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IVSスタッフの起業家としての成長(全3記事)

まるで天下一武道会!? ITビジネス界の雄が集うカンファレンス「IVS」の舞台裏をスタッフが語る

国内の著名ITベンチャー企業の経営陣が列をなして参加するクローズドカンファレンス「IVS」。スタッフとしてこの豪華イベントを支え続け、裏側を見てきた佐俣アンリ氏、木下慶彦氏、大湯俊介氏の3名が、IVSの知られざる裏側と、そこから得られた学びについて語りました。(IVS 2014 Fallより)

IVSスタッフ 兼 起業家として

奥田浩美氏(以下、奥田):今回のインタビューは、「IVSスタッフの成長」というテーマでこの3人をお招きしています。ANRIの佐俣アンリさん、Skyland Venturesの木下(慶彦)さん、Connehitoの大湯(俊介)さん。ということで、まずはこのお三方にそれぞれのお仕事の内容についてお話ししていただきたいと思います。ではアンリさんから。

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):はじめまして、佐俣アンリと申します。ANRIというベンチャーキャピタルファンドをやってまして、ベンチャーキャピタルとしてファンドサイズが20億円ですね。投資先が25社。まさにIVSを運営してるIVP(Infinity Venture Partners)さんと同じベンチャーキャピタルをやってまして、特に創業直後の会社に投資することが多いです。よろしくお願いします。

木下慶彦氏(以下、木下):Skyland Venturesの木下でございます。この後で自己紹介しにくいですが(笑)、僕も独立系のベンチャーキャピタルをやらせてもらってます。IVSの特徴っていうのは、佐俣アンリさんもそうですし私もそうですけど、独立系ベンチャーキャピタルをやってるメンバーであるとか、若手起業家がこうやってスタッフとして関わっていくというのがあるのかなと思ってます。

僕も3年前に参加させていただいて、2年前に独立して、今は5億円のベンチャーキャピタルファンドを運営して12社に支援してます。よろしくお願いします。

大湯俊介氏(以下、大湯):よろしくお願いします。Connehito株式会社の大湯と申します。僕はベンチャーキャピタルファンドではなく、自分で会社をやってます。どんなサービスをやっているかというと、女性の疑問を解決する「mamari.jp」というウェブサイトと、こちらも女性の疑問解決なんですけど、Q&A形式の「ママリQ」というアプリを提供してます。

現在たくさんの女性の方に使っていただいていて、女性のライフシーン・ライフイベント、結婚だとか出産だとか、そういう領域における疑問や問題解決をしていくサービスをいろいろ作っています。これからいち起業家としてより大きくしていこうと、スタッフで参加させていただいています。よろしくお願いします。

奥田:ありがとうございます。ここにいらっしゃるスタッフの方って、(IVSの経験が)最低でも何回……5回?

大湯:私は5回。

木下:僕は6回、7回……。

佐俣:10回くらいだと思います。

スタッフが語る、IVSとの出会い

奥田:ですよね。IVSにもその回数関わられて、まずお聞きしたいのですが、IVSのスタッフで参加することになったきっかけをそれぞれ教えてください。

佐俣:僕はもともとは自分でベンチャーキャピタルをやる前から参加させてもらっています。インターネット業界に近いところにはいたので存在は知っていて、前々職を辞めて前職のベンチャーキャピタルファンドに入るときに「とりあえずIVSに行ってこい」と。

僕も行きたいですし、(当時の)上司の松山太河さんもとりあえず行ってこいと言うので、肩書きも何もないまま無職に近い状態で駆け込んだという感じですかね。

奥田:つまりIVSの前は独立をしていないというか、スタッフの期間に(独立した)という形ですよね。

佐俣:そうですね。本当に、IVSに参加・登壇される経営者の方の知り合いがいないような状態で、まず参加させていただいたのが始まりです。

奥田:木下さんは。

木下:僕は、IVSの存在自体はかれこれ5年くらい存じていた形ですね。ベンチャーキャピタルの仕事を始めた当時から認識していて。そのときに500名くらい、今では750名ということですけど、それくらいの経営者のカンファレンス、集まりだと聞いていて、あとは招待制であるとうかがっていたので、「これどうやったら行けるんだろう」と思ってたんですけど。

たまたまIVPの小林(雅)さんとパーティーでお会いする機会があり、当時僕は独立系のファンドにいたんですけど、そのときにお話しして「どうやったら行けるんですか」と言ったら「スタッフやらないか」と言っていただいて。で、そこからIVSにはずっとスタッフ参加をさせていただいています。

奥田:なるほど。大湯さんは。

大湯:私の場合は、お二人と違ってまったくIVSを知らなかったんですよね。本当にもうIVSの名前すら知らなくて。そのときに企業を立ち上げて、頑張ってサービスを作っていこうとやっている中だったんですけども。

奥田:もともと、ITの分野で起業をしようと思っていた?

大湯:そうです。起業して最初のサービスを作ってたんですけど、何も知らない中で、やっぱりちょっと有名にならんとアカンのじゃないのかなと考えて(笑)、イベントを検索していたら「IVSのLaunch Padって有名なプレゼン大会があるらしい」と知って、応募したんですね。

僕は応募したときに1個目のサービスを……今は2個目のサービスをやっているんですけど、1個目のサービスで応募したらコテンパンに「ダメですね」って感じで、そのときはLaunch Padに登壇できなかったんです。でも、最後に言っていただいたのが「見込みはありそうだからスタッフだったら来ていいよ」と。ぜひ、ということで参加したのが1回目なんですけど、そこが最初のIVSとの出会いでしたね。

奥田:じゃあ3年前くらいの話ってことですね。

大湯:そうですね。

IVSのイメージは天下一武道会? 仮面舞踏会?

奥田:なるほど。(2人は)IVSをよく知ってた、(1人は)まったく知らなかった。自分が参加する前には、IVSはどんなイメージだったか教えてください。こちらからいきましょう。

大湯:そういう意味では僕はゼロ知識でしたので、なんかよくわからないけど偉い人がいっぱい来るんだろうなっていう(笑)、本当にミーハー気分だったんですよ。印象は本当にそれでしたね。IT界の力を持ってる人たちが集まる、天下一武道会みたいなイメージでした。

奥田:なるほど(笑)。木下さんは。

木下:招待制カンファレンスというのは伺っていたので、非常に狭い場というのは思ってましたし、スタッフであれど自分自身が参加する機会はないかなと思ってたんですけど。行ってみたときに感じたことでは、非常にフレンドリーな場だと思っていて、トップレイヤーにいる起業家達はみんなすごく交流が深いですよね。そういう場に驚いたので、事前のイメージはすごく変わりました。

奥田:なるほど。どうぞ。

佐俣:秘密のセレブパーティーですね、イメージは完全に。

大湯:仮面舞踏会(笑)。

佐俣:まさに仮面舞踏会みたいな、こういうの(仮面)をしててシャンパンを飲んでるみたいなイメージでした。たまに紛れ込んでる友達がポロッと「トイレに行ったら隣が笠原(健治)さんでした」みたいなことを言ってて、今でも遠い存在ですけど、当時の僕にとっては「バッティングセンターに行ったら隣でイチローが振ってた」みたいな(笑)。

奥田:(前回出演のスタッフ紹介ビデオと)ちょっと言い方変えましたね(笑)。

佐俣:そういう感じなんですよね。そういう怪しげなパーティーっていう印象はありました。

奥田:私は、周りの人たちが3日間呑んだくれてるパーティーみたいなイメージがあって(笑)。イメージというより、実際にそれがあることがこのカンファレンスのすごさというか。真面目なことを話しつつちゃんとカジュアルな場を設けて、そこで人の繋がりを、何層もぐるぐると3日間回すみたいなイメージなので。だから今の話を聞いていてとても面白いなと(笑)。

背中で見せてくれるIVSメンバー

奥田:そこの場の中に入ってからの小林さんのイメージと、入る前の小林さん個人のイメージをそれぞれ教えてください。

佐俣:僕は本当に、秘密のパーティー仕切ってる怪しい人みたいな(笑)、この人が裏業界、マフィアの参加権持ってる人みたいなイメージがあって。実際に参加してみて、この業界をちゃんと作っていって、そこから次の世代を作っていく。そうしていくプラットフォームになればということをひたむきにやっている方が小林さんだなと。

奥田:そうですね。体育会系のコーチだったり監督だったりっていうイメージが強いかな。

佐俣:基本的にプラットフォームみたいなものだと思ってて、独自色を出していくんだけど作り過ぎないというか。いち私企業のパーティーにしないというのを一生懸命考えてるなというのが、自分で運営側(登壇者)に上がってみての印象ですかね。

奥田:木下さんは、前と後のイメージは。

木下:前は、正直運営している人が誰かっていうのが(イメージが)なかったですね。自分とは(歳が)10個上くらいなので、こんなこと言うのはおかしいんですけど、「金持ち父さん」みたいなイメージは結構あって。

奥田:(笑)。

木下:ビジネスを教えてくれる人って、別に付きっきりで教えてくれないですよね。それは、僕も最初の会社に入って以降3年半はベンチャーキャピタルの仕事を勤めながらやっていて、その後は自分自身独立してファンドをやっていたりしてるんですけど、IVSの運営メンバーは背中で見せてくれる人だなと思っていて。

こういうすばらしいコミュニティを作って、それを次の人たちにも伝えていく。そういう意味で……金持ち父さん。

奥田:金持ち父さん(笑)。だんだん表現が難しくなってきましたね。どうぞ。

大湯:じゃあとっておきのを(笑)。そういう意味では、私はLaunch Padの応募から入っているのもあって、最初はどっちかというと、ロボット的なロジカルモンスターみたいなイメージだったんですけど。

奥田:審査する側ですからね。

大湯:なんか普通じゃないね、みたいな。実際参加してみて思ったのは、すごく情に厚い人だなって。それこそスタッフとしてしっかり教育の場を作ろうとか、頑張った人にはReward(報酬)をしようとか、スタッフにも決起集会(IVS開催1ヶ月前に行うスタッフ参加予定者のための飲み会)をちゃんとやって士気を盛り上げていこうとか。

人の心を汲んでやっていて、そこを考えてる人なんだなというのは良い意味で予想外でした。もっとクールに、オペレーションとしてやってると思ってたんですよ、スタッフの業務って。でもそうじゃなくて「この場が教育になるように」っていうのを、メリットとかじゃなくて好きだからやってるというのをすごく感じて。それはすごく、人間なんだなというのを感じました(笑)。温かい感じの。

木下:フェイスブックとかがあるので、昔よりやってる人の顔が見えるようになったというのもあるかもしれないですね。

奥田:ずっと作り上げてくる過程が見えますよね。あと私はやっぱり、みんなエコシステムって言うけれども、今ある人たちを組み合わせる形じゃなく、小林さんの場合ってこれから入ってくる次の世代の人までの設計図を描いてるんじゃないかな、ってすごく思っています。

つまり、いま小学生であったり、もっというと生まれていない子であったり、(生まれたばかりの)佐俣さんのお子さんであったりみたいなところが、エコシステムの中にどういう潮流で入ってくるんだろうみたいなことを、意識的なのか無意識なのかわからない状態でひたすら回しているイメージがすごくあります。

IVSスタッフとして学んだこと

奥田:では、次の質問に変えます。今度は、スタッフで参加してというテーマで話していきたいと思います。このInfinity Ventures Summitに参加してどういう学びがありますか、あるいはありましたか? 佐俣さん。

佐俣:いろんな学びがあるんですけど、一番貴重な学びというのはいわゆる組織を束ねていく過程とか、組織を作っていく、何かを作るみたいなところをどうやればいいのかが一番大きい学びです。

理由はすごくシンプルで、僕は1人でファンドをやってまして、現状自分で組織は作ってないんですね。ただ、自分の投資先では最大でメンバー100人とかの会社をゼロから一緒に作ってるんですけど、自分が主体で作ることはないんです。

僕が一番学べたことは、スタッフとして今参加してる中で最古参に近いですけど、新しく参加したメンバーからどんどん学んで、むしろマネジメントするメンバーを作りたいっていうことです。

もともと僕は一番新人で入って、だんだん束ねる側になって、最近は束ねる側の人を見つけてきて「この人は束ねられそうだね」と期待することをしているんですけど、そういうのをどうやって複数のレイヤー作って組織立てていくか。

「絶対に時間を厳守する」「わからないことはちゃんと聞く」みたいなカルチャーをどう作るかというのを学べてるというのが、僕にとって非常に貴重な経験なんですね。投資家ってなかなかそういうのは学べない。いろんな学びがあるんですけど、僕にとってはこれが一番ありがたい。

奥田:わかりました。では木下さんいかがでしょうか?。

木下:僕が思うには、場を良くしていく、目線を上げていくというのがすごく重要で。僕もベンチャーキャピタルという仕事をしてると、起業家と一緒にその会社を……今10人のところを20人にして売上が伸びる、サービスが伸びるならばそう作っていかなきゃならないってときに、IVSですごく目線を上げてもらってますね。

それは経営者、ゲストスピーカーで来られる方の目線とかサービスがどんどんグロースしていくのもそうですし、IVS自体の規模も数年前は500人くらいだったんですけど今回は750人と場が良くなって、スタッフも倍増してたりすると。それでクオリティも落ちてないと思ってるので、そういう上に上がっていく感じというのを、一緒に運営させてもらってるなと思います。

奥田:わかりました。大湯さんいかがでしょうか?。

大湯:オチみたいになってるんですけど(笑)。(2人には)マクロな視点から言ってもらったんで、私個人としては小さいことというかミクロな視点をよく考えていて。

IVSのスタッフ業って外から見たら何やってるかわからないと思うんですけど、本当に小さいことをやっていて、例えばみんなの名札を詰めるとか、クロスをきれいに掛けるとかやるわけですよ。社長とかやっててもその仕事を全部やるんですけど、その中でそういう仕事に対して真摯に打ち込んでる人かそうじゃない人かっていうのは、見てると明確にわかる。

そういう小さいことを真摯にできるかっていうのは人として大事なんだなって、自分でやる中でも見てる中でも感じて。それはすごく勉強になるなと思ってます。

要は、一見くだらない仕事でもちゃんとやることが次に繋がっていくし、できない人はそれまでだと思ってるので。そういうのを今一度、半年に1回ここに来ることで自分でやったり見たりして学ぶのは、来る意義が深いというのは自分なりに思ってますね。戒めの場というか、そういう意識をちゃんと忘れないようにする学びになってると思ってます。

奥田:わかります。ひとつの仕事の研ぎ澄まし方というか、同じ何かを並べるにしても「魂が細部に宿る」っていうのはビジネスの基本の基本だと思うんですけど、それを見出だせる場でもあるし、もっと言うとそれをちゃんとやっている人かどうかを見極める力をつけるってことですよね。すぐわかります。

私も実は25年このような仕事をしていて、今や自分のほうが講演する立場で行ったりゲストで行ったり、一方、受付のいちスタッフで座ってる立場もあって。たくさんの端と端の経験をすることですごく学びが多いので、いつもスタッフでやってくるこのIVSの場というのは、その経験の中でも「端がどこなんだろう?」っていうくらいすごく幅があるので、とてもいい経験になってるなと思います。

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