弱い相手を潰すときは、こっそりと

加藤貞顕氏(以下、加藤):組織の経営にも関わる話だと思うんですけれども、目の前の小さな目標をクリアしていくというのはすごくいいじゃないですか、みんなのモチベーションも上がるし。

いきなり1位になるのではなくて、あいつを潰すぞみたいな、内的な動機で動けますもんね。マネジメントにもすごく役立ったやり方ではないかと思います。

川上量生氏(以下、川上):勝たないと意味がないので、そういう意味では僕らは常に弱い相手と戦うのが好きなんですよ。自分のサイトの半分以下ぐらいの、弱いサイトと戦うのってね、世の中に知られてやるというのは格好悪いじゃないですか。

だからね、こっそり戦うんですよ。こっそり潰すという。これが僕の趣味で、モチベーションになって今までサイトが大きくなってきたのですね。ニコ動もそうですよね、ニコ動も実は仮想敵にしていたのはYouTubeではなくて、日本国内にすごい小さなサイトがあったんですけれども、僕はそればっかり見ていたんですよ。

加藤:へー、それ知らない。

川上:そうなんですよ。

加藤:似たようなものがあったんですか?

川上:ありましたね。僕の仮想敵はスティッカムとか、そのときにあったサイバーエージェントさんのサイトとかね。そういうのを仮想敵とかにしていましたね。

もうとっくに抜いていたんですけどね。始めて1ヶ月もしないうちに抜いているんですけれども、それをずっとどうやったら潰せるかというのを頑張っていましたね。

強敵に勝負を挑んだら、人生を賭けなきゃいけない

加藤:どうしてそういうやり方をするんですか。絶対勝つから? 勝てるから?

川上:強い相手と戦うと長引くじゃないですか。ゲームってやっぱりすぐ終わりたいじゃないですか(笑)。そうすると、延々と続くゲームはやりたくないですよね。だってYouTubeを潰そうなんて言ったらね、本当。

加藤:人生賭けないと。

川上:人生賭けて多分ね、勝てないんですよ(笑)。

加藤:(笑)。

川上:そんなゲームしたくないですよね。

加藤:なるほど。それはまさにこの本とすごい繋がってきたんですけど、最初に、ボードゲームで勝つ方法はルールブックを読み込んで、良い抜け道を探すことだっていう話がありましたけど、まさにそれをやってらっしゃるわけですね。

川上:そうですね。だから勝てる戦いを設定するんですよね、超楽な勝負に挑んで。そういう意味では意識は高くないですよね。絶対に勝てる相手。

アメリカに暗殺されたくなかった

加藤:ちょっとニコニコ動画のお話をうかがいたいんですけれども、ニコニコ動画を始めたときって、そもそもそんな勝つ気で始めたのかっていうのが、実はすごい疑問でいて。「ニコニコ動画」っていう名前が、勝つ気で始めた感ないじゃないですか。これはどうなんですか?

川上:ニコニコ動画は、そういう意味では、目の前のすごい弱い敵と戦うんですよ。でもね、全体のストーリーはすごい壮大にするんですよね。僕の中で考えていたのは、ニコ動が成功しちゃうじゃないですか。

成功しちゃうとどうなるか。テレビ局にまず睨まれる。それで日本の音楽業界とか、芸能界にも睨まれる可能性があると。最終的には、やっぱりアメリカに睨まれるんじゃないかとかね、そこまで心配するわけですよ。そしたら、それこそ暗殺されるんじゃないかとか。

加藤:堀江さんみたいに捕まったりとか。

川上:それぐらいまで心配するんですよね。そこから逆算して、そうならないようにするためにはどうしたらいいかって考えるんですよ。それで、目下のところでは超弱い敵と戦うっていう(笑)。

嫌われないで済むために、胡散臭い名前をつけた

加藤:ニコニコ動画っていう名前にすると、ちょっと大きくなっても、その人たちにそんなに嫌われないで済むのかなみたいな。

川上:いや、嫌われないっていうより、多分ね、偉い人たちがいる会議があるじゃないですか。例えばテレビ局だとしますよ。テレビ局の偉い人たちがね、ネットは酷いと。YouTubeは本当許せないっていうふうなことが、きっと会議ではそんな話をされているんでしょう。

その時に、その会議を想像して、ニコニコ動画っていうサイトもあるんですよって誰か若いやつが言うじゃないですか。そうするとね、きっとその場の空気はすごくちょっと重くなると思うんですよね。「お前、何わけのわからんこと言ってるんだ」と(笑)。

加藤:(笑)。

川上:ニコニコ動画っていう名前、言うのが恥ずかしいですよね。「ニコニコ動画が敵なんです」って言った瞬間に、自分の価値が下がるじゃないですか(笑)。こいつの言っていることは信用できないっていうふうな感じに、やっぱり周りから思われますよね。それが狙いでしたよね。

加藤:本当に最初からそんなこと考えてたんですか?

川上:本当にそうですよ!

加藤:すごい(笑)。

川上:本当にそうですよ。だから胡散臭い名前を付けようっていう話をして。

加藤:本の後ろのほうに1行ぐらい書いてあって、なぜって思ったんですけど、そんな理由なんですか(笑)。

川上:そうですね。だからニコニコローンとかね、すごい怪しいじゃないですか(笑)。

国会で「ニコニコ動画」と言わせることが目標だった

加藤:普通大きくしていく過程で、政治家の人とかに出演依頼とか、ちゃんとした人たちに出演依頼すると、ニコニコ動画っていう名前で僕はすごい苦労しているんですって、その時おっしゃってて、そりゃそうだろうなって思ったんですけど、そういうデメリットはあんまり逆に考慮しなかったんですか、その時に。

川上:デメリットっていうか、僕らの中では、ニコニコ動画って酷い名前じゃないです。これを国会で言わそうとか、そういう目標とか立てるんですよね。国会の質問か何かでニコニコ動画っていうのを言わすとか、あとは国会議員の大臣の答弁とかで、ニコニコ動画って発音させるっていうね。そういう辱めを受けざるを得ないっていう状況になると面白いなと思って。いや、もう国会で出てますよ。何度も出てますよ。

加藤:出てますよね。

川上:全然出てますよね。特に首相が言ってますからね。

加藤:はい。

川上:総理がニコニコ動画とか言ってますからね(笑)。

加藤:今、将棋本やってらっしゃるじゃないですか。羽生さんとか森内さんみたいな棋士の偉い人とかがニコニコ動画って言ってるのを見ると、僕はどうしてもちょっと何かこう微妙な気持ちになるんですけど(笑)。

川上:冒涜ですよね(笑)。

加藤:でも、すごいこと言ってるなって思っちゃいますよね。

川上:起こってる事実が信じられないですよね。ニコ動を好きな人のことを、ニコ厨って言いますけど、だってもともとニコ厨とかって、実はニコチン中毒のことだったんですよね。

加藤:そっかそっか、そうですね。

川上:みんな忘れてますけど(笑)。多分ニコチン中毒のことって思ってる人は少ないですよね。

加藤:そうですね、ニコ厨はそうでしたね。

川上:だから、そういう言葉を奪うとかっていうのも僕らの目標で。