人材選びで重視するのは、過去の仕事関係者からの声

ベン・シルバーマン(以下、ベン):候補者と過去に仕事をした人にその人のことを聞くことがとても大切だと思います。そしてそれは彼らの正直な意見でなければなりません。そして私達はこれにとても力を入れて、その候補者と一緒に仕事をするということがどういうことか把握するようにしています。

レジュメに書いてあることが本当かどうか確かめる為ではありません。例えば面接で、「ジョナサンを知っているよね。私も彼と友達なんだ。彼にあなたの最も優れたところと改善が必要なところを聞くとしたら、彼はあなたのことをどんな風に言うと思いますか?」と聞きます。

そうすることで、私と候補者の過去に社会的繋がりがあり、嘘をついたりごまかすことが出来にくいということをよく理解してもらいます。

そして候補者と過去に仕事をしたことがある人に、「その候補者はあなたが一緒に働いたことのある人々の中で、優秀なトップ1%か、5%か、10%にランクしますか?」と聞きます。

そして、一緒に仕事をしたことがあるあなたから見て、この候補者の優れたところはどこでしょうか? と聞くのではなく、彼はこんなことが得意でここが優れていると自分のことを言っていましたが、あなたはそう思いますか? と聞きます。このように過去の仕事関係者から候補者を真剣に探っていくことがとても重要だと考えます。

新入社員とどうやって文化を共有するか

ジョン・コリソン(以下、ジョン):過去の同僚や上司に候補者のことを聞いて回ることは最初はハードルが高いかもしれません。しかし、とても有益な方法です。

その候補者のことを聞くと聞かれた人は悪いことは言おうとはしないので、一緒に仕事をした中でトップ何パーセントに入りますか? と聞くのは良い方法だと思います。「あの人は素晴らしい人ですよ」とただ言われて電話を切られないように、15分はその候補者について話が出来るようにしています。

サム・アルトマン(以下、サム):では最初に人を雇い、どのようにしてその人達に効率良く仕事をしてもらえるように、文化に馴染んでもらえるようにしましたか? 人を雇うことも大変なプロセスですが、雇った後に彼らにハッピーに効率的に仕事をしてもらうのも大変だと思います。

ベン:まだ始めたばかりの頃と今とは違いますが、初めて雇った時にはもう待ちに待った仲間だったので、このパソコンを使ってね、全部準備してあるから心配しないで、この仕事をやって欲しいんだと手取り足取りでした。

始めたばかりのころはベッドルームが2部屋あるアパートからの出発で、生活を共にしましたので自然とお互いを分かり合うことが出来ました。文化を守ってもらう為に特別にしたことはありません。補足するなら、将来どんな風になりたいかは常に語っていました。

入ってすぐに課題を渡されて、これに取り組んでくださいと言われれば、その目の前の課題だけに集中してしまいがちですので。会社が成長するにつれ、そのプロセスは個人同士の語りの枠を超えて、正式なものにしなくてはなりません。

教育の基本は「相手を知る」

ベン:そこで常に皆それぞれ、最初に会社を訪れた日、面接に来た日、そして入社30日後の様子を気を付けてみます。

「マネージャーの名前を把握しているか?」「チームの仲間を集めて会議をしているか?」「会社の構造を大体把握しているか?」「会社の優先事項を理解しているか?」等です。

実際新しく入った人が早く馴染むように研修するプログラムがあります。そして新しいメンバーの近くで働く人達に、「彼らは上手くやっているか? 早く馴染めるようにもっと何かしたほうがいいだろうか?」と聞いています。

もししばらく経っても彼らがまだ上手く出来ていない場合は、ひとつ目は新しく雇った人をしっかりサポート出来ないのであればむしろ新規雇用することをやめる、ふたつ目は新しいメンバーをサポートすることが出来る方法を新しく考える必要がある、のいずれかです。

新しく雇った人を良く知ろうとし続けます。彼らはどんな夢を持っているのか、どんな仕事の仕方をするのか、どんな風に周囲から認識されたいと思っているのか、静かな中で仕事をしたほうがはかどるのか、朝型なのか夜型なのか、等々を知ろうとすることはメンバーを会社の為だけではなく個人として大切にすることだと思います。

新人を戦力化する2つの方法

ジョン:会社がどんなステージでも大切なことは2つあると思います。まずは新しく雇った人が早く効率的に仕事が出来るようにすること。つまり、解決すべき課題を見つけ、それを解決する彼らがどのようにそれを解決しているか判断します。

私達がエンジニアを雇った時、これを解決して欲しいと課題を1日目に出しました。ビジネス担当者を雇った時にも同じように課題を1日目に提示しました。優しくしっかりとケアすることで上手く早く馴染むこともあるでしょうが、私達は崖から突き落として彼らを鍛えます。期待することを明確にし、その期待にどれだけ早く応えてくれるかをみます。

2番目に、新しいメンバーになるべく早くフィードバックをします。特に文化に適応することに関してです。会社の色が強ければ強いほど、外から来た人がそれに適応するのは簡単なことではありません。

Stripeの文化は、席が隣でもお互いヘッドフォンを付けて仕事をしていて、用事があればチャットで済ませる文化ですので、それ以外の文化から来ると……。

パトリック:「普通」の職場からですね。

ジョン:その通り。なので、仕事内容から些細な仕事環境適応まで、なるべく早めにフィードバックをすると新しいメンバーはより早く効率的に仕事が出来るようになります。

これが良い、あれがダメだと人に言うのは好きではありませんが、それを言うのは新しいメンバーが効率的に仕事が出来るようにする為の雇った側の責任です。

採用時には能力だけでなく文化に合うかもチェックすべき

サム:ではスケールした後の話に移りましょう。雇い方、チームのマネジメントの仕方が数名でスタートした時から現在と比べ大きく変化したポイントを教えてください。

ベン:たくさんのことが変わりました。私達は組織のしがらみがありながらも、その中でチームの皆が自由に、好きなように自主性を持って素早く仕事が出来るようにしたいと思っています。

つまり、スタートアップの中にたくさんのスタートアップが詰まっているようなイメージです。組織として固められた状態ではなく。言うのは簡単ですが、なかなか難しいことです。最終的にはそれぞれのチームが仕事をするのに必要な資源へ自由にアクセス出来るようにしたいです。

それぞれのチームが何を優先事項として、それを数値化する方法も知っている。そんな風に独立したチームで動けるようにしたいです。そうすることで、マネジメントの観点から言ってもきちんとチームが何をしているか見えますから。

自主性を持って仕事をするチームがそれぞれ動いて統率がとれなくなるのは困ります。すべてのチームが優秀なデザイナー、エンジニア、ライター、そしてそのリーダーを抱える自己充足な自主性を持つチーム制にしたいと思っていますが、なかなか難しいです。

雇用については少し違って、メンバーが増えるにつれて彼らがそれまで一緒に仕事をしてきた人々とのネットワークに繋がったことが大きな変化です。14番目か15番目に雇った人がプロのリクルーターで、過去にスタートアップでも仕事をしたことがある人でした。

彼女はAppleのような大きな会社でも仕事をした経験がありました。彼女が、候補者を能力でスクリーニングするだけではなく、会社の文化にとってよい人材かどうかを見るように教えてくれました。振り返るととても貴重な経験でした。

時間軸によって採用すべき人材は変わる

パトリック・コリソン(以下、パトリック):スタートアップをやっていく上で、私を含めた多くの創業者が驚かされるのは、時間軸が変わってくるということだと思います。最初に始めたころは大体1か月先くらいのことまでしか考えられません。

それが時間が経つと共に、創業から1年経てば1年後を、創業4年の時点では4年先のことを考えることが出来るようになる。とても速いスピードで先のことを考えられるように成長出来るのです。

そしてこれが雇用の仕方に影響を与えます。初期段階では効率的に仕事が出来る人をなるべく早く雇わなければならない。長期的に付き合える、長期的に見て雇うべき人を選出するような時間はないのです。とにかくスピードと効率を求めます。

しかし創業2年、3年も経つと、仕事を早く効率的にこなすけれども長期的には残らない人に投資するよりも長期的に付き合える人に投資することが理に適ってきます。

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