IVSは「狩りの場」

奥田:今お伺いしたのはスタッフとしての学びというところで、出会いだったり学びだったりなんですけど、まあぶっちゃけ3日とか4日、自分の本業をほっといて来るわけですよね。そのときの、ここに3日なり4日いるモチベーションって何ですか? これは成長した立場から言ってみてください。

佐俣:すごくシンプルに想像しやすいところでいくと、もともとIVSっていうカンファレンスに登壇者とか出場者として参加する権利がもともとなかった人間として、参加させてもらえるのは間違いなく学びです。「トップのトップ」の人たちがどういう世界観でものを見てるのかって話ですね。

サッカーやってる人だったら当然JリーグとかセリエAとかを見に行くべきであって、動画でも見るべきだし、実際にその場に行って見るべきですよね。その機会をもらえるのが、まず学びの1つ目。わかりやすいですね。

2つ目は、さっき話したマネジメントに近い部分を経験させてもらってるということ。もうひとつあって、それは一緒に働きたいやつを見付けに行くという。これは非常にいいです。

なぜかというと、特にスタッフなんですけど、スタッフに来るような人は木下さんも大湯さんもですけど、自分で何かをしたい人なんですね。そういう人が来てるんで、だいたい何かするんですよ。

やっぱり4年くらいスタッフでいると、「起業しました」とか、木下さんとか僕みたいな「ベンチャーキャピタル作りました」って人がどんどん出てくるんですよ。

一緒にスタッフやってると、正直「この人とは仕事したくないな」とか、逆に「パッと見て目立たないんだけどすごくいい仕事するな」とか……正直、僕にとって大湯さんってそういう人でして、あんまり特別な印象がなかったんだけど、スタッフとして一緒に仕事してると「この人とは一緒に仕事したいな」って。

周りのスタッフ、昔からいる人たちと話すと「大湯さんはこの仕事ぶりだったら安心して任せられるから、こういう人と仕事したいよね」って一致するんですね。

だから僕にとっては、一緒に仕事したい人を探せるって機能はすばらしいなと。この3つがあるから、本業を4日休むというか本業のより濃厚な部分を4日間やりにいくって感じなんで。

奥田:休むっていう感じじゃないですよね。私も3年前に同じ質問を受けて「ここに狩りにきましたから」って答えをしましたからね(笑)。

佐俣:投資が狩猟だとしたら、まさに狩りにきてますね(笑)。

VCにとってIVSが持つ、ものすごい価値とは

奥田:わかりました。木下さんいかがでしょうか?。

木下:僕自身3年くらいIVSには参加させてもらっていて、ベンチャーキャピタリストの仕事をしているという点でいくと、僕はベンチャーキャピタリストに必須なのって資金とネットワークだと思ってるので、その両方がIVSにはあると思ってます。

これはスタッフという形で参加させてもらっていても、それに近いことを非常にダイレクトにある意味お預かりしているという認識を持っていて、上場会社であるとか金融機関を含めて、資金の出し手の方もいらっしゃる。

起業家単独では持てないネットワークをどうやって持つかとか、それは何らかのインサイトを起業家にぶつけることができるかってのがベンチャーキャピタルの価値なので、ベンチャーキャピタリストとしてこの場はものすごい価値だなと思ってます。

なので、受け身で参加しているというよりも仕事だとも思って、前向きに参加しています。

奥田:そこがモチベーションになって、前のめりなポジションについてるんですね?

木下:……そんなところです(笑)。

奥田:はい。

起業家にとっては刺激剤

大湯:一番答えづらい立場だと思います(笑)。僕は起業家なんですよね。事業をやってます。その中でいうと、さっきの流れを汲むと狩られにきている、「狩ってくださーい!」みたいな(笑)。

それは別に狙っているわけではないんですけど、結果的にそうなったんですよね。ちゃんと仕事してて、しかるべき人が評価してくれて、次に繋がりましたというのは結果論ですけど、確かによかったなと思います。

モチベーションという質問だったので、それは正直あんまり意識はしてなかったです。結果的にはそれはモチベーションになるだろうなと思いました。

(2人の)話を聞いていてもう一個あるかなと思うのは、正直起業家は仕事をしたほうがいいんですよ、実際は。ぶっちゃけると。だって、(ベンチャーキャピタルでは)仕事の延長線上だとおっしゃってましたけど、僕の(社長としての)仕事は(別の)仕事なんですよ。これ(IVSでのスタッフ業務)は明確に言えば自分の仕事じゃないので。

じゃあなんで来るのって話なんですけど、僕は2つあると思っています。ひとつは恩返しです。基本的に僕のモチベーションって恩返しが強くて、お世話になった人には何かしら返したいと思ってるので、それは自然に何か手伝ってみたいなって思うし、お世話になった分は返したい。それは個人としてのモチベーションです。

もう1個あると思うのは、やっぱり企業経営をしてると叱ってくれる人もいないし、教えてくれる人も基本いないので。孤独……僕はあんまり孤独でさみしいとは思わないんですけど、「一人なんだな」とは認識するんですよ。

そのときに、自分より先に進んでる人とか、自分より圧倒的にストイックにやってる人とか、大きいことを考えてる人とかに、定期的に触れるのはすごく大事だと思っていて。刺激という意味で。

それこそ、私が印象に残ってるのは國光(宏尚)さんの前回の……國光さんというか川本(寛之)さんがお話ししていましたけど、どんどん調達していって「いいでしょ」みたいな。

正直そこまでの考えはなかったですし、やっぱりそこを目指さないとストレッチしないかなと思ったりするんで、そういう意識の揺り戻しみたいな、どうしても最適化に視点が走りがちなところを「やっぱりこれじゃダメなんだ」って定期的に思い出すという意味で、刺激剤として使ってるというモチベーションです。

「健全な嫉妬」を感じる

奥田:わかりました。今皆さん、20代最後くらい?

佐俣:30歳になりました……。

奥田:30歳になった。やはり同じような世代ですごく意識している場という意味合いはありますか? ここに参加して。20代30代でこれだけチャレンジしている人たちが同じ場所に集まって、かたや登壇者、かたやチャレンジ中みたいな。そういう意識ってあるのか、どうなのか。これは質問にないんですけど、一番聞いてみたいと思うんです。

大湯:そういう意味では僕は答えやすいと思います。やっぱり投資家はあんまり多くないですけど、起業家はいっぱいいるじゃないですか。若くて上場する方とか、そもそも村上(太一)さんは25歳で上場してるわけで。僕は26歳なんですけど、もうムカつきますよね、見てると(笑)。もう早く倒したいみたいな。

奥田:(笑)。私はその空気をすごく感じるんですね。お二人は投資する側だから、この質問に「えっ?」と言われたのも何となくわかるんですけど、それを周りの子たちにもすごく感じる。

大湯:もう登壇者とかはすごくムカつきます……嘘です(笑)。フラストレーションですよね。健全な嫉妬って、DeNAの創業者の……。

佐俣:川田(尚吾)さん。

大湯:川田さんもおっしゃってたんですよ。ムカつくのは健全だと思ってて、同い年で自分より進んでたら「なにくそ」って思うじゃないですか。それって僕は大事だと思ってるし、そういうことを思わないと小さくまとまっちゃうんで、それは本当に意識しますね。

奥田:そうですよね。私もヘルシーな嫉妬って言葉はずっと大好きで、20年ほどそういう概念で生きてるんですけど。だから、私自身もそういう人が集まる女性の起業家の場を作ったりとか。嫉妬の中でもヘルシーであることが大事で……。

大湯:そうですね。変なことするんじゃなくて、自分が頑張ろうっていう。

奥田:「あの人に嫉妬する自分」から「ああ、ここに行きたいんだ」っていうことを考える場として、こういう場はすばらしいんじゃないかなって思います。

LaunchPadのレベルの高さ

奥田:同じような質問になってしまうんですが、スタッフで参加した後の考え方・仕事の変化という質問です。これまでにほとんど答えていただいているような気がするんですが……じゃあここに絞って答えていただけますか? スタッフとして参加した後の仕事に対する変化ってありますか?

佐俣:さっき奥田さんがおっしゃったように、細部に宿るみたいな話で。スタッフ仕事で並べるのを徹底できるやつとか、ひとつのものにどれだけ集中できるかとか、Launch Padのスタッフやってて本当に思うんですけど、すごく伸びる起業家ってLaunch Pad開始10分前の集中力って異常なんですよね。

何話しても絶対聞こえてないってくらいブツブツ言っているんですよ。「これをやる人は伸びるんだな」みたいなものはすごく見れたんで、一瞬見て「この人はここがいいな」みたいなのをパッと見分けることができるようになったのは、IVSの影響なのかなと。

本当にちょっとした所作で僕は投資判断するようになったんですけど、それはIVSでいろんな人を見させてもらっているのに影響受けてるなと思います。

奥田:その視点はとても面白いですね。面白いというか、私もそう思ってました。Launch Padに登壇する直前の人たちを見て、ある程度わかるんですよね。

佐俣:明確に「この人勝つな」っていうのが手に取るようにわかりますね。毎回10人以上の起業家の方が来て、僕は100人弱くらい登壇する前にお会いしてる。明らかに集中力がずば抜けてる人が、毎回2人くらいいるんですよ。

それ見ると、「この人は勝負所でこれができる人なんだな」と。なので逆に安心するというか、なるほどと。修羅場って、そんなめったにないんですよ。それが10人とかに同時に訪れてる。しかもすごく優秀な人たちが。

そういうのって、めったにないんですよね。天下一武道会なんて実際にはめったにないので、起業家にとって。

奥田:逆にいうとそこまで集中力を極めていかないといけない場っていうのは、たくさんのピッチング・イベントがある中ですごく珍しいというか、IVSならではかなって気がします。

野心を思い出せる

佐俣:小林さんもおっしゃりますけど、IVS当日の登壇者が来たあたりのピリピリ感ってすごくて、本当にピリピリしてます。スタッフも当然それに影響されてピリピリしますし、あの緊張感って現場に来ないとわからないですね。動画だけ見ててもそんなにわからないので、普段いらっしゃってる皆さんもぜひ朝に来て見てほしいですね。このピリピリ感を。

奥田:直前に入るとわかりますもんね、スタッフじゃなくても。どうぞ。

木下:Launch Padの繋がりでいくと、結構プレゼンイベントって多いですね。特にこの2~3年のベンチャーイベントなんかで増えたと思ってまして。でも、Launch Padほど集中力を持って……例えば離席する人はほとんどいない。そういう集中力でやってる場ってのはない。

奥田:朝の7時台ですよ、集合(笑)。

木下:だからこういう空気感の作り方ってのは、IVSはすばらしいなと思いますね。やってる中での学びでいくと、とにかくひとつひとつをちゃんとやるってことの大事さを本当に感じる場ですよね。

結構ベンチャーって大きい会社よりは関係者が少なくなるんで、なあなあになりやすいんですよ。そういう中でいくと、場のクオリティをめちゃくちゃこだわってる。エクセレントなんで、そういう場に触れるってのは新しいインサイトをもらってるなと。

奥田:わかりました。

大湯:IVSを通して、前と後で仕事がどう変わったかってことですよね。さっきの話とちょっと重複するんですけども、やっぱり細かいことの大事さとかを再認識する部分は大きいなと思いますね。

その上で、仕事というかマインドになっちゃうんですけど、自分が企業をやっていく意義とか意味とかを今一度問い直される場なので、忘却曲線じゃないですけど視座がちょっと下がりはじめて、また上げて下がりはじめてって、絶対時間とともに事業を細かくやってればやってるほど、細部に入ってくるんですよね。

そうしていくと、最適化してそのときのオペレーションはきれいになるけど、「何の野心でやってたんだっけ」って忘れがちになるので。そこを、(IVSから)帰ってきた直後では一番高い状態からもう1回スタートできるってのは、実際の仕事のしかた、考える施策とかにも少しずつ影響が出てるんじゃないのかなと。

その積み重ねは、最終的にはすごく大きな発射台というかLaunchになるんじゃないかと思ってます。