人とロボットは感覚をシンクロさせられる--アンドロイド研究の第一人者・石黒教授の考え

Hiroshi ISHIGURO [ 石黒 浩 ] - TEDxSeeds 2011 #1/2

「ロボットは人になれますか?」--アンドロイド研究の第一人者として知られる大阪大学・石黒浩教授の下には、このような質問が数多く寄せられると言います。その答えを解くには、人間を定義する必要があると教授。ロボットと人、その本質的な違いは一体どこにあるのでしょうか?(TEDxSeeds2011より)

アンドロイドの次は、テレノイド

石黒浩氏(以下、石黒):こんにちは。3回目(のTED講演)なんですけれど、僕(笑)。去年はですね、これのビデオをお見せしたと思います。これはもう、いろんな所で実証実験をして、その効果が徐々にわかってきたと。テレノイドっていいますけど、アンドロイドの次に私が作ってるものですね。

今日はこの話に加えてですね、これはここにちょっと置いておいてもらって。それからクアルコムの山田社長の協力も得て、このテレノイドを小型化するというのが実現しました。

皆さんのお手元にあるのは小さい模型なんですけれども、この姿、形の意味が何を意味するのか、どういう思いでこういうものを作ったかというのを、短い時間ですけれどもお話できればなと思っています。

これもちょっと、どこかに置けるといいんですけど。(皆さんは)その人形を持ちながら、話を聞いていただければと思います。

人間を定義する

私は今まで自分を普通の人間だと思ってたんです。自分のやることは全部普通だと思っていたんですけど、どうも、何かおかしいってことがだんだん自覚できるようになってきて。そもそも3回もこんなところに呼ばれるっていうのは、よっぽどおかしいんだろうとかですね。

あとは、このあとお話される平田オリザ先生と最初の頃お会いして対談した時に、この人はおかしいって言われて。だから、そういうことを少し自覚するようになって、そうなれば少し私の研究のモチベーションっていうか、何でこんなことをやっているのかっていうのを、お話するのがいいかなと思います。3回目ですしね。

一番、そもそも僕自身が疑問に思っているのは、小さい頃からそうなんですけど、自分って何かとか、自分って言った時に、定義不能じゃないですか。あれも自分、これも自分。私って言葉もそうなんですけどね。

それから人間って言葉も、定義不能ですよね。例えば私のロボットはよく、アンドロイドと人間、どっちが優秀ですかなんて話を聞かれるんですけど、まず人間を定義してくださいと言いたいわけです。人間と比較して、人間と人間、どっちが優秀かとか、どっちが優秀かと聞かれるんだったら、人間をわかってるんですかと。

例えば、この間のオリザ先生との対談の中で、アンドロイドは考えますか、という質問が。じゃあ、あなた考えてるんですか? と聞きたくなるわけです。そういった、みんな当たり前のようにわかってるつもりの問題が、わからないんですよね。皆さんわかっておられるのか知らないですけど、私はわからないし、実感もないです。人間についても、自分についても、考えるってことについても。

でも、人間ってわからなくても、僕らは人間として生きていかなければいけない。そうすると、生きる事そのものに結構疑問が出てくるわけですよね。だから、やれることは目の前にある問題っていうか、与えられるものをとりあえず自分の努力でもって何とか解決する。で、またやってくる問題を解決すると。

そういうふうに、周りからやってくる問題とか、時には自分から問題をつくることもあるかもしれないですけど、そういうものに対して、身を委ねながら生きるしかないんじゃないかなと。そういう風に思ってやってきたわけです。

アンドロイドは人になれるか?

それで、僕の場合は身を委ねてるものってのが、たまたまコンピューターを勉強して、人工知能を勉強して、ロボット工学の勉強してって、なんとなくそういうステップが周りから与えられて。その中でより人間らしいもの、要するにコンピューターを勉強すると、賢いコンピューターを作りたくなるわけです。

賢いコンピューターをつくると、もっと人間らしいものを作りたいという風な欲が湧いてくるわけです。そういうものにある意味身を任せて、その中で仕事をしてきたつもりです。

ですから毎年のように新しいロボットを作って、最初、十数年前には不細工なロボットからはじまったんですけども、三菱重工が我々のロボットをベースにロボットを作るようにもなりました。そのうちアンドロイドを作り出して、自分のコピーを作り出して。アンドロイドっていうのは、上半身しか動かないんですけれども、全身が動くような、赤ちゃんロボットまで作ってきたわけです。

これ、作って何かがわかったわけではないんですけれども、作らざるを得ないっていうか、思い描いたことを順番に実現してきたという。形にして、そこから少しでも新しい問題がわからなかと。作ると必ず新しい問題がやってくると。そしてまた、さらに新しいロボットを作りたくなるということなんです。

そういった研究の流れの中で、わかりやすいというか、特徴的なのはまず、ロボットはどれほど人間らしくあるべきかという疑問なんです。最初に作った簡単なロボットっていうのは、既存の技術で作った、わりと機械的な見かけを持ったロボットなので、すぐに疑問に思ったのは、そもそも人間ってのは人と関わるときに、人間らしいもののほうが関わりやすいわけですよね。

ところが、僕が研究する以前のロボット、私の最初に研究したロボットもそうなんですけど、全てロボットらしいんですよね。それはおかしいじゃないかと。そもそも人間の脳って、ロボットを見るためのものではないし、コンピューターを見るためのものでもないと。

人間って人間を見るために、人間を認識するための脳を持ってるはずですよね。だから、人間らしい形ってのは全て意味があるんだという風に、ひとつ前の、機械的なロボットを作ったときに思いついたというか、大きな疑問が出て来たわけです。それでアンドロイドを作ってみたと。

とりあえず、どこまで人間らしいものが出来るかというので作ってみたっていうのが、愛知万博のアンドロイドなんですけど。それなりのクオリティのものが出来たんですが、このアンドロイドは最大の欠陥を持っていたんですね。一番の欠陥は、人間らしくしゃべれないっていうことなんですよ。人間らしく完璧にしゃべろうと思ったら、人間と同じ脳が必要になると思います。それは不可能です。

それにしても、あまりに聞いたり理解したり、それから話をつくる機能が乏しすぎる。そこをなんとかしようと、今もやっているんですけども、とても、こういう人間らしい姿形に合うような、しゃべりとか、話し方とか、話す内容ってのを作ることは出来ない。

アンドロイドは人になれるか? 言い過ぎかもしれないですけども、あとで、もう少し納得してもらえると思うんですが、人間らしくしゃべらせれば、表面的には人間と見分けのつかないものになるだろう。でも、人間らしくしゃべらせられないので、その人間らしくしゃべる部分っていうのは遠隔操作でやるんだということなんですね。

人との関わりは「想像」に支えられている

これ去年もお見せしたと思うんですけども、モニターを見ながらしゃべると、唇とか頭の動きは操作者と同期してちゃんと動くようになる。そうやって自分とシンクロする体をみると、それがまさに自分の体のように感じられる。

もちろん訪問者のほうも、私が普通にしゃべっているわけですから、多少の動きはぎこちないですけれども、ちょっと、何て言うか……薬でもやったおかしな奴がしゃべってると思えば、充分に人間らしく感じることができるわけです。

操作するほうはさらに、他の感覚まで補完されると。本当に触られると嫌な感じがするんです。ビデオ見てても嫌ですけど、何て言うか、アンドロイドは歩けないんで、グリグリやられるとむちゃ腹立つんですけど、本当に触られた感覚も同時に起こるっていう、面白い現象があります。

認知科学ではよく知られた現象ではあるんですけど、フルスペックっていうか、人間本体の全体をつくった場合にどんなことが起こるかっていうのは、他では試されてなかったと。

どうしてそういうようなことが起こるかって、重要なポイントは、基本的には我々は自分のことを知らないということですね。僕らは人と関わるときに、全て想像で見てるわけです。

例えば、ある人の顔って言ったときに、それはどの顔ですか。写真撮るとごに顔違うじゃないですか。毎朝起きるごとに、顔違うじゃないですか。その人を代表する一枚の写真なんて、撮りようがないんですよね、人間ってどんどん変化するし。

でも、その人はちゃんと、その人であるわけですよね。そんなに間違われることはないです。アンドロイドと私だったら、時々間違われたりするんですけど。普通はそんなこと起こらないですね。

我々、自分自身のことを知らないわけです。クセを知らなければ、顔を知らなければ、声も知らないですね。皆さん、考えてもらえればすぐわかると思うんですね。例えば朝起きたときの鏡。左右逆転してますよね。写真の顔と、鏡の顔と比べていただければ、全然違う人に見えます。

でも皆さんは鏡を見て、自分だと思っているじゃないですか。他人から見たら、全く違う顔なんですよね。社会的に正しいのは写真の顔なんですよ。だから、自分のことを僕らはすごく知らないから、ゆえにこういうロボットにも提供できると。それに加えて、いろんな想像を補完しながら、相手を見てるという面があるかと思います。

※続きはこちら! 「Siri相手では箱に話すだけだから」 ヒト型ケータイを開発したロボット研究者が見る未来予想図

<続きは近日公開>

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