「大企業の組織風土改革」をテーマに、4名がトークセッション
渡瀬ひろみ氏(以下、渡瀬):みなさん、こんにちは。もう30分ぐらい前から満席になっていて、みなさんの期待を一身にひしひしとプレッシャーを感じております。ただいまから、「大企業の組織風土改革〜イノベーティブな機運づくり〜」と題しましたセッションをスタートいたします。セッションにご登壇いただきますのは、アルファドライブ、麻生さん。
(会場拍手)
渡瀬:ローンディール、原田さん。
(会場拍手)
渡瀬:メンタリング、椿さん。
椿奈緒子氏(以下、椿):よろしくお願いします。
(会場拍手)
渡瀬:そしてアーレアから私が、パネラーとモデレーターとしてトークセッションをします。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
渡瀬:では、みなさまの事業内容と自己紹介をざっとしていただいた後にトークセッションに入ります。まず、アルファドライブの麻生さんからお願いします。
麻生要一氏(以下、麻生):みなさん、こんにちは。ありがとうございます。麻生要一と申します。よろしくお願いします。新規事業ばかりをやっていまして、『新規事業の実践論』という企業内新規事業分野の決定版の教科書を書いている著者でございます。先日、10刷になりました。ありがとうございます。
(会場拍手)
麻生:2019年に出版したので、6年間読んでいただいていまして、ずっと教科書のように使っていただいている本です。
僕がやっているアルファドライブという会社の事業内容を紹介します。アルファドライブは、企業内新規事業分野の総合支援カンパニーでございます。目指しているのは、「Intel Inside」になぞらえて、最近は「AlphaDrive Inside」としています。
最終的には、アルファドライブという社名自体は世の中から見えなくてもいいのですが、僕たちが支援をさしあげたクライアントとか、僕たちが中でエンジンとして動いたことによって世の中に出ていく新規事業自体が目に見えるようになる。新しい事業を生み出すプロセスにおいて、その企業だけではできないような難しいプロセスを担う、徹底的な黒子となる会社です。
30年前は世界で最もイノベーティブだった国・日本
麻生:かつて日本がイノベーティブであった誇らしい時代を目指しています。それはたった30年前のことです。「この国の経済は終わった」「ビジネスも終わった」と言われますが、たった30年前は世界で最もイノベーティブな国でした。それを数年かけて戻したいと本気で考えて、創業した会社です。
僕たちが取っているアプローチは、IVSで言うのもなんなんですが、今この国は「スタートアップ育成5か年計画」で、大スタートアップ大国に成り代わろうとしています。
日本という社会システムは、スタートアップが半分で、もう半分は起業家と呼応するかたちで企業内新規事業家が新規事業を生み出す社会を作った時に、初めて新しい事業が生まれまくります。このように思っている中で、起業じゃなくてサラリーマンの新規事業を支援することを本気でやっているエコシステムの会社でございます。
2019年に創業したアルファドライブグループは、今は傘下に4つ法人を抱え、11の支援組織が連関し合って顧客と対峙する企業グループ経営を行う会社です。
企業が中から新規事業を生み出そうと思った時に、難しいなと思うあらゆることを支援しています。仕組みを作って、人を作って、事業を生み出して、育てて、文化を作るということを全部をやっています。
難しいと思うので流れでご紹介します。アルファドライブの事業の出発点は、新規事業が生まれる仕組み自体を一つひとつの会社の中で作っていくことです。
大きな会社の中で働くサラリーマンの人は起業家とは違うので、どうやって仕事をしていったら会社から褒められるのか、労働時間はどんなふうにつけたらいいのか、それが全部ガイドライン化されていないと動けないんですね。そのガイドラインを1社1社が機能するかたちで作るという制度作りから始まります。
仕組みを作ったら、事業を生み出していくためにあらゆることをやっていくんですが、まずは、やる気のない人をやる気にさせるところからやっていくんですね。人の心に火をつけてテンションを高め、そして0→1のやり方を教えて、実際に自分たちでもプロトタイピングしながら仮説検証のプロセスを一緒にやっていきます。
1万8,000を超える新規事業ケースを創出するアルファドライブ
麻生:事業計画を作って事業化したら、その後は育成してグロースして立ち上げていくところも、片っ端からどんどんやっていく。
あらゆるグロース支援をやっていまして、開発に特化した「TECH STUDIO」、マーケティングに特化した「MARKETING STUDIO」。資料にはないんですが、先日セールスに特化した「SALES STUDIO」という3スタジオを立ち上げて、開発、マーケ、セールスを実働部隊で支援しています。
メディアもやって、光も当てながら、スタートアップと協業するようなオープンイノベーション特化型の子会社を作って、アクセラレーションプログラムをたくさんやったりもします。
あと、最近は地方創生をがんばっています。アルファドライブ高知という高知県に根差した会社では、高知から100の新規事業と300の起業家人材を生み出すということを2019年に掲げました。そこから地域の職人さんと一緒に伝統技術を売れる商品にしたり、大企業だけじゃなくてローカルの中小企業とも一緒にやっていく会社です。
地域展開が広がっていまして、東海、関西、そして沖縄拠点を開設することになりました。福岡・九州版でメディアを創刊したり、全国のあらゆる日本企業・地域企業と一緒に連携しながら新規事業ばっかりやっていって、今は18道府県に及んできています。
創業から6年で手掛けてきている新規事業の数は、やっていない産業分野はほぼないという感じで、超大企業の中での新規事業開発もめちゃくちゃやっています。
1万8,000ケースを超える新規事業ケースを創出しています。日本中の新規事業のゲートウェイをやっている会社だと思っていただければなと思います。
すべての日本企業を新規事業が生み出せる組織に
麻生:すべての日本企業を、新規事業が生み出せる組織に体質に転換させるという事業内容なんですが、最後にアルファドライブが信じている、大切にしていることをここに置いて今日のディスカッションに入りたいと思います。
僕たちは新規事業の支援会社ではあるんですが、大切にしているのは事業自体ではなく、事業を生み出す人にフォーカスをしているというところなんですよね。
事業だけを作るんじゃなくて、事業を生み出す人を作る。人を作る組織の風土を作るということを、一つひとつの企業が行った時に、初めて意味のある新規事業開発ができるんじゃないかなと思います。
「変革の中心にはいつだって人がいる」ということを大切にしてやっている、人の可能性をひらくアルファドライブです。ありがとうございます。
(会場拍手)
渡瀬:麻生さん、ありがとうございました。
ローンディールが取り組む「越境」とは?
渡瀬:では、原田さんお願いいたします。
原田未来氏(以下、原田):ローンディールの原田と申します。よろしくお願いします。麻生さんの情報量が多かったので、少し簡単に自己紹介をします。うちの会社は2015年に創業して、「越境」に取り組んでいる会社です。
越境って、聞いたことはありますか? 聞いたことがある人は3割ぐらいですね。ぜひ覚えて帰っていただければうれしいなと思います。
僕らが特にやっているのは「レンタル移籍」という事業で、大企業の方々に、出向のようなかたちでベンチャー企業に一定期間行ってもらって、そこでいろんな経験を積んで、その人たちが帰ってくるという、人が循環する仕組みを作ろうとしています。
「人材の流動化」というと、転職していくことを言いがちなんですが、そういうことじゃなくて、もう少しめぐりめぐっていくようなものが日本に合うと思います。
そして、ベンチャーを経験した人が大企業に帰って活躍していくとか、ベンチャー企業やスタートアップとつながりを保っていく中から、新しいものが生まれていくといいなと考えています。
これはあるあるだと思うんですが、僕らは本当に何百社という大企業の方々とディスカッションさせてもらっていて感じる、「人と組織はこうなるな」ということですが、まず人の話で言うと、組織が大きくなっていったり事業が成長していくと成長機会が減っていきます。
具体的に言うと、自分で意思決定をしたりとか、修羅場と言われる超大変なところ。企業にとってみたら、そんなものはないほうがいいんですが、実はそこで人が育つケースはあると思います。
そういうのがなくなってしまうから、管理のできるマネージャーは育つけど、何かを残していくリーダーが育たない。ですので、それを組織の側面から見ると、どうしても社内で調整ごとが増えていってしまうので、内向きに調整していく。
内向きの調整は、どう考えても同じような考え方の人が集まってくるほうが調整しやすいので、多様性がなくなってイノベーションが起きにくい。そんなところがあるかなと思います。
大企業の人がベンチャー企業に行くと気づくこと
原田:そういう意味では、スタートアップ、ベンチャー企業を経験してもらうことによって、自分たちの会社にはない成長機会があったり、組織にとってみたら新しい知恵を持って帰るとか、そういうつながりができていくことで組織を変えていける。もしくは個人の成長に寄与していけるのではないかと考えています。
大企業の人がベンチャー企業に行くと、どんなことが起こるのかをお示ししているんですが、まず、飛び込むと会社の看板が全部なくなるので、「どこどこです」って社名を言えば話を聞いてくれたところから、「ローンディールです」と言っても誰も話を聞いてくれません。
でもその中で、スタートアップとしてやっていく以上はアウトプットをしていかなきゃいけない。振り絞った時に、会社の看板を持っていたからパフォーマンスを出せるところと、自分の力として持っているところを相対的に分けて認識することができるようになります。
さらには、スタートアップの考え方とかやり方を学ぶことができる。こうやってアウトプットとインプットをしながら個人が成長していって、その人が会社に戻ってくることによって融合が起こる。大企業のカルチャーとスタートアップのカルチャーが融合して新しい組織が生まれていく。僕らはそんなプロセスを作っていきたいと思っています。
具体的には3つのプログラムを提供しています。まず、左に書いてある「レンタル移籍」というのは創業以来やっている仕組みなんですが、フルタイムで半年から1年間、どっぷりベンチャー企業に行ってもらう仕組みです。これは、リーダーやこれから経営を担っていくような選抜人材に提供しています。
それだけではなくて、ミドルマネージャーの方々には、忙しい中でもオンラインでちょっと外を見てみましょうという「outsight」というプログラムだったり、3ヶ月間20パーセントだけやっていきましょうという「side project」。
100社、800名以上に越境の機会を提供
原田:実はこのside projectは、麻生さんと飲んで雑談していた時に「こういう仕組みがあったら、おもしろいね」ってなったことも発端になっています。お金は特に払いませんが(笑)。
今、この3つのプログラムを合わせて、100社、800名以上の大企業の方々に越境という機会を提供しています。ちょっとロゴが小さくて恐縮なんですが、本当にいろんな業界で導入いただいています。1個ずつ話すときりがないのでこのへんは割愛しますが、ご興味がありましたら。
事例として、人が変わっていくのはもちろん、変わった人が帰ってくることによって組織も変わっていくこともそうですし。新規事業を立ち上げるという意味で言うと、自社の新規事業をやっていくケースもあれば、オープンイノベーションというかたちで推進していくケースもあります。
先月にNTTドコモさんから発表されましたが、ドコモショップで「ちかく」というIoTのデバイスが販売開始になったんですね。
実はこれ、もともと「まごチャンネル」というIoTのサービスをやっていたチカクさんという会社に、ドコモさんからレンタル移籍をした人がいて。その人がハブになって、構想から1年ぐらいで全国のドコモショップで展開される事業になったという、けっこうすごいスピードです。
僕らは、個人の可能性を解き放ちながら、そういう個人を起点にして、組織が変わっていく。大企業もそうだし、スタートアップもそうだし、挑戦していく人たちが増えて、その波紋が広がっていくといいなと思って事業をやっております。ということで、今日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
渡瀬:原田さん、ありがとうございます。