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今後のメディアビジネスはどうなっていくのか?(全5記事)

「テキスト版JASRACみたいな組織があれば…」 一次著作者と“バイラルな人たち”の共存は可能か

テクノロジーの進化は報道をどのように変えるのか。すでに記事のタイトルや本文を自動生成する技術が、アメリカを中心に実用化されつつあります。より貴重になっていく一次著作者を、社会はテクノロジーや仕組みによって守ることができるのでしょうか。(IVS2014 Fallより)

テクノロジーはニュースをどう変えるか

藤代:なるほど。ちょっと話を変えていきたいと思うんですけど、テクノロジーの話、ぜひしたいなと実は思っています。ちょっと図を出して頂けますか。

これはNewsPicksの事業説明会で出された資料なんですけれども。ここアルゴリズムと人っていうものの、やっぱり何でもかんでも二項対立にしようとか思わないんですけれども。やっぱり今の時代って、テクノロジーでできることがものすごくニュースの世界に入ってきてるなと思うんですね。

昨日のセッションでも、スマートニュースの鈴木さんが形態素解析のような技術をニュースに応用して、タイトルを作ったり、カテゴリーを分けたりすることは、日本語よりも英語のほうがむしろやりやすい、グローバルに展開しやすいという話をされていました。

一方、ヤフーさんみたいに、瀬尾さんとかもそうだと思うんですけど、人が作っていく方向もある。どこまでテクノロジーでできるのかって話をしたいなと思うんですけど、誰からいきましょうかね? やっぱりこれは、スマートニュースさんから。

松浦:うちから?

藤代:どこまで機械でできる、つまりプログラミングできるようになるんですか?

松浦:すべてがアルゴリズムなわけでも……。もちろんアルゴリズムで、我々は良質な情報を送り届けてるんですけど、その外側にやっぱり、良質な情報を送り届けるって思想がないと、アルゴリズム設計すらできないっていうことだと思うんですよ。

もちろん伝える部分のところでは、我々はアルゴリズムを駆使して、より良いパッケージで送り届けるってことをしてますけど、より良いっていう部分は、そこは多様性を持ってる。

そういう多様性の部分とかはやっぱり、弊社の会長である鈴木、社長である浜本もそうですし、藤村や私も含め、いろんな集合知みたいな思想も加わってきてのアルゴリズムがあるので、まずその思想的な部分は、そういうアルゴリズムの外側にやっぱりあるかなって思います。

佐々木:先日の発表会ですごく印象的だったんですけど、おもしろくて。そこではマシンラーニングカンパニーってことで位置づけされたじゃないですか。

松浦:なってました。

佐々木:やっぱりスマートニュースのアイデンティティって、マシンラーニングカンパニーってのが一番のコンセプトなんですよね。

松浦:前からずっと言い続けてましたけど(笑)。

佐々木:やっぱり改めて聞くと、そこが強いなと思って。

藤代:でもアメリカとかだと、記事までプログラミングで作っちゃう会社とか出始めているわけですけど、それだったらもう人間いらないじゃんみたいな。記者も全部クローンとか、人格も作っちゃって。そういうものをぐるぐるウェブ上で回していけばいいじゃない、みたいな話にはならないんですか?

松浦:そこは瀬尾さんが、人の部分で……(笑)。

藤代:でも、テクノロジー的にはできるじゃないですか。

瀬尾:いわゆる単純なニュースに関しては、そういう時代がすぐ来てもしょうがないと思うんですよね。そうするにさっき言った、霞ヶ関でこういう発表ありましたとか、企業ニュースはこうです、みたいなのが自動生成できるのは、そんな遠からず出ると思うんですけど。

藤代:なるほど。リリースを記事化するベンチャーとかやったら、通信社1社ぐらい潰れそうですよね。

瀬尾:そういうのは全然あってもいいと思うんですよね。ただ、コンテンツの持ってるエンターテインメントの部分とか、場合によってはアートみたいな部分。こういう部分が、全部を自動的なものに置き換えていけるかどうかっていうところは、まだ時間がかかるんじゃないかなと思います。

テクノロジー×人力の最適な組み合わせ

藤代:コンテンツ生成以外のテクノロジーをニュースに活用する、みたいの何かありますか? 例えばいろんなテクノロジーがあると思うんですけど、NewsPicksを運営するユーザーベースはデータベースを活用している会社じゃないですか?そこで何かテクノロジーの使い方みたいなのが、コンテンツ以外の分析とか、そういうものに使えるみたいなのはあり得るんですか?

佐々木:すぐは思い付かないですね。

藤代:何かあるのかなと思って……。その何か、テキストを作ったりタイトルを作ったり、みたいな方法を考えちゃうんですけど。

佐々木:自動生成的なやつね。

藤代:もっと違うものもあるのかなと思って。

佐々木:そう言う意味だと、やっぱり新しい時代のCMS作らなきゃいけないんでしょうね。今のCMSって本当に使いにくくて、堀江さんなんかもすごいディスってますけど、スマホですごく上手くCMS作れるとかコンテンツを作れるとか、そういうのが。

松浦:テクノロジーで言うと、やっぱり最終的に手を動かすのは誰かっていう問題で、極端な話、脳に思い描いてるのがそのまま記事化されれば、一番速いと言えば速いので、そこまでテクノロジーが進化すれば、手すらいらない。

取材してきた目の情報がそのままアウトプットされる、ぐらいのすごい先の未来の話をしましたけど、でも徐々にいろんな過程がテクノロジーで解決されて、より情報の部分が伝わりやすくなる。作りやすくなるというところは、幾らでもまだ改善すべき点は出てくるかなって思いますね。

藤代:片岡さん、何かないですか?

片岡:Yahoo! JAPANのトップページで出しているトピックスは人が選別していますが、出す手前にはいろいろなテクノロジーを使ってますし、トピックスは1日100本ぐらいで、それ以外の記事もユーザーに当然見られていられているわけですよね。

どうやって見られてるかっていうと、もちろんさまざまな行動ログを使ってですね、個別ユーザーに出したりしてますので、全く人力かっていうとそうではなくて、やっぱりテクノロジーを基盤に組み合わせていく。佐々木さんがおっしゃられている、CMSだとか、例えば編集者がWeb上で見るときに何が見られてるとか、どんな反応があったかっていうのを可視化するような仕組みもできるんですよね。

こういった仕組みが、テクノロジーを活用してまず基盤としてあると、その編集の生かし方というのが、より効率的になるし効果的になるかなと思います。海外のメディアは結構それはやっぱりやってるかな。

テキスト版JASRACが一次著作物を守る?

佐々木:テクノロジーのとこで一つ興味があるのが、特にスマートニュースさんに聞きたいところで、公共性って言葉がよく重視されてると思いますが、あれもすばらしいなと思ったんですけど。

それで昨日、博報堂のケトルの嶋さんって方と、電通の岸さんという方とセミナーやったんですけど、そこで話題になったのは、一次取材というものの良さをどういうふうに評価していくかというところで。今って一次取材したものよりも、なんかそれをコピーしたようなものが、より見られる傾向があるわけじゃないですか。

藤代:そうですね。「衝撃の映像なんとかww」みたいなのつけてる方がむしろ。

佐々木:出るっていうことですよね。

藤代:みんなのとこへ届くという現実があると思います。

佐々木:ありますよね。なのでマシンラーニングがどんどん進化して、一次取材してたり、信頼する記者が書いているものの方がどんどん評価されて、いいところに出てくるとか、そういうとこまで進化できたらすごい面白いなと思ってるんですけど。

松浦:そうですね。

佐々木:すでに考えてらっしゃると思うんですけど。

松浦:オーサーランクみたいなのはあるかなー、と個人的には考えてます。SEO問題とかコピー問題とかいろいろあるじゃないですか。画像も、テクノロジーが解決した部分でいうと、逆にコピーしやすくなっちゃったってところもあると思うんですけど。

それが……DRM(デジタル著作権管理)はやりすぎですよ、DRMはやりすぎですけど、他に何が変わるような仕組みで、どちらかというと送り届けるところも含めて、判断とか出来るような仕組みになると、さらによりよい組み合わせるみたいな形で、一次情報を作ってる良質な情報がわかる、と。

もちろん一次情報はすべて良質だけど二次情報がダメだというわけでなく、二次的なコメントがついてこそ良質っていうパッケージもあると思うので、一概にゼロイチの話ではないと思うんですけど、そういう評価っていう所もアルゴリズムで判断できるような形に、今後なってくると個人的に思います。

瀬尾:そういう意味でいうと、今、JASRACってあるじゃないですか。例えばカラオケ屋さんから、ある種の利用料みたいな形で取ってそれを著作権者に配分するかたちになってるんですが、このやり方がどんぶり勘定で不公正だという指摘もある。

今だったら、テクノロジーの時代なので本当は歌われた曲の数だけとか、かかった曲の数だけ課金し、それを著作権者に正確に配分することもできるはずなんですよ。そういう仕組みに変えると、JASRACもまっとうな商売になる、って言うとまっとうじゃないみたいで怒られるかな……。

それと同じようなことが、実はテキストにおいても可能になる可能性があると思うんですよね。つまりバイラルな人たちが勝手に引用したりすらしてるけど、これが全部その場でわかって、そこでちゃんと課金したり、テキスト版JASRACみたいなことも、場合によってはできる可能性があると思うんですよね。

そうして一次著作物を守っていくみたいな。そういう仕組みもできる可能性は、僕はあるんじゃないかなと思います。

藤代:まさにそれは本当にスマートニュース会長の鈴木(健)さんが研究されてることのような気もするわけなんですけれども。

みなさんの話を聞いているとCMSの部分に、改良するべき点は結構あるんだなと気づかされました。ニュースの世界はECの世界に結構似てるなって思うんです。

ニュースの送り手が、プラットフォームを選んでプッシュするというのは、メルカリさんや、STORES.jpさんのようなものでしょうし、ファクトリエさんみたいに作り手側のほうに入り込んでいって、引っ張ってくるというようなタイプに分類されるのかなというふうに感じました。NewsPicksさんはファクトリエのタイプですかね。

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