ロボットの演技で人は泣く!
工学者×演劇家のタッグが生んだ「アンドロイド演劇」とは

Oriza HIRATA [ 平田オリザ ] - TEDxSeeds 2011 #1/2

人型ロボットの性能をアピールする際によく用いられる、ボールを蹴ったり、段差を乗り越えてみせたりといったデモンストレーション。それは人を感心はさせても、感動させるものではありません。ロボットで人に感動を--アンドロイド研究の第一人者、石黒浩教授と劇作家・平田オリザ氏がタッグを組んで生まれたのは、モデルに酷似した外見をもつ"ジェミノイド"が出演する演劇。見る人を涙させ、世界中で人気の作品となりました。(TEDxSeeds2011より)

ロボットで人を感動させるには

平田オリザ氏:お芝居作って皆さんにお届けするのが一番の仕事なんですけれども、縁あって10年ほど前から大学の教員をしてるんですが、6年前に大阪大学に移りました。大阪大学では、今コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)というところにおります。

大阪大学っていうのは医学部とか工学部とか非常に理系が強く、特に関西ではお堅いイメージの大学なんですけれども、(そこで)主に大学院生たちに強制的に演劇をやらせたり、ダンスをやらせたり、あるいはデザインを実践させたりして、コミュニケーション能力やデザイン力を付けようということで(やっています)。

鷲田清一前総長の意向として、少なくとも博士課程に進む人間にはこういったコミュニケーション能力を必修にしていこうということで、6年前に呼ばれました。ですから、あと数年もすると、演劇をやらないと医者になれないという素晴らしい時代が来るんです。まぁ、あんまり芝居の上手い医者も信用できませんが……適当にしといた方がいいと思うんですけど。

そういう中で、僕の方から「ロボットを使って演劇やりたいんですけど」と言ったら、すぐに鷲田さんから石黒(浩)先生を紹介していただいて、4年前から「ロボット演劇プロジェクト」というのをやっています。最初はこの“wakamaru”(ワカマル)という1mぐらいのロボットロボットした形のものを25分ぐらいで作って。

もうその段階で、ロボット同士のシーンで泣くお客さんも結構出てきて、ある程度の成果は上がったんですね。私と石黒先生が最初から目指していたのは、とにかく今までのロボットってのは博覧会で展示されていて、技術を見せる(もの)ですね。

皆さんそれ見ると「ほーっ」と感心はするんだけれども、感動はやっぱりしないと思うんです。(私たちは)感心させるんじゃなくって、感動させるロボットを作ろうということをまず目標にしました。それは結構初期の段階で達成したと思うんですけど。

お台場に「(日本)科学未来館」というのがあって、あそこ“ASIMO”が展示されてて、サッカーボールを蹴ってみせてくれるんですけど、感心はするんですけど(正直)「サッカーボール蹴られてもなぁ」という感じもするんです。

すごい技術なんですよ、サッカーボールを蹴るっていうのは。でも工学者だけだと、自分がいかにすごい技術を開発したかってことをどうしても伝えたいから、そこにとどまってしまうんだと思うんですね。

それでは、ロボットが本当に人間の家庭に入っていく時に、人間と友達になったり、少なくともお年寄りとか障害を持った方たちが怖がらないようにすることができないんじゃないかと思うんです。だって、技術で威張ってるロボットはイヤじゃないですか。なので、私たちはまずロボットの見せ方を考えていこうということをやってきました。

平田オリザ×石黒浩が作り上げた、アンドロイド演劇

昨年(2010年)、「あいちトリエンナーレ」という現代美術の祭典に招かれて、3週間くらい俳優たちと大阪大学で合宿して1時間半の大きな作品を作ったんです。その時に“ジェミノイド”(モデルに酷似した外見をもつアンドロイド)ですね、ちょっと映像流して頂いて。“ジェミノイド”の簡単なやつが開発されたので、それをちょっと見ていただいて。

(スクリーンに“ジェミノイド”が映し出され、詩を口ずさみ始める)

さくらなみきのしたをとおって おおどおりをしんごうでわたって いつもながめてるやまをめじるしに ひとりでいかなきゃなんない どうしてなのかしらないけど おかあさんごめんなさい おとうさんにやさしくしてあげて

石黒先生そっくりのやつはすごく値段が高いらしいんですね。8,000万円とか1億円とか、よく分かんないんですけど。(先ほど映し出された“ジェミノイド”を指して)これは1,000万円ぐらいでできるらしい。大体800万円とか、まあプラス300万円くらい出すと、皆さんのオリジナルの(“ジェミノイド”)ができます、多分。

安いのができたので、これでお芝居を作ってくださいって言われたんですね。(石黒先生は)本当に無茶を言う人で。ただ“ジェミノイド”は動かないんです。演出家にとっては、動かないものでお芝居を作るというのはとても大変で。

“wakamaru”は動いてくれるんで普通に今までお芝居を作ってたんですけど、動かない“ジェミノイド”でどうしようかなーっと思って手がけたのが、この『さようなら』という作品です。15分間の、お芝居というよりもどっちかというとインスタレーション、パフォーマンスみたいなものなんですけど。

(舞台の)こちら側に生身の俳優がもう一人いて。『さようなら』っていうのは谷川俊太郎先生の詩なんですけど、「死んでいく人にずっと詩を読み続けるロボット」って設定を考えて、(“ジェミノイド”が)谷川さんだけじゃなくてランボーとか若山牧水とかいろんな詩をずーっと読み続けるっていう。会話ももちろんするんですけど。

世界中からの反応は?

そういう設定のパフォーマンスを考えて、作品を昨年完成させたところ、なんかすごく大ヒットして。

今年は、国内は北海道から沖縄まで、それから(海外は)オーストリア、ドイツ、イタリア、フランスと回ってきました。今決まっている範囲ですが、来年はおそらく“ジェミノイド”は4ヶ月ぐらい海外公演でずっと回ると思います。“ジェミノイド”のいいところは宿泊費がかからないってところなんですよ。(現地に)行っとけばいくらでも儲けてくれる。

(会場笑)

ただ、輸送費がすごくかかるんですね。これはもう石黒先生ともよく言うんですけど、本当にANAかJALのエコノミー席に(“ジェミノイド”を)座らせとけば、ヨーロッパ行くのって今安いですから10万くらいで行けるんですけど、無理なんですね。どうしても空港のセキュリティが通らないっていうんですね。

(会場笑)

しょうがないんで、今ちょっと国際交流基金とかと話して、1体はパリに常駐させておいて(もらおうかと)。陸路での国内旅行は(“ジェミノイド”を)助手席に置いておけるんで全然楽なの。EUだったら関税も全く無いんで、1体は来年辺りから置いておこうと思ってるんです。

こうやってると、本当にお年寄りとかは最後までどっちが(“ジェミノイド”か)分からない人もいます。(スクリーンの“ジェミノイド”を指して)こっちも人間が演じてると思って「あの役者はアンドロイド演じるの上手いねー」って言う人がすごいいるんですけど、まあそんな感じのお芝居ですね。

来年はこれ(『さようなら』)のちょっと大きな作品を作る予定で、先ほどビデオにもチェーホフの話が出てきましたけど、「三人姉妹」を題材にした1時間ぐらいの作品を、日本とフランスの共同制作で来年ぐらいに作ることになっています。三人姉妹の多分一番末の妹がアンドロイドになっていて、アンドロイドなんだけどモスクワに行きたいってずっと言ってるって設定になってます。

※続きはこちら! 人型ロボットの動きはなぜ不自然なのか? 研究者の難問を20分で解決した、ある演出家の結論

<続きは近日公開>

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