空気を読みすぎる日本人へ--池上彰×パックンが教える、嫌われない自慢の仕方

池上彰、パトリック・ハーラン #2/3

東京工業大学で教鞭をとる池上彰氏と、お笑いコンビ・パックンマックンのパックンことパトリック・ハーラン氏が、情報発信力の磨き方について意見を交わしたトークセッション。本パートでは、コミュニケーションスキルの極意である「空気」の読み方に焦点を当てました。

スピーカー

外に出て知る、自国の良いところ悪いところ

パックン:アメリカの悪いところをきちんと話してもらうのは非常に大事なところで、日本に出てきてやっと自分の国を客観的に見れるようになったと思います。

池上:見「ら」れるようになったですね。

パックン:あ、ら抜き言葉が嫌いな古いタイプですね(笑)。

池上:はい、見られるようになった、どうぞ。

パックン:見られるようになられてですね。

池上:今のはネタで「ら」をもう一つ余計に付けたんですね(笑)。はいどうぞ。

パックン:ら入り言葉で(言うと)、見られるようになって非常に助けられたと思いますね。アメリカ人は、やっぱり自分の世界にしか目を向けない、非常に視野の狭い人になるんですけども。

これが海外の皆さんとの交流によってアメリカの良いところ、悪いところがわりとはっきり見えてきて、こういうところは大好きだなとか、こういうところ変えなきゃなということが出てくるようになりました。先生もそういう経験ありますか?

池上:やっぱり外に出て初めて、日本あるいは日本人とは世界の中でどういう風に思われているのか、とかそんなことを考えるようになりますね。

パックン:どういうふうに思われているんですか?

池上:海外に行くと、実はとっても日本は人気で評判がいい。でも日本にいると日本の周辺の国からいつも悪口ばかり言われていて、本当に世界から嫌われているのかなと思うんですが、これが東南アジアに行ったりアフリカに行くと、本当に日本というのは人気ですよね。

パックン:人気ですよ。アメリカもある程度人気なんですけれども、アメリカの文化が好きとか、ものが好き。文化は好きですが政府が嫌い。こういう、ほんとにはっきりする白黒ありますよね。

でも日本はアニメも好きですし、電化製品も好きですし、あと日本は戦争以降の話なんですけども、平和主義者の国としてものすごい評判が高いですね。そういう文化、世界で愛されている文化をぜひ大事にしてもらいたいと思います。

国民性をあらわすジョーク

池上:私は日本人にはめずらしく、割とおしゃべりなほうです。しかし、国際会議を成功させるにはどうしたらいいのか、コーディネーターとして国際会議を成功させるにはどうしたらいいのかというと、インド人を黙らせ、日本人をしゃべらせると国際会議は成功すると。

パックン:うまいですよね、本当に。その国と国民性が……日本人はあまりしゃべらないという同じようなジョークがありますよね。遅刻してくるとそれぞれの国の言い訳が違うと。

アメリカ人は、90分でしゃべるはずの内容を早口で喋ろうとする。フランス人は15分遅れてくると、15分終わりを遅らせて皆を遅刻させて帰る。そして日本人は遅刻しない。

池上:そっちか。

パックン:国民性を理解させるジョークって結構あるんですけども。

池上:そこは日本人じゃなくてドイツ人だったりするんじゃないんですか? 遅刻しないというのは。

パックン:かも知れないですね。でも僕が聞いた時は日本人でしたね。

池上:なるほどね。

パックン:この話だけで後半持ちますけれども、先生なんかご存知ですか?

池上:それはいろいろね。

パックン:ちょっと脱線しますか。

池上:脱線しますか。タイタニック号じゃなくてもいいんですけども船が沈没しかけていて、みんなをとにかく船から飛び降りさせなくてはいけないと。

イタリア人には「飛び降りると女性にモテますよ」と言うと飛び込む。アメリカ人は「飛び込むと英雄になれる」と言うと飛び込む。日本人には「皆さん飛び込んでらっしゃいますよ」。

パックン:1番最後に持ってくると、絶対飛び込む。そうなんですよね。こういうジョークなんですけれども、コミュニケーションにおいてもそういう癖があると感じますね。

空気を読まない技術

池上:ただひとつ、今ここでこういう話をしましたけれども、例えばこのジョークって難しい、微妙なんですね。つまりそれぞれの国民性だったり民族性をおちょくってるわけですよね。そういうのを人と話をするときに、その国の人が気分を害する場合もあるので、そこは気をつけなければならない。

パックン:そうなんですよね。これは話そうと思っていたんですけれども、コミュニケーションの大前提として1つ、相手のことをうまく引き出す人は、コミュニケーション上手だと言われます。

もうひとつ、相手に合わせることができる。これは「空気を読む」って日本で流行語になるくらい聞いてる言葉なんですけども、空気を読まないというか、相手の空気を読んだ上でジョークを言ったり、その話を聞き出したり。

それによって例えばプライベートの話を全然喜ばない国もあれば、自らしゃべりたい国の人もいっぱいありますよね。例えばアメリカ人などと飛行機で隣に乗っているときに話しかけて、「子どもは何人いらっしゃるんですか?」「2人ですけど、写真見る?」と言ってすぐ写真を出して、携帯電話の電源を消しているはずなのにすぐ見せるんですね。

これは日本人だとなかなかこうプライベートの領域に踏み込みづらい。「あの~、結婚されてますか?」と聞くと「昨日離婚したばかりですけど」と地雷踏んじゃうんじゃないかとみんな心配しちゃうから、なかなかそこにいけない。

けれども、それは国によってしゃべりたがる。聞かれて喜ぶ内容が違うから、やはり相手にあわせることができるといいですね。

池上:だから空気を読むってことは、いろいろな議論の場とかにおいては必ずしも良いことではない思うんです。とりあえず社交として、知らない人としゃべって親しくなるという力はそれなりに必要かなと思いますけどね。

空気を読むことで損ねている価値とは?

パックン:僕は今日、どういうメッセージを求められてるのかなと思ってきたんですけども、おそらくみんなに叱咤激励をする、もっとコミュニケーションとろう、もっと頑張って喋ろう、もっと日本の科学や文化をアピールできるようになろうと、そういうメッセージだろうと思ったんですよ。

先生の話に大きなヒントがあったと思います。空気を読みすぎないこと。特に日本の方は、自分の事ばっかりしゃべると「なんで?」って思って、事実であっても東工大のすごさを他人にしゃべろうとしない。

自分のことをしゃべってしまったら自慢になるんですね。だから内側を殺すというか、聞かれたらしゃべりますけども、自らは言わないように相手を立てようとして我慢していると。これは非常にもったいないと思いますね。

池上:もったいないよね。その点パックンは、授業でも「僕はハーバードだから」って。

パックン:いやいや。

池上:「僕はハーバードだから」ってしきりにやってましたね。

パックン:先生、僕ハーバードじゃなくて、Harvardだから。

池上:先週パックンの授業に潜っていったら、「ハーバード」ということをしきりに強調していて。

パックン:Harvard。

池上:実はそこで聞き手に合わせているんですね。これは例えば、他の大学でも教えていたりするわけですけども、ハーバードというのがピンとこないような大学もあるんですよ、なかには。

パックン:なかにはね。

池上:東工大の学生にはそこそこエリート意識があって、そこそこコンプレックスがあるもんだから、ハーバードって言われたんですね。

パックン:そうなんですよね。今日のコミュニケーションの国際化の授業で取り上げた「エトス」と言うものなんですけれども、そういった信頼性などをアピールするには、そういう資格とか大事なんですよね。

ハーバード卒というのはただの言葉遊びではなくて、自分がここで聞いてもらえる資格のある人なんですと、だから、どうハーバード卒として自分の存在感をアピールするか考えるんですよ。パトリック・ハーマンをパトリック・ハーバードっていう名前に変えようと思うくらいですね。

パックンが「比較宗教学科」を選んだワケ

池上:なるほどね。ちなみに前に、僕がハーバードの比較宗教学の話の時に「なんで比較宗教学をやるの?」と聞いた時に、ハーバード中で比較宗教学が1番行きやすいって。

パックン:大学入ってから1年経って、自分の専攻決めるわけですよ、アメリカは。そこで先生が、比較宗教学という大学の中で1番入りやすい学科に入る方法という解説をしてくれたんですけども、僕は最初の志望をすぐに訂正したんですよ。

みんなと一緒にハーバード大学に入って、経済学を勉強するのかなどを決めるんです。入った時は物理学を勉強しようと思っていたんですよ。天文学科か物理学科か迷ってたんですけども。

3週間目で科学の授業が大変すぎてやめたんです。ここで東工大の皆さんが毎日のように科学の実験をやってらっしゃるのをみて、頭が上がらないです。

でも、僕はそこで2年目に専攻を決めるときに先輩からのアドバイスがあって、他の経済学部とか人気のある学部を選ぶと、確かに世界的な先生の授業を受けることもできます。でも直接的な面識が持てるくらいの近距離では話は聞けない。

しかし比較宗教学部に入ったら、世界一の先生のセミナーをマンツーマンの授業で受けられると言われて納得して入ったんです。ほんとに世界的な先生、ダイアナ・エック皆知っているでしょ。ダイアナ・エック先生の授業を受けたんですよ。でもどこで話しても、誰もピンとこないですね。

(会場笑)

池上:はい。私もピンとこないですね。

パックン:「経済学のケネス・ガルブレイス」と言ったほうが絶対いいんですよね。

池上:日本的に言うとジョン・K・ガルブレイス教授ですね。

パックン:その授業も受けたんです。けれども経済学部だったら運が良かったら彼のセミナーも受けることができたと、今でも大変後悔しているところです。

引かれない自慢の仕方

池上:話がどんどん脱線していますけれども、つまり東工大のことをどう自慢するかというか、なかなか「東工大ってすごいんだぜ」って言うと反発をくらうでしょ。

パックン:日本では引かれますよ。

池上:そういうときはね、「今日、東京工業大学の大岡山キャンパスに行ったら、警備が厳重で、目つきの悪い人がいっぱいで。どうしたんだろうと思ったら、ケリー国務長官が来て、わざわざ東工大の学生向けに1時間の講演をしていたんだよ」

とこう言うと、大変だったねという話をしながら、アメリカの国務長官が東京工業大学を選んで講演にきたんだ、と自慢になる。

パックン:そうなんですよね。これ僕、(池上彰氏が)ちょうど潜りにいらした時の授業で言ってましたけれど、謙遜的な自慢の技術。謙遜しながら自慢すると。

「今日は大変だったよ。東工大の大岡山キャンパスは狭いから、あんな警備員の人数だとなかなか入り切れないんです。ケリー国務長官がいらしたからね」っていう、このオチなんですけども。

池上:自慢してるところを謙遜的に、大変だっていう話に包んで言い伝える技術ですよね。これはつまり、パックンの授業に潜ったことによって今の手法を体得し、今日早速使ってみたということなんです。

パックン:なるほどね。

池上:いい生徒でしょう。

パックン:ありがとうございます。

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