利他的なマインドの人間は採用したくなる

安部敏樹氏(以下、安部):そろそろ質疑応答に入りましょうか。

津田大介氏(以下、津田):じゃあ、質問ある方、挙手いただけますか?

質問者:こんにちは。村上さんにお聞きしたいのですが、最近、採用における変化で社会貢献をしている人が採用において得をする仕組みっていうのは実際に作れるのでしょうか?

津田:それって例えば学生時代に社会貢献をできる場所である程度働いていた学生が就職しやすくなるという話とは少し違うんですか?

質問者:少し似ているのですが、NPO、学生団体、インターンなどで働いてきたような社会貢献できるマインドを持っている人が何かしら評価されたり、採用において得をしたりというようなものはできるのでしょうか?

村上太一氏(以下、村上):そういった仕組みは、ルールで決めるというよりはそういった企業が増えていくかが大事だと思います。やはり利他的な精神でモチベーションをもってやっている人って、事業を作る時にも非常に強いエネルギーを持つんですよね。そういったモチベーションの人は自然と採用したり、評価したりしたくなると思いますけどね。

「社会貢献」してるヤツは甘ちゃんが多い

安部:僕のようなソーシャルセクター側から言うと、基本的にそれが採用に繋がらないのは、今そういった人材が超甘ちゃんだから。それがすでに問題で、社会の保守・点検していくっていう仕事だったら20%成長でいいですよねと。例えば、テナントチェーンにおむつ売りますって話になった時に、おむつの売り上げを20%上げたって言ったらすごいじゃないですか。で、それが当たり前にできるのが社会の保守・点検するところに求められる人間のレベルです。

でも、社会を変えていきたいとか、社会をよりよくしようってなった場合は今ある社会を塗り替えていく仕事になってきて、1000%とか2000%のレベルのスピード感を持たなければいけない。

じゃあ、そのレベルの人が社会貢献のマインドを持っている人の中にどれだけ出てくるかという話であって、僕はどちらかというと社会貢献をしている人が就職有利になるんじゃなくて、就職に強いやつが勝手に社会貢献の方に流れてくると思っています。その結果、業界が動いていくんじゃないかな。

津田:もしかしたら失敗してもいいから自分で起業とかすることで1000%とか2000%の成長を自分で実現したり、そのための体力がついたりするのかもしれないですよね。

安部:力があってかつ社会貢献のマインドを持った人が最強なわけですよね。社会貢献のマインドだけ持っていて力のないやつが非常に厄介で、マインドと能力のバランスをちゃんと取るのが非常に重要です。

ジャーナリストやNPOも稼げばいい

津田:はい、じゃあ他の方。

質問者:御三方に質問ですが、社会を変えるためのHOWにおいて何が重要だと考えていらっしゃいますか?

津田:まず僕から答えると、とりあえずやるって決めることが大事というか、「これは自分がやるべき仕事」だと思うことですかね。それと、「世の中にこれがあった方がいいのに」と思ったら自分でやってみる。

実際にやるときにはマネタイズなどのお金のことはきちんと考える。僕らジャーナリズムの業界でよくないのが、消費者がすごく僕らに清貧を求めるんですよね。これNPOにも言えると思います。

要するに、政治家もそうかもしれないですけれど、ジャーナリストとかNPOとかは稼いじゃいけないんだとどこかで一般の消費者や有権者が思っているところがあって。これって政治家と金の問題とすごく表裏一体だと思っていて。彼らも稼げばいいんですよ。汚くないやり方で稼いでそれをどう使うかが大事なわけですから。でも、稼ぐことが目的化しちゃうと多分道を誤ってしまうのでそこはちょっと気を付けなくちゃいけない。

村上:個別の部分でずれてくることはあるので、一概には言えないのですが。私自身が思ったのは、メッセージを心から「これを伝えたい」って思ってなければやっぱり伝わらないんですよね。だから最終的に何が大事かって言ったら、どれだけそのことに熱意を持っているのかとか、死ぬ気になれているのかというところだと思います。

その想いが強かったら自然と色んな人にぶつけたくなるし、こういう場でもどんどん語りたくなるし、隣の人にも自分の想いを伝えたくなっちゃう。想いがどれだけ強いかだけかなと思っています。

で、HOWはその時その時で変わってくるので、やってみて、だめだったらじゃあ違うことやろうというように改善を繰り返すだけ。どれだけ想いをもてているか、それを賭けていいって思うくらいに自分の心の中を整理して、迷いがない状態を作るというのは大事かなと思います。

課題設定の甘さにこそ問題がある

安部:僕は多分まだWHYをちゃんと突き詰めていないというのがあると思うんですよ。僕のところに「今、地域やばいから地域をなんとかしたいんですよ」と相談に来る人がよくいるわけですね。僕はこの人を見て、「うーん、こいつは馬鹿なんだな」とまず思うわけですよ。

(会場笑)

なんでそう思うかというと、まず地域がやべえんだなっていう話ってもっと突き詰められるじゃないですか。突き詰めない限りは当然HOWが出てくるはずがない。いったいどこが問題なのか、っていうのはまだまだ突き詰められる。HOWが出てこない一番の原因は課題設定が甘いことだと僕は思っています。

じゃあ、課題設定を突き詰めた後にどのようにHOWをやりますかという時に、ひとつは、他のところは無視していいからここだけは自分たちが絶対押さえなきゃいけないってところを先に押さえつくすのはすごく大事ですね。もう1個、レバレッジの掛け方はすごく重要だと僕は思っています、特にソーシャルベンチャー系は。

一般的に企業はみなさんお金がまず大事だと。お金がないと付き合うことはできないし、人からお金を取らなくちゃ飯食っていけないねってなります。お金の面でみれば非常にヤバいリディラバがなんで5年間潰れなかったのかというと、リディラバはレバレッジをお金じゃなくて、人で買ってきたから。

つまり色々な人に関わってもらって、人々が多く動いてきた。別にお金を得たとしてもそれを何に使うっていえば人件費に使うわけですよ。でも別にお金を介せずに、そのまま人が動いてくれるモデルってありえるかもしれないなと思って、そこを突き詰めた結果が、誰でもツアーを作れる仕組みだった。そしたらボランティアの人が作ってくれたツアーの質を高めていけばいいだけですよね。

なので、まず課題設定が甘くて、課題設定した後にHOWを突き詰めるという意味では、ボトルネックの部分を先に押さえて、さらにお金だけじゃなくて、人でも、情報でも、何かのレバレッジ利くところがあるはずなので、そこをしっかり見極めて攻めていくことかなと思います。

質問者:ありがとうございます。

クラウドファンディングの可能性

津田:ラスト一問、女性の方。

質問者:こんにちは。個人が人・モノ・金を集める手段として、今クラウドファンディングが出てきていますが、日本では資金調達を含めて支援されるのが難しいと感じています。みなさん、クラウドファンディングについてはどのように思われていますか?

津田:僕も実際にクラウドファンディングを利用していまして、600万円を集めてチェルノブイリに取材に行ったりしているのですごく可能性を感じています。けれども、乱立してしまっているので、クラウドファンディングを中身のきちんとした評価も含めてまとめて使えるメディアを作る必要があると思います。それで、全体にクラウドファンディングに参加して支援をする層を増やさなければいけない。そして増やすためにはペイメントですよと。

なんで「Kickstarter」とかがうまくいったかといえば「Amazonペイメント」を使えるからですよね。Amazonのアカウントを使えばそれで事業ができる。今だと全てのサイトに行っていちいちクレジットカードを登録してみたいな作業をしなければいけなくて、そこでみんな辞めてしまうので。そこを共通化する、日本だったら「Yahoo!ペイメント」だと思うんですけど、そういうアプローチが重要だなと僕は思っています。

村上:私は間違いなくクラウドファンディングは来るなと思っています。でも、きっと世の中の人に「クラウドファンディングを知っていますか?」と聞いても、知らない人が98%くらいになるような肌感で、今までに無い感じがわかりにくいところがある。例えば「Kickstarter」でみんなで一緒に何かものを作りましょうっていえば結構わかりやすいんですけれど、今はサービスのような無形だったり見えにくいものだったりが多くてわかりにくい。

その辺がどんなイノベーションを受ければより広まるかはまだ答えを持てていないのですが。誰かを支援するとか、みんなで応援するとかは日本人みんなが持っている想いとしてあるので、何かしらのブレークスルーは広まっていくだろうなと思います。