絶体絶命のピンチから一転、世界的人気アーティストへ--"巨大アート作家"ジャネット・エシェルマンの成功ストーリー

想像力を真剣に捉えよう #1/2

世界中の空に幻想的な巨大アートを生み出してきたアーティスト、ジャネット・エシェルマン氏。彼女のブレイクスルーのきっかけとなったのは、個展の際に展示作品が届かないという絶体絶命の危機を迎えて閃いた、あるアイデアでした。ピンチをチャンスに、発想の転換によって成功した女性による「自分の想像力を信じて」というメッセージです。(TED 2011より)

受験したアートスクールすべてから不合格通知

ジャネット・エシェルマン氏:イマジネーションを真剣に捉えることについてお話します。14年前、私はこのありふれた素材に出会いました。漁業の網です。何世紀にも渡って魚を捕る為に使われてきたこの網で、今日私は永久にそこに残る、官能的に波打つハードエッジな作品を世界中に広めています。

彫刻、エンジニアリング、建築を一度も勉強したことのない私が、このように世界中で仕事が出来るようになるなんて誰が想像したでしょうか。しかも大学卒業後に、7つのアートスクールに願書を出して、7つ全ての学校から不合格通知をもらったこの私が。

独学期間を経てインドへ

そこで学校に頼らず独学でアーティストになる道を選びました。インドへ行くフルブライト奨学金を得ることが出来たのは、絵を描き始めて10年経った頃でした。

目的はインドで絵画の個展を開くこと。自分の作品の配送手配を済ませ、私はインド南部のマハ-バリプラムに到着しました。しかしアメリカから送った私の作品は、作品を展覧会に出すための提出締め切り日を迎えても、インドにいる私の手元に届くことはありませんでした。

別の何かを展示しなくてはなりません。私が滞在していた漁村は彫刻で知られていました。そこで銅像にチャレンジすることにしました。しかし大きな像をつくろうとすると、素材は重すぎましたし、費用がかかりすぎました。

ピンチに陥り、新たなインスピレーションを得る

どうしようかと悩んでいたある日、海辺に散歩へ出かけ、漁師が魚を捕る網を浜へ引き上げている様子を目にします。すでに見慣れた風景であったにも関わらず、その時はそれが違って見えたのです。彫刻への新しいアプローチ、質量のある物質を材料とすることなく巨大な作品をつくる方法が浮かびました。

私の最初の「よく出来た!」と満足いく作品がこれ、漁師達とのコラボレーションで生まれました。これは自画像で、タイトルは「大きなヒップ」です。

(会場笑)

写真を撮る為に、柱にこの作品をくくって掲げてみると、網が柔軟な動きをして、吹く風によって常に作品の形が変わり、それに魅了されました。その後も私は伝統工芸の手法を学ぶことをやめず、多くの職人達とコラボレーションをしてきました。インドの後はリトアニアのレース職人とのコラボです。

このように、詳細につくり込まれている自分の作品に満足していましたが、もっと大きなものをつくりたいと思っていました。細部まで鑑賞する目的を持つ作品づくりから、見る人がその作品のパワーに取り込まれてしまうような、壮大なものづくりへシフトしたいと。

そこでインドに戻り、漁師の皆さんと一緒に150万もの網目がある巨大ネットを手作業でつくり、それがマドリッドで展示されました。

世界の街の景色を彩る作品づくりへ

何千人もの人がこの作品を目にしました。その一人がポルトガルのポルトの海岸沿いを再建設しようとしていたアーバニスト、マヌアル・ソラ・モレラスです。「ポルトの街に永久に存続する作品をつくってくれないか」と彼に頼まれました。

それが出来るか、自分の作品がその状態を永久に保存できるような性格のものなのかわかりませんでした。耐久性があり、計算され、永続するものというのは、デリケートで儚さを持つという私の作品コンセプトと対極します。

2年の間、紫外線、塩分、大気汚染に耐えることが出来ると同時に、風にそよそよとなびくほどに柔らかい繊維を探し続けました。そして道路が網羅するエリアにネットを掲げる為の支柱を立てる必要もありました。

そこでこの45,000ポンドもある鋼鉄のリングを空に掲げました。これが通常の風に高貴になびきながらも突風にも耐えられるように、緻密な計算が成されました。しかしこのように多孔性があり、常に動く作品を設計できるソフトウェアがなかったのです。

そこでヨットレースに出場するヨットを設計する、ピーター・へッペルという素晴らしい航空エンジニアを見つけました。彼の助けを借りて細部まで計算された正確な形と、やさしい動きを取り入れるという問題を克服することができました。

この作品は私が今までやってきた通り、手編みの網でやることは出来ませんでした。手編みではハリケーンに耐えることが出来ないからです。そこで漁業網を機械でつくる工場と協力し、網をつくる工場の技術を研究し、その技術でレースを編む方法を熟考しました。

このように原始的で独特の、そして従来からある手工芸が、機械によってつくれるはずもありません。そこで私達は、それが可能な機械をつくる必要がありました。

2人の子供を産み、3年の時が経って初めて、50,000スクエアフィートもある巨大なレースネットを空に掲げることができました。私のイマジネーションから始まった作品が、今では永久にその街に掲げられることとなった。この事実がとても信じられませんでした。

この交差点は特記することもない、面白味のない道でした。それが今ではどうでしょう。

空に掲げられた自分の作品の下を初めて歩いた時、作品が風に吹かれてその姿を変えるのを見て、何か大きなものに守られていると感じたと同時に、無限に広がる大きな空と繋がったような気がしました。私の人生は変わった、世界中の空にオアシスを掲げたいと。

フィラデルフィア、デンバー、ニューヨークでの新たな挑戦

新たに私の目指す方向となった2つのことをお話します。

歴史あるフィラデルフィアの市庁舎です。ここで私は、ネットよりも軽い素材でやりたいと思いました。風によって形を変える"乾燥した霧"を使い実験してみたところ、この霧は人が触れることによっても形を変え、しかも人が触れても濡れることはないということがわかりました。

この素材を使って、地下を地下鉄が走り抜けると同時に、地上にそれがレントゲン写真のように映し出されるようにしようとしています。

もうひとつ挑戦したこと。デンバーのとある団体から、西半球に位置する35の国すべてが繋がっていること、相互関係にあることを表現出来ないかと依頼がありました。

(会場笑)

どこからどう始めたらいいのか検討もつきませんでしたが、「やります」と言いました。

最近チリで起きた地震、そしてその後の津波が太平洋全域に広がったという記事からヒントを得ました。それは地球のプレートを動かし、地球の自転の速度を速め、文字通り一日を短くしました。そこでNOAAに連絡し、その時の津波のデータを取り寄せました。

そして、津波のデータ画像からこの作品が生まれました。

地球上の時間が1.26マイクロ秒短くなったことから、作品を1.26と名付けました。以前やったように鋼鉄のリングでこれを支えることは出来ませんでした。作品の形がとても複雑になったからです。

そこで、鋼鉄の15倍の耐久性を持つ柔らかい繊維を網状にすることにしました。今回の作品はどこもかしこも柔らかく軽量なので、ビルにそれごと縛りつけることが出来ました。このように複雑な形を重力と合わせて設計出来るソフトウェアがなかったので、この作品の為のソフトウェアもつくって完成させました。

その後ニューヨーク市から連絡があり、同じようなものをタイムズスクエアにつくることが出来ないかと相談されました。私が築き上げた新しい手法によって、高層ビルと同じくらい巨大な作品を生み出すことすら可能となったのです。

このニューヨークのプロジェクトにはまだ充分な資金が集まっていません。しかし今では私は、私のアートを取り入れたいと言ってくれる世界中の街に作品をつくっていくことを夢見ています。

14年前、私は伝統工芸に美しさを見出しました。現在の私は、伝統工芸を最先端の素材とテクノロジーと融合させ、官能的かつ耐久性に優れた、ビルほどの大きさもある作品をつくるまでに至りました。私の芸術の幅は広がっていくばかりです。

最後にひとつ、私の友人の話をして終わります。フェニックス在住の弁護士で、アートなど興味もないが故に一度も美術館を訪れたことのない友人が、オフィスの中の人々を出来る限り集めて、オフィスの外に出て、この私の作品の下で皆で寝転がりにいったそうです。

ビジネススーツに身を包んだエリート弁護士たちが草の上に寝転がり、見知らぬ人と肩を並べて下から作品を見上げ、風になびいて変化する作品を眺めながら、世界の不思議を面白がるこころを取り戻したそうです。ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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TED(テッド)

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