政府によるネット監視について

チャーリー・ローズ氏(以下、ローズ):次に、未来と交通についてあなたが最近夢中になっている輸送システムや自動運転についてお聞きしたいと思います。その前に、先日のエドワード・スノーデンの登場で話題になったことについて話題を移しましょう。セキュリティとプライバシーについてです。これについては、長い間考えてきたことでしょう。

ラリー・ペイジ(以下、ペイジ):もちろんです。セルゲイ(セルゲイ・ブリン氏)がスノーデン氏と一緒の写真を、昨日見ました。皆さんの中にも見た人がいるかも知れません。

私にとって、プライバシーとセキュリティはもちろん大事です。この2つは切っても切れない関係にあり、プライバシーはセキュリティなしには考えられないからです。スノーデン氏の話もでてきたので、セキュリティのお話から始めましょう。

その後、プライバシーについて触れますね。政府が裏であのようなことをやっていて、我々に知らせずにいたということは非常に残念なことです。聞いたこともない政府の活動から、我々が自分を守らねばならないのだとしたら、民主主義なんか成り立ちません。

国民が具体的なテロの情報を把握する必要がある云々ではなく、どういう理由で、どの程度我々を監視しているのか、知る必要があるということです。この件に関しては開かれた議論がされていません。結果として政府は、この一連の出来事を、全て秘かに進めたことがあだとなりました。

ローズ:政府はGoogleに相談に来たりはしなかったのでしょうか?

ペイジ:Googleへ対してではなく、公に話すべきです。でなければ民主主義の意味がありません。ですからGoogle自体が、ユーザーの皆さんを、政府の裏の監視から守らなければいけない立場になりました。非常に残念です。本当に滅茶苦茶な話です。

情報保護により有用なデータが埋もれてしまっている

ローズ:そしてプライバシーについてです。

ペイジ:はい、プライバシーについて、世界が変わりつつあります。今やみんな携帯を持っていて、どこにいるかが分かってしまいます。個人についての情報が大量にあり、非常に重要です。これに関する難しい議論をするのも当然です。

私達はこのことについて時間を費やし、何が問題かを考えて来ました。まず私達がすべきことは、検索履歴や位置情報などが収集されることを知らせ、選択肢を与えることです。

Chromeのシークレットモードは素晴らしい機能です。このような選択肢をもっと人々に提供し、それについてもっと知って欲しいと思います。難しいことではないと思っています。私が懸念しているのは、大切な物を、無用な物と一緒に捨ててしまう危険性です。

例えば、私は声を失ったことがあります。ご覧のとおり、それから回復していません(笑)。あなたと話しているうちに、声が戻ってくるといいのだけど(笑)。

ローズ:私にできるのであれば!(笑)

ペイジ:じゃあ、ブードゥー人形でまじないでもしてもらいましょう。私がこの病気のことを公にすると、たくさんの情報が集まって来ました。似たような問題をもった人たちに、症状についてのアンケートを実施しましたが、医療記録を見ていて思ったのです。

素晴らしいことじゃないか。もし皆の医療記録が匿名で、研究のために共有できたとしたら。例えば研究医が記録をみたい場合など、自分の医療記録にどの医師が、何故アクセスしたのか自分が知ることができれば、自分の症状が何なのかよくわかるようになるかも知れません。そうなれば毎年10万人ほどの命を救えると思っています。

ローズ:もっともですね。

(会場拍手)

ペイジ:ですから私が懸念しているのは、インターネットの情報保護過大により、今の医療記録の現状のようになってしまうことです。大事なデータが埋もれてしまう危険性です。私達はいまだに、しかるべき人々と、しかるべき方法で情報共有すれば、有用な利益となることが分かっていないのです。

ローズ:そのために必須なのは、人々が自分の情報は絶対に悪用されないと確信できる環境です。

ペイジ:はい、この病について、情報を公にするのは怖かったのですが、セルゲイがやったらいいと言ってくれました。実際やって良かったです。

ローズ:反応は予想以上だった。

ペイジ:皆とてもポジティブでした。何千もの人々が同じような症状を持っていますが、今日それについての情報はありません。ですから、共有して非常に良かったです。

自動運転車の実用化はもうすぐそこ

ローズ:それでは未来についてお話しましょう。交通システムについては、どういう取り組みをしていますか?

ペイジ:これについては、ミシガン州で大学生だった頃から不満をもっていました。寒い雪の中でバスを待たなければならなかったので、コストについて調べ始め、交通システムについてかなり熟知しました。

ローズ:それで自動運転車のアイディアにたどり着いた訳ですね。

ペイジ:18年前に自動運転車を開発している人々がいることを知り、夢中になりました。実際にプロジェクトを開始するのは時間がかかりましたが、今は世界をより良く出来る可能性にとても興奮しています。毎年2千万人以上の人が交通事故に遭い、また、これは現在の34歳未満のアメリカ人にとっての主な死因となっています。

ローズ:つまり命を救いたいと。

ペイジ:はい、それに空間を上手に利用し、暮らし自体を豊かにしたい。ロサンゼルスはその半分が駐車場や道路です。他の大きな都市も同じです。変ですよね。それが私達の空間の使い方です。

ローズ:いつ頃、実現しそうですか?

ペイジ:もうすぐそこまでたどり着きました。16万キロ以上の運転テスト済みで、今や完全に自動運転になっています。自動運転車をこんなに早く世に出せることを非常に誇りに思います。

空中を走る自転車

ローズ:でも自動運転車だけでなく、自転車のアイディアもあると聞きました。

ペイジ:はい、Googleではみんなに自転車を提供したいという話になり、本当に上手くいっています。自転車が至る所で走り回り、1日中使われている為、壊れるまで使い込まれます。

ローズ:それを道路ではなくて、空中を通るとか!?

ペイジ:私は、どうしたら人々がもっと自転車を使うようになるのか考えたのです。

ローズ:ビデオを見てみましょう。

ペイジ:はい。こちらをご覧ください。とてもワクワクしますよ。

これが自転車を車道から、お金をかけずに切り離すアイディアです。クレイジーに思えるかもしれませんが、Google・キャンパスのことを考えた際、市当局と働くことを考えた際、自転車の使用率を上げたいと思いこのアイディアにたどり着きました。

どうしたらコストをかけずに、自転車と車を切り離せるかと考え、検索して見つけたのです。これを実際に実用化に向け進めているわけではありませんが、想像力を刺激されます。

多くの人がアイディアを形にできないのはなぜか

ローズ:では最後にご自身の哲学についてお聞きします。「GoogleX」というアイディアがあり、小さな物差しで測れるような進歩だけでなく、それ以上を求めていますよね。

ペイジ:今お話ししたことのほとんどがそうです。例えば経済学上の「追加性」という概念ですが、自分が始めなければ存在しなかったことを実践していけば、より大きなインパクトを与えることが出来ます。

みんなできると思いもしなかったことをやるのです。テクノロジーを知れば知るほど、我々が知らないことの多さに気付かされました。なぜなら、テクノロジーの地平線上には、次にすべきことがどんどん見えてくるからです。テクノロジーについて学べば学ぶ程、次の可能性が見えてくるのです。例えばあの風船が実現出来ると思ったのも、小さな情報を知ったからです。

ローズ:それがあなたの興味深いところです。未来について考える人は沢山いてアイディアを持っていますが、それを実現し、実際に形にする人となるとなかなかいません。例えば、おそらく読んだことがあるでしょうが、テスラ社の例があります。あなたの原則はどういうものですか?

ペイジ:発明だけでは十分ではありません。何かを発明した際、例えばテスラ社は私達が日常的に使用する電力の発明をしましたが、世に出すことには苦労しました。それは他の人により達成され、時間もかかりました。もし2つの力が結びついたとしたら? 革新的な発明の力と、それを商用化し企業として人々のもとに届けるという力が結びついたとしたら? それは世界レベルでプラスとなり、人々に希望をもたらします。

私は「プロジェクト・ルーンで、世界の人口の3分の2のインターネットの無い人々に、期待と希望を与えていることに感動しています。

ローズ:それは企業の別の側面ですよね。ご自身は、企業が変革の担い手であると信じる人のひとり。うまく運営されていればの話ですが。

ペイジ:はい、企業は基本的に悪だと多くの人が捉え、非難を受けていることが非常に残念です。もちろん、多少なりともは当てはまる所もあります。20年、50年前と変わらない古典的なやり方を続けている企業は必要ではありません。特にテクノロジーにおいて、私達に本当に必要なのは、徐々に起こる変化ではなく、革新的な変化です。

成功のカギは「未来を見通す力」

ローズ:私が正しく覚えているとしたら、ご自身の以前、「財産を何かのために遺すとしたら、慈善事業に寄付するよりも、イーロン・マスク氏に譲ると思う、彼なら未来を変えてくれると信じているから」と言っていましたね。

ペイジ:彼は火星に行きたいと考えています。人類存続の為、それは崇高な目標です。企業でありながら、善意でいることを目指しています。私達は同じような目的を共有しています。

Googleにはかなり裕福になった社員がたくさんおり、 皆テクノロジー分野で、大きな利益を上げています。この会場にいる人も、裕福な方々でしょう。世界を変えたいから、働く。より良い世界のために、会社に対し、時間だけではなく、お金も費やす価値を見出す。実際、そうは考えられていません。

残念ながら会社はそうとは捉えられていないのです。会社は私達の労力の大部分である時間のほとんど、そしてお金が投じられている場所です。だからこそ、もっと企業を援助してもいいと思うのです。

ローズ:さてインタビューを終える時によくこの質問をするのですが、どんな心のあり方、どんな心の特質があなたを成功させたのでしょうか? ルパート・マードック氏であれば、「好奇心」だと言いました。他にもメディア業界の人で、同じことをいう人がいました。

そして、ビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏は 「集中」だと言いました。あなたの場合はどうでしょう。何があなたに未来を見せ、同時に現在の改革へ結びつけたのでしょうか?

ペイジ:たくさんの会社を経験し、なぜ長続きしないのかを考えてきました。多くの会社が現れ、潰れていきました。彼らは何を間違ったのか考えた際、共通していたことは、未来を見通していなかったということに尽きます。

ですから私は その点に集中し、未来はどういうものになるか、そしてどうやって創造できるか、そして自分の会社を、その未来に向けて進めることに集中しました。未来への創造を促進することを考えています。

ゆえに、「好奇心」ですね。他の人が考えないようなことに注目し、誰もやったことがないことを試してみる。そこに、本当の価値があるからです。こういったことを積極的に行い、リスクをとることです。

例えば、アンドロイド。はじめはアンドロイドを作ることに躊躇がありました。買収したときは小さなベンチャーにすぎず、私達が実際に手がけているものではなかったので、そこに時間を割くのは良くないのではと考えました。しかし、それは馬鹿な考えでした。そこに未来があったからです。

ローズ:お話し出来て、ご一緒出来て光栄です。ありがとうございました。

ペイジ:ありがとうございました。