イノベーションの源泉は恐怖にある--バイオリニスト→医学部→起業家と転身して見えたもの

The importance of pure imagination #1/2

バイオリニストから医学の道へ転身。その後、複数の国で様々な事業展開を行うというユニークな経歴を持つ起業家の奥田澪奈氏。彼女は視野を広く持つために「想像力」を育むことが重要だと語りかけました。(TEDxTokyo yz 2014年より)

常に相手の立場を考え、想像する

奥田澪奈氏:私は毎日自分に言い聞かせる言葉があります。

"Words alone are finite organs of the infinite mind making reality a product of the most august imagination."

「は?」ですよね(笑)。

日本語で訳すのはすごく難しいので抽象的に言いますと、機械は作業をこなすことができても、想像を超えることができない。人には偉大な想像力があり、それを現実にすることによって想像を超えることができる。

つまり何が言いたいかというと、「想像」というものがいかに重要でいかに大事かというのを今日は伝えたいと思います。私は今、複数の国でいくつかの会社を立ち上げていて、驚くほどにバラバラなものばっかりです。

医療系からロボット開発、貿易、ミサイルやF14、F15などの飛行機の扱いから、クラウドファンディング、IT、ファッション……。いろんなことをしています。

その中でも、自分の中でいちばん軸としていることはただ1つです。それは、常に相手の立場を考えて、そして想像するという、ただそれだけのシンプルなことなんです。

元々は起業家になるなんて全然思ってはいなくて、あるきっかけで今の自分があると思います。

私は若いころ、プロのバイオリニストを目指していました。14歳の時にその夢が叶って、母親が泣きながら「行かないで」と言うにもかかわらずヨーロッパに留学しました。

留学先のウィーン大学で、プロのバイオリニストやピアニスト、ソプラニストとかそういう感じの人たちが、一生懸命人生を注いで自分の表現を人に言い表せる、そういう仕事について、すごく熱心なミュージシャンの方たちと一緒に働いたり勉強したりしていました。

そんな中、私は大きな壁にぶつかったんですね。それは意外にも、表情や表現の仕方というのがすごく自分にとって難しいことでした。ある時「チャイコフスキーの第2楽章を弾きなさい」と言われ「はい、弾きます」と言って弾きました。ドイツ人の先生は私の顔を見て「いや、ダメです」と。

「それはどういう意味ですか?」と聞いたら「君が弾くバイオリンの音は、片思いにしか聞こえないよ」。「えっ、片思いの曲じゃないんですか?」って思ったんですけど。当時のチャイコフスキーはゲイで、その時代には風当たりが強くて実らない恋っていうのがあったんです。

仕方なく女性と一緒になって、そして近所には好きな男性がいたので「近いけれども遠い愛」っていう表現だったんですね。当時私は14歳で、彼氏もいないですし、好きになったこともないし、むしろ「好きって何?」って感じだったんですね。

私は彼の気持ちにすごく近づきたくて、環境を変えればきっと彼の気持ちにも近づくだろうと思い、少し環境を変え、友人の紹介で病院で働くことになったんです。病院で週1回だけなんですけれども、チャイコフスキーの曲をいろんな患者さんに弾く、というたったそれだけのシンプルなことだったんですけど。

バイオリニストを辞め、医学部へ

ある日、ある女性が車いすで通っていたんです。私は普通にバイオリンを弾いてたんですけど、その人はトイレにも行けない人で、自分の名前も忘れてしまい、昨日したことも忘れてしまう、今日何したかも忘れてしまうような人だったんですが、私がその曲をたまたま弾いていた時に「自分の名前を思い出した」って突然言ったんです。

それを見た脳外科医から「君、ちょっとミュージックセラピーに興味ない?」って言われて「ミュージックセラピーかぁ」と思って。

もともと環境を変えたかったし、患者さんに弾くのも好きだったので、とりあえずミュージックセラピーというのを週に3回やり始め、そこで重度のアルツハイマーの患者さんにバイオリンを弾いてたんです。

その時に気付いたのが、「バイオリン」っていうものと「音楽」っていうもの、「脳」と「記憶」と「医療」って素晴らしいなと思いました。それに気付いた瞬間「私、たぶんバイオリニストを辞めたほうがいい」と思ってやめてしまい、また母を泣かせ……。

カリフォルニアに戻って「お母さん、私、医学部目指す!」と言ってしまい、母はまた泣き、「この子は一体何をしようとしているんだろう」「数学もできないような人がどうして医者になるんだろう」と思ったと思いますが……。

とりあえず受験勉強をがんばって、無事医学部に合格したんですね。医学部に合格した時にまた母は泣いたんですけど、その時はうれし涙だったのでちょっとホッとしました。人生いろいろある中、涙ばっかり流す母親の姿がありましたね。

患者の共通点は「悔いの有無」

そんな時、私はハーバード大学病院で、人の気持ちにもっとふれあいたい、もっと人の気持ちと一緒に何かをしたいと強く思って、ある実習に参加したんです。その実習では、1,000人、2,000人以上の患者さんを診て、それこそHIVだったり脳腫瘍だったりする患者さんや、重度の麻薬中毒の患者さんだったり、末期がんの患者さん、いろんな患者さんに出会いました。

その中で1つの共通点があって、それは「悔いの有無」だったんです。ある7歳の女の子は「私は好きな映画も見られて毎日学校が楽しい。だから悔いはない」。そういう患者さんもいれば、39歳のお父さんのように「俺は息子と娘、2人子どもがいて、奥さんも残していってしまうから悔しい。死ぬのが怖い。悔しい」と言う人もいれば、95歳のおじいちゃんなんかは「やり残したことが山ほどありすぎて、まだ死にたくない」、そういう患者さんもいたんですね。

そんな中で私は、こんなに人種も年齢もみんなバラバラのいろんな患者さんに出会って、自分で何か残したいなってすごく強く思ったんです。「この患者さんのストーリーを、どうしたら私たちみたいに死に直面していない人たちが共感できるんだろう?」と思って、当時18歳だったんですが、友だち複数と一緒に、ビデオを送るようなサービスを行う「Life Chronicles」というNPOを立ち上げたんです。

最初の1~2か月は毎日10人~20人ぐらいの患者さんを診て、毎日会っていろんな話を聞くんですけども、半年ぐらいになると寄付も集まって、そこで70人~80人ぐらいになって、結構いろんな国を飛び回って、いろんな人のビデオを収めたんですね。今も続いているんですけれども。

私は今はいろんなビジネスをやっているんですが、いちばん自分にフォーカスしているのはもちろん医療と貿易で、医療機器だったりとか特殊なものを海外に輸出入するとかそういう簡単なビジネスです。そんな中で思うことが「人々の視野がとても狭い」ということなんですね。

私は今日本に来てちょうど1年半で、ちょっと日本語下手なんですけれども、1年半の間にいろんな人達と関わっていろんなビジネスを見てきました。その前はずっとアジアでビジネスを展開していて、その前はアメリカ・ヨーロッパだったので、日本にいる期間はすごい少なかったんですが、それでも気付くのは「人の視野がすごく狭い」ということなんです。それはどういう意味かというと、1つのことを1つの方向でしか考えない、それだけなんです。

恐怖に立ち向かう者がイノベーションを起こす

私は起業家として自分の中で大切にしていることが1つあって、さっきも言ったんですが「想像力」。この考えは、元はといえばやっぱり医療(の体験)というのがあって、いろんな人の思いを誰かに捧げたい、誰かに繋げたいとか、自分の力で何かをどうかしたいっていう気持ちがありました。

その前は音楽。音楽で、自分の表現をいかに相手にちゃんと伝えることができるかということを考えていた。でも残念ながら、今の人たちはそれを避けようとする人が多いです。死のことを考えたり、世の中の暗いこと、叫び、悩み、そういうことってやっぱり想像したくないからなんですよね。

それはうらやましいかというと、別に私にとってうらやましくもなく、どちらかと言うとすごい怖くて。恐怖に立ち向かわない人ほど、本当は自分の中にもっと恐怖があるんじゃないか、っていうのを常に思っているんですね。

まだまだ若い年齢でもあるんですけども、いろんな人に出会い、いろんな思いを重ねていろいろ仕事もやってきた中で、恐怖に立ち向かう人、恐怖に立ち向かう起業家とかはやっぱりイノベーションを起こす人たちなんじゃないかなぁと思っています。

その理由は、何もないゼロから1を作るものインベンションとは違って、イノベーションは1から100を作るという本当に単純なことなんです。

それは想像力があるからこそできるものなんですね。だからこの会場にいるみなさんも少し想像して、少し相手の立場を考えたりものを見たりするだけでも、1から100をすごく作れると思います。誰でも作れるものです。最後に、残したい言葉なんですけれども、最初に伝えた言葉で、

"Words alone are finite organs of the infinite mind making reality a product of the most august imagination."

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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