池上彰が"コミュ障"大学生たちにトーク術を伝授! 「ストーリーをつくる」「相手に問いかける」

池上彰、パトリック・ハーラン #3/3

東京工業大学で教鞭をとる池上彰氏と、パックンことPatrick Harlan(パトリック ハーラン)氏が、情報発信力の磨き方について意見を交わしたトークセッション。コミュニケーションのプロである両名が語るトーク力を高めるポイントとは。8割が自称「コミュ障」だという、東工大生への熱いメッセージです。

スピーカー

東工大生の8割が「自称コミュ障」

池上彰氏(以下、池上):で、やっと本題に入っていくんですけども、パックンがこの東工大で今の学生達にコミュニケーションについて色々と話をしていますよね。なぜ東工大の学生たちにコミュニケーションを伝えようと、教えようとしているのでしょうか。

Patrick Harlan(パトリック・ハーラン)氏(以下、パックン):そのきっかけを作ってくださったのは池上先生で、(僕を)呼んでくださったんです。何か授業を持ちませんかと。

池上:さらに言いますと私のアイデアではなく、リベラルアーツセンターの桑子センター長がパックンなんかどうかねって、このひと言なんですよ。

パックン:そうなんですか。その経緯は聞いてませんでした。ありがとうございます、ほんとに。

池上:「パックンなんかどうかね」って言われて、「そうですね。じゃあちょっと話をしてみましょう」と、私がパックンを呼ぼうと思ったわけではないんですね(笑)。

パックン:そうだったんですか。でも先生から電話があって、授業を持ってみませんかとおっしゃってもらいましたが、別に「これ」といった内容まではおっしゃってなかったんです。僕が教えられて、この大学で必要とされている。そのニーズがある授業はなんだろうと思ったら、8割の学生が自らコミュ障だと名乗ってしまう東工大生。

池上:東工大生以外の、地域の方なんかもいらっしゃるので、ここでちょっと解説しましょう。東工大生は自分たちのコミュニケーション能力が欠けてるというのを、自虐的に「コミュニケーション障害」、略してコミュ障と言っているということです。はい、これでいらしてる地域の方もわかったと思うので話を続けてください。

パックン:ぼくもここでコミュ障というのを初めて聞いたんですけども、どうやら校歌にも入っているらしいですね。本当に自覚しているくらいですけども、実際に今、日本が必要としているのは、東工大生が身に付けている技術力だけではなくて、コミュニケーション能力を持っている人材なんですね。

この両方を持ち合わせている人がいれば日本の強みを世界にアピールできるんですよ。今、僕は日本に来て20年になるんですけども、1回も好景気だと聞いたことがない。慢性的な不景気となっている日本で、火をつけてくれるのは日本の良さをアピールする。そういう人材だと思っていて。

ここで育って日本に好景気をもたらそうと、僕の老後に必要となる年金をみんなにも払ってもらうと、そこまで企んでいるんです。けれども結構全世界から見ても日本はいい技術をいっぱい持ってるんです。いい物をいっぱい作ってるんです。ノーベル賞もとってます。とってもいっぱい持ってます。

でもそれをきちんと伝えるコミュニケーション能力の高いなんですかね、日本の技術に対してですがなかなか見当たらない。だからこういう人が必要だなと、僕が必要とされているなと感じましたね。

コツさえつかめばコミュニケーションできる

池上:なるほど。それで実際に教えてみて、東工大生のコミュニケーション能力ってどうですか?

パックン:……ダメだねえ(笑)。

(会場笑)

パックン:でも僕の授業を受けているということは、自らコミュニケーション能力を高めようとしている、ある意味厳選されたメンバーでもあるんです。毎週、実戦練習をペアとか、3人組4人組でさせているんですけれども、上手くなるんですよ。

みるみるうちにコミュニケーション能力が高くなっていくんですよ。潜在能力がものすごく高いというのもあると思うんですよ。しゃべりたいことがある、技術を持ってる、頭も良い、やればできる、そういう人ばかりなんですね。

実際に僕の授業を前期もしくは今期受けている方いらっしゃいますか? 結構いるんですよ、こんなにいるんですよ。という事は8コマ最後まで受けても、まだ物足りないと思ってるわけですよ。もっとコミュニケーションを高めたい、そういった野心の持ち主の人が結構いる。みんな1回ハメを外せばもっと話ができるんです。

ファイナルプロジェクトと言って好きな形のプレゼンとかディベート、演説、何でもいいからここで見せるもの用意してこいと漠然とした宿題を出しているんですけども、アトランダムに人を呼んで舞台に上げてやってもらったら、みんなうまかったんですよ。

みんな持ってるんですよ、その能力を。きちんとコツをつかんでコミュニケーションをやろうと思えばできる! と、すごく思いました。

池上:はい。それだけの能力を引き出した俺の授業がすごいんだと、さりげなく自分の自慢をしていると(笑)。

パックン:再来週まで履修できるということなんで、締め切り前なんで。

池上:そういう能力を持っていると。

話の構成にストーリー性を持たせる

パックン:そろそろ先生から話を聞かせてください。

池上:いやいや、私は話を引き出す役ですので。

パックン:楽しないでくださいよ(笑)。

池上:コミュニケーション能力を高めていく、引き出すために必要なポイントというのはなんですか?

パックン:今日の授業、来週の授業の内容は来てほしいからあまり言わないようにしますけれども、ストーリー性とかものすごく大事です。これは先生が勉強されているか、それとも自然とできているのかわからないですけども、先生が伝えることは、ストーリー性があって覚えやすい形になっています。

先生は例えば今の世界情勢を伝えるのも、過去の歴史的な流れを伝えるのも、それに日本が今、直面している問題を伝えるのも、必ずストーリー性のある言い方で言うんです。これは先生が意識して作っていらっしゃるんですか?

池上:これはそうですよね。こちらが伝えたいことってありますよね? でもそれを興味を持って聞いてもらうためには、何らかの「つかみ」というものが必要になりますね。業界用語で「つかみ」というんですけども、とりあえず興味を惹きつけるものが必要なんですね。

そうすると、どこかで現代的な課題であったり、ニュース性のあることを、とりあえずきっかけにして話を展開すると。そのためには、まず今伝えたいということを現代においてはどういうニュースになっているんだろうか? と。

現代のニュースになるもの選び、そこから行こうと。そこからどのように展開していくと言いたいことまで伝わるのかな? というのを、一応組み立てていくということですよね。

パックン:ちゃんと計算されてるんですね。その構成を作ってからお話になるんですね。それがうまいんですよ。尖閣諸島とか領土問題を取り上げようと思っても、なぜかきゃりーぱみゅぱみゅから始まってるんです。そういうつなぎを作るのが天才的なんですよ。

数字だけで全てを判断してはならない

池上:きゃりーぱみゅぱみゅまではさすがに使ったことないですけれども、やはりそういうことが大事だと思うんですよね。例えば今、東工大生に話したいことと言いますと、中国で鳥インフルエンザが広がっているでしょ。

鳥インフルエンザで死者がずいぶん出ていますよね。これが一体どういう意味を持つのかというのは、明後日の夜7時からのTBSを見ていただければいいんですけれども。

パックン:なんだか告知が多いですね。

池上:なんですけれども、死者がずいぶん出ている。で、今現時点で鳥インフルエンザに感染してる人が60人ぐらいで、死者が11人。そうすると致死率が高いでしょう。極めて高い致死率だと思いますよね。

特に東工大生はいろいろなところで数字を使う。数字は統計学的に処理する。だからそこで気をつけてほしいのは、数字だけを見て判断してしまうと間違えるということですね。

パックン:そうですね。数字のマジックというものがありますからね。

池上:例えば、中国と日本の医療制度医療制度が大きく違うわけですね。中国の場合は医療費は無料じゃないですよね。無料というか、もちろん日本のような保険制度になっていないので、医療費が大変高いんですね。ということは普通は、熱が出てインフルエンザかなと思っても家で治そうとするんですね。

そこでこじらせてしまって、どうしようもなくなった段階で病院に行くんですね。だから病院に入院したあと、すぐ亡くなってしまう。ということで致死率が非常に高くなるわけです。ということはおそらく60何人という患者数になっていますが、本当は病院に行かないで。

パックン:何百人もいると。

池上:家で寝てなんとか治そうとしている人がいるに違いない、というふうに考える。実はこれもっと深刻な事態になる。日本の場合は熱が出てインフルエンザか、あるいは風邪になったらすぐ医者に行くでしょ。これは原則3割の自己負担で医療費が払える。そして医療が受けられるということなんですね。

となるとつまり中国の数字だけを見て、危険だなと言えるかどうかということはわからない。数字の処理をする時、国の社会体制あるいは社会保険制度まで社会保障制度まで把握していないと、実はきちんとこれを分析することができない。

それは私の場合は社会科学的な話をしていますけども、リベラルセンターで国際情勢の問題ですとか、いろいろなことを知ることによって、実は数字をうまく扱うことができるんじゃないかと、そういうことを学生たちに伝えていきたいと思うわけですね。

患者数ワースト1の真相

池上:例えば2009年にメキシコで豚インフルエンザが流行って、それがどんどん広がって新型インフルエンザということになりました。あの時にアメリカでも患者がすごく増えたんですね。あのあと1年間、世界で1番新型インフルエンザが出た国はどこだと思いますか?

パックン:180いくつ国があるよね。

池上:地域も入れればね。国連加盟国は191カ国ありますからね。

パックン:アンゴラ、アルメリア。

池上:いやいやそんな、なるほど。

パックン:アメリカ、アフガニスタン、アンドーラ、全部順番に行きますよ。

池上:すごい、アンドーラ公国まで出てきましたね。そういう知識をひけらかす場ではなくですね(笑)。

パックン:1番多い国、中国。

池上:違いますね。

パックン:どこですか?

池上:日本ですね。

パックン:なんでですか。

池上:インフルエンザかなと思ったら、みんな病院に行ったわけなんですよ。医療にかかってすぐに。抗ウィルス剤を処方してもらったんですよ。だから治療を受けた患者の数が世界一なんですよ。

パックン:患者数か。

池上:患者数になるんですよ。

パックン:なるほどね。

池上:つまり患者の数って医療機関に行っているかで、医療機関にかからないと把握ができないでしょ。

パックン:なるほどね。

池上:アメリカの場合は4,700万人も医療保険に入ってない人がいるわけですから、そもそもインフルエンザになっても病院にかからなかったけですよ。表に出る患者数は非常に少なかった。

だから日本が世界で1番患者の数が多い。日本はインフルエンザにかかりやすいんだ、と見てはいけないと。医療保険制度が存在することによって、そういうことがあるんだよと、こういう見方が大事なんですよ。

パックン:なるほどね。これでTBSの番組を見なくて済んだんですね。

池上:まぁまぁそうなんですけどもね。こういうふうに話の中でストーリー性を持たせて行くにはどうやって「つかみ」を持つかと。日本はこういう保険制度があるので、患者の数がつかみやすいという話を、すぐに興味を持ってもらうためには、インフルエンザが流行った時、世界で1番患者が出たのはどこの国だと思います? という疑問を投げかけると。

パックン:クイズから始まるんですね。

池上:お! って思うわけですよ。

パックン:思いますね。

池上:こういうのがストーリーを組み立てて、関心を持ってもらうというやり方です。

ストーリーに奥行きを持たせる

パックン:このストーリー性の他に先生うまいなと思うのは、ディテールの出し方がいいですよね。数字も具体的なものを出しますし、またその数字が例えば中国の患者の生活がちょっと見えてくるぐらい描写が上手いんですよ。ただの流れではなくその立体的な描写ができる。そういうお話上手な解説者、他にいないんですよね。

池上:何かしきりにこういう感じ(ゴマをするジェスチャー)ですね。

パックン:そうなんです。

(会場笑)

池上:日本だとこうゴマをするんですけど、アメリカだとアップルポリッシャー、りんごを磨く人っていうね。

パックン:もしくはリック ブーツ、(lick boots)靴を舐める人とか、キス アス(kiss ass)お尻にチュッチュする人とか、もっとかわいくない言い方もある。

池上:ちょっと下品なので、アップルポリッシャーぐらいにしたほうがいいんじゃないですか。

パックン:先生の机にリンゴを置く、優等生がいましてですね、そういう人はもっと先生に喜んでもらえるようにピカピカに磨いてからおくという。日本だったらワイロ扱いになりますかね。日本の先生は公務員ですから、生徒や親からものをもらえないんですよね。アメリカだったらもらいたい放題です。ガッポリもらえる。

池上:そういう話じゃなくて、話がどんどん横にずれていってしまうんですけども。

パックン:でもずれるのも大事ですよ。コミュニケーション術としては興味を持っていそうな方向に話をずらすのも大事。

池上:ちょっとずらして、そして気がつくと戻っているような、ちゃんと後に本筋に戻ような、うまい質問をしてくれると私は「いい質問ですねぇ!」とこう言えるわけですよ。

安易な言葉に逃げ込まない

パックン:なるほど。テーマがわかりました。このテーマ何分までですか。

池上:いい質問ですねぇ! 残り1分でやめろとADが指示を出してますから。取りあえずまとまりのない話をまとめてですね。このあと10分間の休憩を挟んで、ここにコミュ障の代表のような学生たちがきてですね……。

パックン:いやいや! それを克服した(生徒)!

池上:それを克服した人たちですね。皆さんと話をしながら会場のみなさん、あるいはニコニコ生放送ご覧の方々の質問にお答えしていこうということになっております。という話をした上で、ではこのまとまりのない話をまとめてください。

パックン:はい。……頑張ってください! これ大体なんでもまとまるんですよ、このひと言で。

(会場笑)

池上:なるほどね。本当にね。頑張ってくださいって。例えば東日本大震災があるでしょ。そして被災者の方々のところに行って最後に、「がんばってください」と。どう頑張ればいいわけ?

パックン:そうなんですよね。

池上:私がぜひ言いたいこと、安易に頑張ってくださいと言わないこと。

パックン:はい。では言わないように、頑張ってください。

池上:逆に、頑張ってくださいっていう安易な言葉に逃げ込まないで、他の言葉で励ますためにはどうしたらいいかって考えること。そこから始まると思うんですね。「頑張ってください」は皆に言える事でしょう。でも個別に事情は違いますよね。その人を励ます言葉は何だろうかということを考える。これが実は大事なことで、そのためにぜひ頑張ってくださいね。

(会場笑)

パックン:あ、使っちゃったの(笑)。では10分後にお会いしましょう。ありがとうございました。

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