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“想い”が事業を作る?急成長する企業に共通するものとは?(全3記事)

若手起業家が出資を受ける前に警戒すべきポイント スタートアップの資金調達における落とし穴 

「Cross the Boundaries」を旗印に、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)が2024年も昨年に続いて京都で開催されました。今回のセッション 「“想い”が事業を作る?急成長する企業に共通するものとは?」では急成長中の有望スタートアップの経営者が登壇。本記事では、スタートアップの資金調達における落とし穴や、友人と起業したというカンリー共同代表の秋山氏が、共同経営で大事なポイントを語りました。

急成長中の有望スタートアップの経営者が登壇

高野秀敏氏(以下、高野):このセッションは、IVSとしては初企画になると思います。キャリアセッション的なものになりますので、スタートアップのすばらしい経営者の方をお招きしてやっていきたいと思います。私はもともと人材系の会社を19年ほどやっています。あとベンチャー企業さん、スタートアップへの投資活動みたいなことをずっとしている者でございます。

そういう意味ではキャリアの部分と、「なぜこの会社さんはすごく伸びるんだろう?」、または「どうしてちょっと停滞してしまっているんだろう?」と、ずっとウォッチしてきた部分もあるので。みなさんそういったところをシェアできればと思っています。次は秋山さんですね。

秋山祐太朗氏(以下、秋山):秋山と申します。よろしくお願いいたします。株式会社カンリーという会社で共同代表をしております。特徴的なのがCo-CEOというところで、社長が2人いるという非常にリスキーな経営をしております。高野さんをはじめ、投資関係で……。

高野:そうですね。友だちと起業すると、けっこういろいろ大変なところがありまして。実は私もお別れしている経験があったりするんですけど、(秋山さんは)すごくうまくいっていますよね。

秋山:今のところかなり順調です。今日はそういった話も含めて(お話しします)。あとは新卒で三井住友銀行に入りまして。そこからスタートアップに転職して、今です。最近、趣味と現場の理解も含めて、タイミーで皿洗いや品出しをしたりしています。ニーズはないかもしれませんが、そこらへんの話も一応できますので、よろしくお願いいたします。

高野:ありがとうございます。今、タイミーは想定時価総額1,265億円で、学生起業大成功ということですね。次は山本さんですね。

山本玲奈氏(以下、山本):ありがとうございます。今は株式会社ヒュープロという会社をやっている山本玲奈です。私は大学4年生の時に今の会社を創業している学生起業家でございまして、2024年で10年目に入る会社です。今は、税理士さんや会計士さん、経理などの士業・管理部門に特化した求人サイトと転職エージェント、士業・管理部門業界の採用を総合的に支援する会社をやっております。

大手銀行を退職し、親から縁を切られたことも

高野:山本さんも学生起業で、すばらしいですね。そして村尾さん、お願いします。

村尾祐弥氏(以下、村尾):みなさん、こんにちは。初めまして。村尾と申します。Magic Momentという会社で創業者兼CEOをしています。Googleやfreeeでやっていた経験があります。世界の大企業と、当時スタートアップ支援のトップを走っていたfreeeで、営業の統括を務めた経験を(活かして)ですね。

プロダクトだったりBPOのチームを作って、特にエンタープライズを中心に統合したサービスを提供しています。世界や日本で売上を伸ばしたいお客さまの要望に応えて、そんなサービスを展開しています。

なので、ほとんどのお客さまはエンタープライズ企業さまで、非常にありがたい環境でやらせてもらっているなと思っています。

高野:ありがとうございます。今日は、それぞれのキャリア系のセッションになります。私から経営者の方にご質問をさせていただきつつ、後半戦ではよりスタートアップの共通項的な部分でお話をうかがっていこうと思います。

秋山さんは最初、銀行を辞めて、あまり聞いたことがない会社に転職すると。これはどういう覚悟で行かれたんですか。

秋山:最初はやっぱり銀行で上に登り詰めてやるぞというマインドを持ちつつ、30歳くらいで起業したいなと思っていたんですね。当時、1年目だったんですけれども、その銀行で一番出世していた人がアメリカのMBAに行っていまして。出世するにはMBAだというところで、1年目の夏にMBAのビジットに行きまして、スタンフォードとかいろいろ行ってきました。

そうしたら横にシリコンバレーがあって、1年目からちょっと比較して見れたんですよ。その時にやっぱり何かをクリエイトしていくというか、事業を作っていくのはめちゃくちゃかっこいいなと気づき、それが1つのきっかけでした。

一方で、ちょっとネタ的な話でいくとですね、転職する時に親に縁を切られております(笑)。

高野:「我が息子はメガバンクまで行ったのに」みたいなね。

秋山:そうですね。ただ半年くらい実際に縁が切れていたんですけれども、対話をしていく中で何とか復旧していきました。

友人と起業したカンリー共同代表の秋山氏

高野:ありがとうございます。もう少し秋山さんの掘り下げの部分で(うかがいたいのですが)、スタートアップに転職をして役に立ちましたか?

秋山:めちゃくちゃ役に立ちました。『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』という本を読まれたことがある方もいらっしゃると思うんですけれども。当時、スタートアップに僕は10人目くらいの社員でジョインしまして、めちゃくちゃ組織崩壊したと言いますか(笑)。

高野:わりと定番的な組織崩壊があった。

秋山:これは定​​番ですね。当時の社長とは今も非常に仲が良いので、すごくお世話になっていますし、感謝しているんですけれども。やっぱりベンチャーのリアルと言いますか、そこを自分の中でしっかりと肌感を得られたのが、事業を作る上でめちゃくちゃ良かったなと思っています。

高野:まったく知らない人と会社は始められないので、友人と起業する方って実際に多いと思うんですよね。ただ、友だちと起業するとやっぱり「友だち関係はどうなるんだ」「株式とかどうなるんだ」とか、いろいろな話がある。秋山さんと辰巳(衛)さんは、私から見てもすごくうまくやられているなと思うんですけども、どういうことを心がけているんですか?

秋山:そうですね。ちょっと真面目な話をすると、コミュニケーション量をしっかり保つのが重要です。余談的な話をすると、週に1回ジムに一緒に行っているんですね。

高野:なるほど。

秋山:そこで、めちゃくちゃバチバチしながらディスカッションするのを、毎週やっております。そのくらいの強度で、まずはコミュニケーションの時間を絶対に保つということですね。

2年間のルームシェアで一度も喧嘩をしなかった

高野:そういえば、ワークスアプリケーションズさんも「毎週どんなに忙しくても経営者の方々でランチをすると決めている」と言っていましたね。

この意図はたぶん、友だちじゃなくても、話さなくなるとコミュニケーションが断絶して不審感が生まれたりするのかなと思っていて。やっぱりそういう機会を意識的に作っているということなんですかね。

秋山:そうですね。めちゃくちゃ作っているのと、あとはそもそも週に2回、1on1をやっているんですよね。あと、会社の中でバリュー経営をけっこう徹底しています。社長が一番偉いんじゃなくて、うちの場合はバリューが一番偉いっていう前提があるので。

会社の中でも誰かがトップダウンに意思決定するのではなく、いつもバリューに沿って意思決定しているんですよね。ここらへんのカルチャー作りを徹底しているので、それが結果的に、どっちが偉いとかじゃなくて、チームを作っていく上ではすごく重要なのかなと思っています。

高野:なるほど。ありがとうございます。非常に参考になりました。秋山さんと辰巳さんは一緒に住んでいたんでしたっけ?

秋山:そうですね。これまた珍しいと思うんですけども。2人でルームシェアをして、2年間一緒に住んでいたんですが、まったく喧嘩をしなかったんですよね。

これも余談的な話なんですけれども、シャワールームの掃除とか、水回りの掃除とか、やっぱり大変じゃないですか。ここで「どっちが率先して対応していくのか」みたいなチームビルディングを、けっこうしっかりしてきました。

高野:(笑)。

秋山:結果、2年間で1回も喧嘩をしなかったんですね。なので、一緒に暮らせるんだったらいけるんじゃないかというところが、けっこう自信になりました。

高野:これは私も思い出深くて、そのくらい仲良かったらいけるのかなと思ったんですよね。旧エヌリンクス(現コレック)さんとか、colyさんとか、スマートバンクさんとか、双子の経営者の方がうまくいっているように見えて、聞いたところ、やっぱり「子どもの頃から喧嘩はずっとしている」と。

「だから喧嘩をして別れることは絶対にない」「双子に起業を勧めるといいですよ」とアドバイスをいただいたんです。ただ、そんなに双子の方がいないっていう問題がありました。

「最初の5年くらいはひたすら組織崩壊していた」ヒュープロ山本氏

次、山本さんはザ・学生起業。IVSには学生さんもたくさんいらっしゃいますけれども、学生起業のメリット、デメリットというか、大変だったことはどうでしょう。

山本:学生起業をしたことのメリットは大きく2つあるかなと思っています。学生というブランドというか、学生という名刺を使って比較的誰にでも会えたり、遠慮なく「お仕事をください」と言えたのはすごくよかったです。

私の時は学生起業の全盛期みたいな感じだったので、学生起業家ファンドがけっこうあって。学生起業というだけで出資の機会がけっこうあったのはすごくよかったなと思います。あともう1つは、未知がゆえに突き進むことができた。我々は管理部門という、少し固い領域だったり、人材の領域なんですけれども。

当時は転職エージェントといったら会いに行くのが当然で、2時間くらい面談してっていうのが当たり前でした。でも知らないがゆえに、「会わなくてもエージェントの機能って果たせるんじゃないか」というところから今のサービスが生まれた。未知がゆえに突進できたかなのはすごくよかったなと思っています。

高野:すばらしい。

山本:一方で、デメリットで言うと、秋山さんがさっき「組織崩壊を目の前で見た」とおっしゃっていたんですけれども、私はまさに組織崩壊を2回くらいやっています。最近「組織崩壊のプロですよね」と言われるようになってですね(笑)。

そうではないんですけど、やっぱり本当の意味でマネジメントをするとか、ミッションを与えるとか。ミッション・ビジョン・バリュー経営とは何かっていう経営のノウハウやイロハはぜんぜんわからなかったんですよね。

私たちは10年になるんですけど、やっぱり最初の5年くらいはひたすら組織崩壊していた。事業をやるっていうよりも、組織崩壊していた期間はけっこう長かったかなと思います(笑)。

高野:玲奈さんもXをやられていますけども、過去の社員の方との写真をアップされていますもんね。

山本:はい。Xで組織崩壊話を(しています)。今だからいろいろ書いてきているんですけど、いろいろあったなぁと。

若手起業家が注意すべきこと

高野:今、会社の調子がかなり良いので、すごいなと思います。あとは「今振り返って、若手の起業家が気をつけておいたほうがいいこと」。例えば、最初のファイナンスで50パーセント以上取られちゃったとか、よくいろんなトラップにはまっている気がするんですが、何か気をつけるべき事項があれば。

山本:たぶん今も前も変わっていないのが、やっぱり学生起業や若手だと、お金がないことが不安だったり。銀行もお金を貸してくれず、正直売上の立て方もわからないけれども、表ではけっこう強く振る舞わなきゃいけない。けど、内心はめちゃくちゃ不安なので。

目の前で出会ったすごそうな人が「お金を出す」と言ったら、もうこんなチャンスないんじゃないかと。投資契約書もわからずに締結してしまったり、その人が実はけっこう市場を荒らすような方だったとか。

アドバイスをくれる人もいなくて、株っていうものが何かわからずにファイナンスをしてしまうっていうのは(よくあります)……。私たちも先輩に教えてもらって、出資を受ける直前に辞退したことが創業の始まりだったんですよ。

高野:(笑)。

秋山:めちゃくちゃ気持ちわかるなって。確かに「お金を出したい」という人がたまに出てくるんですよね。「お金を出したい」と言ってくれた人は気をつけたほうがいいみたいな話があります(笑)。タダほど怖いものってやっぱりないなって。

「お金を出したい」じゃなくて「いや、俺はそんなに簡単に出さないよ」という人に逆に出してもらう。

山本:おっしゃるとおりですね。

若手経営者ならではの幹部採用の難しさ

高野:何でもそうですけど、そんなに甘い話があるわけないと。あと、若手の方で起業すると、幹部採用とかが難しいのかなぁと思っています。社長より年上の人が働くことになるじゃないですか。そのへんはいかがでしたか。

山本:そうですね。まさにそこはかなり苦労しました。幹部として採用した時に、けっこう組織崩壊してきたところもあって。

たぶん、私自身の経営者としてのマネジメントスキルが足りていなかったことと。あとは人によると思うんですけれども、女性経営者ってことで自分自身引け目を感じてしまって、なかなかうまくできなかった。

自分より仕事ができる、経験がある方を招きたいんですけど、招くとマネジメントができなくて、結局マウントをとられてしまったり、こちら側からしっかりフィードバックをできなくて、すごく苦戦しました。

今は学習して、ちゃんと一緒に仕事させていただけるようになったんですけど、ここはけっこう苦労しました。

高野:経験を重ねるうちにノウハウがたまってきた、みたいな。

山本:ノウハウもたまりますし、たぶん自分にも自信がついてきましたし。あとは最初のほうって、(会社の規模が)小さいと「なんか利用できるんじゃないか」っていう変な大人もいっぱい近づいてくるんです(笑)。

高野:我が物にできるんではないかと。

山本:そういう方も来るんですけど、会社がしっかりし始めると、社長としてちゃんと立ててくれるような方、プロフェッショナルとして入ってくれる方にも出会えるようになったのは大きかったですね。

高野:なるほど。すばらしい。ありがとうございます。

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  • リッツ・カールトンで学んだ一流の経営者の視点 成績最下位からトップ営業になった『記憶に残る人になる』著者の人生遍歴

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