールが近く見えるということです。私たちのモチベーションが、私たちの認識にも影響するのかを確かめるために、更なる検証をしました。

モチベーションが及ぼす視覚への影響

今回も参加者達のウエスト周りや腰周りを計り、身体的な数値を集計し、その他にもいくつかの適性テストを行いました。

その計測結果を参加者たちにフィードバックしたところ、参加者の中にはもうエクササイズへのモチベーションを失ってしまった人が出てきました。それは彼らが「目標は達成しているから、もうそれ以上やる必要がない」と感じているからでした。

これらの人々はモチベーションが低いのです。その他の人々は、私たちのフィードバックによって、「さらにエクササイズへのモチベーションが高まった」と話していました。彼らにはゴールするための明確な目標がありました。

この実験でも、レースの前にゴールまでの距離を推測してもらいました。では、ゴールまではどのくらいの距離があったのでしょうか?

前回の検証と同じく、今回もウエスト:腰のサイズの割合は推測距離に影響を及ぼしていました。

健康でない人々は健康的な人々に比べ、ゴールまでの距離を遠く見積もりました。しかしこの結果は、モチベーションの低い人のものです。実はエクササイズへのモチベーションが高い人々は、ゴールまでの距離を近く推測したのです。

むしろ1番身体的に不健康な人でさえ、モチベーションの低い健康的な人よりも少し近くゴールまでの距離を推測していました。

私たちの体はゴールまでの距離を変えてしまいますが、近い将来に達成可能な目標をしっかり見据え、自らの成功を信じている人々は、エクササイズをより簡単に感じているのです。これでまた疑問が生まれました。距離を短く、エクササイズをより簡単に感じられるような良い方法がないのでしょうか?

「ご褒美から目をそらすな作戦」

そこで私たちは、視覚科学文献を読んでみました。文献から得た情報から私たちは、「ご褒美から目をそらすな作戦」を生み出しました。これは自己啓発ポスターのスローガンではありません。周りの環境をどう見るかという方法論です。

私たちは参加者に、「周囲に気を取られないようゴールに集中すること」「ゴールにスポットライトが当たっていて、その他のものはぼやけて見えないようイメージすること」と指示を出しました。私たちはこの方法ならば、エクササイズがより簡単に感じられるはずだと考えたのです。

比較対象としてもう1つのグループには、「いつも通り周囲を見渡して、ゴールを見ること」「もしかしたらその横にゴミ箱があるかもしれないし、人や街灯も見えるかもしれない」と伝えました。私たちはこの方法の場合は、距離を長く感じるだろうと予想しました。

さて、結果はどうだったのでしょうか? 彼らに距離を予測してもらった時、その結果に影響を及ぼすことが出来たのでしょうか? はい、出来ました。ご褒美から目をそらさなかった人々は、普通に風景を見ていた人々に比べ、ゴールまでの距離を30%も近く感じたのです。私たちはこの結果に喜びました。

これはエクササイズを、より簡単に感じる方法がわかったということだからです。しかしここで重要なのは、より良いエクササイズになっているか? またエクササイズの質は上がっているのか? という点です。

そこで次に私たちは参加者たちに、重りを着けてゴールまで歩いてもらいました。体重の15%分の重りを足首に装着し、「高く膝を上げるようにして、より早くゴールまで到着してください」と指示をしました。今回は、多くの効果的なエクササイズのように、「つらいけれど不可能ではない」レベルに設定しました。そしてここからが問題です。

「ご褒美から目をそらさずゴールに集中する」ことで、エクササイズの感じ方を変えることが出来たのでしょうか? はい、出来ました。レース後ご褒美から目をそらさなかった人々は、普通に周りを見ていた人々に比べ、エクササイズへのストレスが17%減少したと語っていました。

どんな人にも有効なダイエット法

この方法は、主観的なエクササイズの感じ方を変えることに成功しました。さらには、エクササイズへの客観的な性質さえも変えてしまったのです。ご褒美から目をそらさなかった人々は、普通に周囲を見ていた人々に比べ、23%も速く動いていました。

23%の効果をわかりやすく言うなら、1980年製のシボレーサイテーションを1980年製のシボレーコルベットと交換してもらうようなものです。

これは大きな成果でした。この方法なら無料で、しかも簡単に、スリムな人にもダイエット中の人にも効果が期待出来るということが証明されたからです。ご褒美から目をそらさないことで、たとえより激しくより速く動いていたとしても、エクササイズをより簡単に見せ、感じさせるのです。

実際には、速く歩くことよりも健康に効果的なことはたくさんありますが、ご褒美から目をそらさないという方法は、ひとつのプラスαとして、より健康的なライフスタイルを手に入れるために取り入れることが出来ると思います。

物事の見方を変えるということ

私たちが「心の目」を通して世界を見ていることに、まだ疑念を抱いている方々のために、最後にもう1つ例をあげましょう。

これはストックホルムにある美しい通りの写真です。車が2台ありますね。奥にある車は手前の車よりも大きく見えます。しかし実際には、これらの車は全く同じサイズなのです。でも私たちにはそう見えません。では、私たちの目は狂っていて脳は混乱しているのでしょうか? いいえ、違います。これが私たちの目の通常の働きなのです。

私たちはそれぞれ、違った世界を見ているかもしれません。それが現実と結びつかない時も、あるかもしれません。しかしだからと言って、誰かが正解で誰かが間違いというわけではありません。すべての人間が物事を「心の目」で見ていますが、自分で見え方を変えることも出来るのです。

例えば何もかもが上手くいかない日ってありますよね? 全てに飽き飽きして不機嫌で、疲れがたまっていてやることも山積み、大きく黒い雲が頭の上に浮かんでいるような日です。

そんな日は私の周りにいる人々も機嫌が悪く見えたりするものです。納期の延長を頼んだ同僚は苛立っているようだし、会議が長引いてランチに遅れたために、友人は失望している、夜には映画など行かず、さっさと寝たいと言う私に夫は残念そうにしている。

そんな日にはみんなが私に対して、イライラして怒っているように見えます。でもそういった時には他の見方もあるのだということを、自らに言い聞かせるようにしています。同僚はただ混乱していただけかもしれない、友人は心配してくれていたのかも、夫は逆に共感してくれていたのかもしれないでしょう?

私たちは世界を「心の目」を通して見ており、時には世界が危険で、難しくて太刀打ち出来ないような場所に見えたとしても、いつもそういう風に見る必要はないのです。見方を変えるように努力すれば、世界はより素敵で簡単に見えるでしょう。そしてきっと、実際にそうなるのです。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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