2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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ビジネスの複雑性が増している今、自身の担当する領域を超えて業務を遂行できる人材が求められています。本イベントでは、『グローバルで通用する「日本式」マーケティング 元・味の素マーケティングマネージャー直伝の仕事術』著者の中島広数氏、『TOP営業を育てる自社オリジナル教科書の作り方』著者の加藤じゅういち氏が登壇。セールス/マーケティングの垣根を超えて、クライアントのニーズに応えられる人材を育てるためのヒントをお届けします。本記事では、できないメンバーにイライラしてしまうリーダーのための人材育成の勘所をお伝えします。
西舘聖哉氏(以下、西舘):このあとのパネルディスカッションでは、(営業とマーケティング部が)どう歩み寄っていくのかというお話ができればなと思っています。ではまずは、加藤さんのお話に入っていきたいと思いますので、お願いします。
加藤じゅういち氏(以下、加藤):みなさん、こんにちは。加藤じゅういちと申します。私のバックボーンはリクルート、外資のディーラー、ベンチャーの役員、そのあと独立という大きな流れです。
リクルートには21年半おりました。もともと最初は営業ではなく、HR事業、求人広告の部門で制作ディレクターをしていました。営業の後工程で制作物を作るという、クライアント企業の広告を作る部門でした。
ここにいた時に、よく営業に同行してヒアリングやプレゼンをやっていたんですね。中島さんは営業からスタートということですが、私は営業からではなくて制作ディレクターからスタートしました。
厳密には最初に入社した時に、クリエイティブ採用で「営業だけはやらない」という約束だったんです。それなのに、なぜか入った瞬間「3ヶ月間は営業研修だ」とどの職種も問答無用で飛び込み営業をさせられて。あえて「させられた」と言いますけど。
霞ヶ関ビルの上からビル倒しをやっていました。武蔵野美術大学卒なんですが、その時の友人は電通や博報堂のクリエイティブ局に入社しているのに、「なんで私はグレーのスーツで飛び込み営業をしているんだろう」と思いながらやっていました。
結果的には3ヶ月間の研修で、ちょっと営業というものを客観視しながら見られるようになって。また制作ディレクターとしての実務では9年間トップ営業や売れない営業に同行していたので、売れる人と売れない人の差が見える化できるようになりました。
そこで、ヒアリングやプレゼンの仕方のコツをマニュアル化していったんです。トップクラスの人だけしかできないんじゃなくて、みんなができるように底上げしていった。もともとそういうのが好きだったんですね。
加藤:そのあと広報や商品企画、それこそマーケティングもやりましたが、常にリクルートでは「再現性!」と叩きこまれていました。例えば調査を1つ立ち上げるにしても、あとあと再現できたり汎用化できたりすることを前提に設計する。自分が異動してもそれが成り立つように、と鍛えられました。
ホットペッパー事業に異動した時、旭川から鹿児島まで全国48ヶ所の営業所があったんですが、マーケティング上、最初は「誰でも売れる」という事業コンセプトの商品設計だったんです。でも商品が複雑化したり値段がどんどん上がったりして、売れる人と売れない人の差が出てきた。
先ほどの中島さんの話ですと、マーケターはリーダー選抜型で育て上げていくイメージだったんですけど、逆に営業では全国48ヶ所の千人の営業の子たち、みんなが売れるように底上げしなくてはいけない。
これは中島さんに物申すというわけではないんですが、「営業に必要な力は人間力」では済まさずに、人間力の中を分解していく必要があると思っています。
例えばホットペッパーの場合「売れる、売れない」の差になるのがヒアリング力です。これが1番のキーになっていた。あとは、効果測定の「効果が出ている・出ていない」のやり取りの仕方にも差があったんですね。
「効果が出ていない」と言われると、売れていない子は「はい、すみません」と謝っちゃうんです。でも売れる子は「(効果が)出てないとは、なにをもって言っているんですか?」と聞く。なにと比較して効果が出ている・出ていないのかを、ちゃんと会話していくんです。
そういうところで差が出やすい。だからそれを育成パックにして、「新人の時からトレーニングして鍛えていきましょう」ということをやっていました。
加藤:そのあと、まったく商材が違うことをやります。味の素さんが日本から世界に出ていくのとは逆なんですけど。ドイツ本国で開発されている車のディーラーのファイナンス部分、つまり自動車保険やローン、リースの付帯率を、日本全国のディーラーさんにやってもらう仕事でした。
ここの会社の場合、あまりいろいろなことはしゃべれないんですけど。ざっくり言うと、本国で決まった世界統一の戦略があったんです。例えば日本のおむつメーカーだと、商品は同じものでも各国で商品名を変えたりしますね。
それとは逆で、車の形や商品は変わらないからと、CMも全部グローバル化して同じCMを流すんです。予算があるので映画並みのすごい映像が作れるという。でも「中国は伸びているのに、なんで日本は伸びていないんだ」と本国から怒られたり、そんな感じでやっていました。
ここでも正直成績はそこまでいかないディーラーさんと、常にトップにいるディーラーさんがいました。わりとランキングではっきりするので、この差がなんなのかを解明し、差を埋めるにはどうしたらいいのかをノウハウ化していきました。
繰り返しますけど、人間力で終わらせないようにするために、(その差が)情報収集力なのかプレゼン力なのかを、プロセス上に分けて分解していったんです。例えば10人体制の1人2人が売れていて、あとがその1人の10分の1もいかないとなると、「その1人2人が抜けちゃったらどうするんですか」という問題が発生します。
売れている人だけに頼っていると会社に未来はない。もっと規模が大きい組織でも、同じものを売っているのに拠点長の力量によって、下で育つメンバーの力量も決まってしまうことがあったり。どうしても差が出てしまいます。
商品開発、マーケティングされた上で作られたものなのに差が出てしまうのは、その商品の価値を普及し切れていないことになる。先ほどの中島さんのお話も「日本ではこうだけど、それを中国で同じようにやれよというのは、状況が違うよね」というのと同じです。
加藤:厳密に言うと、日本でも銀座のマーケットと新潟長岡のマーケットでは違います。でも逆に「新潟長岡でこうやれば売れるよ」というものは、全国各地のエリアでも通用する。そうやって言い訳を封じ込めていくんですけど。
私は求人広告時代に、いろいろな業種や業界のことを理解するよう鍛えられてきたので、独立後「どういう分野の業種が強いんですか?」と言われると、変な話、どんな分野でも大丈夫なんです。
対法人営業、対個人への営業、新規やルートセールス、その商材や営業の種類によってノウハウはけっこう違って。だから一般的な営業研修のパッケージで、どこの業界でも通用する内容の場合、実際はあまり役に立たなくて、重要なノウハウは商材それぞれにあると思っています。
結果としてぜんぜん違う業界のノウハウが通用することもあるんですね。例えば注文住宅とオーダースーツ、どっちも注文オーダーでけっこうノウハウは似ているんですが、かたや同じ住宅でも注文住宅と戸建ての営業ではノウハウがまったく違う、ということもあって。
自社にしかいたことがない方は、どれがノウハウなのかがわからないこともあります。ましてや売れている人は無意識にやっていることがほとんどなので「どれがノウハウなのかわからなくて、教えられない」ということも。
私の場合、こうやって、いろいろなノウハウがたまっていったんですが、「たまりっぱなしも良くないな。一回本で棚卸しをしよう」ということで今回の本になりました。どんな業種や業態、営業でも活用していただけるように、わりと各論で書いております。
加藤:「ノウハウの差が激しい」「見える化ができていない」「プレイングマネージャーで時間がない」など、課題を解決するためのポイントになるノウハウを、見つけることができるようになっています。
いろいろな企業さんを見させてもらうと、売れる人がリーダーになったり、課長や部長になったりするんですね。でも売れる人は「ケースバイケースだ。顧客に興味を持てばいいんだ」と、かなりフワッとした抽象的な言い方をしたり。それができなくて若手は困っているのに……。
(そういうリーダーは)その場その場で「ああしろ、こうしろ」と指示はできるんですけど、若手の育成はなかなかできない。本ではそのやり方も書いています。
それから人には「自然性」「可燃性」「難燃性」「不燃性」があって。リーダーや課長、部長になっていくのは、だいたい「自然性」の方です。「自然性」の方は、自然性を基準に無意識にしゃべるので、「なんで何度言ってもできないんだ」とイライラしてしまうんですね。
メンバーは「可燃性」「難燃性」の人が多いので、(リーダーが)「なんでできないんだよ」とイライラしているうちは人を育てられません。そうじゃなくて「可燃性」や「難燃性」も料理できる管理職や指導者が必要です。
座学で習い事をしても、みんな2週間もすると忘れちゃう。だから実務の実践でトレーニングして、期間を区切って小さな成功体験をしっかり積んで、指導者は指導の仕方も学んでいく。教材である実務で育成し、レベルアップをしていく。手間はかかりますが、確実に成長します。実際にこれを提案させていただき、新規獲得の件数を300パーセントアップした企業さんもあります。
加藤:(スライドは)営業力を上げる時に組織でチェックすることを三角で表しています。行動指針や目標の見える化、人事評価制度の連動がちゃんとあるのかどうか。
個人で一生懸命スキルや知識だけをインプットしても、業績につながらないことがあります。それは行動変容をマネジメントする必要があるから。昨日までと同じことをやっていたら、昨日までと同じ結果しか出ませんから、そこをしっかりとやる必要があります。
以上、私の自己紹介とちょっと本を絡めたポイントをお話させていただきました。一点、先ほどの中島さんのお話とかぶるなと思ったことがあって。実はホットペーパーで集客広告を売るのはヘアサロンや飲食店なんですね。そうするとヘアサロンや飲食店の売上が上がるんです。
でもホットペッパーというメディア自体は、その先にいる読者が、その広告を見て反応しなければ効果はない。読者も見なきゃいけないんだけれど、その手前のクライアント先の売上アップにつながらなきゃいけない。営業の中でもこういう商材があるなと、ちょっと思いました。
西舘:ありがとうございました。加藤さんのお話をこうやってじっくり聞いたのは初めてだったんですけど、「営業って深いな」というのが、もう本当に率直な感想ですね。
月並みなことで申し訳ないんですが、僕はちゃんとした営業を経験したことはなくて。でも自分で事業をやっていると、どうしてもそういった要素は発生してくる。「なんでこの人はこんな売り方なんだろう」とか「明らかにそれはNGだよね」ということをされることもあるので、学ぶことは非常に大事なんだなと思いました。
今日お話された内容は、書籍を読めば手法などもより詳しくわかるということですね。お二人からマーケティングとセールスについて、めちゃくちゃインプットしていただきました。聞いている方たちも積極的にご質問をいただきありがとうございます。このあとのパネルディスカッションにも活かしていきたいなと思っています。
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