子どもの脳を鍛える"マジメな"遊びとは?
大人達に知ってほしい「良い遊び・悪い遊び」

A life of play #1/2

「遊び」についてソニーコンピュータサイエンス研究所で研究を進めているインタラクション研究者、アレクシー・アンドレ氏が、一般的な子どもの遊びを分析。能動的な遊びが子どもたちの脳の成長を助けるとし、「マジメに」遊ぶことの大切さを語りました。(TEDxKids@Chiyodaより)

「遊び」は2つに分けられる

アレクシー・アンドレ氏(以下、アレクシー):ボンジュール! なんちゃって。さすがにフランス語でやったら皆に怒られるんで、ちょっと日本語でやります。今日は遊びの話をします。だいたいこどもが喜ぶ話ですけど、その結論になると、大人に嫌われるかもしれないですね。

なぜそうなったのか、なぜそういう話をしたくなってきたのかって、実は、僕は31才で一昨年結婚して、今年の1月に息子のガスパールが生まれました。

(会場拍手)

で、まあ完全な親バカですけど、僕はフランス人で妻が中国人で、なかなかいろいろ難しい話が出てくるんですけど、今日はその話はしません。この子は何語をしゃべってくれるんだろう、みたいな話は一切しません。

僕は遊びについて研究している人間として、やっぱり子どもにオモチャをあげるのは当然のことですけど、良いオモチャは何なのかって自然に考え始めるんですね。ここにいる子どもたちに「良いオモチャって何?」って聞いても多分、答えが出てこないかもしれないです。

良いオモチャってなんですか? 良いオモチャってなんだろう。良いオモチャが存在してるなら、良い遊びがあるんじゃないかなって。良い遊びと悪い遊びがあるんじゃないかなって。

それってなんでしょう? 子どもの成長に役に立つ遊びはなんでしょうねって、研究者なので普通に仕事として遊んでいるだけですけど、いい遊びを探りながら結果をまとめると、だいたい2つに分けることができます。

難しい言葉になってしまったかもしれないですけど、受動的な遊びと能動的な遊び。簡単に言うと「受動的な遊び」とは、他の人が作ったものを楽しむことです。アニメを見たり、マンガを読んだり、音楽を聴いたり。結局、他の人のストーリーに入ることが受動的な遊びにします。

一方「能動的な遊び」は、自分から考える遊び。ひとつの例を出します。自分から作る遊び、物語っていう。

能動的な遊びと受動的な遊びの違い

3年前の話です。ここに映っている左側の女の子、お友達の娘ですけど、1週間くらい、そのお友達の家に泊まらせてもらったんです。それで、毎日遊びに付き合ってたわけですよ。

この僕がもってる人形はぽぽちゃんっていうんですけど、リンコちゃんから見ると、ぽぽちゃんはもう最高です。何でもできる、料理ができて、スーパーマンのように空を飛べて、買い物出来たり、いろんなものを運転できる、最高な主人公です。

大人から見ると、リンコちゃんが作ってる物語は矛盾し過ぎていて、ずっと爆笑してたんですよ。この子の考えているストーリー、わけがわからないんです。何が楽しいのかわからないんですけど、あの子を見ると、一生懸命遊んでるってがわかるんです。

この子、すごいなって思ったんですよ。この子の想像力は半端ないです。3才にして、何でも楽しい。どんなオモチャをとっても、何となく無理やりに合わせて話の展開を作り上げるんですね。

なんとなく、この子の遊びが良い遊びなんじゃないかなって思って。なぜ、子どもたちがこういう自分で作る能動的な遊びから、他の人が作ってくれる受動的な遊びに移ってしまうのか。なぜ、自分から想像したくなくなるのか。ちょっと不思議に思ってるんです。

この受動的な遊びでは、やっぱり、自分から考えなくなるんですね。ただ、映画、アニメを見るだけで、ボーっとするだけで、楽しいかもしれないですけど、考えないんですね。脳がお休みになります。それはいろんな研究があるんですけど、テレビを見すぎると脳の想像力がちょっと弱まってしまう。脳が堅くなるんじゃないかなっていうことがわかってきてるんですよね。

能動的な遊びで大事な「間」

じゃあ、その良い遊びはどうやったら子どもたちにもっとやらせられるのか。これが僕の研究の目的になってます。

ちょっと図で表してみると、縦軸が遊びの面白さ、横軸がその制作時間。たとえば映画とかマンガだったり、制作にすごい時間がかかるんですけど、すごく面白いものがつくれるのは当たり前のことですね。たまに失敗して面白くない映画になるかもしれないですけど、だいたい面白いものが出来るんですね。

ただ、1回見たら面白くないですよね。2回目見ようとしたら、話の展開が全てわかっている、最後の結末がわかってしまうので。

さっきのリンコちゃんの遊び。制作時間はかからないんですけど、大人からするとそんなに面白くはないですけど、グルグルしてる、固まってないのが重要じゃないかなって思っていて。どんなオモチャを渡しても、次があるんですね。ぽぽちゃんが"なにか"になります。

よく考えたら、普通のエンターテイメントには始まりがあって、終わりがあって、それに沿ってまっすぐ進むだけ。ゲームをやったら、スタートから最後まで、まっすぐやれば何とかなります。

リンコちゃんの遊びは、別に終わりがないですね。どこに向かっているのかもわからないです。すごい道に迷ってるみたいに見えるんですけど、リンコちゃんの頭の中では進んでる。何となく楽しい、次、楽しいって。リンコちゃんから見ると、始まりも終わりもない。ずっとやってるんです。

結局、始まりと終わりが大事なのではなく、間が大事なんです。どうやって行くのかが一番大事ですね。リンコちゃんはだいたいこんな複雑なやつですけど、なんとなく進んでくるんです。

なのでリンコちゃんの遊びに大事になってくるのは、その間の道じゃないかなって思ってます。英語で言うとプロセス。リンコちゃんの遊びは、その間をいじってることなんですね。この「道」っていうのがすごく面白くて、日本の文化がこの言葉を思いついたときから、やっぱり日本の文化は進んでいて、この事を最初からわかっていたんじゃないかなって思うんですよ。

茶道、武士道などにも通じる「遊道」とは

日本の芸術では、茶道とか書道とか武士道とか合気道とか、みんな「道」がついてるんですね。僕からみると、終わり、目的が無くても、どうやって行くのか決まってるんですね。それが合気道の考え方、生き方になっているんです。

じゃあ遊ぶ道、「遊道」っていうんですけど、これはなんなのかってことで、まず書くことについて遊道をやってみましょう。

書くことは何なのかっていうのを考えてみます。ちょっと複雑な話なんですけど、今、僕は皆の前でこのスマホをなぞって絵を描いていますが、すごい下手です。

これは、普通の「描く」って事じゃないですか。僕が動いているように跡が残って。この描く事自体を、ちょっと変えてみましょう。同じような操作をしますけど、なんか急に描いてる跡が変わってきます。

指を止めても、こいつは勝手に描き続けるんです。描く事自体をちょっといじってみたんですね。さらにいじると、今度は色が自動的に変わるとか。

同じ事しかやっていなくて、僕は描く事しか考えてないんですけど、描かれていくものは段々変わって来ます。

さらに複雑に、びよーんって指を回すと綺麗な螺旋が描けるようになるんですけど、僕が本当にそれを描きたかったのかはわかりません。ただ、描く事について遊んでみました。

これが遊道の例ですけど、いろいろいじること、いろいろ遊ぶ事を別のところに応用出来ないかなと思って、どこで応用できるのか、そのプロセスが必要になってきます。描く事とはなんなのか。音楽をやることとはなんなのか。

でもほとんどの場合はプロセスがはっきりわからないんです。たとえば車。部品をわかるためには全てを破壊する必要があるんですけど、50年前はボンネットを開ければ何となくわかってたんです。だんだん話が複雑になってきてしまいましたが、僕が思う遊道とは、アートとエンターテイメントと、単純な遊びだと思ってます。

マジメな遊びの積み重ねから、新たなアイデアが生まれる

今日はたまたま、ドラゴンさんがさっきからずっと描いてるんですけど、ドラゴンさんがその「間」を見せてくれています。ゼロから、真っ白なキャンバスから出来上がった絵の間を見せてるってのが、僕からみるとドラゴンさんは遊道をやってるわけですね。描く事をみせてるんです。

たぶん、ドラゴンさんにも自分の中で出来上がってる絵のイメージがあるんですけど、皆さんといろいろ話しながら、それがちょっと変わってきてるんじゃないかなと思います。皆さんからの影響があって、お互いに物を作ってるっていうのが遊道だっていう話じゃないのかなって。

僕は残念ながら世界を救えないです。だんだんわかってきたんです。そんなにすごいアイデアを生み出して、難問を解決できる人間じゃないですけど、遊びについて真面目にやってる人間として、何が楽しいのかなって考えています。

それでは世界を救えないですけど、やりたいのは逆に、皆さんがちゃんと難しい問題をやろうとしたら、その道をちょっとだけイジれば、頭の奥にいろんな新しいアイデアが出てくるんじゃないかなと思います。

未来への為に今があって、未来に向かう道があるんですけど、それはまあわかんないですね。さっきのリンコちゃんのお話もまったく一緒です。どうやって行くのかわからないですけど、すごい柔軟性をもって、いろんなことを考えながら進んでいきましょう。そうするともうちょっと良い未来になるんじゃないかなと思います。これが遊道の話で。

大人の皆さんに質問したいんですけど、純粋な気持ちで心から遊んだのはいつぶりですかね? なかなか今の社会では出来ないので、子どもたちに今本当に言いたいのはひとつしかないです。「遊べ!」。真面目に遊びましょう。

これからは、お母さんから「もう遊ぶのやめなさい」って言われたら、今、変なフランス人が言ったように「いや、僕は世界を救うための練習をやってるんだ」と言ってください。そうするともっと遊べるかもしれません。ということで以上、ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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