注目のベンチャー企業対談 freee×じげん

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):はい始めましょう。よろしくお願いします。

平尾丈氏(以下、平尾):よろしくお願いします。

佐々木大輔氏(以下、佐々木):よろしくお願いします。

佐俣:「若手経営者に聞く経営ビジョン」というテーマなんですけど、まずはfreeeの佐々木さんとじげんの平尾さんに、会社と個人のプロフィールを伺うところから始めようかなと思います。まずは佐々木さん。

佐々木:はい。僕はクラウド型の会計ソフトを提供する会社、freeeというものをやっています。freeeの特徴っていうのはクラウド型。クラウドから会計ソフトを使うことができて、簿記の知識がなくても誰でも簡単に使える会計ソフトであって、さらに自動で帳簿をつけてくれるので手を動かさなくて済むという、新しいタイプの会計ソフトを提供してます。

この会社を作ったきっかけっていうのは、立ち上げる2年くらい前まで、僕はGoogleっていう会社で中小企業向けのマーケティングをしていて、その仕事をしてる中で日本の中小企業のテクノロジー化が進んでいないことですとか、日本で開業率が低いことだとか、こういうことに問題意識を持ち始めて「何かこういった問題を解決するような動きできないかな」というところで事業をはじめたのがきっかけになってます。

佐俣:ありがとうございます。佐々木さん毎回格好いいんですよね。

平尾:(笑)。上手ですね。やっぱりもう、慣れてますね。

佐俣:必ずね、(姿勢が)スッとするんですよ。平尾さん、お願いします。

平尾:次元を超える事業家集団、じげん代表の愛情・友情・平尾丈です。じげんは「次元を超える事業家集団」といって、株式会社であるんですが、圧倒的に事業をいっぱい作っていく会社をやらせてもらっておりまして、私自身も大学生のときに2回起業して、リクルートの競合やったままリクルートに入れていただいて、そこでまた社内ベンチャーやらせていただいて独立したのがじげんっていう会社です。

佐俣:はい、ありがとうございます。経営ビジョンみたいなものを聞いていくセッションなんですけど、まずは直近、今年もう12月なので、会社として「どういうチャレンジをしたのか」をお2人に伺いたいんですけど。平尾さんいかがですか。

平尾:そうですね、私は、いい会社っていうのは「いっぱいチャレンジしている」ものだと思っていて、1年間で色んなことをやってきました。たとえばIRの数が少ない会社よりも、数ある打ち手(アクティビティ)のある会社が良い会社だと思ってるんですよね。

佐俣:直前にIRの資料見させてもらったんですけど、てんこ盛り過ぎて。「3本の矢」って書いてあるんですけど、よく見ると15個くらいやったことがあるんですよね。

平尾:実は3本て書いてあるんだけど、3次元にとどまらず、色んなことやりまして、もうおかげさまでマザーズ上場から1周年となりました。

ひとつが、資金調達でいうと未上場の会社さんですと、エクイティファイナンスを行うとか、色々あると思うんですが、自分の会社はずーっと借金負わない経営っていうのやっていました。

どちらかというと現金・キャッシュフロー経営で、キャッシュフローが続く限りは潰れないですよねっていうところと、ある程度の利益率コントロールしながら、うちでいうと利益率60%とか70%くらいのビジネスモデルでやってるので、そこの余剰のキャッシュを、投資をしながらだいたい半分くらい利益出るような経営をしてたんですよね。

今回上場して、その信用力がついたこともあり、メガバンクさん中心に50億円くらい、借金をしまして。

佐俣:50億、一気に。

平尾:一気にしまして。2000万とか最初やっとく? って話をよく先輩から聞いてたんですけども、50億いきなり負いまして。

佐俣:今日は本当、広報の方がいなくて良かったですね。

平尾:(笑)。素晴らしい利率で、大きな銀行様4行に貸していただいて、今年1年は自由度や戦い方がだいぶ変わったという認識でいます。ただ、この話は1年前というより、実は3ヶ月前だったので、3ヶ月以上前のこと忘れちゃってるんじゃないかって。

佐俣:そうですね、今8ヶ月分飛んでましたね。

平尾:それ9月かって思ってですね、もっと前何やってたんだろうなと。

佐俣:それぐらいチャレンジを重ね続けてるという感じですかね。

平尾:上手いですね、まとめ方が。

freee佐々木氏「事業拡大で過渡期を迎えた」

佐俣:じゃあ佐々木さん行きましょう。佐々木さん、今年1年どういうチャレンジしてきたかなと。

佐々木:今年の初めでいうとうちは20人まだいなかったんですけど、今従業員70人越えるようになって。

佐俣:70人?

佐々木:そうですね、組織的には3倍以上になっちゃって、もうフェーズが完全に変わったなっていうのが今年でしたね。なんでそうなったかっていうと年明けに、やっぱり僕たちって、会計ソフトの繁忙期っていうのは確定申告シーズンなんですよね、1月から3月で。

この間に、やっぱり一気にユーザーさんていうのも増えたし、それに対して、オペレーションとしてカスタマーサポートどうするんだとか、そういったところを回しながら新規の開発を進めるためにはもっと大きなエンジニアのチームがいるよねとか。

そういったかたちで積極的に投資をしようっていうのを、もう1月2月のタイミングで決めて、組織的にも大きくするし、大型の資金調達をするしっていったところを実行したと。それでチームは大きくなったんですけれども、ここからどう組織を作っていくかみたいなところは、今ちょうど直面してる課題だと思っておりまして。

佐俣:なるほど。

佐々木:そのあたり平尾さんに聞きたいなあと。

平尾:(笑)。僕にですね?

佐俣:平尾さんは、社員はちなみに何人くらい?

平尾:社員がですね、今佐々木さんの話聞いて70人てすごいなと思ってまして、僕らがちょうど去年上場したタイミングで68名だったんですよ、連結で。そこから今実は4社買収したんですけど、グループで300名くらいおりまして。

佐俣:お二方とも3倍くらいになりましたと。

平尾:そうですね。人数増えたときの経営の仕方とか、やっぱり変わりますよね。

佐々木:変わりますよね。

平尾:じげんの時もそうだったんですが、20から70の変化ってすごいですよね。そこって役割であったりとか、佐々木さんの動き方とかって変わってるんですか、今。

佐々木:変わりましたね。わりとその20人の頃っていうのは、何でも僕がまだ決めるっていうフェーズだったんですけど、今はもう周りがどんどん決めていくっていう体制に変えていかないといけなくて、そのちょうど過渡期っていうか、どういうふうなかたちで皆と考え方を共有して、色んなところで勝手に意思決定が進められるような体制っていうのを作りたいなあと。

freee、じげんが掲げる経営ビジョンは?

佐俣:そういうときにどうやら「経営ビジョン」っていうのが必要になるらしくってですね。本題のテーマなんですけれど。ここでかぶせないと一生入れないなと思って(笑)。

平尾:経営ビジョン。

佐俣:自分が全部1個1個見て「これYes、これNo」てもう言えなくなってくる数になってくると思うんですね。そのときに、そもそも「会社としては何目指してるか」みたいなところを、その理念みたいなものを作ってくじゃないですか。その経営ビジョンて、佐々木さんのところは今、明確に何かあったりするんですか?

佐々木:僕たちが組織として達成したことっていうのは、スモールビジネスに携わる皆が創造的な活動にだけフォーカスできるようにする。それをテクノロジーで達成するために、手段としては、経理だとかバックオフィスの分野っていうのをすべてデジタル化して、たとえば何でも「ワンクリックでできるような社会を実現しよう」っていうようなことをやってます。 だから経営がもうとことん簡単になる世界を作ろうっていうのが、簡単に言うとビジョンっていう感じになるんですけれども、それを達成する上でのアプローチみたいなところで価値基準というのを作っていて、こうやって判断しようよっていうのを5つくらい謳ってやってますね。

佐俣:結構freeeってワンプロダクトの会社じゃないですか。なのでワンプロダクトのプロダクトに乗っけるのがそのビジョンになってる・組織になってるなって感じるんですけど、一方、じげんさんてプロダクトラインていうと、もう買収もされてるので、すごい数じゃないですか。

平尾:ビジョンて、ベンチャー起業家・アントレプレナーとしてはテーマじゃないですか。と最上位概念みたいなのは、そういう意味では創業時であったりとか、うちでいうと独立をしたので、そのタイミングで作ったんですよ。北極と北極星の違いってあるかと思うんですが、どちらかというと北極星というか、もう絶対行けないようなゴール地点として企業理念を作りました。企業理念は、平尾丈がいなくなってもなくならないものです。もしかしたら、いなくなるかもしれないですよね。

佐俣:普通に寿命とかもありますから。

平尾:人間ですから。医学の進歩で永遠の命を手に入れるかもしれないですが。

佐俣:(笑)。

平尾:(笑)。企業理念からまず決めて、その次に経営理念があります。経営理念は経営者のエゴも含めたものです。企業理念は「生活機会の最大化」という普遍のテーマで、色んな方が、これリクルートにいたときもそうなんですけども、たくさんの選択肢の中から、自由に意思決定ができたらという想いから創られたものです。これは大学時代からずーっと掲げてきたテーマなんですよ。これ北極星。

その下で「OVER the DIMENSION」という、「次元を超える」ということを言っていて、これ多分平尾が死んだらなくなります。これが経営理念。

経営理念の下に置かれる「ビジョン」の中身

その下にビジョンていうのを作ろうとしたんですよね。自分が今32歳なので、あと何十年生きますかね、40年?

佐俣:ちょっと長めに(笑)。

平尾:アンリさんに委ねるって話になりますね。あと50年生きられたら、50年変わらないやつなんですね。もうひとつ経営ビジョンというのを作ってまして、これ元々、うちの会社上場前はライフメディアプラットフォームを作るというビジョンがあったんですよね。

これを追っていて、特に国内でいうと各カテゴリにおいては求人とか不動産とか、ある程度北極星への到達イメージが見えちゃったんですよ。

それでまた変えていきました。ですので、ビジョンに関して、うちは大体3~5年くらいのスパンで変えてます。今は多少、語弊もありますが、時価1兆円構想。

佐俣:1兆円構想。

平尾:僕も13年ベンチャー企業をやっていて、3社目なんですけど、この10年の中で特にIT系の日本国内の会社が意外とスケールしてないんですね。

佐俣:1兆円超えてるのっていうのは……。

平尾:今、無いんですよね。今だったらヤフー、楽天しかないんですよ。

佐俣:で、終わってますよね。

平尾:終わっていて。実はドットコムバブルはじけてから自分も起業して、2001年も同じ状況で。途中ライブドアさんがあって、ぎりぎり行かず。途中ぎりぎり超えたガンホーがあります。

日本からグレートベンチャーが出ないっていうのは構造的な課題もあるんじゃないかなと思っていて、僕らに関していえば、どっちかっていうとプロダクトビジョンから会社のビジョンにちょっと切り替えてきたっていうのが今年の1年上場後っていうかたちですね。

佐俣:なるほど。

じげんの組織構成

佐々木:そこ、きちんと一体感って出てくるものなんですか? 色々事業・ラインがある中で。

平尾:そうですよね、そこはやっぱり腕の見せ所なんですけども。これ、古いですよね。(腕に触れて)ポパイ知ってます?(笑)

佐俣:年齢がわりと近いですからね(笑)。聞いてる方はちょっとわかんないかもしれないですけど。

平尾:そうですね、では、ポパイ想像してくださいね(笑)。そこが腕の見せ所なんですけども、やっぱり色んな、特にうちの会社でいうとさっきお聞きしたかったのは、70名の構成とかバックグラウンドとか、そういうのがあるのかなと思ったんですよね。人が増えてきたときに、中途の方が多いのか、職種はどんな方が多いのか。

僕らの会社、もともとすごい経営しづらい構造をとっていました。いわゆるライン・アンド・スタッフって考え方からすると、営業マンがいて、営業が強いか開発が強いかに分かれるんですけど、うちは営業も開発もいるんですけど、そこにデザイナーもマーケッターもいて、ちょっと非効率っぽいバリューチェーンを組んでたんですね。

それはでも係数をもっていって1個1個改善してくるというのと、ここはもう均等に取ろうってやってたんですよ。

佐々木:数を均等にする。

平尾:はい。じゃないともうケンカが増えてきます。

佐俣:物理的に勢力を等しくするってことですか?

平尾:やってたんですよ。人数制限。

佐俣:へえー。

平尾:やらないとやっぱりケンカするんですよね。営業マンと開発者とか。ないですか、御社だと。

佐々木:ケンカまでは行かないけど、やっぱりあります。お互いを理解できないっていうところが大きいですよね。

平尾:そうですよね。だから、人間っていう字を書いたときに「人」の問題と「間」の問題が絶対出てくるんですけども、大体何か悪いことがあるともう「人」の問題にするんですよね。

こいつが悪いとか、なんとか部長が悪いとか開発部長が悪い、営業のマネージャーがダメだとか。犯人探しになっちゃうんで、こうしないような経営をしようっていうのが当時からあったんですよね。

なので「間のない組織」とうちは呼んでます。「人間」じゃなくなっちゃうんですけどね(笑)。

部門間のケンカを無くす方法

佐々木:どうすると「誰のせい」みたいなかたちにならなくなるんですか?

平尾:やっぱり構造の問題だってトップが言うことです。何か問題があったときには、発見するのはもちろんですが、、解決まで行けますよねっていう話をしてるのと、営業マンがプロダクトのせいにする、開発の人は営業の腕が悪いっていう話をしたときに、そこのトップ同志で、問題を適切にモニタリングして、解決する場を作るようにしています。

つまり、問題が起きたときに、それを人のせいにするなと。実績でその間の構造を皆解決しなさいと。

佐俣:ちょっと話レベル下げちゃうんですけど、若い起業家の方々が聞くと、平尾さんの今の話は「めちゃめちゃ良くできてるなあ」と思うんですけど。

平尾:いやいや。

佐俣:これは、始めからフォローができてたってことですか?

平尾:やっぱり失敗事例をいっぱい知ってるんですよね。そういう成功と失敗でいうと、失敗事例のストックは「無限ストック」ていう、弊社もクレドがあるんですが、貯めまくってまして、大体こういうパターンで失敗するとか、特にリクルートにいたときにHRの仕事してたので、色んな会社見れるわけですよ。

色んないい会社・悪い会社。我々が決めるのおこがましいんですが、自分から見たときに「なんかここはキツいんじゃないか」とか思った会社の共通項とか見ていて。そこの反面教師・背反事象をまさに勉強して「Not A、Not B」ていうのを包括的にやってきたときにだんだん答えが出てきたかなっていう感覚なんで、仮説検証してるフェーズですね。