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“想い”が事業を作る?急成長する企業に共通するものとは?(全3記事)

年収や優秀な仲間…何でも揃っているGoogleで得られなかったもの 退職しスタートアップの道を選んだ起業家の決断のわけ

「Cross the Boundaries」を旗印に、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)が2024年も昨年に続いて京都で開催されました。今回のセッション 「“想い”が事業を作る?急成長する企業に共通するものとは?」では急成長中の有望スタートアップの経営者が登壇。本記事では、Googleやfreeeを経験した起株式会社Magic Moment 代表の村尾祐弥氏が、外資とスタートアップの違いを語ります。

Googleとfreeeを経験してわかった、外資とスタートアップの違い

高野秀敏氏(以下、高野):次は村尾さんですね。村尾さんは日本の会社とGoogle、そしてfreeeはもう大成功されましたけども。そういう意味で外資系企業とか、スタートアップの転職の経験もある。そこに基づいて、外資に行くのがいいのか、スタートアップに行くのがいいのか、どっちが経験を積めるのか。こういうキャリアの話を今もよく聞くんですけど、そのあたりで何か所感があればシェアをいただけますか。

村尾祐弥氏(以下、村尾):そうですね。あんまりキャリアを積み重ねて打算的に……。打算的と言っちゃまずいけど。

(一同笑)

狙ってキャリアを積んできたわけじゃないので。そういう方には僕の話はまったく参考にならないと思うんですけれども。外資とスタートアップの違いで、明確に感じたことがいくつかあるんですよね。外資は何でもあるんです。Googleにいたので、自動販売機はボタンが点いていて、そのまま押したら出てくるし。お腹空いたなと思えば朝食のヨーグルトもバナナもあって。

お昼に「ランチに行こうぜ」って行ったら、そんじょそこらのレストランでも出てこないような、めちゃくちゃおいしいビュッフェが出てくるわけですよね。

組織が大きすぎて、自分の成果が見えづらい

村尾:だけど、(会社の規模が)大きすぎて、自分の仕事の成果がどこに出ているかがよくわからないんですよ。

「本当にこれは自分の成果だろうか。いやいや、Google AdWordsがすごいだけでしょ」ということだったり、「YouTubeのユーザーが多いだけだよね」ということがあって。自分の成果の音がどこで鳴っているかがまったくわからない感じ。

だけど、10万人を動かしているシステムとかオペレーションは深く学べるんです。学ぼうと思っている人は学べると思っています。

僕はすごく興味があったので学びになりました。自分がやっているイニシアチブがグローバルで認められたみたいなことがあると、そのシニアのVPとかがすぐ飛んできて「お前、暴れているらしいけどどうやってんだ。ぜひ説明してくれ」とか言ってくれる会社だったので。そういう人を通じていろんなことを学べました。

だから(外資は)ほぼすべて揃っているんですけど、自分の成果の手触り感がないんです。スタートアップに縁があって転職したんですけど、(オフィスに)ペンも何もなかったんです。

入った会社もすごくイケてるスタートアップだったと思うんですけど、GoogleでシニアVPとかから学んでいた自信があったので、Howとかの話で本当の意味で参考になるなぁと思ったことはあまりなかった。だから切り替えて、Googleじゃできなかった手触り感のある、結果を自分で出すとか、責任を背負い切ってこの会社を絶対勝ち筋に乗せるとか、そういうことができるのは、Googleと違うところだなと思いました。

「本当にビジネスマンとして学べるか」と言ったら、総合的に見てGoogleのVPを超える人はなかなかいなかったんです。もちろん個別にはめちゃくちゃすごい というのはあるんですけどね。だけど、100人以上のメンバーでそれを一生懸命に達成するという責任を負えて、世の中を変えていく・時代のネジを巻く みたいなことが、僕にとってはとてもやりがいがあったんです。

だからその経験を手に入れたことが、何よりも代えがたかったかなと思います。

恩人に誘われた翌日にGoogleに辞表を提出

高野:ありがとうございます。ちょっとそこに近いところで、いわゆるGoogleみたいな有名な会社からスタートアップに転職する時に、いろんな選択肢が当時もあったと思うんですけど、何が決め手になったんでしょうか。

村尾:そうですね。マレーシアの会社から誘われたり、それこそ大企業からもお声掛けいただいたり、選択肢は確かにあったんですけど。結論は人で決めていました。

Googleに入ってすぐ、私の動き方や結果を見て昇格をさせてくれた恩人がいて。その方のおかげで、僕はグローバルのさまざまなリソースにアクセスできたり、いろんな方、いろんなチャンスをテイクできたかなと思っているんですね。その恩人は野澤(俊通)さんという方なんですが、あまりにも僕にとっては大きな存在でした。

野澤さんは元freeeでもあり、Googleでもあり。その方が仮にGoogleからどこかに転職をして、私を求めてくれるならば、人生で1回だけ「有無を言わずどんな会社だろうが行く」と言っていました。ちょっとくさい話に聞こえますけど真剣で、(Googleで)それだけのことをさせてもらったのは、この人のおかげだとずっと思っていたんですね。

なので、freeeに転職した野澤さんから飲み会に誘われて「今来てくれないか」と言ってくれたので、次の日に辞表を出したんです。(その後)1ヶ月くらいは、Googleを退職する時の夢を見るんですよ。良い会社だったので大好きだったし、もっともっとここでやりたいって思いもあったんですけど。

でもそれ以上におもしろそうだなと思ったのと、その人が求めてくれたので。結果すごく大正解だったなと思っています。

「これで正しかったのかな」とGoogleの夢をみることも

高野:もうすでにシェアいただいた部分もあると思うんですけど、実際に転職してみて良かった点、ちょっと課題だと思っている点はありますか。

村尾:転職して全部が良かったですね。先ほどの自分が責任を持って、みんなが驚くような結果を出せたこともうれしかったですし。それによって会社の役に立つし、社会も変わっていくので、何もかも手に入れたのではないけど、満足しています。

課題感はほとんどなくて。私は子どもが4人いて家族6人で、freeeもがんばってくれたんですけど、Googleの年収とはもちろん比べるまでもないくらいでした。当然Googleでトップセールスやトップ営業チームを率いていて、給料も高かったんですけど。

月にいくら使っているのか、どういうところで飲んでいるのかとか、生活のサイズって人それぞれいろいろあると思うんですけど、日本ってそのサイズをすごくコントロールしやすいじゃないですか。

コストも安いし低いし、自分がやろうと思ったらつつましく幸せに暮らせるわけで。その中で挑戦ができるんだったら、何も失うものがなかった。

ただ、自分がfreeeで軌道に乗るまでは、すごく短かったですけど「これで正しかったのかな」と思う時もありました。Googleのバッジで(オフィスの)鍵が開かなくなる夢ばっかり見るぐらい、愛していたので(笑)。

外資、スタートアップを経て起業したわけ

高野:嫌で辞めたわけじゃないからですよね。そういった意味で、日本の会社、外資、スタートアップと経験を積んだ中で、なぜ起業されようと思われましたか。

村尾:これも人なんですけど、起業できるなんてまったく思ってもいなくて。高野さんともその頃、よく話していましたけど、ぜんぜんアイデアもなかったんです。

でもGoogleでGreenteaという世界で2ヶ国だけ選ばれるプロジェクトに入れられて。私とオーストラリアの女性のマネージャーが選ばれ、あるプロダクトを触らせてもらったんですね。社内の営業ツールだったんですけど、時を破壊するみたいな、とんでもないなぁと思って、なんか時代が変わる気がしたんですよ。それを今、Magic Moment のプロダクトに活かしているんですけれど。

そうなった時に、「確かにその経験ってすごくレアだよな」って、自分でも思っていたんです。

しかもその後freeeで、スタートアップがまだ黎明期だった時代にSaaSでこれだけの仕組みを作って、一気に伸ばした経験は「すごく稀有なんじゃないの」と言っていただけて。初めて「うーん、そうかもな」と思ったら、気づいたら起業していたんですよね。

高野:すばらしい。私は今まで1万人くらい会ったことがあるような気がするんですけど、毎年「いつか起業したいんですよ」と言う方がけっこういるんです。

村尾:そうなんですよね。さっき秋山さんもおっしゃっていましたけど、投資を受ける・受けないもそうだと思っていて。営業も同じだと思うんですよ。取りたいと思って営業すると、ほぼ決まらない。追いかければ追いかけるほどチープな感じになってくるんですよね。

やっぱり価値を作って、興味を持ってもらえると、こちらとしてもすごく一生懸命話ができるじゃないですか。なので、投資いただくことも起業も同じかなと思っていたんですよ。価値を作りたいと思って作り出すと、誰かが見つけてくれる と。投資家も株主もすごく少なくて、本当に出してほしいと思った人が、たまたまあまり出さない投資家の方々だったんですね。

DCMベンチャーズやDNX Ventures など、海外のファンドが主なんですけど、逆説的に、僕はずっと営業をやってきたので、投資機会にも恵まれたなと思っています。

高野:ありがとうございます。

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