「未来の有田焼があるカフェ」

猪子寿之氏:これもちょうど今、11月末ぐらいまで佐賀の有田町というところでやっています。有田焼という磁器があるのですが、日本の磁器というのは有田焼が1番初めなので、有田焼の歴史というのは日本の磁器の歴史でもあるんですね。

ちょうど2015年で400周年なので、その手伝いをチームラボがやっています。これは「未来の有田焼があるカフェ」というタイトルなんですけれども、有田焼というのは普通に今現存していて、普通に売っている。窯元が普通につくって普通に売っている有田焼ですが、それを前もって今ある有田焼に合わせてコンテンツをつくっていて、テーブルに置くと皿の絵柄が、そのまま皿から飛び出してテーブルだとか空間をつくっていくというそういう作品。

これは有田焼400周年を記念してつくったものでアートじゃないんだけれども、さっき見せたようないろんなアート作品をつくっているし、アート以外にこういうようなこともやっていたり。例えばイベントみたいなこともやっています。

「香川ウォーターフロント・フェスティバル」

これは2014年の夏に香川県で「香川ウォーターフロント・フェスティバル」というイベントをやっていたときのものなんですけれども、瀬戸内海が国立公園に指定されて80周年だったので、それを記念して海の中にスクリーンを立てて海水を吹き上げて、海水をスクリーンに仕立てあげ、プロジェクションマッピングをしました。水なので、向こう側の夕日とかが透けているんです。

ちょうどこの屋島という場所で、1000年ぐらい前に源平屋島合戦が行われたのでそれを再現した物語をつくったり、あとはせっかく海なので釣りをやろうと思った。ウォータースクリーンに釣り糸が何本か引っ掛かっていて、自分のスマホが釣り針になっていて、魚が引っかかったら、スマホを振ったりぐるぐる回すとリールが回って釣るという。何か異様な光景になっているんですけれども(笑)。

「クリスタルツリー」

2013年のクリスマスにつくったクリスマスツリーで、さっきの雲の彫刻で言っていたのと同じような考え方でLEDを円柱状に堆積させて、それで光の彫刻みたいな形でクリスマスツリーをつくりました。スマホで飾りつけができて、飾りつけを投げるとこんなふうに立体物として生成されて飾りつけられていきます。

これを今年はもっとすごいバージョンが上がったものを福岡でつくっているので、もし福岡に行くことがあったらぜひ。

作品の前にいる観客同士の関係性を変えたい

こういった感じで、アートにしろ、クリスマスツリーみたいなプロダクトにしろ、1人と作品というよりは集団と作品だったり、作品と人々との関係性が、ほかの人にとってはどこまでが作品かわからないようなものをつくっています。作品があることで最終的には今までは自分がどう思うかとかどう変わるかとか、どう影響を受けるかとかだったんだけれども、観客同士の関係性が、作品があることで変わると思っているんです。

それはデジタルになる前はほとんどなかったようなことで、モナリザを誰と見ようとあんまり関係なくて、ほかの人がいるとちょっと見にくいとか混んでいるなみたいなことはあるけれども、モナリザと自分の話なんですね。

僕らがつくっているようなものというのは、例えばさっきのハウステンボスの木であれば光が向こうから来るときっと向こうに誰かがいるんだろうし、いっぱいいろんな色が来ていたら向こうにすごく激しい人がいるのかな、と考えたり。少なくとも作品の前にいる観客同士の関係性が変わると思っているんです。

関係性がすごく変わるということにフォーカスを当てていて。実は作品があることで個々の人々の関係性が変わるんですよ、ということにフォーカスを当ててやっているプロジェクトがあるんです。

「お絵かき水族館」

それは2013年の今ごろからやっているプロジェクトで、「チームラボ 学ぶ! 未来の遊園地」というものです。僕個人の興味としてはアートと一緒に作品があることで、今ここにある関係性が変わるという。そういったものによりフォーカスを当てて、―共創と言って、共に創ると書くんですけれども、Co-creationみたいな―共創の体験を楽しんでもらおうだとか、共創的な人間になってもらおうというような、知育の空間でもあり遊園地でもあるみたいなことをやっていて。

例えばどういうものがあるのかというと、これは「お絵かき水族館」といって、魚の絵を書くとその魚が泳ぎ出すという。もちろん魚に触ると逃げるし、えさをあげると寄ってきたりします。

僕は小さい頃、絵を描くのがすごく好きでよく絵を描いていたんですけれども、見せることもそんなになければ誰か他人の描いた絵を見ることもなければ、大体1人でずっと描いていました。「お絵かき水族館」の場合、みんなの前で否応なしに泳ぐので、みんなの前で、描いている子どもたちも結構どの魚がキャッチーかみたいなのをやっぱり直感的にわかるみたいで、すごい勢いで例えばすごくキャッチーなクラゲとかが出てくると、みんなそれを真似したりして全体的にすごく早くクオリティーが上がっていくんですよね。

「お絵かきピープル」

これは、「お絵かきピープル」といって、人を描くとそれが3次元の人間になって、何かいちゃいちゃしたりケンカしたりするというのを今六本木ヒルズでやっている、pixivというWebサイトの展覧会「pixiv祭」でやっているんです。

そこにお絵かきピープルというのを、こんな感じで等身大ぐらいの人を平面に絵を描くと3次元のキャラクターとして現れるんです。

チームラボ空間お絵かき!

これは動画のプリクラみたいなのをつくっていて、チームラボスタジオというどこでも簡易的なスタジオになって動画が簡単に撮れるというスタジオをつくっているんですけれども、これはその空間にお絵かきをするものです。

ペンや銃を持ってボタンを押すとインクが出て、ボタンを外すとインクが出なくてという、そういう空間に絵を描けるペンを持って絵を描きます。そうすると、その姿が動画になって、その動画がもらえるというのもちょうどヒルズの「pixiv祭」でやっているので、ぜひ見に行ってみてください。

「まだ かみさまが いたるところにいたころの ものがたり」

あとはさっき言った未来の遊園地というのは、色んなアトラクションをつくっていて、さっきの「お絵かき水族館」以外にも本当に色んなものをつくっていて、これは象形文字が下りてきて象形文字に触るとそこから絵が生まれるものです。

例えば「ゾウ」という文字に触れると象が出てきたり、今「土」という文字に触れたので土が生まれたりして、世界ができていく。互いに影響し合っていて、例えば土を出し、誰かが雨を降らせると土から草が生えたり、誰かが太陽を出すと草から花が生まれたり、花が生まれたり、草が生えてくると例えば牛が寄ってきたり、犬が来ると羊が逃げたり、互いに影響し合いながら世界がつくられていったり物語がどんどん変わるという、そういうものをつくっていたり。

「つながる!積み木列車」

これはまだちょっとつくっている途中なんですけれども、「つながる! 積み木列車」。例えば赤い積み木同士を置くと、こんなふうに線路が生まれて電車が走りだしたり、線路が余計につながるとちょっとずつ電車がパワーアップしてという、積み木をみんなで置くことによって街をつくっていくとか、そういうことだったり。

ただ電車が曲がれないような角度で置くと電車がつながらなくて、今左上は小さな電車が走っていると思うんだけれども、あれは今角度が急すぎてつながらなくて、動かすことで角度がある一定以下だとつながっていくというので電車がパワーアップしていくと。

自分もやっていたんですけれども、積み木ってどうしてもひとりで遊んでしまうので、静的に関係性がつくられていってしまって。もうちょっと共に何かをつくるみたいな体験になったらいいなと思ってつくったんです。線路と道路がつながった踏切ができたり、川の上に橋ができたりというような。

「小人が住まうテーブル」

これは「小人が住まうテーブル」という作品で、物とか手とかを置くと小人が寄ってくるという、これもちょっとつくっている途中なんですけれども、こういうテーブルをつくったりしています。

テクノロジーは表現をいかに変えたか

結論から言うと、デジタルというのは何か情報、デジタル以前というのは情報が単独で存在できなかったので、しょうがなく質量がある物質と共に存在していたのが、デジタルになることによって情報が単独で存在できるんです。

文字とかもそうだし、さっき言ったように絵もそうだし、僕らからすると表現したことが、その表現そのものとして単独で存在できるので、表現されたものの自由度というのが極めて上がったと思います。例えば油絵とテクノロジーは無関係だった。

もしくは例えば昔の、みんなは知らないと思うけれども、昔は写真というのはフィルムに撮って焼きつけて物質として存在していたんだけれども、その頃はテクノロジーと無縁でした。しかし、写真がデジタル化された瞬間にテクノロジーとの関係性がすごく急激に上がって、普通に今iPhoneとかでもすぐにみんな加工したり、LINEで送る前にちょっと加工したり、テクノロジーですぐいじるよね。

デジタル化されることによって、すごく自由にいろんな表現そのものとテクノロジーというのがセットになってきていて、表現そのものがすごい、表現されたものというのはすごく自由になるので併用可能になっていく。

インタラクティブだったり延々と変わることだったり、よりそういうふうになっていくことによって、いろんなそこにある物と個人じゃなくて、物と集団だとか、人と人との関係性をすごく変えていくようなものがつくれるんじゃないかと思って、僕らはそういうアプローチを取っている会社です。