「Siri相手では箱に話すだけだから」 ヒト型ケータイを開発したロボット研究者が見る未来予想図

Hiroshi ISHIGURO [ 石黒 浩 ] - TEDxSeeds 2011 #1/2

日本におけるロボット工学、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩 大阪大学教授が提唱するケータイの形は「ヒト型」。使用した長期入院患者からは大変好評だったそうですが、その一方で人間とアンドロイドの違いを生むポイントについての理解も進んできました。教授が考える、アンドロイド研究によって明らかになる人間の普遍的な本質とは?(TEDxSeeds2011より)

"アンドロイド型ケータイ"とは

石黒浩氏:そういうロボットを作って、いろんな実験をしてきたというのも、皆さんご存知の方もいられると思います。会議をやれば、普通に会議ができますし、今日も本当はアンドロイドでやったほうが良かったのかもしれないですけど(笑)。

これは外国で講演をやっている様子です。アンドロイドのほうがはるかに人気が高い。

(会場笑)

生身の僕が行くより、アンドロイドのほうが人気が高い。これは結構深刻な問題なわけです。要するに、私のアイデンティティは誰が持ってるんだってことですよね。正直、アンドロイド作ってなかったら、僕はここにいなかったわけです。だから明らかに私の場合は、こいつがアイデンティティを持ってると。だからこいつから離れないようにしないとマズいんですけれども。

他の例としては、盲人の人と話す。これはすごく僕は印象的でした。普通、こういう遠隔操作のアンドロイドって、携帯電話みたいなものっていうか、テレビ電話みたいなものだと思われる、テレビ電話とどこが違うんだって思われるかもしれないんですけど、全然違います。

盲人の方にとって、テレビ電話って何の意味もないですよね。でもこれはちゃんと、触ったり、触られたりする感覚が共有できると。人の存在をちゃんと遠隔地に送ることができてる、そういうメディアなわけです。

カフェに置いた例です。オープンなカフェにおいておいて、人と話す。半分くらいは気がつかないんですけれども、気がついた人でもですね、普通にしゃべりだすと、ちゃんと友達になれるというようなことがたくさん起こります。

私の講演をすでに聞いて頂いた方は耳にタコかも知れないですけど、いつも言う冗談としては、これって僕が日本から遠隔操作をしているんですが、要するに、でっかいスピーカーフォンっていうか、携帯電話みたいなもんなんですよね。

ここはカフェでレストランだと、こんなところで携帯電話使っていいんですかって。いいんです、この形になったら。だから是非、山手線で携帯電話を使いたかったら、この形にしてもらえれば。

さらにこれは、アンドロイドにもっと、遠隔操作のアンドロイドなんですけれども、人間らしく振る舞える環境を与えてやると、すごく人間らしくなります。ものすごく人間らしくなる。どこまで似てるかっていうので、チャレンジしたかったんです。

そこで先生にお願いして、演劇にしていただいたということなんです。すごく綺麗な人になります。見かけも、表情も、動きも、しゃべりも完璧なわけですね。

アンドロイドそのものは人間を超えている

もう一つのチャレンジは、このアンドロイド演劇をやって、リンツのアルス・エレクトロニカから招待を受けたときに、どうしても大聖堂でやりたいと。大聖堂を用意してくれるんだったら、行くって言ったら、用意しちゃったもんで、今年行って来たんですけど、行く前は正直ちょっとビビってました。

人とは何かを教えられる教会にアンドロイドを持ち込んで、殺されるんじゃないかなと思ったんですけど(笑)。平田オリザ先生は全然大丈夫とか言ってましたけど。でも結果は大成功だったんですね。非常に綺麗で、ドラマチックで、いわばマリア様を見ているような、そういう感じがしたっていう人がいましたし。あとはこの演劇を観て泣いてる人まで出て来ました。

ただ、綺麗過ぎたって気はしますね。要するに「マリア様」って言われたら、人間超えちゃってるわけです。もっと、このアンドロイドが人間を越えてるのは、死を表現する瞬間なんですね。

これ、空気で動いてるので、スイッチ切れると体がグーッと脱力して死んでいくんです。その瞬間は誰が見ても、人間が死んでるとしか思わないんです。ロボットが死んでいくとはとても想像できない。人間としか想像出来ないです。こんな綺麗な死に方、普通人間できないんですよね。だから、アンドロイドって、結局人間を超えてしまうというところがあるわけです。

アンドロイドそのものは人間を超えるっていうことと、もうひとつは、我々自身、人もそうなんですけども、話し相手はこういう人だろうって、想像で見てるし、それから我々自身も、自分ってのはこういうもんだって、全て想像に基づいて見てると。

じゃあ逆に、そういう想像をもっとかき立てるようなデザインがあれば、より人間らしくなるんじゃないかというので、考えたっていうか。正直、先にこんなことを考えて作ったわけじゃないです。普通、私がものをやるときは、いきなりアイデアが来ます。それから何でそのアイデアが来たのかって後づけなんですけども。

アンドロイドもそうです。このロボットもそうです。でも、多分そういうことだったんだろうと思います。

人と人とは想像力で関わる。相手を想像しながら。だから、想像の余地を残したむしろ、最低限のデザインっていうのが、もっと機能するんじゃないかと思ったわけです。

左右対称のデザインにすると性別が消えて、大人の顔で体を子どものような比率にすると年齢が消えるとか、後付けはいくつも出てくるんですけれども。この直感で得られたデザインっていうのは、非常に効果があると思っております。いろんな所で実験をやってきて、そう思ってるわけですけど。

操作するほうはジェミノイドと遠隔操作と同じです。パソコン一台あれば、どこでも操作出来ます。普通、人の声が聞こえたときは、その人の顔を想像しますが、その顔が誰にでも見える顔に投影されると。

Siriが人型になったら?

幾つかの例なんですけども、特にお年寄りがボランティアの人とか、お子さんとしゃべられる時は、非常にのめり込みやすいっていうか、すごく楽しまれます。長期に病院に入っているお年寄りってふさぎ込みがちなんですけれども、このアンドロイドがあれば、すごく楽しまれるということがわかっています。

ですからこれは、一人暮らしのお年寄りと、世界中のいろんなボランティアの人をつなぐという活動に使えるだろうというので、今、デンマークに行ったり東北の被災地にスタッフを送ったりしております。

ここまで効果があるんだから、これを小さくすれば世界中に普及できるはずだと。だから携帯電話をつくったんです。去年も言いましたけど。携帯電話を作ったときに、ひとつ言われたのは、そもそも携帯電話っていうのは、こういう無意味な形だから、誰からかかってきてもいいんだと。

もし、こういう形の携帯電話に電話がかかってきたら、それが嫌いな相手だったら、これを捨てたくなるかもしれない。

(会場笑)

私、それでいいと思うんです。今まで、ニュートラルなデザインのメディアばっかり使ってきたんですけれども、今後メディアはもっと濃い人間関係のなかに入っていく。携帯電話も、チップひとつでいろんなかたちのものが作れるようになってきます。

ニュートラルな汎用的なものばかり目指すんじゃなくて、もっと深い人間関係の中に入るメディアを作るというのが、これからのひとつの研究開発の大きな流れじゃないかなと思っています。

それに加えてですね、iphoneと比べると、姿形はもちろん違うんですが、もうひとつ重要なのは、これは自分の存在感を送ることができると。相手を手の中に感じて話すことができる。iphoneそのものはですね、通話の機能だって何の進化もないわけですよね。でもこちら側は、まあ人は選びますけれども、存在感をちゃんと伝えられるというメリットがあります。

10日ほど前にSiriっていう、音声認識のソフトウェアが発表されました。(※この講演は2011年に行われたものです)iphoneはもう、このインターフェースがいらなくなるわけですよね。じゃ、この真っ黒な箱に、皆しゃべりたいですか? これ、絶対おかしいでしょ? やっぱりしゃべるんだったら人型じゃないですか。

(会場笑・拍手)

だから、まだ、山田社長はこれが普及するかどうか怪しいと思ってるかもしれないですけど、僕は10日前のアップルの発表で確信を持ちました。だから来年あたりはですね、これが世界中っていうか、いろんなところで使われるようになって、こんなシーンが、来年の後半あたりにいろんな所で見れるといいなあと思ってます。

多分時間が超過して、そろそろ止めろということになると思うんで、残りの時間。ここ、ちょっと面白いんですけどね、声がすると相手としゃべってるように聞こえるんですけども、声がしないときは自分の体の一部のように感じます。

だから隣の人とこういうことをやってみてください。もし、隣の人が嫌いだったら、すごく嫌な思いをします。これ、恋人発見機みたいになって、すごい面白いんです。男女の間でやってください。男同士だとちょっとへんな趣味に走りますから。

真の人間性とはなにか

最後、まとめに入りたいと思うんですけども。私のやってる研究は何かっていうと、この間文化人類学者が来て、トランスヒューマニティーじゃないかと。要するに、人間社会、どんどん機械を受け入れていって、どこまで機能を発達させるのか。それがロボットの研究なんだろうと。そういう研究の果ては、いつかは人間と機械の境界を無くしてしまうだろうという気がしています。

ただ、これは要するに物理の世界っていうか、客観的な、いわば論理的な世界の話で、一方で、ジェミノイドの研究もそうなんですが、本当に脳と体、精神と肉体を切り離して、それでいてまだ人間でいられるのだろうか、という強い疑問があります。

我々の感覚って、脳だけで感じてるわけじゃないし、体全身で感じるものですよね。その感覚を持つから、自分であるとか、人間であるとか、そういう実感を持てるんだという風に、一方でも思うわけです。これはむしろ主観の世界。多分、クオリア(感覚質)とかね、意識の研究では共通する世界だと思います。

今後やりたいことなんですが、今日は、私の研究のモチベーションを話すということでもあったんですけども、精神と肉体にまたがるコアになってる、真の人間性とは何か。

いわば、精神世界の科学とでもいうのかもしれないですけど、これまで積み上げてきたものをベースに、これは出来るかどうかはわからないですけれども、そういったものを自分でも感じられるし、皆さんとも、そういう、もしかしたこれが真の人間性かも知れないっていう感覚を共有出来るものは何か、今後つくれればいいなと思っています。以上です。

<続きは近日公開>

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