2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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猪瀬直樹氏(以下、猪瀬):スポーツと言葉の力という話を為末さんとしているんですけど、為末さんはTwitterで色んなことをつぶやいていらっしゃいますが、最近のものを教えてもらえますか?
為末大氏(以下、為末):はい。
「無知の知という言葉は知っていたけれど、本当に実感としてわかったのは引退前、僕はハードルのことを何もわかっていなかったと感じた時だった。結局のところ無知の知は体感であり、それを体感するためにはある程度突き詰めなければならないのだと思う」
猪瀬:非常に難しい表現だね。
為末:自分はよくわかっていなかったなと思うためには、ある程度深いところまでいかないと、浅いところにいるのではわからないと。
猪瀬:ただの無知ではなくて、色々やったうえで無知だったという意味だね。
為末:ちょっとだけ知った時が1番わかったつもりになっているって、人間にはよくありますよね。自分の感覚としてあったなと。
猪瀬:わかっていないなと感じた時だったんだよね。
為末:概念が頭でわかっただけでなく、体感的にわからないと。実際に自分の体験としてわかった時に、こういう言葉の意味がわかるんだなと。
猪瀬:ふと思ったときはいっぱいあると思うけど、引退直前のどういう時に思ったの?
為末:いっぱいあるんですけど、1番思ったのは、アメリカで子供が跳んでいるのをぼんやり見た時です。僕はノベッと地面をベタ押ししてハードルを跳んでいたんですけど、彼らはもっとすんなり飛んでいるんです。
僕は地面を強く押さなきゃ、押さなきゃと思っていたんですけど、もっと感覚的にポンと弾むように跳ぶ方がよかったんじゃないかなと思うようになって。地面を最後までグーっと押してハードルを跳んでいく感じだったんですけど、ボールがバウンドするようにした方がいいと。
猪瀬:そういうことが10何年やってきてようやく分かったんですね。
為末:はい。これが究極の走りだって(笑)。
猪瀬:知っていたと思っていたけど、やっぱり無知だったという。
猪瀬:この、『子どもの足を速くする』 という本はどういうことですか?
為末:動きを言葉で表現して、イメージを伝えたいと書いていて、簡単に言うと感覚を言葉で表しています。例えば、「足で紙を切る」。走る時に足が交差する瞬間があって、僕は自分の足が工作の鋏が紙を切るようなイメージで交差していたんですね。その時の感覚をこうやって表現してみたんです。
猪瀬:自分のやってきたことを言葉で言い換えているわけね。
為末:例えば、「膝で壁を突き破れ」とか。子どもの指導って、腕を大きく振りなさいとか言うことが多いんですけど、子どもの世界って、もう少しなんか。
猪瀬:言われればふるけどね。「膝で壁を破る」とか言ったほうが、それよりももっと伝わると。
為末:手を振る時も「小さい太鼓をたたくように」と言ったほうが、「手を振りなさい」と言うより伝わる。この辺の体の横の太鼓を打つんです。そうすると、そこがアクセントになって、リズムになっていくと。リズムよくとか、手を大きくとかわからないですよね。
猪瀬:リズムよくと言われても、わからないもんね。太鼓を叩くというとリズムが出て、意味が出てくるね。
為末:具体的にそれを引き出す本を作ってみたいと、ずっと思っていたんです。
猪瀬:それがイラスト表現や言葉を入れて。
為末:イメージを伝えるとういことをやりたいなと。
猪瀬:伝えると。為末さんがこうやって手を挙げてしゃべっていますけど、これは子どもたちに?
為末:いえ、これは大人の方です。
猪瀬:為末大学という、本当に大学があるわけじゃないんだよね。要するに、小学5~6年生を対象に。
為末:はい、色んな事をやっているんですけど。これ最初は「為末大が学ぶ」だったんです。しゃれで最初付けたんですけど(笑)。色んな人に話を聞きに行って学ぶということだったんですけど、ちょっとずつ、「為末大と学ぶ」というのに変わりつつあって。
学校にいって、子どもたちと一緒に年6回。最初に悩みを1つもらって、それを体育の授業と、食育っていう食事の授業と、もう1つはみんなで一緒に輪になって議論する、対話の授業の3つを各学校でやっていくということを、これからはじめるところです。
猪瀬:18歳からやって、日本選手権で優勝して、いま34歳で引退して。18歳で選手権に優勝するということは、小学校や中学校ぐらいからやっているわけでしょ。
せっかくそこまでやって、1つ見えたところがあって、それが言葉になってきた。それを言葉だけでなく、絵も含めて子どもたちに伝えるという。やっぱり為末さんの役割だね。
為末:そうですね。海外でも日本でも盛んにやっていますけど、選手って特殊な体験をするんです。オリンピックに出ることもそうですし、世界の競技でもかなり深いところまでやって、そういう人間が社会に体験を伝えるのが重要だなと思って。
猪瀬:使命であり、義務だと思うね。スポーツの指導者も自分の体験を伝えている、学校の先生も色んな事を伝えているんだけど、それぞれのやってきたことを本当にどうやって伝えたらいいかということを考えていて。
特にオリンピック選手、これだけのことをやって、オリンピック終わったらどうすんの? ちゃんと役割あるじゃないのということをやらないといけないと思うんだよね。これだよね、為末大の提言は、ちょっとパネルを読んでみて。
為末:「アスリート引退後のロールモデルを確立すべき!」
猪瀬:だからそれを今、自分の例としてやろうとしている。
為末:はい。他の選手にも引退後の支援をやっているんですけど、アスリートが現役の間にした体験が、あんまり社会に流れてきていないなと感じていて。
猪瀬:だってすごい体験をしているんだから、どこかで還元しないとね。
為末:フランスのスポーツ賞の考え方を聞いた時に、感銘を受けて。選手を強化するのには税金がかかる。税金なので国民に対して還元しなきゃならないんだけど、以前、フランスでは選手が活躍した時の感動や国威発揚で還元していた。
それは前の世代で、今の世代は、半分はそうなんだけど、選手が体験したことを引退後に社会に還元することを含めて彼らを強化しているんだというのを言っていて。
猪瀬:強化合宿やったり、オリンピックに行かせるのにお金がかかっているけれど、国威発揚だったり、感動を与えたり。還元はしているが、もっとちゃんとした還元があるよねと。
為末:それが引退後に体験だったり、子どもたちや地域クラブで地域の方の健康に活かされたりして、はじめて1つの循環が終わるんじゃないかと言っていて。日本のスポーツもこれからそういう方向にいかないといけないんじゃないかなと。
猪瀬:日本も2020年にオリンピック・パラリンピックを目指しているけど、スポーツを楽しむというか、そういうみんながスポーツできるように、それからスポーツから得られた知見と深い意味での人生観も含めて、技術ですよね。
そういうものがちゃんと戻ってくれば、良いですね。だんだん日本もそういうふうに為末さんみたいな選手も出てきて、色んな事を分かち合えるようになりはじめてきたのかな。
為末:スポーツは向こう側で行われて、「観る」ものなんだ、というのが半分はあるんですけど、実際に生活の中にスポーツが根付いていって。特にこれから、日本って少子高齢化を迎える中で、医療費をどうするかという問題があって。
猪瀬:高齢社会で毎年1兆円くらいずつ医療費が増えていますもんね。
為末:スポーツで僕が1番興味あるエリアって、社会の問題をスポーツでどうやって解決するかです。医療の問題と、教育と、もう1つはスポーツ外交、海外の方々とスポーツを通じてどうやって交流するかといった3つの分野が日本ではあまり開拓されていなくて。特に医療においては、これからスポーツが大きな役割を果たせるんじゃないかなと。
猪瀬:ご年配の方もウォーキングとかやっているんですけど、多様なスポーツが入り込む余地があるし、それを市場化することもできるはずですよね。そういうふうにやれればいいんですけど、国際競技連盟の役員とかが日本は少ないよね。
為末:少ないですね。
猪瀬:どうしても内側にいて、もっと外で活発にやってくれると良いんですけどね。国際競技連盟の役員が少ないので、オリンピックの招致の時もそこらへんが大変だというのがあります。
為末:僕もあまり意識がなかったんですけど、今回引退するというのがあって、ロンドンにはサポート側で現地に入ったんですけど、選手の時に見えていたのとずいぶん違う風景が見えてきて。
普通に我々が会うスポーツ選手って、サッカーとか陸上、テニス、野球、そういうのが多いんですけど、IOCの役員とか、そこに行くとボートとかフェンシングとか、近代5種とかが多いじゃないですか。貴族の世界だし。その辺をしたたかに眺めていられる元選手がいると強いんじゃないかなと。
猪瀬:広がりが違うよね。
為末:違いますね。その辺をスポーツ界がもう少し引退後にそういう道もあるんだって、世界に出ていってネゴシエイトする仕事があるということを。
猪瀬:国民の側も「選手頑張れ!」と言って、オリンピックが終わったら忘れちゃったというのを、これから何とかしなくてはいけないと思います。招致活動もそういう流れをうまく作っていかなくてはと思います。
為末:海外の例を見ても、スポーツ界がやろうというので招致活動が動くのが多いじゃないですか。今の日本の現役の選手には、これからすごく良いチャンスがあると思うんですね。
こういう引退後の世界があるんだと、目覚めてきているので。本当に2020年が決まると、それまでの間に選手も、引退した選手も国際化していって、そういう道を選ぶ選手も増えるんじゃないかと。
猪瀬:日本は一生懸命、大量生産、大量消費で製品を輸出してきたけど、やっと今までとは違う部分が見えつつあるかなと。あと、為末大の提言だけど、「小中学校の校庭を地域に開放してほしい」。あれは、夜は閉まっちゃうんだっけ?
為末:開放する方向でやってきているけど、全体的にはだいぶ少ないです。日本って運動する施設がすごく少ないんですけど、学校を運動施設に捉えるとすごく多くなるんです。
猪瀬:日本は、学校は整っているからね。
為末:今は部活やクラブやる場所もなかったりするんですけどね。
猪瀬:学校は部活はやっているでしょう?
為末:やっているところは開放できないんですけど、小学校とかでやっていないところがあって。体育の先生が少子化で少なくなっているんです。野球、サッカーの先生はいるけど、陸上もテニスもいないとか。何校かの人たちがまとまってやるようにならないと難しくなっている。
猪瀬:1つの学校単位でなくて、エリアの学校で振り分けるみたいなことね。
為末:学校の先生が放課後にそこで教えるとか。その時に学校の施設が開放されるといいと。
猪瀬:アフターファイブの後に、もっと別の世界が1つはっきりできるようにすればいいと。学校の校庭も。ここで学校が終わりましたよと、遅い時間になっちゃったとしても、そこからもう1つ別の空間が生まれてもいいよねと思うんですけどね。
僕もまだ都知事になったばっかりで、色んな規制がありますからこれから準備していきますけど、都バスの渋谷と六本木の間で、学校という空間も、もう少し夜型の部分の使い方もありなんでしょうね。
ロンドンなんかに行ったら、夜9時過ぎまで明るいからテニスやっていますからね。日本はすぐ焼き鳥屋に入っちゃって(笑)。そういう違う世界のライフスタイルを作りたいですね。
為末:ぜひお願いしたいですね。
猪瀬:オリンピックですけど、「1.コンパクト、2.エコロジー、3.バリアフリー」でやっていて、東京オリンピックではこれを1番に目指してやっています。
為末:僕が思うのは、少子高齢化の問題というか、特徴を持っている都市が立候補しているのが面白いなと思っていて。今はパラリンピックがオリンピックにくっついてきているんですね。
最初はそういう意識だったんですけど、今は我々の感覚でも並列になって、オリンピック・パラリンピックを招致していこうとなっていて。パラリンピックを重視してやっているところってまだないんですね。
日本はパラリンピックを中心とした街づくりをやっていって、それがそのままバリアフリーになって、少子高齢化に対応した街になっていくという流れでいいんじゃないかなと思います。
猪瀬:僕もそういう意識がありますから、まったく賛成です。都営地下鉄も東京メトロよりバリアフリー率が高いんですね。都営地下鉄は全駅直通エレベーターがありますし、ホームドアもかなりの駅でやってきています。
いずれ高齢社会になるんですから、バリアフリーがうまく表現できればね、実際にコンパクトではあるし、エコロジーではあるから、それをアピールしていけたらいいなと。
為末:日本人にとってはオリンピックのための施設ってオリンピックの後にもすごく大事で、1965年の東京五輪の後に首都高速ができたり、オリンピックのインフラというのは、それくらいのことじゃないですか。
だからぜひ、2020年のオリンピックのために準備したものが、その後もずっと使われていくように計画できると、次のオリンピックも……。今のオリンピックって、肥大化のほうにいっているので、そうすると、どんどんでかい都市しかできなくなってくるので、東京がもう1回オリンピックのコンセプトを……。
猪瀬:1種のレガシィだよね。1965年の東京オリンピックで首都高速もできたし、スポーツ施設が全然ない状態だったのが、とりあえずやっとできるようになったんですよね。確かに昔はオリンピック・パラリンピックがくっついてなかったですからね。
2020年を目指して、それが一緒になる時代になってきて。それに高齢化社会も含めて、みんなでスポーツを楽しめるような、バリアフリー化したものにして、それがレガシィとして残っていけばいいね。
これからのスポーツで健康にということにもなってくるし。スポーツは楽しいという、根底的な人間の生き方のところに、向上心のような、食べて寝るだけじゃない生活ということになると、違ってくると思うね。為末さんのおっしゃるところはよくわかる。
為末:それが新しくオリンピックのコンセプトみたいなものになっていくと、すごくいいなと思うんですね。
猪瀬:それをわかってもらうプレゼンテーションするのが難しいんだけど、色んな努力をしなくてはならなくて。ぜひ為末さんにも色んなところにアピールしてもらいたいと思います。ありがとうございました。
為末:ありがとうございました。
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