働く人に1対1で話を「聴くだけの仕事」とは?

奥田浩美氏(以下、奥田):みなさん、こんにちは。「新しい社会を創る、新しい仕事」というセッションを始めます。今日は2部制になっていて、45分ずつ異なる3名の方々に出ていただきます。おそらく、みなさんが「え? そんな仕事があるんだ」というような方々が、次々に出てこられると思います。

では、最初に自己紹介を1分程度でやりたいと思います。篠田さんからお願いします。

篠田真貴子氏(以下、篠田):エール株式会社の篠田真貴子と申します。私たちエールがやっている新しい仕事は、「エールを送る」スタンスで、働く人に1対1で話を「聴く」ことで、聴くだけの仕事です。

奥田:聴くだけ?

篠田:聴くだけです。少しご説明すると、私たちはお話を聴く係を「サポーター」と呼んでいるのですが、サポーターはすでに3,700人います。私が4年前に関わり出した時は300人だったのですが、口コミだけでここまで増えました。ですので、リアルにある仕事なんですよ。

スライド右側に「プレイヤー」とありますが、私たちは主に大企業と契約するんですね。そこの方々に1対1でお話を聴くことで、その人たちの聴く力がより高くなったり、自分のキャリアについて考える機会になったりする。さらには、研修(座学)で学んだことを現場で実践できるように、伴走することをやっています。

大きい会社なので、「課長700人にやりたい」「事業部500人全員にやりたい」といったことをお引き受けします。1対1で、何百人の方に一斉に聴いてもらう時間を持つことで、組織がよくなっていくようなことをやっています。

奥田:ありがとうございます。1つだけ質問してもいいですか?

篠田:はい。

奥田:「あの会社もやっています」「この会社もやっています」だったら、取り入れる会社もあると思うのですが、最初に「聴くだけの仕事です」で、初めて接点ができた、仕事として成り立ったのは、どういう経緯なんですか?

篠田:初めて仕事として成り立ったのは……実はエールのサービスって、コンセプトは一緒だったのですが、初めは「聴く」ではなくてチャットでやっていたんです。でも、チャットだとなかなか良さをわかっていただけなくて。試しに実際に(電話で)話を聴いてみたら、「これ、良いじゃない」となったという、けっこう大きなピボットがありました。

奥田:最初からこのサービスではなく、人に寄り添っていったら、こういうかたちになったということですね。

篠田:はい。

奥田:わかりました。ありがとうございます。

最初は「1万円でもあり得ない」と言われた、キャリアのパーソナルトレーニング事業

奥田:まさにこのセッションは、第1部が「人に寄り添う新しい仕事」というテーマで、3人に並んでいただいています。では、同じ「人に寄り添う」ということで、金井芽衣さんお願いします。

金井芽衣氏(以下、金井):ポジウィルの金井と申します。よろしくお願いします。私たちは、キャリアのパーソナルトレーニング「ポジウィルキャリア」という事業を運営しています。

今までの人材業界は法人からお金を取るモデルが多かったので、人材紹介だったり、個人が無料で使える代わりに、逆に売り物になったりするところがありました。しかし、私たちは個人からお金をいただいているので、どんな選択をしたとしても応援できるような事業をやっています。

奥田:ありがとうございます。今までのHR業界って、会社側はお金を払って人を採るけど、その人がどういう人か見えていない。応募する側も、自分に何のスキルがあればいいかわからない。そのような中、応募する側に立っているというイメージでいいですか?

金井:そのとおりです。

奥田:ちなみに今、個人はいくらくらいの金額帯を払えば、そういうサービスが受けられるんですか?

金井:今は最低でも40万円くらいで、40万円から60万円が平均になっていますね。

奥田:最初からその金額でいけたんですか?

金井:最初は「1万円でもあり得ない」と言われていました。

奥田:(笑)。

金井:だから最初は5万円で売ってみて、結果が出て10万円で売ってみて、結果が出て15万にして、30万にして……という感じです。

奥田:すごい!

金井:それが4年前くらいですかね。

「自分自身が何者かわからない」という若者の多さ

奥田:確かに今、キャリアのコーチで寄り添ってくれて、パッと40万円払ってくれる人はそうそういないと思います。でも、それによって1千万円、2千万円といった年収が軽く手に入るような寄り添いをしていくイメージなんですか?

金井:そうですね。「自分自身が何者かわからない」という方が、20代、30代にはすごく多いので、もちろんそういう悩みにに対してもキャリアトレーナーが伴走していきます。

また、おっしゃったように、年収が1回で200万円くらい上がるケースもあります。25歳だとしたら、そこから40年間なので、例えば単純計算で生涯年収が「200万円×40年」ということで……。

奥田:「40万円は安い!」となるわけですよね。

金井:そうなんですよね(笑)。だからペイできるケースというのは、ありますね。

奥田:でも、おそらくそれはお金だけの問題じゃなくて、「自分が何に向いているか」のほうが大きいというイメージですか?

金井:そうですね。親世代って、「良い大学に入って、良い会社に入れ」と言われてきた人が多いと思います。でも私たち20代、30代って、「良い大学に入って、良い会社に入ったのに、なんで満たされないんだろう?」という方がすごく多いんですよ。だからそういう悩みに対して、「どう生きていくか」を一緒に考えるような事業になっていますね。

奥田:ありがとうございます。イメージが湧きました。

金井:ありがとうございます。

発達障害者を対象にプログラミング教育を実施

奥田:次に、河崎純真さんお願いします。

河崎純真氏(以下、河崎):河崎です。本名は「じゅん」です。よろしくお願いします。「人に寄り添う」というテーマと、ウェルビーイング(Well-being)という話で言うと、自分は10年くらい前、学生起業からずっとやっています。ADHDやASD、LD(学習障害)といった発達障害の子を主な対象として、ITスキルの訓練をする福祉施設を運営しています。

厚生労働省の許認可の上で日本で3ヶ所運営しているのですが、障害がある子にプログラミングを教えることを7~8年くらいやっています。

自分自身の専門はサイバーセキュリティなのですが、(施設には)100名くらいいて、ゼロ経験から教えています。大手のヤフーさんやセールスフォースさんへの入社実績もあり、そのような就労支援をしています。

私の母親はアスペルガー症候群の診断を持ち、精神障害者保健福祉手帳の2級を持っている精神障害者なんです。もともとそんな家庭で育ったので、そういうことに強いですし、家がエホバの証人という宗教だったので、宗教ネタもよくやっていました。以前は日本とオランダに宗教法人を2つ持っていたのですが、どちらも辞めて手放しました。

最近は官公庁や上場企業のサイバーセキュリティをやらせてもらっています。企業の相談もけっこう多いのでお受けして、フォレンジックからインシデントまでやっています。

社是としてウェルビーイングがあるのですが、そこの研究開発の活動で行っているのがAIの研究です。自分自身が大学院に通いつつ、ウェルビーイングが作れるAI、ウェルビカミング(Well-becoming)、ウェルネス(Wellness)なAIを趣味で研究しています。『Science』や『Nature』に掲載されたデンマーク・オーフス大学の先生と、日本の第一人者の先生と研究しています。

奥田:ありがとうございます。

AIは「誰が育てるか」が重要

奥田:新しい仕事として、ウェルビーイングのAIリサーチャーがこれから伸びてくるんじゃないかということで、彼は第一歩を踏み出しています。

実は、彼はウェルビーイングなAIに、世界の100人を選んでチューニングしています。私もその中の1人の教師データを作りました(笑)。そのあたりについて教えてください。

河崎:AIに詳しい方はご存じだと思うのですが、AIは「誰が育てるか」がめちゃめちゃ大事です。

ハルシネーションとよく言われるように、例えばChatGPTに「尖閣諸島は誰のもの?」と聞くと、「日本です」と答えます。でも、アリババ(Alibaba)のAIに「尖閣諸島は誰のもの?」と聞くと、「古代から中国のものです」という回答が来るんですよね(笑)。

AIは軍事利用されているし、政治利用もされているのですが、その中で人類として、本当のウェルビーイング、人類のために使えるAIとは何なのか。「知性の創造」は、クリスチャン的にはタブーなんですよね。だから、タブーである知性の創造に達してしまった人類が次にどこに向かうのかという意味で、ウェルビーイングのAIをやっています。

(奥田氏を指して)ウェルビーイングのモデルだと思って、めちゃめちゃ研究対象になっています。

奥田:そうですね。1ヶ月くらいかけて、たくさんの質問にひたすら答えまくって、たぶん何十万字を入れています。それをデンマークのオーフス大学と慶應義塾大学で研究されていて。

チューニングもリサーチもきっと職業になりますし、データを与える側の私も新しい職業になるかもしれないという(笑)。世の中では、いくらでも新しい仕事が生まれています。おもしろいでしょう?

篠田:おもしろい。「教師データになる私」という仕事。

奥田:そうです。だから私は教師データになるべく、日々を整えている感じです。

篠田:この場合、よりウェルビーイングを(ということですね)。なるほど。それは良いね。

奥田:そうです。教師データになる自分を想定して、メンタルもフィジカルもお金を使って整えて、私が教師データになるように(笑)。お金目的ではないですが、お金をかけているぶん、後々高くなっていって、そういう新しい職業が生まれています。

篠田:おもしろい。

奥田:こんな感じで、みなさんどんどん入ってきてくださいね。

職業は「地球」?奥田浩美氏が目指す社会とは

奥田:ここまでで全体(の写真)に戻して、私の自己紹介をします。

篠田:(スライドの)情報量が多いですね(笑)。

奥田:私が自己紹介すると情報が渋滞します(笑)。でも、最近は「職業『地球』です」と言っていて。「地球です」ということが、お金を生み出すのですね。

例えば今、何人かにうちわを配りましたが、2025年2月4日から6日に名古屋で行われるグローバルイベント「地球の未来を拓くテクノロジーの祭典(TechGALA Japan)」は私がプロデューサーで、どのテーマでも「これって地球のためになりますか?」と、ひたすら言い続けています。そういう職業です。

私は今、50くらいの役目・役職を持っています。例えば環境省のスタートアップの委員長をしたり、厚労省のヘルスケアスタートアップの委員で政策提言をしたりしています。役職としてはスポーツ庁も含めて5つくらいで、顧問も含め何十社とやっていますが、実際の私の役目は「それって、私たちの未来の地球に何の意味を持ちますか?」と、ひたすら言い続けることです。

一般的な人がそれを言っても、おそらく「この人、何言ってんの?」と言われるんでしょうが、私は1987年にマザー・テレサの研究から始まった人間で、そこからスタートアップの世界に来ました。これを話すと、45分全部が私のセッションになってしまうので、今日は端折ります(笑)。

篠田:(笑)。

奥田:基本的には「それって本当に地球に愛が生まれますか?」と、億面もなく言える人間です。あとは、「未来から来ました」という自己紹介から始めるのが私です。

未来はすでにまだらに起きていて、ある人はこういうかたちで新しい職業に就いていて、ある人はある課題に先に気づいて解決しています。そういうところを飛び回って、まさにあそこ(スライド)に書いてある「未来から来ました!」「それって私たちの地球にとって意味を持ちますか?」ということを、大企業だろうが政府だろうが、どんなところでも言います。

だから、地球のイタコのような職業です(笑)。これは「Chief Earth Officer(CEO)」で、今後はどんな会社にも必要になる職業なんじゃないかなということで、私の自己紹介とさせていただきます。