孫正義が語るコンピュータ進化論~人工知能に感情は必要か?

ソフトバンク 新30年ビジョン発表会 #3/7

今後300年の間に人間の知能を超えた脳型コンピューターが生まれると語る孫正義氏。科学技術はどこまで許されるのか? コンピューターに感情を持たせるべきか? 孫氏は未来に起こりうる様々な問題について疑問を投げかけました。

脳型コンピューターが生まれる

孫正義氏:人類はこれから300年の年月で言えば、人類最大のパラダイムシフトを体験することになる。じゃあそういうふうに大きなパラダイムシフトがやってくる、人類のライフスタイルが変わるという未来において、300年後の未来において、ソフトバンクが実現したいことってなんだろうということであります。

300年間にわたってソフトバンクグループが存続し、300年後我々の今の現在の人類が考えられないような、先ほど言いましたように、1垓(ガイ)倍にならなくても、仮に1,000倍だとしても、100倍だとしてもですね、人間の脳をこえるものが初めてこの地球上に生まれると。

そんな大転換があるという人々の生活の中で、ソフトバンクは何をしたいのかということであります。ソフトバンクの未来の人々への責任というのは、未来の人々を幸せにする。そのために我々は情報革命を行うということであります。

間違った情報革命をしてしまうとですね、単にお金のために、人々を支配するためにこの恐ろしい武器を使うということで、そのエゴ的な、恐ろしい黒い心で新しい人類の武器を手にしてはいけない、というふうに我々は思うわけであります。

最先端のテクノロジー。最も優れたビジネスモデル。これを使って情報革命を通じて人々の幸せに貢献したい。人々を幸せにしたいということであります。

何が生まれるのかと。一言でいうと、脳型コンピューターが生まれるというふうに思います。脳型コンピューター。

この中で、脳型コンピューター、その意味が分かる方、手を挙げてください。脳型コンピューター原理を知ってるぞ、そんなものは常識だ。それはもうすぐやってくる。その基本的メカニズムを知ってる方手を挙げてください。ほとんどいません。

人間の脳のように自ら学習していく

300年前の人々は、我々が今携帯電話を持ち、自動車に乗り、空を飛び、テレビで動く映像を見てる。想像すらできなかったと思いますね。今から300年後の人々は脳型コンピューターを当たり前のように使っているというふうに私は想像します。

そこで脳とは何かということを考えてみました。脳というのは基本的に、データ、そしてアルゴリズム、この2つを自動的に獲得する。そういうシステムだというふうに認識しています。

データってなんだろうっていうのは、脳にとっては知識というものですね。アルゴリズムってなんだろうっていうと、脳にとっての知恵ですね。人間は知恵を持ってます。そして知識というものをどんどん毎日学んでいきます。

この学ぶという事が、脳が自分で学んでいくんですね。誰かが脳をプログラミングすると。今までのコンピューターは人間が、誰かがプログラマーがプログラムをして初めて計算をしたり記憶をしたりということを行うわけですけども、人間の脳は自動的に勝手に学んでいくと。勝手に考え始めるという能力を持っております。

そういうメカニズムを持っているのが脳であります。学習するコンピューターであります。この学習する脳型コンピューターについて、私はある科学者と意気投合して色々な議論をしたことがあります。もう亡くなられました。

松本元(まつもとげん)さんという、脳型コンピューターを研究しておられた第一人者でありました。僕は将来彼はノーベル賞を受賞すべき人間だとそういうふうに思いますけども、脳型コンピューターというのは基本的にはデータを自動集積し、自動的に集める、そして知恵に相当するアルゴリズムを誰かがプログラミングするのではなくて、脳型コンピューター自ら学習しながらプログラミング、アルゴリズムを獲得していく。

自ら学習していく、誰かがプログラミングするんじゃない。その両方の武器をそなえたものが脳型コンピューターだというふうに思います。なぜそこまでいくのかということですけども、例えばミツバチ。脳があるんです。

ミツバチの脳の機能、ハードウェア的な機能とチンパンジーの脳の機能と人間の脳の機能ありますけども、ミツバチにもチンパンジーにも人間にも、誰かが知恵をプログラミングしているわけじゃないですよね。

脳のハードウェアでありますシナプスの数が増えてくると、脳は見たもの聞いたもの触ったものをどんどん学習し、学習したものを更に活用して知恵を生み出していくということになるわけですが、そのハードウェアとしての脳の機能を、先ほど言ったように1垓倍だとか、1垓倍の1垓倍の1垓倍みたいな規模になってくると、勝手にこの脳型コンピューターというのは、自ら、片っ端から情報を得ていくと。

そして考え始める。ある意味では既にこの知識に相当するデータの自動集積というのは、ヤフーの検索、あるいはグーグルの検索というのはもう既に行いはじめているわけですね。情報検索しますね、ヤフーだとかグーグルで。あれは人間が最早、情報であるデータをインプットしているのではないんです。

人間の脳を超えたコンピューターが生まれる

もう今日現在、すでにコンピューターが自らデータをどんどんロボットクローリングという技術を使って、コンピューターが勝手にどんどんどんどん世界中のニュースだとかデータ、情報をどんどんどんどん集めていって、それをサーバーに入れてですね、クラウドコンピューティングというかたちで人々にそのデータを提供しているわけです。

ですから先ほど言いました2つの機能ですね、データを自動集積、知識を自動集積する、かたっぽの側は実はすでにコンピュータは自らやりはじめている。残りかたっぽの武器であります知恵、これについても時間の問題で、このように脳をはるかに上回る機能のコンピューターが出ると、時間の問題でこれをやりはじめるだろう。その一部の兆しがもう出始めております。

人工知能ということで、ロボットの手が異なった色、形の積み木をすばやくばーっと積み上げる。異なった大きさとか、色とか形のクスリをですね、一番効率よくばーっと仕分けしてビンとかに詰めていく。

それは人工知能という形で勝手にコンピュータが考えて勝手に知恵として一番早く効率よく入れていくということをもう既に人工知能として一部やりはじめています。最近おもしろい事例がありました。

これはホンダの研究所で行われている実験ですけども、このコンピューターのチップを乗せた、人工知能のコンピューターのチップを乗せた車がどういうふうにコースを回れば一番速くコースのゴールにたどり着くか。人工知能でどんどん自分で考えてコースを勝手に変えていく。

途中でですね、間違ってコースにぶつかったんですね、この車が。コースにぶつかって、コースを壊して曲げて走ったら、ゴールに速く着けたと。このぶつかって壊れて、というのは実は事故なんですね。事故なんだけど事故の結果、一番速くゴールにたどりついた。

次からは人工知能のコンピューターを搭載した車は、自らの意思で自らそのコースに体当たりして勝手に一番早い道を走るということを学習してしまったということですね。これはまさに人工知能が一番最適な知恵を使って目的に達するということを、自ら考え始めたということの事例になるのではないかというふうに言われています。

科学技術はどこまで許されるのか

そうすると我々はですね、大きな人類は議論をすることになります。人間の脳を1垓倍なのか100倍なのか1000倍なのか知らないけれど、はるかに越える規模の能力を持つ脳型コンピューターが生まれて、しかも知識だけでなくて知恵まで自分で勝手に獲得していくようになったら、人間より頭のいいものができてしまう。

今は人間がプログラムしているわけですから人間のほうが頭がいいんですけども。それを超えるものができてしまう。

果たしてそこまで許すべきか。科学技術の進化をそこまで許したときに、人間が制御できなくなってしまうのではないか。もう一つの事例として議論されていることにクローンっていうものがあります。

羊の毛を一本抜いてビーカーに入れて色んなことをしてやるとやると、細胞分裂を始めて、クローン、全く同じDNAの羊、顔も形も全てが同じDNAのコピーができる、ということが科学技術でできるようになりました。毛を一本抜いて同じものが作れる、赤ちゃんとして父親と母親から生まれるのではなくて、毛一本で勝手に試験管で作れてしまう。

そういう技術が確立されてきている。人間にも実は応用できるわけですね。毛一本でできるわけですから私も毛がなくなる前にちょっと預けておこうかという気になりますが。果たして人間の複製を作ってしまっていいのかというのが、科学技術者のなかで真剣な議論がおこなわれ、各国の政府が人間のクローンだけは法律で禁止しましょうということで一致しました。

ですから科学技術っていうのはどこまで許すのか許さないのか、人間にとって何が有益な事で何が有害な事かという事の議論であります。

ということでコンピューターは時間の問題で、私は間違いなく、知識とそして知恵というところまで、人工知能で色々なものが便利になるので、これは止めることができないくらい進化してしまうだろうというふうに思います。

コンピューターに感情を持たせるべきか

実は脳にはもう1つだけ重要な、最も重要な機能があります。それは感情というものです。人間の脳は大脳がこの3つで成り立っていると。

知恵と知識を道具として使い、人間の脳は何をゴールに、何を目的に働くかというと、自分の脳が一番心地よいと感じる感情を満たすために、知恵と知識を使っているわけです。

一番脳が心地よいと、快感を感じる。お腹がすいた。それを満たす。眠たい。それを満たす。お金を稼ぎたい。それを満たす。立派な家に住みたいという欲望。それを満たす。感情の欲望を満たすという事のために、知恵と知識という道具を使って、脳は機能していくわけであります。

じゃあその感情の中に、感情の欲望というものがあるわけですけども、欲望の中に、欲望のままのためだけに、本能のおもむくままだけに人間が脳を活用していくと、知恵と知識を活用していくと大変危険なことになりますね。野蛮な人たちが生まれてきます。

実は人間の脳の段階にはですね、人間の脳が感じる、満足感を感じる、快感を感じるものには段階があるというふうに言われております。

一番低い次元の感情、欲望を満たすというは生理的欲求ですね。食べたい、眠たい、そういうような生理的な欲望であります。本能的な欲望というふうにも言えるかもしれません。

それをもう少し知性がつくと、人々はもう少し理性を働かせて、欲望のあまりにもむき出しの本能のままいくと人に迷惑をかけてしまうと、それをやっちゃいけないっていう知性が生まれる。

社会性という名の知性が生まれるということであります。それで人間は本能的欲望を制御しているということであります。

その知性をもう少し高い次元でいくと、自己実現。夢を実現させていくということであります。オリンピックで金メダルを取りたい。ワールドカップで優勝したい。すばらしいピアニストになりたい。

そういうような自己実現というものがもう一段高いところにあると。最も高いところにあるというふうに言われるのが、愛ですね。先ほど一番人生で悲しいことってなんだろうというと、身近な人の死だとか、孤独になりたくない、愛を満たしていくというのが脳細胞が求める最も高い次元の、深い次元の欲望だというふうに思うわけであります。

また、これがむき出しの欲望である本能的欲望を制御するということでもあります。ですから、先程のクローンの羊、クローンの人間を人類は許すべきかどうかという議論と、それとは別の次元で、人間は、人類はですね、コンピューターに感情を持たすということを許していいのか、という大きな人類がこれまで体験してきた一番大きな議論に突入すると。この300年以内の間に、どこかでですね。私はそう思います。

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