安藤優子氏「35年前、私は"刺身の上の菊"だった」 男社会で生きるオンナの意地

安藤優子×小谷真生子 記者会見 #1/4

ニュース番組のキャスターとして15年以上活躍し続けている安藤優子氏と小谷真生子氏。男性中心だった日本のメディア業界に一石を投じた彼女たちが、女性が抱える問題について語った会見を書き起こしました。安藤氏は自らの経験をもとに、周囲からの過大評価と自身の過小評価の問題を挙げます。

メディア業界の古い殻を打ち破った女性2人

ルーシー・バーミンガム(以下、バーミンガム):それでは、始めましょう。皆さま、ご着席ください。今日はようこそお出でくださいました。私は、日本外国特派員協会会長のルーシー・バーミンガムと申します。

一番右側にいるメアリー・ジョイスさんがQ&Aセッションの通訳を務めます。

お二人の素晴らしいゲストをご紹介する前に、ちょっとご案内をさせていただきます。今回は女性ゲストスピーカーによる「Women Speak」シリーズの第2回目であり、日本政府が後押ししている女性の職場への進出にスポットライトを当てるものです。

他のトピックとしては、科学技術における女性、法律における女性、芸術における女性などを予定しておりますので、そちらもぜひご参加ください。

今日は、メディアからお2人の女性をお招きしています。男性優位の日本のメディア業界の古い殻を打ち破ったパイオニアです。お顔をご覧になれば一目でおわかりになると思いますが、小谷真生子さんと安藤優子さんです。

小谷さんはテレビのビジネスニュース番組で、日本放送史上最も長くメインキャスターを務めていらっしゃいます。24年間に渡ってテレビでご活躍されています。

現在はBSジャパンの夜の経済情報番組『日経プラス10』でメインキャスターを務めていらっしゃいます。その前はテレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』で16年間メインキャスターをされていました。

安藤さんは1987年からフジテレビの番組に出演され、様々なニュース番組でメインキャスターを務められました。1981年のポーランドの「連帯」運動、1986年のフィリピンの「ピープルパワー」革命、1991年の湾岸戦争、2011年の東日本大震災などを取材されました。小谷真生子さんと安藤優子さん、ようこそお出でくださいました。

(会場拍手)

「刺身パックの黄色い菊」だったアシスタント時代

バーミンガム:では、安藤さん、よろしくお願いします。

安藤優子氏(以下、安藤):素敵なご紹介をありがとうございます。ここ日本外国特派員協会で、皆さん方の前でお話する機会を与えていただき、大変に光栄です。

普段ですと、皆さんが今いらっしゃる席に座って、質問をする側なのですが、今日は、こちらのテーブルに座っています。こちら側に座り、スピーチをし、皆さんからのご質問にお答えすることになるなど、想像もしていませんでした。今日は何だか場違いな気がしています(笑)。

35年前、私はテレビのニュース番組で「小さなプラスチックの花」としてデビューしました。どのような意味かは後でご説明します。実際、私のテレビでのキャリアはアシスタントから始まりました(笑)。

アシスタントはとてもユニークな職業で、男性より3歩下がって歩く女性を良しとする日本の文化によって発明され、育まれたものです。35年前、テレビ番組のアシスタントとして、私はただ男性メインキャスターの隣に座り、うんうんとうなずいて、彼が何か言うたび、言っている内容を理解しようがしまいが「はい、はい」と相づちを打っていました。

ただそこにいるだけの存在でした。私はいつもこのアシスタントの職を黄色いプラスチック製の菊の花になぞらえています。スーパーのお刺身のパックの上に載っているでしょう。お刺身の見栄えをちょっとは良くしてくれますが、食べられませんよね。黄色いプラスチック製の菊の存在意義はただそこにいることで、それ以上のことは期待されていませんでした。

インタビュー役に抜擢された理由が「政治家は女好きだから」

安藤:私は当時20歳で上智大学に在学中で、テレビのニュース番組では、パートタイムの黄色い菊だったのです。それが私のテレビのキャリアの始まりでした。

6ヵ月後、リポーターとしての初仕事を与えられました。自民党幹事長へのアポなしでインタビューをするというものでした。突然、私がそのような最も大変なインタビュー役に抜擢されたのは、番組のディレクターが、何も言わずにただ座って微笑んでうなずく若い女性に同情したからだったかもしれません。

当時の自民党幹事長は金丸信氏で、テレビ嫌い、カメラ嫌いでとても有名でした。金丸氏にとってインタビューの時間を割く価値があるものといえば、活字メディアだけでした。

実際、彼は写真写りが良いとは言い難かったですし、ご自分でもそのことをご承知でした。政治家でも誰にでもインタビューというものをした経験がありませんでしたので、それが生涯初めてのインタビューの仕事でした。

「どうして私なのですか」とディレクターに尋ねたところ、次の瞬間彼が何と言ったか、皆さんにはとても信じられないでしょう。「何でかって? 政治家は女が好きだからに決まってるだろう」と言われたのです。

(会場笑)

まあまあまあ。そんな単純なものでしょうかね? 今日は時間が限られていますので、このおもしろい会話についてもっと詳しくお話しできないのが残念です。とにかく、私は金丸氏の住宅を尋ね、氏から一言二言言葉を引き出すことができました。それを聞いてディレクターが何と言ったか、ご想像できるかと思います。「ほら、言っただろう。政治家は女が好きだって」。

女性だからという理由で過大評価された

安藤:この実話から35年前の日本のテレビメディアの状況がよくおわかりになると思います。それ以来、私は女性らしく振る舞わないように最大限努力してきました。自らの女性らしさを隠すようにしたのです。伝統的な男社会の男性の振る舞いに自分を合わせようとしました。

誰からも「女性だから、できたんだ」と言われないように、また、自分に対しても女性だから、できる、できない、といった言い訳はしないことにしました。

先ほど申し上げたように、男社会に従うことは、私が日本のテレビでキャリアを続ける上で非常に重要な要素、というか戦術でした。日本のテレビメディアで生き残るためには、自分を伝統的な男社会の振る舞いに合わせることは非常に大切で役立つことでした。

特に、自分が女性だからできない、という言い訳は絶対にしませんでした。戦争、暴動、地震、飛行機事故など、どんな仕事もためらわず引き受けてきました。自分が男性と同じくらい、それよりも上手に出来ると証明したかったのです。

しかしながら、テレビメディアの世界にいる女性にとっては2つの危険な落とし穴があると思います。1つは、過大評価です。湾岸戦争の報道から帰った直後のことを今でも覚えています。

私は記者会見を行うように言われました。ご理由はおわかりでしょう。私が戦場で唯一の日本人女性だったからです。湾岸戦争の現場には世界中から女性ジャーナリストが来ていましたが、日本人女性は私だけでした。

それだけの理由で私は記者会見を行わなければならなかったのです。それは明らかに過大評価です。戦場で私は日本男性ジャーナリストと全く同じ仕事をしていたのに、私が記者会見をしなければならなかったのは、私が女性だったから、というただそれだけの理由でした。それが私の言うところの過大評価です。

私には「初の女性○○」という肩書きがついて回りました。初の女性メインキャスター、どこどこの大統領にインタビューした初の女性レポーターなど。それに私は決して慣れることができませんでした。

女性自身が過小評価をしてしまう

安藤:2番目の落とし穴は、女性自身による女性の能力の過小評価です。女性の能力を過小評価する傾向は、女性に対する日本の伝統的な価値観と深い関連があります。冒頭に申し上げた通り、女性は男性の3歩後ろを歩くべきであり、何より良妻賢母であることを期待されているのです。女性は男性に守られるかわいい存在であるべきだと。

この意味では、テレビにおいても女性は理想のしとやかなアシスタントか、王の脇役として振る舞うべきだとされていました。女性自身もそう振る舞うべきだと思っています。そうでなければ視聴者から受け入れられない、と思っているからです。女性自身が女性の能力を過小評価しているため、女性は言いたいことを主張できないのです。

ところで、私は今「日本の国会における女性」というテーマで博士論文を書いているところなのですが、その目的は、女性政治家の数がなぜこれほど少ないのかを探ることです。

この論文執筆のためのリサーチを通じて、アメリカの政治学者ジェニファー・ローレスとリチャード・フォックスによる非常におもしろい研究に出会いました。本のタイトルは『It Still Takes A Candidate』といい、候補者3,800人の男性と女性候補者を徹底的に調査し「なぜ女性候補者はトップ(議会)にたどり着けないのか」という問題を探るものです。

その結論は驚くほどシンプルなものでした。トップへ上り詰めるのを諦めた女性候補者が言う言葉は「私はふさわしくないから」なのだそうです。これは過小評価です。女性自身による女性の過小評価はアメリカでも、深く根ざしているようですね。

私は今55歳です。年齢を白状する必要はありませんけれども、55歳で、もう「かわいい」とは言えませんので、日本のテレビ界を生き抜くための新たな戦術を探る必要があります。ご提案がありましたら、ぜひお聞かせください。メディアについてどんな質問でもお受け致します。ご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

バーミンガム:素敵な、素晴らしいスピーチをありがとうございました。では、小谷さん、どうぞよろしくお願い致します。

小谷真生子(以下、小谷):まあ、何て素晴らしいスピーチでしょう。私も安藤さんと同じ気分です。私ももう「かわいい」という年齢ではありません。でも、安藤さんは、知識も経験も豊富で、尊敬する面がたくさんあります。そういうところは「かわいい」よりもはるかに評価されるべきだと思いますが、それが文化なんですね。

今日、私は2つの大きなテーマについてお話ししたいと思います。1つは、日本のテレビ業界の現在のトレンドについて、それからジェンダーについてです。まず……。(安藤氏に向かって)優子さんみたいにおもしろいジョークは言えないわ。

安藤:ジョークを言っているつもりはないのよ。実話よ、本当のことだもの。

小谷:それは残念ですね。

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